yuiga009
DOODLEリー先生と博の本が出るかもなんですが、途中から顔出し博でチャイナドレスを着るというもうアイデンティティが行方不明なんですが大丈夫ですかね(リー博、鯉博、明日方舟、たぶん♀博 4
はるち
DONEカゼマルの折った動物たちと二人のお話。only a paper moon これは兎、これは猫、これは犬、これは虎。
では、このうねうねと動いているものは。
「……蛇ですか?」
「龍だよ。どこからどう見ても龍だろ」
およそ一ヶ月ぶりにロドスを訪れたリーは、執務室の一角に置かれているクッキー缶に目を留めた。前回の訪問時にはなかったものだ。蓋はされておらず、まさか食べかけのまま放置しているのかと中を覗けば、しかしそこに入っていたのは焼き菓子ではなく紙細工だった。
折り紙である。しかしただの折り紙ではない。実際の生き物さながらに、ちよちよと動いている。クッキー缶の中は、小さな動物園のようになっていた。
「最近本艦にやってきたオペレーターが面白いアーツの使い手でね。紙を動かすことができるんだ」
2561では、このうねうねと動いているものは。
「……蛇ですか?」
「龍だよ。どこからどう見ても龍だろ」
およそ一ヶ月ぶりにロドスを訪れたリーは、執務室の一角に置かれているクッキー缶に目を留めた。前回の訪問時にはなかったものだ。蓋はされておらず、まさか食べかけのまま放置しているのかと中を覗けば、しかしそこに入っていたのは焼き菓子ではなく紙細工だった。
折り紙である。しかしただの折り紙ではない。実際の生き物さながらに、ちよちよと動いている。クッキー缶の中は、小さな動物園のようになっていた。
「最近本艦にやってきたオペレーターが面白いアーツの使い手でね。紙を動かすことができるんだ」
はるち
DONEどうして人間は、愛情と所有欲を区別できないのだろう?月が降りてくる 例えば愛情と性欲を区別して考えるべきであるように、何かをうつくしいと思うことと、それを自分のものにしたいという欲求は本来は分離して存在するべきなのだろう。美術館で美しいと思った絵画や彫刻を家に持って帰ろうとはしないだろう。そういうことだ。
つまりは。
「ドクター、酔ってます?」
「たしょうは」
困ったものですねえ、とリーは呆れたような表情になったが、しかし自らの頬に添えられた手を振り払うつもりはないようだった。ドクターはリーの両頬に手を添えて、自らの方へを顔を向けさせていた。酔っている、という自己申告の通りに、ドクターの手のひらは随分と熱い。じい、と。瞳を逸らすことを許さないというように、自らの顔を覗き込むドクターに、彼はただ穏やかに苦笑して答えた。
1359つまりは。
「ドクター、酔ってます?」
「たしょうは」
困ったものですねえ、とリーは呆れたような表情になったが、しかし自らの頬に添えられた手を振り払うつもりはないようだった。ドクターはリーの両頬に手を添えて、自らの方へを顔を向けさせていた。酔っている、という自己申告の通りに、ドクターの手のひらは随分と熱い。じい、と。瞳を逸らすことを許さないというように、自らの顔を覗き込むドクターに、彼はただ穏やかに苦笑して答えた。
はるち
DONEお気をつけなさい、嫉妬というものに。 それはひとの心をなぶりものにして、餌食にする怪物なのです。月色の目の怪物「お前が抱えている問題を解決できるのは、この私のほかにはいないのだからな――そうだろう」
エンシオディス・シルバーアッシュといえば、このロドスで知らない人間はいないだろう。イェラ区の領主、シルバーアッシュ家の当主であり、カランド貿易のトップ。権謀術数に長けていることは勿論、戦闘能力も他の追随を許さない。彼の剣から放たれる白銀の光は、吹雪よりも苛烈に敵の命を奪う。その一方でカランド貿易にとっては不利だとわかっている条約をロドスと締結するなどの度量の広さも合わせ持ち、つまるところ欠点を上げることの方が難しい傑物だった。
リー自身も、彼を戦場で、そしてロドス内で見かけたことは一度や二度ではない。上に立つものらしい尊大さがあり、立ち振舞には高貴さが滲んでいる。肉食獣の優美さと獰猛さを併せ持つその人物が、ドクターの傍らに立っている姿を。
1917エンシオディス・シルバーアッシュといえば、このロドスで知らない人間はいないだろう。イェラ区の領主、シルバーアッシュ家の当主であり、カランド貿易のトップ。権謀術数に長けていることは勿論、戦闘能力も他の追随を許さない。彼の剣から放たれる白銀の光は、吹雪よりも苛烈に敵の命を奪う。その一方でカランド貿易にとっては不利だとわかっている条約をロドスと締結するなどの度量の広さも合わせ持ち、つまるところ欠点を上げることの方が難しい傑物だった。
リー自身も、彼を戦場で、そしてロドス内で見かけたことは一度や二度ではない。上に立つものらしい尊大さがあり、立ち振舞には高貴さが滲んでいる。肉食獣の優美さと獰猛さを併せ持つその人物が、ドクターの傍らに立っている姿を。
はるち
DONE甘いものの過剰供給に限界を感じる博のお話。囁くあなたの甘い舌 ラテラーノは確かに楽園だった。滞在三日目までは。
「もう向こう半世紀は甘いものを見たくない」
ソファに崩れ落ちるように座り込んだドクターの台詞に、リーは苦笑した。
ラテラーノ人の甘いもの好きについては知っていたが、まさかここまでとは。路地には甘味を販売する露店が立ち並び、三歩と行かない内に別の甘いものに行き当たり、アイスクリームを売り歩くワゴンとすれ違う。極めつけはジェラート供給所だ。何故あんなものが街中に常設されているのだ。
「ドクターだって甘いものは好きでしょう」
「限度があるよ、限度が」
確かに仕事で疲れている時は自分だって甘いものが恋しくなる。しかし連日のようにそれを口に来続ければ話は別だ。朝食にフレンチトースト、昼食と夕食にはデザートがつき、任務の合間に街へ行こうとせがむオペレーター達を連れて三時のおやつを食べに行く。それだけならまだやりようもあったのかもしれないが、甘いものに合わせる飲み物さえも甘いのだ。一体何が悲しくてザッハトルテと一緒に蜂蜜がたっぷり使われたカフェラテを飲まなければならないのか。無闇矢鱈と砂糖を使った暴力的な甘さではなく、繊細な味わいのする上品なスイーツだからこそ今日まで耐えられたが、しかしそれもそろそろ限界だ。ニェンが振る舞う火鍋が恋しい。
1785「もう向こう半世紀は甘いものを見たくない」
ソファに崩れ落ちるように座り込んだドクターの台詞に、リーは苦笑した。
ラテラーノ人の甘いもの好きについては知っていたが、まさかここまでとは。路地には甘味を販売する露店が立ち並び、三歩と行かない内に別の甘いものに行き当たり、アイスクリームを売り歩くワゴンとすれ違う。極めつけはジェラート供給所だ。何故あんなものが街中に常設されているのだ。
「ドクターだって甘いものは好きでしょう」
「限度があるよ、限度が」
確かに仕事で疲れている時は自分だって甘いものが恋しくなる。しかし連日のようにそれを口に来続ければ話は別だ。朝食にフレンチトースト、昼食と夕食にはデザートがつき、任務の合間に街へ行こうとせがむオペレーター達を連れて三時のおやつを食べに行く。それだけならまだやりようもあったのかもしれないが、甘いものに合わせる飲み物さえも甘いのだ。一体何が悲しくてザッハトルテと一緒に蜂蜜がたっぷり使われたカフェラテを飲まなければならないのか。無闇矢鱈と砂糖を使った暴力的な甘さではなく、繊細な味わいのする上品なスイーツだからこそ今日まで耐えられたが、しかしそれもそろそろ限界だ。ニェンが振る舞う火鍋が恋しい。
はるち
DONE夢と知りせば覚めざらましを。吐き気がするほど甘い夢 その人を夢に見るようになったのは、いつの頃からだろう。
「リー」
幾度目かの夢だ。療養庭園に佇むその人が、こちらを見て頬を緩める。白衣も上着も着ておらず、表情を見られることを頑なに拒むようなフェイスシールドもなかった。そのかんばせに木漏れ日がやわらかな陰影を作っている。その人がこんな風に笑顔を浮かべるところを、自分は今までに何度見たことがあるだろうか。きっと数えるほどしかなく、自分に向けられたことは一度もない。
行こうか、と差し出されるその手を取る。想像していた通りに細く、薄く、力を込めれば立ち所に折れてしまいそうだった。何度か力を入れて、緩めてということを繰り返せば、その人はくすぐったそうな笑い声を零す。それでも繋いだ手は解けない。
2146「リー」
幾度目かの夢だ。療養庭園に佇むその人が、こちらを見て頬を緩める。白衣も上着も着ておらず、表情を見られることを頑なに拒むようなフェイスシールドもなかった。そのかんばせに木漏れ日がやわらかな陰影を作っている。その人がこんな風に笑顔を浮かべるところを、自分は今までに何度見たことがあるだろうか。きっと数えるほどしかなく、自分に向けられたことは一度もない。
行こうか、と差し出されるその手を取る。想像していた通りに細く、薄く、力を込めれば立ち所に折れてしまいそうだった。何度か力を入れて、緩めてということを繰り返せば、その人はくすぐったそうな笑い声を零す。それでも繋いだ手は解けない。
はるち
DONE博に恋するモブオペの物語。知人の恋 ――初めてその人に、名前を呼ばれた日のことを覚えている。
「■■■、だね。任務お疲れ様。どうだった?」
オペレーターのコードネームは本名とは別につける人間と、本名をそのまま用いる人間がいる。俺は後者だった。だけどその時、ドクターに名前を呼ばれた時は、本当に、何を言われたのかわからなかった。
呆然としている俺を見て、その人は首を傾げた。
「……あれ、名前を間違えてしまったかな」
「あ、いえ、いいえ。合ってます。俺のコードネームです」
良かった、と目の前で安心したように笑うその人が、俺の知っているドクターのイメージと合致しない。まるで戦場を空から俯瞰しているような戦術を立て、敵を蹂躙する指揮官。誰よりも何よりも凄絶に、敵を殲滅する指揮官。それが俺のイメージするドクターだった。俺のことも、替えの聞く駒としか見ていないんだろう、と。
5385「■■■、だね。任務お疲れ様。どうだった?」
オペレーターのコードネームは本名とは別につける人間と、本名をそのまま用いる人間がいる。俺は後者だった。だけどその時、ドクターに名前を呼ばれた時は、本当に、何を言われたのかわからなかった。
呆然としている俺を見て、その人は首を傾げた。
「……あれ、名前を間違えてしまったかな」
「あ、いえ、いいえ。合ってます。俺のコードネームです」
良かった、と目の前で安心したように笑うその人が、俺の知っているドクターのイメージと合致しない。まるで戦場を空から俯瞰しているような戦術を立て、敵を蹂躙する指揮官。誰よりも何よりも凄絶に、敵を殲滅する指揮官。それが俺のイメージするドクターだった。俺のことも、替えの聞く駒としか見ていないんだろう、と。
はるち
DONE鯉が良くないものに憑かれるお話。sound of silence 自殺で多いのは首吊りと入水だ。飛び降りは意外と少ない。未遂となって終わることが多いのだ。単純に高さが足りなかったり、下にあった植え込みがクッションとなったり。とはいえ生命こそ助かっても大怪我をすることに変わりはなく、折れた骨によっては一生障害を引きずることにもなりかねない。
だから。
彼女は成功したのだと――そういうべきなのだろうか。
「……はあ」
リーが吐き出した紫煙は、立ちどころに龍門の夜へと溶けていった。屋上の喫煙所である。とはいえ一服しに来たのではなく、人探しの依頼のためだった。一週間前に出て行ったきり戻って来ない娘を探してほしい、と涙ながらに訴えていた母親が依頼人だった。以前から自殺を仄めかすことを口にしていた彼女の捜索届は、当局にも出したのだという。しかし成人の行方不明者の捜索は困難であり、こうしてリーのところまで御鉢が回ってきた。
5737だから。
彼女は成功したのだと――そういうべきなのだろうか。
「……はあ」
リーが吐き出した紫煙は、立ちどころに龍門の夜へと溶けていった。屋上の喫煙所である。とはいえ一服しに来たのではなく、人探しの依頼のためだった。一週間前に出て行ったきり戻って来ない娘を探してほしい、と涙ながらに訴えていた母親が依頼人だった。以前から自殺を仄めかすことを口にしていた彼女の捜索届は、当局にも出したのだという。しかし成人の行方不明者の捜索は困難であり、こうしてリーのところまで御鉢が回ってきた。
はるち
DONE列車で旅をする二人の少し不思議な話銀河鉄道の夜と朝 たたたん、たたたん、たたん。
狭い鉄の箱、その壁を超えて、規則的な音が響く。時折混ざる低く重い音は衝撃となって車両を揺らし、そのどれもが中で眠る私にとっては子守唄のようだった。カーテンを閉ざした後では星の光も月の輝きも、室内に満ちる闇を払うことは出来ない。ここにあるのは、一際濃度の高い夜だ。毛布のように暖かく、そして真綿のように首を絞め上げる安らぎに目を閉じて身を委ねようとした時に、先程までとは異なる振動が響いた。振動は次第に大きくなり、どうやらこちらへと近づいてくるようだった。うるさいな、と閉じかけていた目を開ける。こんなところまで、一体何だろうか。
その疑問に答えるように、突然扉が開いた。
10234狭い鉄の箱、その壁を超えて、規則的な音が響く。時折混ざる低く重い音は衝撃となって車両を揺らし、そのどれもが中で眠る私にとっては子守唄のようだった。カーテンを閉ざした後では星の光も月の輝きも、室内に満ちる闇を払うことは出来ない。ここにあるのは、一際濃度の高い夜だ。毛布のように暖かく、そして真綿のように首を絞め上げる安らぎに目を閉じて身を委ねようとした時に、先程までとは異なる振動が響いた。振動は次第に大きくなり、どうやらこちらへと近づいてくるようだった。うるさいな、と閉じかけていた目を開ける。こんなところまで、一体何だろうか。
その疑問に答えるように、突然扉が開いた。