時緒🍴自家通販実施中
TRAININGお題:「昔話」「リラックス」「見惚れる」盗賊団の伝説を思い出すネロが、ブラッドリーとの初めてのキスを思い出すお話です。軽いキス描写があります。
かつての瞳 ブラッドは酔うと時折、本当に時折昔話をする。
普段はそんな様子など見せないくせに、高慢ちきな貴族さまから後妻を奪った話だとか(彼女はただ可哀想な女ではなく女傑だったようで、しばらく死の盗賊団の女神になり、北の国の芸術家のミューズになった)、これもやはり領民のことを考えない領主から土地を奪い、追いやった後等しく土地を分配したことなど、今でも死の盗賊団の伝説のうちでも語り草になっている話を、ブラッドは酒を飲みながらした。俺はそれを聞きながら、昔の話をするなんて老いている証拠かなんて思ったりして、けれど自分も同じように貴族から奪った後妻に作ってやった料理の話(彼女は貧しい村の出で、豆のスープが結局は一番うまいと言っていた)や、やっと手に入れた土地をどう扱っていいのか分からない領民に、豆の撒き方を教えてやった話などを思い出していたのだから、同じようなものなのだろう。そしてそういう話の後には、決まって初めて俺とブラッドがキスをした時の話になる。それは決まりきったルーティーンみたいなものだった。
1852普段はそんな様子など見せないくせに、高慢ちきな貴族さまから後妻を奪った話だとか(彼女はただ可哀想な女ではなく女傑だったようで、しばらく死の盗賊団の女神になり、北の国の芸術家のミューズになった)、これもやはり領民のことを考えない領主から土地を奪い、追いやった後等しく土地を分配したことなど、今でも死の盗賊団の伝説のうちでも語り草になっている話を、ブラッドは酒を飲みながらした。俺はそれを聞きながら、昔の話をするなんて老いている証拠かなんて思ったりして、けれど自分も同じように貴族から奪った後妻に作ってやった料理の話(彼女は貧しい村の出で、豆のスープが結局は一番うまいと言っていた)や、やっと手に入れた土地をどう扱っていいのか分からない領民に、豆の撒き方を教えてやった話などを思い出していたのだから、同じようなものなのだろう。そしてそういう話の後には、決まって初めて俺とブラッドがキスをした時の話になる。それは決まりきったルーティーンみたいなものだった。
moyu_mochi
DONEもちろんふたりで3開催おめでとうございます!ネロが朝起きてこなかった日のお話です
発熱を含む体調不良表現がございます
苦手な方はご遠慮ください
パスワードはお品書きにあります!
楽しんでいただけましたら幸いです 6
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TRAININGお題「愛」「誕生日」「食べる」盗賊団に入る前の食事を思い出すネロが、みんなに誕生日お祝いをされるお話です。
君はいい子 満足に食事をとることが出来たのは、ブラッドの盗賊団に加わってからのことだった。それまでの俺は三食なんてもってのほかで、俺をいいように使っていた人間の男たちから、薄い塩味のくず野菜のスープにありつけたら万々歳、そこにうすっぺらい肉が浮かんでいたら狂喜乱舞、といった感じだった。残り物だからと腐った肉を食わされた時もあったし、当然何もない日が続くこともあった。とにかく、力のなかった俺には、北の国での生活は過酷だった、というわけだ。
ブラッドは部下に対して、愛を惜しまなかった。どんな寡黙な男たちだって彼の優しさに触れれば涙して、あなたに一生ついてゆくと言った。そして危険な仕事につき、みなボスのためならと喜んで石になっていった。
3632ブラッドは部下に対して、愛を惜しまなかった。どんな寡黙な男たちだって彼の優しさに触れれば涙して、あなたに一生ついてゆくと言った。そして危険な仕事につき、みなボスのためならと喜んで石になっていった。
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TRAININGお題:「花火」「熱帯夜」「一途」ムルたちが花火を楽しむ横で、賢者の未来について語ろうとするブラッドリーとそれを止めるネロのお話です。
優しいあなた 夏の夜、魔法舎に大きな花火が上がった。俺はそれを偶然厨房の窓から見ていて、相変わらずよくやるものだと、寸胴鍋を洗う手を止めてため息をついた。食堂から歓声が聞こえたから、多分そこにあのきらきらと消えてゆく炎を作った者(きっとムルだ)と賢者や、素直な西と南の魔法使いたちがいるのだろう。
俺はそんなことを考えて、汗を拭いながらまた洗い物に戻った。魔法をかければ一瞬の出来事なのだが、そうはしたくないのが料理人として出来てしまったルーティーンというものだ。東の国では人間として振る舞っていたから、その癖が抜けないのもある。
しかし暑い。北の国とも、東の国とも違う中央の暑さは体力を奪い、俺は鍋を洗い終える頃には汗だくになっていた。賢者がいた世界では、これを熱帯夜というのだという。賢者がいた世界に四季があるのは中央の国と一緒だが、涼しい顔をしたあの人は、ニホンよりずっと楽ですよとどこか訳知り顔で俺に告げたのだった。——しかし暑い。賢者がいた世界ではこの暑さは程度が知れているのかもしれないが、北の国生まれの俺には酷だった。夕食どきに汲んできた井戸水もぬるくなっているし、これのどこが楽なんだろう。信じられない。
3531俺はそんなことを考えて、汗を拭いながらまた洗い物に戻った。魔法をかければ一瞬の出来事なのだが、そうはしたくないのが料理人として出来てしまったルーティーンというものだ。東の国では人間として振る舞っていたから、その癖が抜けないのもある。
しかし暑い。北の国とも、東の国とも違う中央の暑さは体力を奪い、俺は鍋を洗い終える頃には汗だくになっていた。賢者がいた世界では、これを熱帯夜というのだという。賢者がいた世界に四季があるのは中央の国と一緒だが、涼しい顔をしたあの人は、ニホンよりずっと楽ですよとどこか訳知り顔で俺に告げたのだった。——しかし暑い。賢者がいた世界ではこの暑さは程度が知れているのかもしれないが、北の国生まれの俺には酷だった。夕食どきに汲んできた井戸水もぬるくなっているし、これのどこが楽なんだろう。信じられない。
mo_riwo
INFO2023/8/27 【賢者のマナスポット 13】にて頒布予定のネロ本サンプルです。ネロと賢者がちょっとうまく行っていないのをリケが仲直りさせようとする話。
「ネロと和解せよ」本文34p/A5/イベント価格500円
後日🐯通販予定です 14
moyu_mochi
DONE2021年9月19日に開催された賢者のマナスポット3にて頒布されました『シュガーポットにアイを集めて』に寄稿させて頂いた作品です。ネロの腹痛のお話
シュガーの加護ぐぎゅるぎゅる……
皆が寝静まった微睡みの中、唐突走った腹痛に飛び起きた。ぎゅうっと締め付けられる感覚に耐えられるはずもなく慌ててトイレに駆け込んだ。
……これで治まってくれたらいいものの治まる気配もなくトイレと寝具の往復をふらふらと何度も繰り返している。これじゃ寝れねぇじゃねぇか……朝飯作る時間まで数刻あるものの体を休めたくても休めれないのはどうにも苦しい。
ぎゅるるっ
くっそ……治まることのない腹痛のおかげでそろそろ動かないと朝飯の時間に間に合わない。早起きの鍛錬組を待たせちまうのはもう確定かもな……
《アドノディス•オムニス》
気休めで作ったシュガーを口に放り込む。しゅわぁと溶ける感覚に少しだけ楽になる錯覚を得た。
3942皆が寝静まった微睡みの中、唐突走った腹痛に飛び起きた。ぎゅうっと締め付けられる感覚に耐えられるはずもなく慌ててトイレに駆け込んだ。
……これで治まってくれたらいいものの治まる気配もなくトイレと寝具の往復をふらふらと何度も繰り返している。これじゃ寝れねぇじゃねぇか……朝飯作る時間まで数刻あるものの体を休めたくても休めれないのはどうにも苦しい。
ぎゅるるっ
くっそ……治まることのない腹痛のおかげでそろそろ動かないと朝飯の時間に間に合わない。早起きの鍛錬組を待たせちまうのはもう確定かもな……
《アドノディス•オムニス》
気休めで作ったシュガーを口に放り込む。しゅわぁと溶ける感覚に少しだけ楽になる錯覚を得た。
あやめ
INFO8/19〜20開催「絶対晶至上主義2」にて頒布開始したカイ晶♀の漫画本です。
「君にマーキング!」
A5サイズ/本文+再録他32P/しおり付き
(装丁:トレーシングペーパー口絵他)
栄光の街の酒場で
ヤキモチ妬いちゃうお話です。
事後表現があるので
一応R15くらいだと思いますが、
そんなに中身のある話じゃないです。 16
なつゆき
DONE【まほやく】東の魔法使いが事件を解決する話。私は、子どもが親を選んで生まれてくる、という言説が死ぬほど嫌いです。
銀色の糸「どうしたんだい賢者さん。難しい顔して」
帳面と睨めっこしていた賢者は、軽やかで少しだけ気だるげで、からかうようで労わるような声に顔をあげた。「ネロ」と名前を呼ぶと、空色の髪の主は食堂の入り口で口もとに微笑を浮かべ、よっと手を挙げた。
「ネロは買い出しですか?」
「ああ。賢者さんは……これ、依頼か?」
中に入ってきたネロは、右手に食材の入った袋を持ちながら、ひょいと紙をひとつ手にとる。賢者の前にあるテーブルに広げられたたくさんの紙は、魔法舎に届けられた手紙らしい。
「緊急の依頼がいくつか舞い込んでしまって、優先順位をつけているところだったんです。特に切迫してそうなのがこれとこれで……」
賢者はふたつ紙を差し出した。こうして堂々と見せているということは、ネロが見ても構わないものなのだろう。ネロはそのうちのひとつの文面を指でなぞった。
10796帳面と睨めっこしていた賢者は、軽やかで少しだけ気だるげで、からかうようで労わるような声に顔をあげた。「ネロ」と名前を呼ぶと、空色の髪の主は食堂の入り口で口もとに微笑を浮かべ、よっと手を挙げた。
「ネロは買い出しですか?」
「ああ。賢者さんは……これ、依頼か?」
中に入ってきたネロは、右手に食材の入った袋を持ちながら、ひょいと紙をひとつ手にとる。賢者の前にあるテーブルに広げられたたくさんの紙は、魔法舎に届けられた手紙らしい。
「緊急の依頼がいくつか舞い込んでしまって、優先順位をつけているところだったんです。特に切迫してそうなのがこれとこれで……」
賢者はふたつ紙を差し出した。こうして堂々と見せているということは、ネロが見ても構わないものなのだろう。ネロはそのうちのひとつの文面を指でなぞった。