狭山くん
TRAINING2022-08-31/空閑汐♂デイリー8月分これにて完結!今後はまた気が向いたら遊ぶかもって感じでよろしくお願いします。それはそうと再会すけべはそのうち書く。空閑汐♂デイリー【Memories】31 目の前に居たのは帽子を目深に被るひょろりとした長身の男だった。それでも汐見よりは背が低く、捻りあげるのは簡単で。汐見はその男の腕を捻りあげ、壁へと押し付ける。男が被っていた帽子が床へと落ち、汐見の後ろに立っていたシェルツが小さく声を上げた。
「お嬢、知り合いか」
思わず低く出た声に、自身の苛立ちを自覚する。気を取り直すように幾度か咳払いを漏らした汐見は「お嬢?」と今度は意識して柔らかい声を作った。空閑の真似みたいな声に、小さな息を吐いたシェルツは小さな声で言葉を返す。
「あの、私が担当した患者さんです……この間退院した……」
「そうか。因みにこの男と知人友人恋人もしくはそれに類する関係になってたか?」
2440「お嬢、知り合いか」
思わず低く出た声に、自身の苛立ちを自覚する。気を取り直すように幾度か咳払いを漏らした汐見は「お嬢?」と今度は意識して柔らかい声を作った。空閑の真似みたいな声に、小さな息を吐いたシェルツは小さな声で言葉を返す。
「あの、私が担当した患者さんです……この間退院した……」
「そうか。因みにこの男と知人友人恋人もしくはそれに類する関係になってたか?」
狭山くん
TRAINING2022-08-30/汐見♂と汐見♂に初恋を奪われた女の子の話。年下の女の子を下心一切無しで可愛がる空閑汐♂である。空閑汐♂デイリー【Memories】30「お嬢、他には何か見たいものあるか?」
柔らかな声がハンナ・シェルツに降り注ぐ。幼い頃に一度だけ出逢った初恋の人は、優しげな笑みを浮かべてシェルツを見つめていた。オジョウ、というシェルツからしてみれば異国の響きを持つ言葉でシェルツを呼ぶその人は、彼女の最短最速で始まり終わった初恋を知ってか知らずかこうして時折シェルツを連れ出し積極的に財布になろうとする。
「見たいものあるって言ったら、アマネさんまたすぐ買ってくれちゃうじゃないですか……!」
「まぁな。何か楽しくなってきて」
「その財布はヒロミさんに開けて下さいよ……」
「正直あっちはネタ切れだ。お互いあんまり物欲ないからなぁ」
地球に帰った時ツーリングする為にヒロミの分もバイク買ったら怒られてな。重ねられた汐見の言葉に思わずシェルツは頭を抱えていた。普段散財しない上に、危険手当だの飛行手当だのが加算されてそこそこの高給取りである汐見は堅実な貯蓄をしているらしい。らしいというのは、シェルツに対する財布の紐の緩さを見ていると信じられないので。
1467柔らかな声がハンナ・シェルツに降り注ぐ。幼い頃に一度だけ出逢った初恋の人は、優しげな笑みを浮かべてシェルツを見つめていた。オジョウ、というシェルツからしてみれば異国の響きを持つ言葉でシェルツを呼ぶその人は、彼女の最短最速で始まり終わった初恋を知ってか知らずかこうして時折シェルツを連れ出し積極的に財布になろうとする。
「見たいものあるって言ったら、アマネさんまたすぐ買ってくれちゃうじゃないですか……!」
「まぁな。何か楽しくなってきて」
「その財布はヒロミさんに開けて下さいよ……」
「正直あっちはネタ切れだ。お互いあんまり物欲ないからなぁ」
地球に帰った時ツーリングする為にヒロミの分もバイク買ったら怒られてな。重ねられた汐見の言葉に思わずシェルツは頭を抱えていた。普段散財しない上に、危険手当だの飛行手当だのが加算されてそこそこの高給取りである汐見は堅実な貯蓄をしているらしい。らしいというのは、シェルツに対する財布の紐の緩さを見ていると信じられないので。
Ap53A4
TRAININGCP名がわからん!!!!(クソデカボイス)そんなこんなでひいちゃん×とーいんです。キスまで。一応やる事はヤッてる両片想い。董允は費禕の事めっちゃ好きだけど、自分じゃ釣り合わないと思ってて、費禕は董允の事を無自覚で好きなので董允への気持ちがなんなのかよくわかってないみたいな。そんな感じです。色々とガバなので気にしない人向け。
費禕×董允その1「休昭!」
自分の事をそう呼ぶのは一人しかいない。
董允が振り返れば小走りに駆け寄ってくる費禕がいた。
「ああ、文偉。どうしたのでしょう」
「ちょっとここでは話しにくいな。君の私室にお邪魔してもいいだろうか?」
周囲を見回してから少しばかり申し訳なさそうな表情で耳打ちする。
「ええ、構いませんよ」
何を話そうと言うのだろうか。董允は首を傾げながらも、連れ立って私室へと向かった。
「さて、一体何のお話でしょう」
自身も費禕も椅子に腰を落ち着けてから、切り出す。わざわざ私室でなければならない話など、心当たりはちっとも無かった。
「ああ、実は……」
声を潜めた費禕に、耳をそばだてる。
「今度の北伐に丞相直々に参軍のご指名があったんだ」
2785自分の事をそう呼ぶのは一人しかいない。
董允が振り返れば小走りに駆け寄ってくる費禕がいた。
「ああ、文偉。どうしたのでしょう」
「ちょっとここでは話しにくいな。君の私室にお邪魔してもいいだろうか?」
周囲を見回してから少しばかり申し訳なさそうな表情で耳打ちする。
「ええ、構いませんよ」
何を話そうと言うのだろうか。董允は首を傾げながらも、連れ立って私室へと向かった。
「さて、一体何のお話でしょう」
自身も費禕も椅子に腰を落ち着けてから、切り出す。わざわざ私室でなければならない話など、心当たりはちっとも無かった。
「ああ、実は……」
声を潜めた費禕に、耳をそばだてる。
「今度の北伐に丞相直々に参軍のご指名があったんだ」
muki_rururu
PASTpixivサルベージ/2019初めの絵ちょこちょこアイビスを使い始めた頃 線画はアナログ
今は別に律モブとかモブ律とかにこだわってない(というか挿入方向に付随するジェンダー規範って嫌だな……と思ってる)けどこの時は「律モブ」と思って描いていたので、律モブタグを付けています
たまに霊幻や守エクもいます 40
muki_rururu
PASTpixivサルベージ/2018の絵アナログ落書きのみ ペン、鉛筆など
アップの仕様よく分かんなくて漫画前後したりしてるかも…
注意:四肢切断(血はない)、成人×未成年の事後、未成年に対する性犯罪の軽視(当時の未熟な倫理観)など 40
狭山くん
TRAINING2022-08-29/40代の汐見♂と篠原の話。12年経っても新婚気分でお盛んな空閑汐♂は安心するね。空閑汐♂デイリー【Memories】29 今日は空閑のコーディネートだな。そんな感想と共に、篠原は待ち合わせ場所に現れた汐見を呼ぶようにひらりと片手を上げた。篠原の姿を認めた汐見は、篠原が腰を下ろしている席の向かいへと腰を下ろす。左手首に巻かれた大振りな腕時計へと視線を落としながら「早いな」と呟く汐見に「思ったより早く会社出れたんだよ」と篠原は笑う。
「にしても、本当お前ら揃って見ないな。そんなにすれ違い生活続いてんの?」
正面に座る男とその配偶者である男は、篠原から見れば高校時代からの友人で。ルームメイトでクラスメイトかつ部活も同じと言う関係から、友人という関係を経たかは知らないがすったもんだの末に恋人に――そして、七年程の離別を越えてそこからは穏やかに二人で暮らしている筈だ。
2044「にしても、本当お前ら揃って見ないな。そんなにすれ違い生活続いてんの?」
正面に座る男とその配偶者である男は、篠原から見れば高校時代からの友人で。ルームメイトでクラスメイトかつ部活も同じと言う関係から、友人という関係を経たかは知らないがすったもんだの末に恋人に――そして、七年程の離別を越えてそこからは穏やかに二人で暮らしている筈だ。
狭山くん
TRAINING2022-08-28/ハッピーエバーアフターな空閑汐♂そのいち。空閑汐♂デイリー【Memories】28 硬い二段ベッドが置かれた寮で出逢ってから十四年、互いを一度手放してから七年、約束の場所でもう一度出逢い――思い返すと身悶えしてしまうようなみっともないプロポーズの言葉を叫んでから、一年。今日も汐見の左手には彼自身が空閑へと贈った指輪と対になるそれが光っている。
互いに休暇を取っていたが、緊急の呼び出しだと苦々しげに呻いた空閑は背中に哀愁を漂わせて部屋を出て――一人残された汐見はぐずぐずとベッドの中で時間をやり過ごしていた。とてもじゃはないけれど動ける状態に無かったので。
互いに休みが重なった前夜は、三十に入った今でも大いに盛り上がる。互いに不規則な勤務体系で働いているおかげで、休みが重なる日が少なく――互いに溜まりに溜まった情欲をぶつけ合っていれば気付けば朝になっていたりもする。
1269互いに休暇を取っていたが、緊急の呼び出しだと苦々しげに呻いた空閑は背中に哀愁を漂わせて部屋を出て――一人残された汐見はぐずぐずとベッドの中で時間をやり過ごしていた。とてもじゃはないけれど動ける状態に無かったので。
互いに休みが重なった前夜は、三十に入った今でも大いに盛り上がる。互いに不規則な勤務体系で働いているおかげで、休みが重なる日が少なく――互いに溜まりに溜まった情欲をぶつけ合っていれば気付けば朝になっていたりもする。
Carol
PAST昔描いたパプワくん(PAPUWA)+自由人HERO漫画再掲原作風味ギャグ+ラブコメのつもりですが当時の私の絵柄でハグしたり距離が近いBLCP、男女CP要素あります。基本トリミヤ。トットリ→←ミヤギ/シンタロー←ミヤギ/シンタロー←アラシヤマ/アラ←ウマ子←コージ(シスコン)/バード→サクラ→タイガー/タツ→ヒーロー←パーパ&タイガー(保護者愛)/キリーぷるる等。公開期間未定 20
狭山くん
TRAINING2022-08-27/予告通りのハッピーハッピー!ドタバタしてるくらいが空閑汐♂って感じがしますね。空閑汐♂デイリー【Memories】27 震える声で呼ばれた名前に、それだけで胸が熱くなった。やっぱり、この男の隣に居たいと強く感じたのだ。
「それが! 何で! こうなるんだ!?」
思わず叫びながら走る汐見は床を蹴る。まさか到着直後に会えるとは思わなかったが、顔を合わせた直後に逃げ出されるとも思わなかった。昔から瞬発力は汐見の方が勝っているし、あのよく分からない刃物男を追って走ってきたのであれば流石の持久力も大分削られているだろう。
「止まれ、ヒロミ! っわ!?」
床を蹴り上げ――地球とは異なる六分の一という重力で想定以上に飛んだ体をそのまま空閑に投げ出した汐見は、空閑の腰へと両腕を巻き付け二人揃って床へと倒れ込む。
「すまん、変な所打ってないか!? いや待て、お前が逃げるのが悪いんだろうが!」
1628「それが! 何で! こうなるんだ!?」
思わず叫びながら走る汐見は床を蹴る。まさか到着直後に会えるとは思わなかったが、顔を合わせた直後に逃げ出されるとも思わなかった。昔から瞬発力は汐見の方が勝っているし、あのよく分からない刃物男を追って走ってきたのであれば流石の持久力も大分削られているだろう。
「止まれ、ヒロミ! っわ!?」
床を蹴り上げ――地球とは異なる六分の一という重力で想定以上に飛んだ体をそのまま空閑に投げ出した汐見は、空閑の腰へと両腕を巻き付け二人揃って床へと倒れ込む。
「すまん、変な所打ってないか!? いや待て、お前が逃げるのが悪いんだろうが!」
狭山くん
TRAINING2022-08-26/私はこのシーンを書くために13万字書いてきたんですよ。明日の更新へ続く!(キートン山田声で)
空閑汐♂デイリー【Memories】26 金属製の床を高らかに鳴らしながら駆けていた。リバーシブルのブルゾンを走りながら裏返し羽織り直せば、背中には軌道警察局のロゴがはためいている筈だ。こうする事で少なくとも自分が職務中の警察官で、目の前を走る男を追っている事が周囲にも分かるだろう。空閑はそんな計算と共に走り続ける。瞬発力はあるのだろう目の前の男は、チラとこちらへと視線を向けてその速度を上げた。
「――っ! 待て!」
バディを組んでいる筈のグェーリィンヌは隣には居ない。多分置いてきてしまった。けれど、彼を待っていれば男を見失う。追いつきそうで追いつけない、あと少しで手が届くが――ここで失敗すれば見失うリスクが高い。それだけは避けなければ。
1922「――っ! 待て!」
バディを組んでいる筈のグェーリィンヌは隣には居ない。多分置いてきてしまった。けれど、彼を待っていれば男を見失う。追いつきそうで追いつけない、あと少しで手が届くが――ここで失敗すれば見失うリスクが高い。それだけは避けなければ。
狭山くん
TRAINING2022-08-25/汐見♂と吉嗣先生の話。元々本編軸でも汐見妹の澪ちゃんと吉嗣先生は結婚するのでこちらの世界線でもハッピーウエディング。吉嗣先生も色々エピソード持ってそうですがそれはまた気が向いたら頃にでも。空閑汐♂デイリー【Memories】25「お疲れさん」
「ざっす、ようやっと乗れてこっちも役得すわ」
国際航空宇宙学院日本校の第一格納庫に併設された教官室で、吉嗣から投げられる言葉に紺色のフライトスーツのジッパーを下ろしながら汐見は小さく笑う。その表情はどこか晴れ晴れとしていた。
「タロンをダシにでもしないと来ないだろ、お前」
「バレバレすか」
肩を竦めて笑った汐見に、吉嗣は大きなため息を一つ零していた。ため息ついでにポケットから煙草を取り出したのを目敏く見つけた汐見は言葉を重ねる。
「俺にも一本下さいよ」
「汐見お前も遂にヤニ中毒者の仲間入りか」
「あからさまに嬉しそうにしますね、二十八にもなればそりゃ色々ありますよ。酒も飲めるし煙草も覚えちまう」
1067「ざっす、ようやっと乗れてこっちも役得すわ」
国際航空宇宙学院日本校の第一格納庫に併設された教官室で、吉嗣から投げられる言葉に紺色のフライトスーツのジッパーを下ろしながら汐見は小さく笑う。その表情はどこか晴れ晴れとしていた。
「タロンをダシにでもしないと来ないだろ、お前」
「バレバレすか」
肩を竦めて笑った汐見に、吉嗣は大きなため息を一つ零していた。ため息ついでにポケットから煙草を取り出したのを目敏く見つけた汐見は言葉を重ねる。
「俺にも一本下さいよ」
「汐見お前も遂にヤニ中毒者の仲間入りか」
「あからさまに嬉しそうにしますね、二十八にもなればそりゃ色々ありますよ。酒も飲めるし煙草も覚えちまう」
狭山くん
TRAINING2022-08-24/今回初登場なグェーリィンヌ君は本編に出てくるグェーリィンヌ君のお兄さんなんですけど、本編にも空閑汐♂にも1ミリも関係ない情報だし今後出てくるのかは知らん。フランスSF作家が名前の元ネタな兄弟になってしまった。空閑汐♂デイリー【Memories】24 温厚でお人好し。アルベール・グェーリィンヌが一期上の先輩に抱いていたのはそんな印象だった。
「アル! 手錠、手錠!」
いつもにこやかに笑みを浮かべているアジア系にしては恵まれた体格を持つ先輩は、警邏の為に並び歩いていた筈のグェーリィンヌを置き去りに走り出したと思えばいとも容易く暴漢を背負い投げ声を上げている。
「え、あ! はい!」
慌てて彼の元へと駆けたグェーリィンヌは先輩――空閑宙海へと手錠を渡す。「ありがとね」恐喝の現行犯を確保しているとは思えない程にのんびりとした声でグェーリィンヌの差し出す手錠を受け取った空閑は、先程の見事な背負い投げを決めた人間と同じ人物とは思えないような柔らかな笑みを浮かべて男の手首に手錠を掛けていた。
1778「アル! 手錠、手錠!」
いつもにこやかに笑みを浮かべているアジア系にしては恵まれた体格を持つ先輩は、警邏の為に並び歩いていた筈のグェーリィンヌを置き去りに走り出したと思えばいとも容易く暴漢を背負い投げ声を上げている。
「え、あ! はい!」
慌てて彼の元へと駆けたグェーリィンヌは先輩――空閑宙海へと手錠を渡す。「ありがとね」恐喝の現行犯を確保しているとは思えない程にのんびりとした声でグェーリィンヌの差し出す手錠を受け取った空閑は、先程の見事な背負い投げを決めた人間と同じ人物とは思えないような柔らかな笑みを浮かべて男の手首に手錠を掛けていた。
はるもん🌸
MOURNING藍湛の自制心が豆腐だったというお話。懲罰担当突然死んで、突然生き返った。
聶明玦の事件が終わり、藍忘機との恋が始まり、やっと自分と向き合うゆっくりとした時間が出来た。
満月の夜空を眺めていたら、師姉の死や殺めてしまった数千人の修士たちが頭をよぎる。突如涙が出て、自分の感情が思うように操れなくなる。
もう夷陵老祖は死んだのだ。今更考えたとしても何も変わらない。
自分の機嫌の浮き沈みを操るのは得意中の得意だったはずだ。なのにうまく感情が操れず、理由もわからないまま涙がこぼれていく。
藍忘機が隣にいるのに何故なんだと手の甲で涙を拭いた。
窓辺で空を見上げて目を何度もこする彼に気づき、
藍忘機は腕を広げて後ろから包み込む。魏無羨は彼の手を触り、震えた声で後悔を伝える。
1336聶明玦の事件が終わり、藍忘機との恋が始まり、やっと自分と向き合うゆっくりとした時間が出来た。
満月の夜空を眺めていたら、師姉の死や殺めてしまった数千人の修士たちが頭をよぎる。突如涙が出て、自分の感情が思うように操れなくなる。
もう夷陵老祖は死んだのだ。今更考えたとしても何も変わらない。
自分の機嫌の浮き沈みを操るのは得意中の得意だったはずだ。なのにうまく感情が操れず、理由もわからないまま涙がこぼれていく。
藍忘機が隣にいるのに何故なんだと手の甲で涙を拭いた。
窓辺で空を見上げて目を何度もこする彼に気づき、
藍忘機は腕を広げて後ろから包み込む。魏無羨は彼の手を触り、震えた声で後悔を伝える。
狭山くん
TRAINING2022-08-23/高校時代に空閑とハーレーで走った道を1人で走る汐見♂の話。今週末にはハッピーハッピーです(予言)空閑汐♂デイリー【Memories】23 ひとり荒野をバイクで駆ける。この場所で暮らしはじめて少しした頃に買ったバイクはすっかり馴染んでしまって。汐見は休暇の殆どをこうやってバイクを走らせ過ごしていた。
同じ部隊の先輩は気のいい人間で、同期は学生時代からの仲ではある。けれど、余暇の時間まで過ごしたいとはどうしても思えなくて。大体の誘いを断り結局一人で過ごすことが多いのだ。あまりにも人付き合いが悪くて、自分でも笑ってしまう。そんな自分が平穏に過ごせているのは、ひとえに同期であるフォスターがフォローしてくれているお陰だろう。
――ヒロミに何を言われたのかは知らないが。
フォスターは保護者よろしく汐見を構い、汐見が辟易とするようなあからさまな誘いの防波堤のような位置にその身を置いていて。軍に入ってから筋肉も持久力も学生時代よりも増えたとは言え、体質的なものなのか見た目はどうしても細く軟弱に見える汐見からして見れば羨ましい事この上ない恵まれた体格を持つフォスターはこの場所でグリズリーと呼ばれていた。
1230同じ部隊の先輩は気のいい人間で、同期は学生時代からの仲ではある。けれど、余暇の時間まで過ごしたいとはどうしても思えなくて。大体の誘いを断り結局一人で過ごすことが多いのだ。あまりにも人付き合いが悪くて、自分でも笑ってしまう。そんな自分が平穏に過ごせているのは、ひとえに同期であるフォスターがフォローしてくれているお陰だろう。
――ヒロミに何を言われたのかは知らないが。
フォスターは保護者よろしく汐見を構い、汐見が辟易とするようなあからさまな誘いの防波堤のような位置にその身を置いていて。軍に入ってから筋肉も持久力も学生時代よりも増えたとは言え、体質的なものなのか見た目はどうしても細く軟弱に見える汐見からして見れば羨ましい事この上ない恵まれた体格を持つフォスターはこの場所でグリズリーと呼ばれていた。
狭山くん
TRAINING2022-08-22/空閑と吉嗣先生回。夢を掴める人間なんてひと握りだよねって話。空閑汐♂デイリー【Memories】22「よぉ、久々だな」
「ご無沙汰してます」
久々に訪れた国際航空宇宙学院の飛行教官室で、ひらりと片手を揺らし空閑を迎えたのは吉嗣であった。吉嗣の姿を見つけた空閑も会釈で返す。
「悪いな、卒業生講話やってくれる奴が見つからなくてなぁ」
「っていうか、良いんですか俺で。最終的に航宙士学院中退ですよ?」
何年経っても変わらないジャージ姿で空閑を迎え入れる吉嗣が気安い口調で言葉を紡げば、空閑は眉を下げて彼へと問う。それは依頼を受けた時から、空閑の心に引っかかっていた部分でもあった。
「それで良いんだよ。卒業生講話って基本成功したパターンしか出て来ないけどさ、この学校に入れたからと言って全員が上手く行く訳でもねぇし……そうなった時に立て直せない奴の方が多いんだよ。お前も、分かるだろ?」
1022「ご無沙汰してます」
久々に訪れた国際航空宇宙学院の飛行教官室で、ひらりと片手を揺らし空閑を迎えたのは吉嗣であった。吉嗣の姿を見つけた空閑も会釈で返す。
「悪いな、卒業生講話やってくれる奴が見つからなくてなぁ」
「っていうか、良いんですか俺で。最終的に航宙士学院中退ですよ?」
何年経っても変わらないジャージ姿で空閑を迎え入れる吉嗣が気安い口調で言葉を紡げば、空閑は眉を下げて彼へと問う。それは依頼を受けた時から、空閑の心に引っかかっていた部分でもあった。
「それで良いんだよ。卒業生講話って基本成功したパターンしか出て来ないけどさ、この学校に入れたからと言って全員が上手く行く訳でもねぇし……そうなった時に立て直せない奴の方が多いんだよ。お前も、分かるだろ?」
狭山くん
TRAINING2022-08-19/ヴィン汐♂事後ーーーーーーー!!!!!!!事後だからセーフだと思いたいセーフでしょ。事後のベッドでタバコを吸うのは私の癖のサビでもある。空閑汐♂デイリー【Memories】21 一人で眠れるようになった、あの頃は手にしようともしなかった煙草を覚えた。それは全部、もう一度ひとりで生きていけるようにしようとしたからだ。けれど――あの熱を喪った寒さだけは、ひとりではどうする事も出来なかった。
「ん……、アマネ……?」
「悪い、起こしたか」
出張で地球に来ていると連絡をくれたのはフェルマーだった。久々に飲もうかと、フェルマーが泊まるホテルの一室で買い込んだアルコールを開け気づいた時には泣いていた。
こんな事を言えるのは、フェルマーにだけで。空閑が隣に居ない日々があまりにも色彩に乏しくて、寒く悲しく――寂しいものだなんて吐露する事が出来る相手を、汐見はフェルマーしか知らなかったのだ。
1286「ん……、アマネ……?」
「悪い、起こしたか」
出張で地球に来ていると連絡をくれたのはフェルマーだった。久々に飲もうかと、フェルマーが泊まるホテルの一室で買い込んだアルコールを開け気づいた時には泣いていた。
こんな事を言えるのは、フェルマーにだけで。空閑が隣に居ない日々があまりにも色彩に乏しくて、寒く悲しく――寂しいものだなんて吐露する事が出来る相手を、汐見はフェルマーしか知らなかったのだ。
狭山くん
TRAINING2022-08-20/遂に8月分も20本目!カウントダウンが始まった気もしますが来週まではこんな感じ。空閑汐♂デイリー【Memories】20「アマネの事抱いたから」
酒を飲みながら思い出したようにそう口にしたフェルマーの言葉に、空閑は固まっていた。沈黙に満ちたテーブルの周囲で賑わう人々の喧騒が遠い。その沈黙を打ち破ったのは篠原だった。
「ヴィン! お前なぁ!」
固まったままの空閑を横目に、隣に座るフェルマーの頭を軽く叩き声を荒げた篠原は大きく一つ息を吐く。何を言い出すかと思ったら、あまりにも碌でもない言葉で辟易とする。汐見の考えが解らない訳ではなかったし、汐見がフェルマーに縋ればそうなる予感もしていたが――それを空閑に言うか? 普通。ようやく篠原がオーベルトへの赴任を決め久々に集まろうと顔を合わせたメンバーは篠原と空閑とフェルマーで。高師は先約があるとこの場所には居ない。恐らく告白されたからと適当に付き合っている相手とのデートだろう。高師は高師でどんな心境の変化があったのか、大学卒業後短いスパンで恋人が変わっている。そして、高師が居らず空閑が居る場所でそんな爆弾を落とすフェルマーはきっと確信犯だ。
1230酒を飲みながら思い出したようにそう口にしたフェルマーの言葉に、空閑は固まっていた。沈黙に満ちたテーブルの周囲で賑わう人々の喧騒が遠い。その沈黙を打ち破ったのは篠原だった。
「ヴィン! お前なぁ!」
固まったままの空閑を横目に、隣に座るフェルマーの頭を軽く叩き声を荒げた篠原は大きく一つ息を吐く。何を言い出すかと思ったら、あまりにも碌でもない言葉で辟易とする。汐見の考えが解らない訳ではなかったし、汐見がフェルマーに縋ればそうなる予感もしていたが――それを空閑に言うか? 普通。ようやく篠原がオーベルトへの赴任を決め久々に集まろうと顔を合わせたメンバーは篠原と空閑とフェルマーで。高師は先約があるとこの場所には居ない。恐らく告白されたからと適当に付き合っている相手とのデートだろう。高師は高師でどんな心境の変化があったのか、大学卒業後短いスパンで恋人が変わっている。そして、高師が居らず空閑が居る場所でそんな爆弾を落とすフェルマーはきっと確信犯だ。
キツキトウ
INFO2022/8/20イベント参加と頒布のお知らせ。販売場所はboothさん。
路地裏に佇む骨董屋の様に、「ふとした時」に「寄り道感覚」でお立ち寄りください。
■箱庭堂 : https://kitukitou.booth.pm/
■BOOTH Festival 創作BL回 : https://booth.pm/ja/exhibitions/bf-bl 4
狭山くん
TRAINING2022-08-19/今日は汐見♂不在な汐見♂の話。フォスターは空閑汐♂を4年間見てその後1人になった汐見♂を3年見てるので偶に見てられないと思う事もありそう。空閑汐♂デイリー【Memories】19 軍に入って二年、五年間同じ学び舎で暮らした同期をイーグルと呼ぶのにも慣れた頃。酒場ではその男の話題で盛り上がっていた。
「アイツ、またモーション掛けられてたんだってよ」
「今度は誰だ?」
「整備のクラウディア! 俺も狙ってたのになぁ」
「お前とイーグルを比べたらイーグルに行くだろそりゃ」
先輩達の話を聞き流しながら、この酒場に居ない男の事を思い出す。大胆かつ繊細な操縦はかつてのまま、振る舞いはどこか機械的になってしまった男。空閑が居なくなったというそれだけで、彼はそれまで持っていた筈の人間味を削ぎ落としていった事をこの場所でフォスターだけが知っている。
この部隊に配属された頃にはもう、殆ど笑うこともなくなっていた汐見はしかし男女問わず周囲の人間を虜にしていた。着痩せをするタイプなのだろう、細身の長身は脱げば引き締まった筋肉を纏い、その整った相貌も歳より若く見えるものの精悍な青年らしさを湛えていて。
1145「アイツ、またモーション掛けられてたんだってよ」
「今度は誰だ?」
「整備のクラウディア! 俺も狙ってたのになぁ」
「お前とイーグルを比べたらイーグルに行くだろそりゃ」
先輩達の話を聞き流しながら、この酒場に居ない男の事を思い出す。大胆かつ繊細な操縦はかつてのまま、振る舞いはどこか機械的になってしまった男。空閑が居なくなったというそれだけで、彼はそれまで持っていた筈の人間味を削ぎ落としていった事をこの場所でフォスターだけが知っている。
この部隊に配属された頃にはもう、殆ど笑うこともなくなっていた汐見はしかし男女問わず周囲の人間を虜にしていた。着痩せをするタイプなのだろう、細身の長身は脱げば引き締まった筋肉を纏い、その整った相貌も歳より若く見えるものの精悍な青年らしさを湛えていて。
狭山くん
TRAINING2022-08-18/本日は空閑編!ようこそオーベルト!って言いながらもまぁ不穏。ヴィンは割と汐見♂モンペなとこあるよね。空閑汐♂デイリー【Memories】18 かつて目指したものにはなれなかった、けれどもかつて目指した場所には辿り着く事が出来た。一度は喪ったと思っていた全ては、まだ自分の中に残されていて――喪失感に打ちのめされそうになる夜に抗い、空閑は約束の場所へと降り立つ事が出来たのだ。
「ようこそ、オーベルトへ」
静かの海に位置するオーベルトの玄関口であるオーベルト宇宙港で空閑を迎え入れたのは、いち早くオーベルト勤務を拝命し既にこの地で働きはじめていたフェルマーで。整った相貌にお手本みたいな笑みを浮かべて空閑を出迎えた彼に、空閑は小さく笑みを浮かべて頷いた。
「――で、アマネの事振ったんだって?」
宇宙港から少し進んだ場所にあるノースエリアのダイニングバーで、フェルマーは不機嫌そうな表情を浮かべてビールを呷る。刺すように繰り出されたフェルマーからの問いに、空閑は困ったように笑みを浮かべながらも頷いて。
1705「ようこそ、オーベルトへ」
静かの海に位置するオーベルトの玄関口であるオーベルト宇宙港で空閑を迎え入れたのは、いち早くオーベルト勤務を拝命し既にこの地で働きはじめていたフェルマーで。整った相貌にお手本みたいな笑みを浮かべて空閑を出迎えた彼に、空閑は小さく笑みを浮かべて頷いた。
「――で、アマネの事振ったんだって?」
宇宙港から少し進んだ場所にあるノースエリアのダイニングバーで、フェルマーは不機嫌そうな表情を浮かべてビールを呷る。刺すように繰り出されたフェルマーからの問いに、空閑は困ったように笑みを浮かべながらも頷いて。
狭山くん
TRAINING2022-08-17/本日の空閑汐♂デイリーは汐見♂編。これから空閑と汐見♂のそれぞれの1年づつを上げていきます。空閑と汐見♂だと別れてダメージ強いのは汐見♂の方だよなぁ。空閑汐♂デイリー【Memories】17 荒涼とした赤い大地を見つめ、密かに嘆息する。そんな汐見の態度を横目で見ていたフォスターは困ったように笑いながらも、彼の背中を景気付けとでも言うように叩いていた。
「今日も一日、働くぞ」
「解ってるさ、今日も一日墓場で飛んでやる」
航宙士学院を主席で卒業した汐見は、フォスターと共に軍人としての道を進み始めていた。新兵教育を修了し、出された辞令は二人揃ってモハーヴェ宇宙港勤務。近くには飛行機の墓場と呼ばれる場所があるその地では、地球と軌道ステーションを結ぶスペースプレーンが飛んでいた。
在学中に各種ジェット戦闘機の飛行ライセンスを取得し、航宙徽章を持つ二人は殆どが航宙士学院卒業生で構成される部隊へと配属されたのだ。
1313「今日も一日、働くぞ」
「解ってるさ、今日も一日墓場で飛んでやる」
航宙士学院を主席で卒業した汐見は、フォスターと共に軍人としての道を進み始めていた。新兵教育を修了し、出された辞令は二人揃ってモハーヴェ宇宙港勤務。近くには飛行機の墓場と呼ばれる場所があるその地では、地球と軌道ステーションを結ぶスペースプレーンが飛んでいた。
在学中に各種ジェット戦闘機の飛行ライセンスを取得し、航宙徽章を持つ二人は殆どが航宙士学院卒業生で構成される部隊へと配属されたのだ。
狭山くん
TRAINING2022-08-16/今日の空閑汐♂デイリーは空閑の再起動編。夢を絶たれて全てを失った気分になっても、夢の為に努力したものは決して消えることはないんですよね。空閑汐♂デイリー【Memories】16 手を伸ばせば後少しで届きそうだった夢が、指先から零れていったあの日から一年が経った。傷跡こそ残ったが、後遺症と言えるような不具合もなく――医者からもう大丈夫だと言われた日に「鉄棒で大回転も出来ますか?」と訊いてみた空閑へ、医者は笑って頷くという太鼓判でもって放免されていた。
「空閑、明日の授業俺の代わりにやってもらって良いか?」
「一年の航空機概論でしたっけ? 良いですよ」
そうして空閑は、古巣でもある国際航空宇宙学院日本校の高等部へと戻り吉嗣のアシスタントとして日銭を得ているのだ。
空閑が軌道ステーションの医療センターから地球へと移る入院先に決めたのは、日本校に併設された医学部附属病院で。そこで空閑を迎えてくれたのが、吉嗣だった。
1286「空閑、明日の授業俺の代わりにやってもらって良いか?」
「一年の航空機概論でしたっけ? 良いですよ」
そうして空閑は、古巣でもある国際航空宇宙学院日本校の高等部へと戻り吉嗣のアシスタントとして日銭を得ているのだ。
空閑が軌道ステーションの医療センターから地球へと移る入院先に決めたのは、日本校に併設された医学部附属病院で。そこで空閑を迎えてくれたのが、吉嗣だった。
狭山くん
TRAINING2022-08-15/今日の空閑汐♂デイリーは汐見♂の卒業話である。夢を叶えたのにどうにも気持ちが晴れない汐見♂の話。逢えない時間が愛育てる……のさ……ッ!空閑汐♂デイリー【Memories】15 渡されたのは、精巧な銀細工のブローチだった。八年半もの間、この徽章を求めてきたのは嘘ではない。手のひらの上で真新しい光を放つ細い銀の線で構成された楕円形の徽章を見つめ、今この場に居ない男の事を想う。
「ミスターシオミ、受領のサインを」
流石に重要な受領確認は未だに紙で行われるらしい。教員が差し出したバインダーとペンを受け取って、少し考えてから肩口のペン差しに入れていたボールペンを抜き出す。
「良いものを持ってるな」
「これならずっと使えると思って、高校卒業の記念に買ったんですよ」
汐見の言葉に教員は鷹揚に頷き、サラサラと書かれていくサインを見つめていた。それはかつて同じ場所を目指していた愛しい男と揃えで買った白銀色に輝くボールペンだった。
1084「ミスターシオミ、受領のサインを」
流石に重要な受領確認は未だに紙で行われるらしい。教員が差し出したバインダーとペンを受け取って、少し考えてから肩口のペン差しに入れていたボールペンを抜き出す。
「良いものを持ってるな」
「これならずっと使えると思って、高校卒業の記念に買ったんですよ」
汐見の言葉に教員は鷹揚に頷き、サラサラと書かれていくサインを見つめていた。それはかつて同じ場所を目指していた愛しい男と揃えで買った白銀色に輝くボールペンだった。