g_arowana
DONEお引越し風景。同居始まってるのでとこほでしょう。
「君の部屋ってこういう感じかー」
空き部屋に常闇の荷を(プライベートに抵触しない範囲で)並べ終えて、師は感慨深そうにあたりを見回した。
多忙な貴方に荷解きの手伝いなど、と常闇も最初は固辞したのだが、「え、楽しみにしてたのに」という直球も直球の返しに押し切られた。黒影と共にある常闇もこの手の作業は早い方だが、ホークスの手数には敵わない。赤い羽に全てのダンボールの封が同時に切られた様は壮観だった。
「そうか、お見せしたことはなかったな」
「呼びつけるばっかで、結局きみんちには行かなかったからねぇ。だいたい想像どおりだけどもっとこう……ドクロとかあるイメージだったかも」
「高校時代の居室には確かに」
「あったんだ」
1842空き部屋に常闇の荷を(プライベートに抵触しない範囲で)並べ終えて、師は感慨深そうにあたりを見回した。
多忙な貴方に荷解きの手伝いなど、と常闇も最初は固辞したのだが、「え、楽しみにしてたのに」という直球も直球の返しに押し切られた。黒影と共にある常闇もこの手の作業は早い方だが、ホークスの手数には敵わない。赤い羽に全てのダンボールの封が同時に切られた様は壮観だった。
「そうか、お見せしたことはなかったな」
「呼びつけるばっかで、結局きみんちには行かなかったからねぇ。だいたい想像どおりだけどもっとこう……ドクロとかあるイメージだったかも」
「高校時代の居室には確かに」
「あったんだ」
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PROGRESSとこほです(胸を張る)。いつか書こうと思ってるR指定のやつの冒頭パートなのでこれはとこほで間違いないです。同居未来。
現時点ではひっっどい仮タイトルがついてるんで、書き上がるころにはまともなのに出てきてほしい。
水桶につっこんでおいた夜食の皿と、朝食に使った皿。二人分がにぎやかに食洗に洗われている。余計なものの退いた明るいオープンキッチンで、常闇は二杯目のコーヒーをカップに注いだ。
朝食中に一杯、食後に一杯、二人あわせて計四杯。豆の量はそろそろ手に馴染みつつあるが、彼ら師弟が揃って食後にのんびりできる機会は多くないため、ルーティーンとはまだ呼びづらい。
常闇が二つのカップを手に向かうのは、ホークスの休むソファだ。アームレストは無垢板で、ちょっとしたテーブル代わりにも使える。その定位置に、常闇はソーサーをかちゃりと置いた。
カップソーサーを「無駄じゃない?」の一言で片付けそうなホークスだが、意外なことにこのカップは彼が選んだものだ。肉厚でぽってりとしており、つるりとした釉薬の下から素朴な土の質感を覗かせる。その風合いを「古良き名喫茶って感じで、君っぽい」とホークスは喜び、カップは今日まで二人に愛用され続けている。探し始めてからお気に入りに決断するまでの所要時間がものの十分程度だった、という点については、実に彼らしいエピソードと言えるだろう。
1949朝食中に一杯、食後に一杯、二人あわせて計四杯。豆の量はそろそろ手に馴染みつつあるが、彼ら師弟が揃って食後にのんびりできる機会は多くないため、ルーティーンとはまだ呼びづらい。
常闇が二つのカップを手に向かうのは、ホークスの休むソファだ。アームレストは無垢板で、ちょっとしたテーブル代わりにも使える。その定位置に、常闇はソーサーをかちゃりと置いた。
カップソーサーを「無駄じゃない?」の一言で片付けそうなホークスだが、意外なことにこのカップは彼が選んだものだ。肉厚でぽってりとしており、つるりとした釉薬の下から素朴な土の質感を覗かせる。その風合いを「古良き名喫茶って感じで、君っぽい」とホークスは喜び、カップは今日まで二人に愛用され続けている。探し始めてからお気に入りに決断するまでの所要時間がものの十分程度だった、という点については、実に彼らしいエピソードと言えるだろう。
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DOODLEとこほです。なんも考えないで書いたっぷりで、いつかのを更新しました。
相手が浮気をしていたらどうするか、というあまりに陳腐な、それ故に師の口から出るには違和感のある話題に、ソファ上で常闇は目を瞬かせた。
「前提として、性癖如何であなたと別れる気がないもので」
「……えらい角度から来たねまた」
「仮にあなたがポリアモリーだとしても、それでどうこうするという話にはならないな」
師の顔に浮かんだ疑問符に常闇は、複数愛者、と言い直した。
「へぇ、ラテン語かな。面白い尖りかたしてるよねぇ君の語彙」
「なんにせよ、あなたのすることなら、関係する誰に対してもいい加減ではないだろう。ちなみに、行為に混ざらないか、という話になるなら、それについては謹んで辞退する」
「うん、言わんけどね」
ロックグラスの氷をカラリと回して(素面でする話でないのは確かである)、ホークスは唇を湿らせた。
792「前提として、性癖如何であなたと別れる気がないもので」
「……えらい角度から来たねまた」
「仮にあなたがポリアモリーだとしても、それでどうこうするという話にはならないな」
師の顔に浮かんだ疑問符に常闇は、複数愛者、と言い直した。
「へぇ、ラテン語かな。面白い尖りかたしてるよねぇ君の語彙」
「なんにせよ、あなたのすることなら、関係する誰に対してもいい加減ではないだろう。ちなみに、行為に混ざらないか、という話になるなら、それについては謹んで辞退する」
「うん、言わんけどね」
ロックグラスの氷をカラリと回して(素面でする話でないのは確かである)、ホークスは唇を湿らせた。
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DOODLE記録的に何も考えずに書きました。キャプションに書くことがなにもな……あ、とこほ成立済みで常闇君成人済みです
休むことは仕事のうち。プロ意識の具現のような師匠から、常闇が実地に学んだことだ。
とはいえ、眠るべき時には一分以内に眠り、必要とあれば瞬時に目を覚まし、半日たらずの休みであってもその間は仕事をきっちり頭から追い出す……なんて芸当は、誰にでも実践できるものではない。なにか秘訣があるのか、と常闇が尋ねたのは、通り一遍の訓示を受けて自分なりに試行錯誤を繰り返したあとのことだ。
コツ一つ教われば魔法のように上手く行く、なんてムシのいいことを思いもつかない彼はそのとき既に成人しており、そういう彼だからこそホークスも笑って答えてくれた。
「瞑想、マインドフルネス、実績あるのから眉唾までいろいろあるけど、言ってることは結局同じだよね。『なんも考えるな』。アタマを回復させる手って、これに尽きるから」
1410とはいえ、眠るべき時には一分以内に眠り、必要とあれば瞬時に目を覚まし、半日たらずの休みであってもその間は仕事をきっちり頭から追い出す……なんて芸当は、誰にでも実践できるものではない。なにか秘訣があるのか、と常闇が尋ねたのは、通り一遍の訓示を受けて自分なりに試行錯誤を繰り返したあとのことだ。
コツ一つ教われば魔法のように上手く行く、なんてムシのいいことを思いもつかない彼はそのとき既に成人しており、そういう彼だからこそホークスも笑って答えてくれた。
「瞑想、マインドフルネス、実績あるのから眉唾までいろいろあるけど、言ってることは結局同じだよね。『なんも考えるな』。アタマを回復させる手って、これに尽きるから」
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DOODLE去年のポッキーの日の話の関連作です。大捏造とこやみくんのお祖父様の話がちょこっと出てきます。「……苦くないね」
カップに口をつけて、ホークスは興味深そうに瞬いた。
「綺麗なフルーツ香のする焙じ茶……まで言うとオーバーだけど、そんな感じ」
「そうだな。一般にいうコーヒーとは、いささか風情が異なると思う」
彼の向かいで、どうやら口に合ったらしいと内心胸を撫で下ろしつつ、常闇も自分のカップを取り上げた。
「……喫茶店を経営していた祖父の気に入りだ。豆を浅煎りにして、当時は薄手の布フィルタで抽出していた。今は円錐のドリッパーがあるから、紙でよくて便利だ。
その頃はコーヒーと言えば泥のように濃いものだと思われていたから、『こんな薄いものに金を払えるか』と随分難癖をつけられたようだが、まぁ、身内ながら頑固な人で」
1426カップに口をつけて、ホークスは興味深そうに瞬いた。
「綺麗なフルーツ香のする焙じ茶……まで言うとオーバーだけど、そんな感じ」
「そうだな。一般にいうコーヒーとは、いささか風情が異なると思う」
彼の向かいで、どうやら口に合ったらしいと内心胸を撫で下ろしつつ、常闇も自分のカップを取り上げた。
「……喫茶店を経営していた祖父の気に入りだ。豆を浅煎りにして、当時は薄手の布フィルタで抽出していた。今は円錐のドリッパーがあるから、紙でよくて便利だ。
その頃はコーヒーと言えば泥のように濃いものだと思われていたから、『こんな薄いものに金を払えるか』と随分難癖をつけられたようだが、まぁ、身内ながら頑固な人で」
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DOODLEこの間の、嘴が楽しくてしょーがない師がいる時空の話。この世界線の彼らのプロポーズ(????)の経緯はこんなでした。
とこやみくんとかみなりくんの話は珍しい気がする。
友人が既婚者だつた。
上鳴は、飲んでいたカシオレに静かに噎せた。
常闇と上鳴は、旧A組の中では特に仲が良かった方ではない。好む話題もベースのテンションも、とかく色々ズレている。
だが仲の良かった「方」ではないといっても、それは、全員が全員親友だといって過言でないA組基準の話である。二人は一般的には十分以上に仲が良く、こうして上鳴が、飲みの席でも隅を好む常闇の隣に「よう!」と話しに来たりする。加えて言うなら、彼にとって常闇は、個人的に印象深い人間だった。
彼らにとって超常解放戦線との戦いは今なお忘れがたい傷痕だ。その強個性から学生の身空で「戦争」の最前線に引っ張り出されたとき、上鳴は正直半泣きだった。仲間想いの彼は最後には背後の級友のために奮起したのだが、そういう上鳴だからこそ、ホークスのピンチを叫んで上官の制止を振り切ってしまった常闇に顎を外したものだ。常闇自身の語彙を借りるなら、正しく漆黒の流星のような吶喊だった。
2732上鳴は、飲んでいたカシオレに静かに噎せた。
常闇と上鳴は、旧A組の中では特に仲が良かった方ではない。好む話題もベースのテンションも、とかく色々ズレている。
だが仲の良かった「方」ではないといっても、それは、全員が全員親友だといって過言でないA組基準の話である。二人は一般的には十分以上に仲が良く、こうして上鳴が、飲みの席でも隅を好む常闇の隣に「よう!」と話しに来たりする。加えて言うなら、彼にとって常闇は、個人的に印象深い人間だった。
彼らにとって超常解放戦線との戦いは今なお忘れがたい傷痕だ。その強個性から学生の身空で「戦争」の最前線に引っ張り出されたとき、上鳴は正直半泣きだった。仲間想いの彼は最後には背後の級友のために奮起したのだが、そういう上鳴だからこそ、ホークスのピンチを叫んで上官の制止を振り切ってしまった常闇に顎を外したものだ。常闇自身の語彙を借りるなら、正しく漆黒の流星のような吶喊だった。
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DOODLEとこほです。一応カップリング色のある話です。描写がさっぱりないので年齢指定はいらないと思う。安定の弩コンプラ師弟のことなので、言うまでもないかもしれませんが四年後です。
固く確かで、しかし微かな弾力を忍ばせ、なめらかで、血を通わせて、あたたかい。
鷹や鷲に似た造りの嘴に、ホークスは唇で触れて回る。
交際相手だった、と言って良さそうな人間は数人いるが、その中に、体の造りに個性を発現させたタイプは一人もいない。ホークスは、鳥のカタチの恋人を得るまで、その事実をまるで意識していなかった。
視点の高さや角度を異にする検分が、ホークスの人格の根幹だ。だから彼は自分の盲点を、それに気付かされたことを、少なからず愉快に思っている。
ベッドに座した常闇の腿を跨いで覆いかぶさり、ちゅ、ちゅ、と嘴の脇をノックしていると、そろりと隙間が開かれた。小ぶりで平らな下嘴、大きく弧を描いて覆いかぶさる上嘴。上手く首を傾けて避けないと、彼の舌には出会えない。鼻面同士をぶつけないようにするのと、似ているようでちょっと違ったコツがいる。
1549鷹や鷲に似た造りの嘴に、ホークスは唇で触れて回る。
交際相手だった、と言って良さそうな人間は数人いるが、その中に、体の造りに個性を発現させたタイプは一人もいない。ホークスは、鳥のカタチの恋人を得るまで、その事実をまるで意識していなかった。
視点の高さや角度を異にする検分が、ホークスの人格の根幹だ。だから彼は自分の盲点を、それに気付かされたことを、少なからず愉快に思っている。
ベッドに座した常闇の腿を跨いで覆いかぶさり、ちゅ、ちゅ、と嘴の脇をノックしていると、そろりと隙間が開かれた。小ぶりで平らな下嘴、大きく弧を描いて覆いかぶさる上嘴。上手く首を傾けて避けないと、彼の舌には出会えない。鼻面同士をぶつけないようにするのと、似ているようでちょっと違ったコツがいる。
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DOODLEとこほ未来時間、常くん成人済み。ポッキー・デイの近辺ですね 能力主義で、高い視点から問題を見透し、それをあけすけに口にする。
そういう側面から、常闇の師は同業者にこそ敬遠されることがあり、常闇自身「苦労はないか」と聞かれたことは両手に余る。
一応、常闇としては(ホークス当人は意に介さないので)弁明しておきたいのだが、ホークスは理不尽とも非合理とも誰より縁遠いのだ。もし気分屋に見えるとしたら、他人が彼の速度に付いていけないことに、彼が全く関心を払わないからだろう。
そんな彼の「お願い」は珍しく、大抵けったいで、同時に他愛ない。
今日のそれは「おにぎり握って」というものだった。
「急に、どうされたのか」
氷水で手を冷やしながら、常闇は隣から作業を覗き込む師に尋ねる。
1268そういう側面から、常闇の師は同業者にこそ敬遠されることがあり、常闇自身「苦労はないか」と聞かれたことは両手に余る。
一応、常闇としては(ホークス当人は意に介さないので)弁明しておきたいのだが、ホークスは理不尽とも非合理とも誰より縁遠いのだ。もし気分屋に見えるとしたら、他人が彼の速度に付いていけないことに、彼が全く関心を払わないからだろう。
そんな彼の「お願い」は珍しく、大抵けったいで、同時に他愛ない。
今日のそれは「おにぎり握って」というものだった。
「急に、どうされたのか」
氷水で手を冷やしながら、常闇は隣から作業を覗き込む師に尋ねる。
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DOODLE一つ前の、雑バディととこほの合わせ技の、ちょっとした続き。何がどうしてこんなふつうに可愛い話が生えたんだろう……?
メッセージ一つで、鴉の青年は本当に相方の回収に現れた。ホークスと共に別件で上京していた彼は、隣県で丁度事件を片付けたところだったという。
「すまない。呼び立ててしまった私もよくよく酔っているな」
「いえ、近場でしたから」
発言は、礼儀正しい彼の気遣いではなく、単なる事実認識だったらしい。空を駆る彼ら師弟の距離感覚は、重力に縛られた人間にはどうにも量り難いところがある。
玄関先でジーニストの背後に目をとめ、ツクヨミは微かに目元を和ませ、す、と頭をさげた。
「……ありがとうございました」
「礼を言うのはどう考えても、酔っ払いを回収して貰える私の方だよ」
「師は、佳い時間を過ごしたようです」
……何が驚いたって、ただただホークスの幸いを喜ぶ声に、背後から茶化す軽口が返らなかったことだ。靴に突っ込んだ爪先をトントンと床に打ち付ける男を振り返り、ジーニストは人の悪い笑みを見せる。
949「すまない。呼び立ててしまった私もよくよく酔っているな」
「いえ、近場でしたから」
発言は、礼儀正しい彼の気遣いではなく、単なる事実認識だったらしい。空を駆る彼ら師弟の距離感覚は、重力に縛られた人間にはどうにも量り難いところがある。
玄関先でジーニストの背後に目をとめ、ツクヨミは微かに目元を和ませ、す、と頭をさげた。
「……ありがとうございました」
「礼を言うのはどう考えても、酔っ払いを回収して貰える私の方だよ」
「師は、佳い時間を過ごしたようです」
……何が驚いたって、ただただホークスの幸いを喜ぶ声に、背後から茶化す軽口が返らなかったことだ。靴に突っ込んだ爪先をトントンと床に打ち付ける男を振り返り、ジーニストは人の悪い笑みを見せる。
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DOODLEとこほ・Night Drop(Without Regrets収録書下ろし R-18)の世界線と、酒飲んでるだけの雑バディの世界線の合流ルートです。あの2線合流可能なんかい、と書いたやつが一番思ってます。
ようはこの男は案外、静かに呑むのが好きなのだ。
律儀というか、真面目というか、あるいは貧乏性といってもいいのかもしれないが、ホークスの行動は強烈な目的意識を背骨にしている。目的自体が協調性を蹴り飛ばしていることが多いので、勝手といえば勝手だが、最終的な目的地は概ね公利であるので、そうと断定するのも悩まれる。
場をもたせるにせよ、相手を苛立たせて場を動かすにせよ、酒の一杯にだって何かしら「仕事」を見出してしまうのがこの男だ。その点、相手がジーニストなら、互いに口を出す要は特になく、何かしてやる義理もどこをひっくり返しても見つからない。そもそも、そんなものが必要だとも思っていない。
彼らの呑み会は、耳にした誰もに「盛り上がるのか」と疑念を呈されながら、年に一度あるかないかの頻度で今なお開催されている。
1623律儀というか、真面目というか、あるいは貧乏性といってもいいのかもしれないが、ホークスの行動は強烈な目的意識を背骨にしている。目的自体が協調性を蹴り飛ばしていることが多いので、勝手といえば勝手だが、最終的な目的地は概ね公利であるので、そうと断定するのも悩まれる。
場をもたせるにせよ、相手を苛立たせて場を動かすにせよ、酒の一杯にだって何かしら「仕事」を見出してしまうのがこの男だ。その点、相手がジーニストなら、互いに口を出す要は特になく、何かしてやる義理もどこをひっくり返しても見つからない。そもそも、そんなものが必要だとも思っていない。
彼らの呑み会は、耳にした誰もに「盛り上がるのか」と疑念を呈されながら、年に一度あるかないかの頻度で今なお開催されている。