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    g_arowana

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    g_arowana

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    とこほ未来時間、常くん成人済み。ポッキー・デイの近辺ですね

    #とこほ
    evergreenTree

     能力主義で、高い視点から問題を見透し、それをあけすけに口にする。
     そういう側面から、常闇の師は同業者にこそ敬遠されることがあり、常闇自身「苦労はないか」と聞かれたことは両手に余る。
     一応、常闇としては(ホークス当人は意に介さないので)弁明しておきたいのだが、ホークスは理不尽とも非合理とも誰より縁遠いのだ。もし気分屋に見えるとしたら、他人が彼の速度に付いていけないことに、彼が全く関心を払わないからだろう。
     そんな彼の「お願い」は珍しく、大抵けったいで、同時に他愛ない。
     今日のそれは「おにぎり握って」というものだった。
     
    「急に、どうされたのか」
     氷水で手を冷やしながら、常闇は隣から作業を覗き込む師に尋ねる。
     具材に何をご所望か、と尋ねたら、塩、のひと言だったので、米くらいは炊きたてを用意することにした。冷凍米は、そのうちチャーハンにでもするとしよう。
     忙しさにかまけて料理の腕は上がっていないが、おにぎりなら炊きだしの定番だ。雄英で叩き込まれた工程との違いは、衛生手袋の有無くらいのものである。
    「おにぎりって大体買ってすませちゃうんだけど、こないだネットでおにぎり用の型見かけてさ」
     こう、かぱっとやるとキレイな三角が、とジェスチャーをする師を横目に、常闇は布巾で拭った手に塩をとる。すぐに食べるなら、少なめがいいだろう。
    「使ってみたくなった、……のではないんだな」
    「うん、手で握ったやつ食べたいなーと」
     今日も思考回路の読めない人物だった。

    「誰が作っても、さほど味の変わるものではないと思うが……」
    「いやー違うんじゃない? アミノ酸とか」
    「あみのさん」
     オウム返ししつつも自分の手が止まらないあたりに、彼と出会ってからの年月を感じる常闇だった。ようするに、慣れである。
    「どんだけ手ぇ洗っても、手の表面なり分泌物なり混じると思うよ。素手で握ってんだから」
    「……理屈の上では同意するが……」
     熱いごはんを手の上によそい、転がす要領でそっとまとめる。右手で山を、左手で底を。多少カタチは歪であるが、型抜きした米がご希望ではないとのことなので、多分見逃してもらえるだろう。
     ところであなたのその認識は、食欲に資するものなのだろうか。一つ目を皿に置く前にそう尋ねようとしたら、師の頭は既に彼の手の上だった。
     かぷり。

     彼曰く「常闇が混ざっている」らしいおにぎりは、一口でおおよそ半分になった。頬張られた米がもっもっと咀嚼されるのを、常闇は呆然と見守っている。まぁ、師と共に居る常闇が呆然としていること自体は、特に珍しいことではない。
    「ん、なんか旨い気がする」
    「……それは、何より……。ところで」
     おにぎり(半分)を掌に乗せたまま、常闇は呻いた。
    「遊んで、おられるな?」
    「うん」

     見たままだよ、師は笑い、本当に美味しそうに、塩だけのおにぎりの残りを平らげる。常闇は溜息混じりに、再び両手を氷水に差し入れた。
     誠に遺憾ながら、どうやらこれが常闇踏陰の幸福というやつらしい。
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    g_arowana

    PROGRESSとこほです(胸を張る)。
    いつか書こうと思ってるR指定のやつの冒頭パートなのでこれはとこほで間違いないです。同居未来。

    現時点ではひっっどい仮タイトルがついてるんで、書き上がるころにはまともなのに出てきてほしい。
     水桶につっこんでおいた夜食の皿と、朝食に使った皿。二人分がにぎやかに食洗に洗われている。余計なものの退いた明るいオープンキッチンで、常闇は二杯目のコーヒーをカップに注いだ。
     朝食中に一杯、食後に一杯、二人あわせて計四杯。豆の量はそろそろ手に馴染みつつあるが、彼ら師弟が揃って食後にのんびりできる機会は多くないため、ルーティーンとはまだ呼びづらい。
     
     常闇が二つのカップを手に向かうのは、ホークスの休むソファだ。アームレストは無垢板で、ちょっとしたテーブル代わりにも使える。その定位置に、常闇はソーサーをかちゃりと置いた。
     カップソーサーを「無駄じゃない?」の一言で片付けそうなホークスだが、意外なことにこのカップは彼が選んだものだ。肉厚でぽってりとしており、つるりとした釉薬の下から素朴な土の質感を覗かせる。その風合いを「古良き名喫茶って感じで、君っぽい」とホークスは喜び、カップは今日まで二人に愛用され続けている。探し始めてからお気に入りに決断するまでの所要時間がものの十分程度だった、という点については、実に彼らしいエピソードと言えるだろう。
    1949

    g_arowana

    DONE鳥師弟。……いや告白してる気がしなくもないのでとこほなのか。どうなんだ。いつものよぅ分からんやつです。
    ヒ暇世というには忙しい未来の休暇話。
     春空に、無数のシャボン玉が舞っている。

     だだっ広い芝生の上では、小学校に上がるくらいの年頃の子供が何人も、空に虹色を飛ばしている。シャボン玉なんて、と最初はバカにしていたのだが、あたりいっぱいに飛ばしているうちになんだか面白くなってしまったらしい。今は大きく頬を膨らませて意気盛んだ。
    「君は遊ばないの?」
     ホークスは、彼らからちょっと離れた芝生に座る子供の隣で屈みこむ。
     今日の彼の姿は、羽をパーカー下に畳んでキャップを被った休日スタイル。身分を保証するものは掲げていない。もっとも、例え羽が見えていても、近年裏方に回りがちな彼をこの年頃の子供がヒーローと認識するかは怪しいところだ。
     鳥型の少年だった。タイプとしては嘴長めの鴉寄り。ホークスの身内とは色味以外はあまり似ていない。そんな少年は、ホークスの馴れ馴れしくもなければ畏まるでもない、あまりに自然な態度に、答えを返して当然だと思わされたようだった。そう仕向けているのはホークスだが、育成環境由来のこの特技には当人も「適性・人さらいって感じだよなぁ」と思っている。
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    g_arowana

    DOODLEこの間の、嘴が楽しくてしょーがない師がいる時空の話。
    この世界線の彼らのプロポーズ(????)の経緯はこんなでした。

    とこやみくんとかみなりくんの話は珍しい気がする。
     友人が既婚者だつた。
     上鳴は、飲んでいたカシオレに静かに噎せた。
     
     常闇と上鳴は、旧A組の中では特に仲が良かった方ではない。好む話題もベースのテンションも、とかく色々ズレている。
     だが仲の良かった「方」ではないといっても、それは、全員が全員親友だといって過言でないA組基準の話である。二人は一般的には十分以上に仲が良く、こうして上鳴が、飲みの席でも隅を好む常闇の隣に「よう!」と話しに来たりする。加えて言うなら、彼にとって常闇は、個人的に印象深い人間だった。
     彼らにとって超常解放戦線との戦いは今なお忘れがたい傷痕だ。その強個性から学生の身空で「戦争」の最前線に引っ張り出されたとき、上鳴は正直半泣きだった。仲間想いの彼は最後には背後の級友のために奮起したのだが、そういう上鳴だからこそ、ホークスのピンチを叫んで上官の制止を振り切ってしまった常闇に顎を外したものだ。常闇自身の語彙を借りるなら、正しく漆黒の流星のような吶喊だった。
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    g_arowana

    PROGRESSとこほです(胸を張る)。
    いつか書こうと思ってるR指定のやつの冒頭パートなのでこれはとこほで間違いないです。同居未来。

    現時点ではひっっどい仮タイトルがついてるんで、書き上がるころにはまともなのに出てきてほしい。
     水桶につっこんでおいた夜食の皿と、朝食に使った皿。二人分がにぎやかに食洗に洗われている。余計なものの退いた明るいオープンキッチンで、常闇は二杯目のコーヒーをカップに注いだ。
     朝食中に一杯、食後に一杯、二人あわせて計四杯。豆の量はそろそろ手に馴染みつつあるが、彼ら師弟が揃って食後にのんびりできる機会は多くないため、ルーティーンとはまだ呼びづらい。
     
     常闇が二つのカップを手に向かうのは、ホークスの休むソファだ。アームレストは無垢板で、ちょっとしたテーブル代わりにも使える。その定位置に、常闇はソーサーをかちゃりと置いた。
     カップソーサーを「無駄じゃない?」の一言で片付けそうなホークスだが、意外なことにこのカップは彼が選んだものだ。肉厚でぽってりとしており、つるりとした釉薬の下から素朴な土の質感を覗かせる。その風合いを「古良き名喫茶って感じで、君っぽい」とホークスは喜び、カップは今日まで二人に愛用され続けている。探し始めてからお気に入りに決断するまでの所要時間がものの十分程度だった、という点については、実に彼らしいエピソードと言えるだろう。
    1949

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