柊木あめ
REHABILI本編『Lost In Blue』ありきの短編になりますミシェル視点の追憶。突発的にキールドとミチェの話が書きたくなったのでリハビリがてら書きました。
【歩幅が違う】 貴方が作ってくれた長袖の白いワンピースの肌触りも、顔を隠す為のヴェールを留める紫水晶と銀の髪飾りの美しさも、静かな夜に響く波の音も、踏みしめたさらやかな砂の感触を、まだはっきりと憶えている。
月光を反射して煌めく海面に、遠く浮かぶび手招く無数の黒い影。まるであたしを呼んでいるようだったことも、まるでつい最近の出来事かのように、憶えている。
「おい、足元に気を付けろ」
貴方は不安そうな声音で「波に攫われたらどうするんだ」と言葉を続けた。語尾に微かな濁りのある、夜の漣のように落ち着いた声音は心地良く、少しだけ意地悪をしたくなる。
「大丈夫よ。だって、あたしは――」
立ち止まり海を見た。昼間と違い、深い深い暗闇が遠く遠く、どこまでも果てしなく続いている。その水面はさながら満天の星空だ。
904月光を反射して煌めく海面に、遠く浮かぶび手招く無数の黒い影。まるであたしを呼んでいるようだったことも、まるでつい最近の出来事かのように、憶えている。
「おい、足元に気を付けろ」
貴方は不安そうな声音で「波に攫われたらどうするんだ」と言葉を続けた。語尾に微かな濁りのある、夜の漣のように落ち着いた声音は心地良く、少しだけ意地悪をしたくなる。
「大丈夫よ。だって、あたしは――」
立ち止まり海を見た。昼間と違い、深い深い暗闇が遠く遠く、どこまでも果てしなく続いている。その水面はさながら満天の星空だ。
千瞑(senbei)
DOODLE突如降ってきたやつ一次小説
迷宮ファンタジー。トカゲ族男性と人間(?)の女の恋愛物語人間は残酷だ。同族でも平気で仲間を裏切る。
ギルドからの依頼の迷宮探索。地下5階への階段の近くで叫び声がした。
「早くポータルへ!逃げろ!」
ガシャガシャする音の中
この階で命からがら逃げるとなれば、中級の冒険者くらいか…。
「そんな…4人しか入れない!」
悲痛な叫び声。人数制限ありの帰還ポータルだったようだ。迷宮の外まで楽に移動できるが、帰還ポータルは人数制限がある。
「お前ら先に行けここはオレとリアが引き受ける」
「そんな!」
「いいから…!リアの障壁があれば次のまでなんとか食い止められる!行け!!」
2人が残るようだ。仲間のために囮になれるほどの実力なんだろう。
実力の様子を見て助太刀するつもりだったが、移動ポータルのある方の角を曲がった俺が目にしたものは…
892ギルドからの依頼の迷宮探索。地下5階への階段の近くで叫び声がした。
「早くポータルへ!逃げろ!」
ガシャガシャする音の中
この階で命からがら逃げるとなれば、中級の冒険者くらいか…。
「そんな…4人しか入れない!」
悲痛な叫び声。人数制限ありの帰還ポータルだったようだ。迷宮の外まで楽に移動できるが、帰還ポータルは人数制限がある。
「お前ら先に行けここはオレとリアが引き受ける」
「そんな!」
「いいから…!リアの障壁があれば次のまでなんとか食い止められる!行け!!」
2人が残るようだ。仲間のために囮になれるほどの実力なんだろう。
実力の様子を見て助太刀するつもりだったが、移動ポータルのある方の角を曲がった俺が目にしたものは…
hamayuu_815
DONE天の末裔1———遠い未来、人類によって繰り返される環境破壊のために、世界は荒れ果てた。
異常気象により猛威を振るう自然災害の前に人類はなすすべもなく土地を追われ、居住地をめぐっての戦乱の果てに連綿と受け継がれてきた科学技術の多くを失った。数を急激に減らしていきながら、生き残った人類はわずかな自然を頼りに細々とその生を繋いでいた。
しかし、あとは衰退するばかりのその運命に異を唱えた者たちがいた。
彼らは再びの人類の繁栄を夢見て、新たな帝国を立ち上げた。太古の昔、全知全能の神を育んだとされる獣の名にちなみ〈アマルテイア〉と名付けられた帝国は、諦念を抱く人々の希望の光となっていった。
しかし、誰もが期待に胸を膨らませた光の帝国は一夜にして滅び去った。
5893異常気象により猛威を振るう自然災害の前に人類はなすすべもなく土地を追われ、居住地をめぐっての戦乱の果てに連綿と受け継がれてきた科学技術の多くを失った。数を急激に減らしていきながら、生き残った人類はわずかな自然を頼りに細々とその生を繋いでいた。
しかし、あとは衰退するばかりのその運命に異を唱えた者たちがいた。
彼らは再びの人類の繁栄を夢見て、新たな帝国を立ち上げた。太古の昔、全知全能の神を育んだとされる獣の名にちなみ〈アマルテイア〉と名付けられた帝国は、諦念を抱く人々の希望の光となっていった。
しかし、誰もが期待に胸を膨らませた光の帝国は一夜にして滅び去った。
hamayuu_815
DONEベッターの1章もこちらに移しました。縦書きと横書きどっちが読みやすいか実験中。
天の末裔2※更新予定2章 夏の哀歌
青い空にくっきりと雲が映える、よい天気だった。洗濯ものがはためく路地を九歳のラファウは息せき切って工房へ駆けていた。
父ヤセクは腕の確かな職人で、同じ裏街に住む職人たちと組を作り、工房を共有しながら合金の細工を生業としていた。
父の手によって固い金属が飴のように伸ばされ形を変えていくのを見るのは、魔法のようで、幼い妹や弟たちと遊んでいるより、よっぽど面白かった。危ないから近づくなと言われながらも父に貼り付いて作業を眺めていると、あっという間に日が暮れてしまうのだ。
その日もいつものように工房の裏口から入って、作業場に忍びこもうとした。ふと、知らない声が聞こえてきて戸を開けようとした手を止めた。
6923青い空にくっきりと雲が映える、よい天気だった。洗濯ものがはためく路地を九歳のラファウは息せき切って工房へ駆けていた。
父ヤセクは腕の確かな職人で、同じ裏街に住む職人たちと組を作り、工房を共有しながら合金の細工を生業としていた。
父の手によって固い金属が飴のように伸ばされ形を変えていくのを見るのは、魔法のようで、幼い妹や弟たちと遊んでいるより、よっぽど面白かった。危ないから近づくなと言われながらも父に貼り付いて作業を眺めていると、あっという間に日が暮れてしまうのだ。
その日もいつものように工房の裏口から入って、作業場に忍びこもうとした。ふと、知らない声が聞こえてきて戸を開けようとした手を止めた。
hccmono
DONE地上(ミッドランドスクエア)にビチェリン飲みに行くだけ。クリスマスのマシロちゃんとアーテル 一年九ヶ月振りの地上。あちこちに薄らと牡丹雪が積もっている。それを目にしてようやく今の季節が冬だと思い知る。
僕が生まれ育った土地は雪が多い地域だった。この街とは景色や雰囲気が大きく違う。この街は日没が早くなっても景色が明るい。
けれど、生まれ育った土地と異なる場所に在っても冬は寒く、寒さは淋しさによく似ている。
「マシロ。手を繋ぐといい」
差し出される掌は革の手袋で覆われている。硬くもないし冷たくもない。
今のアーテルは手袋だけでなくチェスターコートを羽織りハイネックのセーターにスキニーパンツ、足元はショートブーツを履いている。傍目には街を行き交う人間と変わりない。
耳元にイヤーマフまで付けているから彼が自律型戦闘人形だと判る人間はいない。いるわけがない。いるとしたら空の関係者だけだ。
2385僕が生まれ育った土地は雪が多い地域だった。この街とは景色や雰囲気が大きく違う。この街は日没が早くなっても景色が明るい。
けれど、生まれ育った土地と異なる場所に在っても冬は寒く、寒さは淋しさによく似ている。
「マシロ。手を繋ぐといい」
差し出される掌は革の手袋で覆われている。硬くもないし冷たくもない。
今のアーテルは手袋だけでなくチェスターコートを羽織りハイネックのセーターにスキニーパンツ、足元はショートブーツを履いている。傍目には街を行き交う人間と変わりない。
耳元にイヤーマフまで付けているから彼が自律型戦闘人形だと判る人間はいない。いるわけがない。いるとしたら空の関係者だけだ。
柑屋 丸
PAST2018年にnoteに載せた『吟風弄月』番外編小説(二次創作じゃなくてオリジナル)をポイポイ。食人要素あり、R15-Gくらいと思っています。注意して下さい。文章下手なんですけど直さずそのままです。 4002yumenopolis
DONE一次創作作品『ユメノポリス』の小説第4話です。小話なので短いです。
#04旋律『無題』未完成曲 二階からピアノの音が聞こえる。いつの間にか、うとうとしてしまったようだ。
レムは寝転がっていたソファから起き上がると、床に跳び下り大きく伸びをした。一階の広間を出て螺旋階段を上り寝室へと向かう。途中、棚の一つを寝床にしてイビキをかきながら眠っているリベルを横目に、トントンと軽快に駆け上がっていく。二階の廊下に出ると向かって左の扉が少しだけ開いていて中から音が漏れている。
扉の隙間から覗くと、窓際のグランドピアノの椅子に腰掛け、鍵盤に向かう主の姿があった。開け放たれた窓から柔らかな風が吹き込み、カーテンを揺らしながら寝室を通り抜けていく。爽やで優々と鍵盤を弾くその横顔は、とても穏やかでリラックスしているように見える。周辺の空気までも朗らかに感じさせていた。
803レムは寝転がっていたソファから起き上がると、床に跳び下り大きく伸びをした。一階の広間を出て螺旋階段を上り寝室へと向かう。途中、棚の一つを寝床にしてイビキをかきながら眠っているリベルを横目に、トントンと軽快に駆け上がっていく。二階の廊下に出ると向かって左の扉が少しだけ開いていて中から音が漏れている。
扉の隙間から覗くと、窓際のグランドピアノの椅子に腰掛け、鍵盤に向かう主の姿があった。開け放たれた窓から柔らかな風が吹き込み、カーテンを揺らしながら寝室を通り抜けていく。爽やで優々と鍵盤を弾くその横顔は、とても穏やかでリラックスしているように見える。周辺の空気までも朗らかに感じさせていた。
yumenopolis
DONE一次創作作品『ユメノポリス』の小説第3話です。#03旋律『トロイメライ』子供の情景 シュラーを潜り抜け、その夢に一歩足を踏み込むと乾いた土の感触がした。
前方は暗く辺りは静まり返っている。目を凝らすと広大な平地が広がっていた。遠くはぼやけて良く見えない。ということは、あの遠方は夢主の意識が及んでいない夢の端、そこは重要ではないということだ。暗いがはっきりと地形が形成されているこの周辺は夢主にとって何か意味のある場所ということになる。しかし、足元は枯れた草木が生えているだけ。良く見ると人の手で慣らした跡が残っている。ここは元々田畑だったのだろうか。
誰の姿もない。夢魔の気配すらこの辺りには感じられなかった。
「…違うな。水晶が見せた場所はここじゃない。もっと──」
ふと、背を押すように背後からふわりと風がひとつ吹き、キラキラと何かが舞って頬を掠めていった。咄嗟に手のひらでその何かを掴み取る。
13141前方は暗く辺りは静まり返っている。目を凝らすと広大な平地が広がっていた。遠くはぼやけて良く見えない。ということは、あの遠方は夢主の意識が及んでいない夢の端、そこは重要ではないということだ。暗いがはっきりと地形が形成されているこの周辺は夢主にとって何か意味のある場所ということになる。しかし、足元は枯れた草木が生えているだけ。良く見ると人の手で慣らした跡が残っている。ここは元々田畑だったのだろうか。
誰の姿もない。夢魔の気配すらこの辺りには感じられなかった。
「…違うな。水晶が見せた場所はここじゃない。もっと──」
ふと、背を押すように背後からふわりと風がひとつ吹き、キラキラと何かが舞って頬を掠めていった。咄嗟に手のひらでその何かを掴み取る。
千瞑(senbei)
DOODLE一次創作。ファンタジーもの。一次創作メモ赤の一族の当主ゴウカでないと意味がないのだ。あんな最低なやつほっとけよとレンジは言うが。ゴウカは最低なんかじゃないよ。当主としてあなたやみんなを守ってるんだよ。それをみんな知らないだけ。心配させないように隠してる。当主になりたいならそれを知っておかなきゃ。ゴウカは責任の塊だから。おそらく代替わりのときに初めて話すのだろう。自分がそうだったように。そんなのごめんだ。来て。ゴウカがなぜああなったかを知りたいならね。アンタ大丈夫なのか?白の一族だろ?私には効かない。浄化の風をまとっているわたしに集まってきた小さな魑魅魍魎が消える。
また来たよ。帰れお前のできることはもうないそいつと幸せになれ。できないよ。この子がレンジが次の継承者なんでしょう?だったらどうした。そいつはお前が好きだろちょうどいいじゃないか祝言をさっさと上げろ。そんなの嬉しくない。1人で全部背負われて全然嬉しくない。そいつの嫁になれ。わたしはあなたがいい。俺は役立たずだ。そいつの代にはもう力なんてなくなる。それでもいい。話して。次の継承者に。何も知らないまま継承させないで。第二のあなたなんか見たくない。やめろ。おいお前らこいつを連れて行け。ここはお前には危険だ。当主命令だ従え。惚れた女が身体張ってんのに逃げるなんてありえねえ。2本の炎の竜巻。出番だよ。2人でこの壁を壊して。やめろ。お前も一緒に狙われるんだぞ。それでいいよ。今は私を理解してくれる人もいるし全部よりもあなたとはんぶんこがいい。やめろ、嫌だよ。だって私はあなたが大好きだからやめてあげない。もう私を払いのける力も残ってないゴウカに口づけをした。
2557また来たよ。帰れお前のできることはもうないそいつと幸せになれ。できないよ。この子がレンジが次の継承者なんでしょう?だったらどうした。そいつはお前が好きだろちょうどいいじゃないか祝言をさっさと上げろ。そんなの嬉しくない。1人で全部背負われて全然嬉しくない。そいつの嫁になれ。わたしはあなたがいい。俺は役立たずだ。そいつの代にはもう力なんてなくなる。それでもいい。話して。次の継承者に。何も知らないまま継承させないで。第二のあなたなんか見たくない。やめろ。おいお前らこいつを連れて行け。ここはお前には危険だ。当主命令だ従え。惚れた女が身体張ってんのに逃げるなんてありえねえ。2本の炎の竜巻。出番だよ。2人でこの壁を壊して。やめろ。お前も一緒に狙われるんだぞ。それでいいよ。今は私を理解してくれる人もいるし全部よりもあなたとはんぶんこがいい。やめろ、嫌だよ。だって私はあなたが大好きだからやめてあげない。もう私を払いのける力も残ってないゴウカに口づけをした。