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    g_arowana

    @g_arowana

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    g_arowana

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    お引越し風景。
    同居始まってるのでとこほでしょう。

    #とこほ
    evergreenTree

    「君の部屋ってこういう感じかー」
     空き部屋に常闇の荷を(プライベートに抵触しない範囲で)並べ終えて、師は感慨深そうにあたりを見回した。
     多忙な貴方に荷解きの手伝いなど、と常闇も最初は固辞したのだが、「え、楽しみにしてたのに」という直球も直球の返しに押し切られた。黒影と共にある常闇もこの手の作業は早い方だが、ホークスの手数には敵わない。赤い羽に全てのダンボールの封が同時に切られた様は壮観だった。
    「そうか、お見せしたことはなかったな」
    「呼びつけるばっかで、結局きみんちには行かなかったからねぇ。だいたい想像どおりだけどもっとこう……ドクロとかあるイメージだったかも」
    「高校時代の居室には確かに」
    「あったんだ」

     常闇の私物は相変わらず黒く、しかし剣を模したキーホールダー群はセンスの尖った本物のシルバーに代わり(このあたりは師匠の影響だ)、その他全体的にディテールが底上げされている。かつての「ベタベタな」品で今も手元に残っているのは数点だ。彼の趣味の方向性自体は変わっていないが、これはマッチングの問題だった。
     ヒーローが「人気が出れば一攫千金」なんて商売ではなくなっても、社会崩壊の傷跡の残る世相で前線型ヒーローの仕事は引きも切らない。おまけに常闇は若手ながら実力派。さらには、当時学生だてらに前線に立った世代の「クリーンな」イメージにあやかりたい人も組織もゴロゴロしている。
     そんな、同世代よりもそこそこ稼ぎができた彼が購った品に並ぶと、学生時代に揃えたものが「魔法が解けたように」見えてしまう。それが常闇には少し寂しかった。
     スタンスが変わる、位置づけが変わる。それは別によろしい。だが、小遣いをやりくりして集めた品々が「安っぽく」見えるというのには、当時の真剣さを裏切っているような、「それは何か違わないか」という気持ちにさせられる。

    「へぇ、こんなのあるんだ。ね、居間の方に置いてもいい?」
     常闇はパチリと瞬いた。
     ホークスが両手で抱えるのは鹿の頭蓋骨、そのレプリカだ。角が伸びていることもあり、ホークスの両手を塞ぐ程度にかさばる代物である。ハイツアライアンスに引っ越すときは、基本的に息子の自主性を重んじる両親が戦慄の表情で「それを……持っていくのか……?」と問うてきた。
     この新居まで連れてはきたが、さしもの常闇も「今が別離のときであろうか」と思い始めていたものだった。
    「いや、なかなかよく似せてはいるが、それはただのレプリカで……」
    「持ってんだから分かる分かる。ってか本物だと逆にエグくない? まぁ、んなこと言っても肉は毎日食いたいけどさ」
     特に鶏肉、などと嘯いてホークスはニコニコしている。常闇が戸惑い戸惑い頷くと、ご機嫌な様子で羽に扉を開けさせ、荷を抱えたままスタスタと出ていった。
     向かった居間の全面の窓には宵の青。羽が舞い散って輪郭の柔らかな灯りをつけていく。部屋のそこかしこ、後から買い足されランダムに配された間接照明の点灯は一般には面倒だろうが、ホークスにとっては問題ないものだ。
     ギラギラとした光の介在しない、常闇好みの薄暗がりで、ホークスはよく使うアクセサリー類をつくねた棚上に頭蓋骨もどきを立てかけた。
    「こうかな。うん、いいね。面白い」

     ホークスは無駄遣いはしないものの、美意識に相応の資産を注ぐ。そんな人間の部屋に置いたら一体、という常闇の心配を他所に、レザーやらシルバーやらに囲まれて、樹脂製の骨はすまし顔だ。互いの影を打ち消し合う照明群からちょっと外れた棚上で、生々しくはなく、しかし薄っぺらにも見えない、謎の落ち着きを醸している。
     ホークスは、どうよ、と言いたげな嬉しそうな顔をしている。常闇の顔も遅れてほころんだ。
    「……居場所を見出して頂いたようだ。感謝する」
     思い出の品なんだ、と続ける常闇に、師匠は「へぇ」なんてしらばっくれている。
     選びぬかれたはずの荷の中に何故か鎮座した、どでかい骨。その不自然は、彼に常闇の愛惜を察させるに十分だったのだろうが、まぁ、基本的にこういう人である。
    「どういう謂れがあるの? これ」
    「中学の就学旅行で買ったものだな」
    「……修学旅行で、これを」
    「そこらでは売っていない細工の良さに惚れ込んで、許された小遣いの全額を注いだものだ」
    「ぜんがく」
     その話めちゃくちゃ聞きたい、と強請るホークスの声は既に笑っている。心得た、と常闇はうなずいた。
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    Replies from the creator

    g_arowana

    PROGRESSとこほです(胸を張る)。
    いつか書こうと思ってるR指定のやつの冒頭パートなのでこれはとこほで間違いないです。同居未来。

    現時点ではひっっどい仮タイトルがついてるんで、書き上がるころにはまともなのに出てきてほしい。
     水桶につっこんでおいた夜食の皿と、朝食に使った皿。二人分がにぎやかに食洗に洗われている。余計なものの退いた明るいオープンキッチンで、常闇は二杯目のコーヒーをカップに注いだ。
     朝食中に一杯、食後に一杯、二人あわせて計四杯。豆の量はそろそろ手に馴染みつつあるが、彼ら師弟が揃って食後にのんびりできる機会は多くないため、ルーティーンとはまだ呼びづらい。
     
     常闇が二つのカップを手に向かうのは、ホークスの休むソファだ。アームレストは無垢板で、ちょっとしたテーブル代わりにも使える。その定位置に、常闇はソーサーをかちゃりと置いた。
     カップソーサーを「無駄じゃない?」の一言で片付けそうなホークスだが、意外なことにこのカップは彼が選んだものだ。肉厚でぽってりとしており、つるりとした釉薬の下から素朴な土の質感を覗かせる。その風合いを「古良き名喫茶って感じで、君っぽい」とホークスは喜び、カップは今日まで二人に愛用され続けている。探し始めてからお気に入りに決断するまでの所要時間がものの十分程度だった、という点については、実に彼らしいエピソードと言えるだろう。
    1949

    g_arowana

    DONE鳥師弟。……いや告白してる気がしなくもないのでとこほなのか。どうなんだ。いつものよぅ分からんやつです。
    ヒ暇世というには忙しい未来の休暇話。
     春空に、無数のシャボン玉が舞っている。

     だだっ広い芝生の上では、小学校に上がるくらいの年頃の子供が何人も、空に虹色を飛ばしている。シャボン玉なんて、と最初はバカにしていたのだが、あたりいっぱいに飛ばしているうちになんだか面白くなってしまったらしい。今は大きく頬を膨らませて意気盛んだ。
    「君は遊ばないの?」
     ホークスは、彼らからちょっと離れた芝生に座る子供の隣で屈みこむ。
     今日の彼の姿は、羽をパーカー下に畳んでキャップを被った休日スタイル。身分を保証するものは掲げていない。もっとも、例え羽が見えていても、近年裏方に回りがちな彼をこの年頃の子供がヒーローと認識するかは怪しいところだ。
     鳥型の少年だった。タイプとしては嘴長めの鴉寄り。ホークスの身内とは色味以外はあまり似ていない。そんな少年は、ホークスの馴れ馴れしくもなければ畏まるでもない、あまりに自然な態度に、答えを返して当然だと思わされたようだった。そう仕向けているのはホークスだが、育成環境由来のこの特技には当人も「適性・人さらいって感じだよなぁ」と思っている。
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    g_arowana

    DOODLEこの間の、嘴が楽しくてしょーがない師がいる時空の話。
    この世界線の彼らのプロポーズ(????)の経緯はこんなでした。

    とこやみくんとかみなりくんの話は珍しい気がする。
     友人が既婚者だつた。
     上鳴は、飲んでいたカシオレに静かに噎せた。
     
     常闇と上鳴は、旧A組の中では特に仲が良かった方ではない。好む話題もベースのテンションも、とかく色々ズレている。
     だが仲の良かった「方」ではないといっても、それは、全員が全員親友だといって過言でないA組基準の話である。二人は一般的には十分以上に仲が良く、こうして上鳴が、飲みの席でも隅を好む常闇の隣に「よう!」と話しに来たりする。加えて言うなら、彼にとって常闇は、個人的に印象深い人間だった。
     彼らにとって超常解放戦線との戦いは今なお忘れがたい傷痕だ。その強個性から学生の身空で「戦争」の最前線に引っ張り出されたとき、上鳴は正直半泣きだった。仲間想いの彼は最後には背後の級友のために奮起したのだが、そういう上鳴だからこそ、ホークスのピンチを叫んで上官の制止を振り切ってしまった常闇に顎を外したものだ。常闇自身の語彙を借りるなら、正しく漆黒の流星のような吶喊だった。
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    g_arowana

    PROGRESSとこほです(胸を張る)。
    いつか書こうと思ってるR指定のやつの冒頭パートなのでこれはとこほで間違いないです。同居未来。

    現時点ではひっっどい仮タイトルがついてるんで、書き上がるころにはまともなのに出てきてほしい。
     水桶につっこんでおいた夜食の皿と、朝食に使った皿。二人分がにぎやかに食洗に洗われている。余計なものの退いた明るいオープンキッチンで、常闇は二杯目のコーヒーをカップに注いだ。
     朝食中に一杯、食後に一杯、二人あわせて計四杯。豆の量はそろそろ手に馴染みつつあるが、彼ら師弟が揃って食後にのんびりできる機会は多くないため、ルーティーンとはまだ呼びづらい。
     
     常闇が二つのカップを手に向かうのは、ホークスの休むソファだ。アームレストは無垢板で、ちょっとしたテーブル代わりにも使える。その定位置に、常闇はソーサーをかちゃりと置いた。
     カップソーサーを「無駄じゃない?」の一言で片付けそうなホークスだが、意外なことにこのカップは彼が選んだものだ。肉厚でぽってりとしており、つるりとした釉薬の下から素朴な土の質感を覗かせる。その風合いを「古良き名喫茶って感じで、君っぽい」とホークスは喜び、カップは今日まで二人に愛用され続けている。探し始めてからお気に入りに決断するまでの所要時間がものの十分程度だった、という点については、実に彼らしいエピソードと言えるだろう。
    1949

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