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    g_arowana

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    g_arowana

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    8月くらいのデヴァさんとでっくんメモをサルベージ

    #恩師
    teacher

    「……ヒーローの資質だな」
     災いを焼くと同時に自らをも茹であげる熱。障害を砕くと同時に自壊を招く剛力。己に向かって牙を剥く個性を宿した、という意味でどことなく親近感を覚えるインターン生は、息子を除けばヒーロー・エンデヴァーにとって実に初の教え子の一人だ。
     解放戦線との戦いの収束後、病院でバッタリ出会った少年に紡がれた縁の影を見て、エンデヴァーはふと呟いた。対するデクは、ソバカスの散った顔で大きな瞳をキョトンと瞬かせている。
    「君と拳を交えなければ、焦凍は間違っても俺の元になぞ来なかった。ホークスのインターンの席が焦凍で埋まっていればツクヨミはあれほど速いヒーローにはならなかったろうし、……そうすればきっと、ホークスは今、この世にいなかった」
    「そんな、ただの偶然です」
     わたわたと慌てる(任務のときの迫力が微塵もない)少年に、エンデヴァーは、いや、と首を振る。
    「ヒーローはお節介が身上だ。それを貫く者ほど様々な縁に絡まって、気がつけば事件の中心になっている。あのメリケン男も、『事件を解決しているのか事件を引き連れているのかさっぱり分からん』などと言われていたさ」
    「わ、それは、初めて聞いたかもです! オールマイトのことは、結構詳しいつもりだったんですが!」
     食い気味の反応に、思わず喉から笑いが漏れそうになる。いつぞやのインターンで焦凍は、「オールマイトが絡むとあいつは…………すげぇぞ」と目を逸らしながら言っていた。誇張することのないあの子が言うのだから、「すごい」のだろう、きっと。
    「もっとも、言っていたのは俺一人だがな」

     がっかりするかと思いきや、どういうわけか仮免ヒーローの目は益々輝いてしまった。
    「エンデヴァーのオールマイト評! レアもレアじゃないですか!?」
     一言一句間違えずに記録したいぞぅ、あ、ノートとってもいいですか!? と何処からともなく紙とペンを取り出した少年に、今度こそエンデヴァーは吹き出しそうになって咳払いで誤魔化した。なるほど、この滅多矢鱈な前向きさ。確かにこれはオールマイトの弟子だ。
     個人的な所感だが、見ていて腹が立たないあたり、あの男より人徳があると言うべきだろう。
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    g_arowana

    PROGRESSとこほです(胸を張る)。
    いつか書こうと思ってるR指定のやつの冒頭パートなのでこれはとこほで間違いないです。同居未来。

    現時点ではひっっどい仮タイトルがついてるんで、書き上がるころにはまともなのに出てきてほしい。
     水桶につっこんでおいた夜食の皿と、朝食に使った皿。二人分がにぎやかに食洗に洗われている。余計なものの退いた明るいオープンキッチンで、常闇は二杯目のコーヒーをカップに注いだ。
     朝食中に一杯、食後に一杯、二人あわせて計四杯。豆の量はそろそろ手に馴染みつつあるが、彼ら師弟が揃って食後にのんびりできる機会は多くないため、ルーティーンとはまだ呼びづらい。
     
     常闇が二つのカップを手に向かうのは、ホークスの休むソファだ。アームレストは無垢板で、ちょっとしたテーブル代わりにも使える。その定位置に、常闇はソーサーをかちゃりと置いた。
     カップソーサーを「無駄じゃない?」の一言で片付けそうなホークスだが、意外なことにこのカップは彼が選んだものだ。肉厚でぽってりとしており、つるりとした釉薬の下から素朴な土の質感を覗かせる。その風合いを「古良き名喫茶って感じで、君っぽい」とホークスは喜び、カップは今日まで二人に愛用され続けている。探し始めてからお気に入りに決断するまでの所要時間がものの十分程度だった、という点については、実に彼らしいエピソードと言えるだろう。
    1949

    g_arowana

    DONE鳥師弟。……いや告白してる気がしなくもないのでとこほなのか。どうなんだ。いつものよぅ分からんやつです。
    ヒ暇世というには忙しい未来の休暇話。
     春空に、無数のシャボン玉が舞っている。

     だだっ広い芝生の上では、小学校に上がるくらいの年頃の子供が何人も、空に虹色を飛ばしている。シャボン玉なんて、と最初はバカにしていたのだが、あたりいっぱいに飛ばしているうちになんだか面白くなってしまったらしい。今は大きく頬を膨らませて意気盛んだ。
    「君は遊ばないの?」
     ホークスは、彼らからちょっと離れた芝生に座る子供の隣で屈みこむ。
     今日の彼の姿は、羽をパーカー下に畳んでキャップを被った休日スタイル。身分を保証するものは掲げていない。もっとも、例え羽が見えていても、近年裏方に回りがちな彼をこの年頃の子供がヒーローと認識するかは怪しいところだ。
     鳥型の少年だった。タイプとしては嘴長めの鴉寄り。ホークスの身内とは色味以外はあまり似ていない。そんな少年は、ホークスの馴れ馴れしくもなければ畏まるでもない、あまりに自然な態度に、答えを返して当然だと思わされたようだった。そう仕向けているのはホークスだが、育成環境由来のこの特技には当人も「適性・人さらいって感じだよなぁ」と思っている。
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    g_arowana

    DONE鳥の弟子が師匠を甘やかします。
    Without Regretsの世界線。Pardon? から一週間で引っ越してその翌月なので、たぶん常闇青年21歳4月の出来事です。
     夜警を終えて師のマンション(もとい、先月からは彼の自宅でもあるのだが)に帰った常闇は、リビングの灯りに目を丸くした。
     体が資本の稼業、休めるときに休むのは義務のようなもので、シフトの異なる相手を待って睡眠時間を削ることはお互いしない。実際、向こうも常闇を待っていたわけではないだろう。グラスを片手にホークスは、視線をぼんやり前に投げたままひらりと手を振った。
    「お疲れ」
    「そちらも。……珍しいこともあるな」
    「ん-。ごっめん、ちょっと放っといてくれると助かる」
     いつも通りの軽々しい口調に、ひりついた響きが微かに滲む。ふむ、と常闇は逡巡した。

     さして問題だと思ったわけではない。この人の、回転数の規格の狂った思考回路に無理矢理足踏みをさせようとなったら、化学物質で物理的に止めるくらいしか手がないのは承知している。「どうせ気分が腐って休めないのだから、徹夜で仕事を片付ければ一石二鳥」などと言われるより余程安心だという話だ。酒精で体をいためるほど自分を甘やかすことなど、良くも悪くもできない人なのだから。
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