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    #BMB

    odgr

    SPOILERWebオンリーイベント『キミとじゃなければ』開催おめでとうございます。
    メイン申し込みコンビじゃないんですが、オムニバスの他コンビで登録していたルーク&ジェイスン警部の話を掲載します。国家警察エントランスで迷子の面倒をみるルークと通りすがりの警部の話です。
    ルーク・エドワード・ジェイスンの国家警察組中心本『剣と翼とプレアデス』より書き下ろし分のWeb掲載となります。
    きっといつでも迷ってる 国家警察のエントランスは、いつでも相談を待つ人々でざわついている。真冬で暖房が効いているのも手伝い、混雑でより蒸し暑くなっている。
     この混雑こそが、国家警察が市井の人々に頼られ、信頼されている証だった。部下から混雑緩和の要望や改善案も上がってきていたが、そんなことは刑事部が時間を割くような話ではない、警務にでも任せておけばいいとデニス警視にも一蹴されていた。
     年齢も性別もさまざまな人だかりの中、ジェイスンはふと子どもの声を聞いた。対応するつもりはなかったが、聞きつけた反応を市民に見咎められていたら厄介だった。
    か細い泣き声の在処に視線を巡らせ、辿り着いたその先で眉を顰める。グレーのコートを羽織った若い警察官が、幼い少年の前に膝をついて笑顔を向けていた。
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    odgr

    SPOILERWebオンリーイベント『キミとじゃなければ』開催おめでとうございます。
    メイン申し込みコンビじゃないんですが、オムニバスの他コンビで登録していたルーク&ジェイスン警部の話を掲載します。
    国家警察に採用されてから刑事課に行き先が決まるまでのジェ警部の話ですがルークは不在です。
    ルーク・エドワード・ジェイスンの国家警察組中心本『剣と翼とプレアデス』より書き下ろし分のWeb掲載となります。
    どこにも行けない「ジェイスン警部、ちょっとよろしいですかね」
     大会議室に向かう途中、廊下で呼び止められた。振り向くと、ファイルを手にして立っていたのは警務部所属の警部だった。
    「会議がある。手短に済ませて欲しい」
    「ああ、はいはい。──異動の件なんですが。実は少し、厄介な新人がいましてね。刑事部志望らしいんですが、周囲から浮いた変わり者のようで」
    「ほう?」
    「論文と面接で熱弁したらしいんです。国家警察は、市井の人々を守るヒーローたるべきだ、と」
     ヒーロー。
     久しく聞かなかった単語に、ジェイスンは眉を寄せた。書類を見ていてジェイスンの反応には気づかなかったのか、警部が書類を指先で叩きながら鼻で笑う。
    「警察学校の成績はまあ、悪くはないんですがね。洞察力や分析力、推理力も十分なレベルです。まあ、キャリア組の中じゃそこまで光るわけでもないですが……」
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    odgr

    SPOILERお題箱に頂いていた『体調不良のファントム』で、体調を崩した時に行方不明になる猫みたいなファと慌てて探したらフツーに帰ってこられてしまったルクの話です。謎同居軸です。一応カプ無しです。一応。
    お題有難うございました!大変遅くなり申し訳ありません!
     予想では、怒りとともに迎えられるだろうと思っていた。
    「……! おかえり……。父さん」
    「ああ。ただいま」
     すぐ近所に買い物に行っていたという風情でダイニングのドアを開けると、数秒ののちにルークが鋭く息を飲む音が聞こえた。
     帰ったばかりらしいルークはコートも脱がず、ダイニングテーブルに置いたタブレットを操作しようとしていた。自室でなくここにいるのは、紙の資料を広げるためには一番便利なテーブルだからだろう。実際、何枚もの写真がテーブルいっぱいに散らばり、何らかのカテゴリに分けられて重ねられている。
     見開かれていた翠の瞳がゆっくりと平静を取り戻すとともに、エドワードを映すその色はどこか悲しげに変わった。所在無げに宙をさまよっていたルークの手がタブレットのスイッチを切り、それから、大きく息を吸う。努めて冷静に、一番に何をすべきなのか考えているようだった。
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    odgr

    SPOILERジャズバーで自棄酒するジェ警部補とバー借りてピアノ練習するあのひとの話。特にそういう意図はないですがジェエドな工場長の工場産です念のため。
    音源聞くだけで再現出来そうなのに「相当練習した」が本当だったら面白いなとか、チェが歌姫になれるならあのひとの変装技術にも体型などまったく違う女性に変わる選択肢があったんだろうかとか、変装はやがて必要になる『彼女』の奏法や内面への理解を深めるためです、みたいな。
     そのバーの片隅には、ピアノを弾く女がいた。
     秋口の乾いた風がちりりと頬を刺す夜、酒の一杯でも飲まねばどうにも落ち着く気がしないほど、珍しく心がささくれていた日の仕事帰りだった。たまたま夜風に揺れた古い看板が目について、ここで良いかとジェイスンは半ば自棄気味にとある店のドアベルを揺らした。
     古びた分厚いチークの扉の印象に違わぬ落ち着いたジャズバーだった。店の奥、小さなステージの片隅に置かれたピアノは年代物でよく手入れされているのが判る。目についた瓶の銘柄を適当にオーダーし、ジェイスンは飲み慣れない自棄酒のグラスを呷った。命令口調で二杯目をバーテンに用意させ、あっという間に空になったグラスの中で氷がからりと音を立てた時、ふと、ピアノの音色が薄暗い店の空気に染み透った。
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