花月ゆき
DONE両片想いの赤安。嗅覚が鋭くなったれいくんと、禁煙するあかいさん。第6回お題「自覚」 桜の花が散りはじめ、地面が薄桃で彩られる頃。
現場で赤井と顔を合わせるなり、降谷は開口一番にこう言ってきた。
「ここに来る直前、煙草を吸ってきたでしょう」
降谷に会う前、あるいは一緒に行動している最中にも煙草を吸うことは頻繁にあるのだが、なぜか今日に限って降谷は言及してきた。
煙草の銘柄も変えていないので匂いも変わっていないはずだが、いつになく降谷は顔を顰めている。そこまでひどく匂うのだろうか。
「ああ。……匂うか?」
問うと、降谷は軽く鼻をつまみながら言った。
「先日、組織の薬品庫に行ったあたりからなんだか変なんですよね。匂いに敏感になったというか……」
組織の薬品庫に行ったのは、一週間ほど前のことだ。ただ匂いに過敏になっているだけなのか。それとも、降谷の身体に何か異変でも起きているのか。
2808現場で赤井と顔を合わせるなり、降谷は開口一番にこう言ってきた。
「ここに来る直前、煙草を吸ってきたでしょう」
降谷に会う前、あるいは一緒に行動している最中にも煙草を吸うことは頻繁にあるのだが、なぜか今日に限って降谷は言及してきた。
煙草の銘柄も変えていないので匂いも変わっていないはずだが、いつになく降谷は顔を顰めている。そこまでひどく匂うのだろうか。
「ああ。……匂うか?」
問うと、降谷は軽く鼻をつまみながら言った。
「先日、組織の薬品庫に行ったあたりからなんだか変なんですよね。匂いに敏感になったというか……」
組織の薬品庫に行ったのは、一週間ほど前のことだ。ただ匂いに過敏になっているだけなのか。それとも、降谷の身体に何か異変でも起きているのか。
花月ゆき
DONE魔法が使えるようになったあかいさん。恋人同士の赤安。
第5回お題「エイプリルフール」 四月一日、朝。
警察庁の駐車場に愛車を停めてすぐ、目の前に赤井がいることに降谷は気がついた。車を停める前に赤井の存在に気づいていなかったので、降谷は少し驚く。
今日は警察庁でFBIのメンバーと会議をすることになっているので、赤井がここにいるのは不思議なことではない。しかし、いつもの赤井の雰囲気とどこか違うような気がした。
愛車から降りて、降谷は赤井の前に立つ。会議室ではなく駐車場で自分を待っていたということは、自分だけに何か伝えたいことがあるのかもしれない。
「おはよう」
「お、おはようございます……」
外の空気は春らしい暖かさと心地よさがある。道沿いにある桜の木は、薄桃色の花びらを散らして、周囲を優しい色で包んでいた。
2586警察庁の駐車場に愛車を停めてすぐ、目の前に赤井がいることに降谷は気がついた。車を停める前に赤井の存在に気づいていなかったので、降谷は少し驚く。
今日は警察庁でFBIのメンバーと会議をすることになっているので、赤井がここにいるのは不思議なことではない。しかし、いつもの赤井の雰囲気とどこか違うような気がした。
愛車から降りて、降谷は赤井の前に立つ。会議室ではなく駐車場で自分を待っていたということは、自分だけに何か伝えたいことがあるのかもしれない。
「おはよう」
「お、おはようございます……」
外の空気は春らしい暖かさと心地よさがある。道沿いにある桜の木は、薄桃色の花びらを散らして、周囲を優しい色で包んでいた。
kuru
TRAININGはー……ちょっと歳食って眼鏡かけたアカイを摂取したい本読んでるところをれーくんに取られてくれ
これがあるとあなたは本ばかりみてるからって取り上げられてくれ
と呟いたら43人が同意してくれたので書いたよ
PW赤安年齢 5
花月ゆき
DONE「もし君が俺を受け入れてくれるなら……来週、二十二日の夜十時、一年前に君と一緒に見た桜の木の下へ来てほしい」鈍いれいくん。赤→安っぽい話。ハッピーエンドです。
第4回お題「桜」 一年前の春。
桜の木の下で笑う彼に、恋をした。いや、正確には“恋を自覚した”というべきか。
時は、組織の主要メンバーを逮捕した日の夜に遡る。
現場から少し離れた駐車場の片隅には、大きな桜の木があった。駐車場には救急車や消防車などの緊急車両や警察車両などがひしめき合っていて、けっして情緒ある雰囲気とはいえない。
しかし、桜の木の下へ来てみれば、そこは別世界だった。
頭上から降り注ぐ月の光がこちらを照らしていて、薄桃色の花びらがひらひらと宙を舞っているのが見える。しばらく散ってゆく花びらをぼんやりと眺めていると、ふと、よく知る人物の気配を感じて、赤井は視線を移した。
そこには、怪我の治療を終えた降谷がいた。彼は緑茶のペットボトルを二本持っている。今、彼がここにいるということは、腕の怪我は重症ではなかったのだろう。彼の腕に巻かれた包帯を痛々しく思いながらも、赤井は安堵する。
3947桜の木の下で笑う彼に、恋をした。いや、正確には“恋を自覚した”というべきか。
時は、組織の主要メンバーを逮捕した日の夜に遡る。
現場から少し離れた駐車場の片隅には、大きな桜の木があった。駐車場には救急車や消防車などの緊急車両や警察車両などがひしめき合っていて、けっして情緒ある雰囲気とはいえない。
しかし、桜の木の下へ来てみれば、そこは別世界だった。
頭上から降り注ぐ月の光がこちらを照らしていて、薄桃色の花びらがひらひらと宙を舞っているのが見える。しばらく散ってゆく花びらをぼんやりと眺めていると、ふと、よく知る人物の気配を感じて、赤井は視線を移した。
そこには、怪我の治療を終えた降谷がいた。彼は緑茶のペットボトルを二本持っている。今、彼がここにいるということは、腕の怪我は重症ではなかったのだろう。彼の腕に巻かれた包帯を痛々しく思いながらも、赤井は安堵する。
m_w0597
TRAININGちゃんと服着る予定です!線画です裸描いたつもりじゃないです🥹
なんの服着せようかまよってますが
下書きの耳からして一択でしょうか、、、👯
最初はアクスタ衣装とかにしようと
してたはずなのになぜでしょう、、、
スパダリしゅういちさんは
前提としてありますが
定期で意地悪しゅういちさんも
ありではないでしょうか
花月ゆき
DONE組織壊滅作戦後、とあるウイスキーを一緒に飲もうと約束していた恋人同士の赤安。しかし作戦後、二人は別れることになり…※モブキャラ出ます ※ハッピーエンドです
第3回お題「ウイスキー」 組織壊滅作戦前の最後の休日。赤井に呼ばれて降谷が訪れた場所は、ホテルのスイートルームだった。
赤井とはいわゆる恋人同士である。しかし、周囲に明かすことのできない秘密の関係だった。
恋人として接することができるのは、ふたりきりのときだけ。
次にふたりきりで過ごせるのは、いつになるかわからない。だからこそ、赤井はこうして特別な部屋を用意してくれたのだろう。
降谷は緊張しながら部屋へと入った。ふと、部屋の中心にあるテーブルに、視線が止まる。テーブルの上にはウイスキーのボトルが一本、佇んでいた。
これは? と目で問いかけると、赤井は微笑んで言う。
「作戦を終えたら、君と一緒に飲もうと思ってね。取り寄せたんだよ」
3906赤井とはいわゆる恋人同士である。しかし、周囲に明かすことのできない秘密の関係だった。
恋人として接することができるのは、ふたりきりのときだけ。
次にふたりきりで過ごせるのは、いつになるかわからない。だからこそ、赤井はこうして特別な部屋を用意してくれたのだろう。
降谷は緊張しながら部屋へと入った。ふと、部屋の中心にあるテーブルに、視線が止まる。テーブルの上にはウイスキーのボトルが一本、佇んでいた。
これは? と目で問いかけると、赤井は微笑んで言う。
「作戦を終えたら、君と一緒に飲もうと思ってね。取り寄せたんだよ」
花月ゆき
DONE両片想い状態の赤安。n番煎じネタです。薔薇の花99本=永遠の愛。
一口サイズのチョコ=チ〇ルチョコです。
第2回お題「ホワイトデー」 三月十四日、金曜日。
人のいない休憩室で、降谷は自販機で買ったホットカフェオレをこくこくと静かに飲んでいた。
ふと、壁にかけられているカレンダーに目が留まる。今日の日付には、「ホワイトデー」の文字。いったい誰が書き足したのか、その文字は♡マークで囲まれている。きっと、ホワイトデーを心待ちにしている人間が描いたのだろう。チョコを贈った相手からどんな返事があるのか。♡を描いたその人物は、今頃胸を高鳴らせているに違いない。
降谷は少し羨ましくなった。
ホワイトデーは、自分にとってはまったく縁のない日だ。まず、バレンタインデーに片想いの相手にチョコを贈っていない。いや、正確には、“それとわかる形で”チョコを贈っていないというべきか。
2786人のいない休憩室で、降谷は自販機で買ったホットカフェオレをこくこくと静かに飲んでいた。
ふと、壁にかけられているカレンダーに目が留まる。今日の日付には、「ホワイトデー」の文字。いったい誰が書き足したのか、その文字は♡マークで囲まれている。きっと、ホワイトデーを心待ちにしている人間が描いたのだろう。チョコを贈った相手からどんな返事があるのか。♡を描いたその人物は、今頃胸を高鳴らせているに違いない。
降谷は少し羨ましくなった。
ホワイトデーは、自分にとってはまったく縁のない日だ。まず、バレンタインデーに片想いの相手にチョコを贈っていない。いや、正確には、“それとわかる形で”チョコを贈っていないというべきか。
m_w0597
DOODLE初めて企画?に参加させて頂いたんですがR指定の基準が心配すぎて載せれなかった
2枚目をこちらに、、、
悲しいことにデータが消えたのでほぼ下書きですが
正直一枚目のれいくんはこっちの方が好みです☺️
下書きの方がよく見えるのあるあるですよね笑
お話描く人って凄いなと身にしみました、、、
難しすぎる、、、力尽きました🔥 2
花月ゆき
DONE赤安のファーストキス(?)のお話。第1回お題「困った子」 降谷と交際をはじめて二週間になる。
恋人同士になった日から今日まで、赤井が降谷と二人きりになれる時間はまったくといっていいほどなかった。仮眠をとるとき以外は、常に職場の仲間、あるいは各国の捜査機関のメンバーと一緒だったからだ。
そんな慌ただしい日々の最中。プライベートな場所ではないが、警察庁の会議室で、偶然にも赤井は降谷と二人きりになることができた。会議を終えたあと、降谷と二人で今後の打ち合わせをしている間、会議室にいた人間がすべて持ち場に戻って行ったからだ。
窓辺からは夕陽が差し込み、降谷の美しい髪をきらきらと反射させている。思わずその髪に手を伸ばすと、降谷は子どものようにあどけない表情で、「どうかしたんですか?」と問うてきた。
1168恋人同士になった日から今日まで、赤井が降谷と二人きりになれる時間はまったくといっていいほどなかった。仮眠をとるとき以外は、常に職場の仲間、あるいは各国の捜査機関のメンバーと一緒だったからだ。
そんな慌ただしい日々の最中。プライベートな場所ではないが、警察庁の会議室で、偶然にも赤井は降谷と二人きりになることができた。会議を終えたあと、降谷と二人で今後の打ち合わせをしている間、会議室にいた人間がすべて持ち場に戻って行ったからだ。
窓辺からは夕陽が差し込み、降谷の美しい髪をきらきらと反射させている。思わずその髪に手を伸ばすと、降谷は子どものようにあどけない表情で、「どうかしたんですか?」と問うてきた。
m_w0597
MAIKINGなんかフェチなのかなれーくん髪の毛耳にかけがち笑
ほっぺにチッスはしやすそう
あかいさんが🫣💋
実は待ってるんだよね、自分からはまだ言えないもんね、れいくん。ばれてるよ!
からの「困った子だ、、、」でフィニッシュですね
すみません、例のセリフあかいさんに
言ってみて欲しいなって話です🥹✨
松本ロンギヌス
DONE12/1のDR2024で頒布したぬい小物を通販します。こちらはぬいちゃんの着画サンプルになりますので、購入検討の方はご参考下さい。通販はこちら https://m-longinus.booth.pm/
※サンプルで来ているうさみみ帽子は今回の通販予定にありませんが、もし2色タイプ希望の方いれば🐰で教えてくだされば作成します。
※どうでもいいですがサンプル写真は単焦点です 6
松本ロンギヌス
PROGRESS2024/12/01のDR2024で発行した赤安カメラ本で紹介したおすすめレンズの作例です。2025年はぬい撮りもやっていきたいと思うので、写真はこちらにも掲載していきたいと思います。(恐らくX(Twitter)でも呟くかも…?SNS運用は検討中です) 11koukohikawa
DONEこちらは「愛の鎖」のおまけページです。後書きにあるパスワードを入力してご覧ください。
公開期間20241215~20251231
愛の鎖(本編)のサンプルはこちら
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=23497025 8842
松本ロンギヌス
MENU2024/12/1 大観覧車の頂上で DR2024東6 ゆ39a『Endeng note』で赤安初参加します。同人誌購入の方へはサイン入りインスタント風フォトカードをお付けします。若干余るのでサインなしVerを無配します。 2
松本ロンギヌス
INFO脱稿したのでサンプルあげその1。12/1 DOZEN ROSE FES 2024 発行の漫画本です。正しい薄い本(P.16)。
趣味×趣味本を作ってみたかった!のでカメラネタの本です。ページ後半に載せているカメラ沼のすすめについてはイベント掲載後に作例写真と一緒にポイピクに掲載予定。 4
花月ゆき
DONE秀零の日。記憶喪失&身体だけ縮んだ赤安(中学生)が、工藤邸で一緒に住んでいる設定です。
①https://poipiku.com/1436391/9417680.html
【最終話】Heartfelt Memories(旧題:記憶は心の底に)⑬―コナンSide 10月―
十月十日。
コナンが工藤邸を訪れると、赤井と降谷の二人の声が玄関まで漏れ聞こえてきた。
昼間はトロピカルランドに遊びに行くと言っていたが、もう帰宅し、二人で夕食を作りはじめているようだった。コナンは二人に誘われて夕食を食べにきたのだが、今回もとてつもないボリュームの料理が作られているような気がする。
ちょうど一年前。二人がカレンダーを見ながら、「今日は何の日だろう」と首を傾げていたことをコナンは思い出す。
先月、解毒薬を受け取った二人がこの家に帰ってきたあと、赤井、降谷の順番に解毒薬を飲んだのだと聞いた。薬を飲んだあと、しばらくは発熱もあったようだが、再び身体が縮むこともなく、無事に一ヶ月が経過した。
1778十月十日。
コナンが工藤邸を訪れると、赤井と降谷の二人の声が玄関まで漏れ聞こえてきた。
昼間はトロピカルランドに遊びに行くと言っていたが、もう帰宅し、二人で夕食を作りはじめているようだった。コナンは二人に誘われて夕食を食べにきたのだが、今回もとてつもないボリュームの料理が作られているような気がする。
ちょうど一年前。二人がカレンダーを見ながら、「今日は何の日だろう」と首を傾げていたことをコナンは思い出す。
先月、解毒薬を受け取った二人がこの家に帰ってきたあと、赤井、降谷の順番に解毒薬を飲んだのだと聞いた。薬を飲んだあと、しばらくは発熱もあったようだが、再び身体が縮むこともなく、無事に一ヶ月が経過した。
花月ゆき
DONE秀零の日。記憶喪失&身体だけ縮んだ赤安(中学生)が、工藤邸で一緒に住んでいる設定です。
①https://poipiku.com/1436391/9417680.html
⑬https://poipiku.com/1436391/10875191.html
Heartfelt Memories(旧題:記憶は心の底に)⑫―赤井Side 9月―
解毒薬が完成したとの報せが、コナンから届いた。
身体が元に戻れば、中学校に通う必要はなくなる。九月の半ばに転校するよう学校側と調整がついたのは九月に入ってからだった。
夏休みが明けてまだ間もない時期。突如決まった転校に、クラス中がざわついた。
クラスから一度に二人も転校するのは異例のことだからだろう。「赤井君と降谷君ってどんな関係なの?」と質問されることが増えた。転校の理由はあらかじめ考えていたので、二人で決めた設定通り、「親が同じ職場の同じ部署で……」と、あくまで親の出張が理由だと伝えた。嘘を重ねながら作り上げられてゆく“転校”に、「さみしくなるね」と声をかけられるたび、降谷も赤井も複雑な気持ちになった。
4967解毒薬が完成したとの報せが、コナンから届いた。
身体が元に戻れば、中学校に通う必要はなくなる。九月の半ばに転校するよう学校側と調整がついたのは九月に入ってからだった。
夏休みが明けてまだ間もない時期。突如決まった転校に、クラス中がざわついた。
クラスから一度に二人も転校するのは異例のことだからだろう。「赤井君と降谷君ってどんな関係なの?」と質問されることが増えた。転校の理由はあらかじめ考えていたので、二人で決めた設定通り、「親が同じ職場の同じ部署で……」と、あくまで親の出張が理由だと伝えた。嘘を重ねながら作り上げられてゆく“転校”に、「さみしくなるね」と声をかけられるたび、降谷も赤井も複雑な気持ちになった。
花月ゆき
DONE秀零の日。記憶喪失&身体だけ縮んだ赤安(中学生)が、工藤邸で一緒に住んでいる設定です。
①https://poipiku.com/1436391/9417680.html
⑫https://poipiku.com/1436391/10875183.html
Heartfelt Memories(旧題:記憶は心の底に)⑪―赤井Side 8月―
赤井と降谷は、記憶を失くし身体が縮んだ日のことを、記録として書き起こしはじめた。
降谷と自分との記憶に不整合はなかった。
毒ガスのようなものを吸い込んだあと、瓦礫の中で一度意識を取り戻すまでの間に、記憶を失くし、身体が縮んだことは間違いなさそうだ。公安とFBIのデータベースから自分たちの情報が消えていることを考えると、自分たちの状況は各々の機関が把握していると考えて良いだろう。
だが、おそらく自分たちが記憶を取り戻したことを知る者はいない。学校では中学生を演じているし、この家にも、外部の人間が置いて行ったような盗聴器らしきものは何も仕掛けられていないからだ。
自分たちが手に入れたデータには二重でパスワードがかかっていた。パスワードはそれぞれ別のパソコンに残されていたので、一つ目のパスワードは降谷が、二つ目のパスワードは赤井が記憶していた。
4732赤井と降谷は、記憶を失くし身体が縮んだ日のことを、記録として書き起こしはじめた。
降谷と自分との記憶に不整合はなかった。
毒ガスのようなものを吸い込んだあと、瓦礫の中で一度意識を取り戻すまでの間に、記憶を失くし、身体が縮んだことは間違いなさそうだ。公安とFBIのデータベースから自分たちの情報が消えていることを考えると、自分たちの状況は各々の機関が把握していると考えて良いだろう。
だが、おそらく自分たちが記憶を取り戻したことを知る者はいない。学校では中学生を演じているし、この家にも、外部の人間が置いて行ったような盗聴器らしきものは何も仕掛けられていないからだ。
自分たちが手に入れたデータには二重でパスワードがかかっていた。パスワードはそれぞれ別のパソコンに残されていたので、一つ目のパスワードは降谷が、二つ目のパスワードは赤井が記憶していた。
花月ゆき
DONE秀零の日。記憶喪失&身体だけ縮んだ赤安(中学生)が、工藤邸で一緒に住んでいる設定です。
①https://poipiku.com/1436391/9417680.html
⑪https://poipiku.com/1436391/10875177.html
Heartfelt Memories(旧題:記憶は心の底に)⑩―赤井Side 7月―
まだ梅雨の終わりが見えない、七月七日。七夕の日。
隣の阿笠博士の家で、子どもたちも一緒に、ささやかな七夕パーティーをした。その場でも赤井は、“ただの中学生”を演じた。
暗くならないうちに解散となったので、夜空を一緒に眺めることができるのは、降谷とだけ。ずっと曇り空が続いているが、時折、雲と雲の間からうっすらと星が見えるので、降谷は辛抱強く空を眺めていた。
二階にある、降谷の部屋で二人きり。
一緒に星を見ようと約束をしたわけでもないが、赤井は降谷の隣に並ぶように立った。ふたりで同じものを見ていたいと思った。
しばらく会話はなかったが、降谷が静かな口調で言った。
「……僕、何か大事なことを忘れている気がするんですよね」
5850まだ梅雨の終わりが見えない、七月七日。七夕の日。
隣の阿笠博士の家で、子どもたちも一緒に、ささやかな七夕パーティーをした。その場でも赤井は、“ただの中学生”を演じた。
暗くならないうちに解散となったので、夜空を一緒に眺めることができるのは、降谷とだけ。ずっと曇り空が続いているが、時折、雲と雲の間からうっすらと星が見えるので、降谷は辛抱強く空を眺めていた。
二階にある、降谷の部屋で二人きり。
一緒に星を見ようと約束をしたわけでもないが、赤井は降谷の隣に並ぶように立った。ふたりで同じものを見ていたいと思った。
しばらく会話はなかったが、降谷が静かな口調で言った。
「……僕、何か大事なことを忘れている気がするんですよね」
花月ゆき
DONE秀零の日。記憶喪失&身体だけ縮んだ赤安(中学生)が、工藤邸で一緒に住んでいる設定です。
①https://poipiku.com/1436391/9417680.html
⑩https://poipiku.com/1436391/10875166.html
Heartfelt Memories(旧題:記憶は心の底に)⑨―赤井Side 6月―
修学旅行の最後の夜。
赤井は、これまで経験したことのないようなひどい頭痛を覚えるのと同時に、自分が“本当は中学生ではない”ことを思い出した。
いや、正確には、小さな頭痛を伴い何度も思い出しかけたことはあった。
これまで何度か訪れた、記憶違いかと思われた“小さな違和感”が、まさか失くした記憶の断片だったとは思いもよらなかった。
降谷も自分と同じように、何度も小さな違和感に首を傾げていたのを思い出す。
しかし、降谷はまだ記憶を取り戻してはいないようだった。
六月七日、金曜日。朝、目が覚めると家の中に降谷の気配がなかった。
『日直なので、僕は早めに学校に行きます』
RX-7の裏にあるボタンを押すと、降谷の声が聞こえてくる。その声は、自分が良く知るそれよりも幼くて可愛らしい。
5635修学旅行の最後の夜。
赤井は、これまで経験したことのないようなひどい頭痛を覚えるのと同時に、自分が“本当は中学生ではない”ことを思い出した。
いや、正確には、小さな頭痛を伴い何度も思い出しかけたことはあった。
これまで何度か訪れた、記憶違いかと思われた“小さな違和感”が、まさか失くした記憶の断片だったとは思いもよらなかった。
降谷も自分と同じように、何度も小さな違和感に首を傾げていたのを思い出す。
しかし、降谷はまだ記憶を取り戻してはいないようだった。
六月七日、金曜日。朝、目が覚めると家の中に降谷の気配がなかった。
『日直なので、僕は早めに学校に行きます』
RX-7の裏にあるボタンを押すと、降谷の声が聞こえてくる。その声は、自分が良く知るそれよりも幼くて可愛らしい。
花月ゆき
DONE秀零の日。記憶喪失&身体だけ縮んだ赤安(中学生)が、工藤邸で一緒に住んでいる設定です。
①https://poipiku.com/1436391/9417680.html
⑨https://poipiku.com/1436391/10875157.html
Heartfelt Memories(旧題:記憶は心の底に)⑧―降谷Side 5月―
五月に入り、クラスメイトたちは浮足立っていた。
理由は、まごうことなく修学旅行である。
今年は、九日、十日、十一日の二泊三日で、京都へ行くことが決まっていた。
赤井とはクラスは同じだが、修学旅行のための班分けで、別々のグループになってしまった。赤井と一緒がよかったが、五十音順でグループ分けをされてしまったので仕方がない。グループは男女混合だったので、赤井と一緒のグループになった女子たちは見るからに嬉しそうにしていた。
移動も宿泊先の部屋も自由時間も、すべてグループ行動になるため、旅行中は赤井とほとんど離れ離れで過ごすことになる。記念日である十日も旅行真っ只中なので、今月は旅行を楽しもう、ということになった。
7897五月に入り、クラスメイトたちは浮足立っていた。
理由は、まごうことなく修学旅行である。
今年は、九日、十日、十一日の二泊三日で、京都へ行くことが決まっていた。
赤井とはクラスは同じだが、修学旅行のための班分けで、別々のグループになってしまった。赤井と一緒がよかったが、五十音順でグループ分けをされてしまったので仕方がない。グループは男女混合だったので、赤井と一緒のグループになった女子たちは見るからに嬉しそうにしていた。
移動も宿泊先の部屋も自由時間も、すべてグループ行動になるため、旅行中は赤井とほとんど離れ離れで過ごすことになる。記念日である十日も旅行真っ只中なので、今月は旅行を楽しもう、ということになった。