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    g_arowana

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    g_arowana

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    ふせったーで呟いたとりしていファンタジーパロにでっくんが巻き込まれました。
    書きたいところだけのダイジェスト版です。

    #鳥師弟
    birdMaster

    「失礼、それ以上踏み入らないで頂こう。この先は私有地だ」
     光遮る緑から聞こえた声に、デクは顔を上げた。鳥の憩う高さの梢に忽然と現れた青年は、黒鳥の顔に羽を持たない体。伝え聞く通りの風体だ。
    「知っています。突然の訪問、すみません」
     背嚢を下ろして姿勢を正し、デクは深々と頭を下げた。
    「不躾なお願いですが、数日……たぶん、長くて一週間ほどです。この森の隅を貸して頂けませんか?」
     じっと見据えてくる目はまっすぐだった。沈黙はほんの数秒。トン、と枝が蹴られる。彼の体から影が溢れ、音もなくブーツの底が土に触れた瞬間、何事もなかったかのように仕舞われた。
    「……それは、俺が答えられることではないな。すまないが主のところまでご足労願えるか」
     言い置いて踵を返した黒い背に、デクは数回瞬いて、慌ててその足取りを追いかけた。

       ◇

     森にはまほうつかいがすんでいる。
     誰にも名前を呼ばれないまほうつかい。鷹の通り名だって、口にする者は滅多にいない。
     いま街角を走り回っている子どもが、掴まり立ちを始めたころの話だ。お国の仕組みがすげ変わる事件があった。本来なら内紛として歴史に刻まれるはずの出来事で、そうならなかった代わりに多くの人が国を追われた。あるいは、多くを呑み込んだ。
     公然の秘密とされていることがある。例えば、粛正されたお歴々だけが知っていたはずの裏事情。もし現存するとすれば、それは隠遁した彼の頭の中だけなのだとか。例えば、騒ぎで破壊されたはずの設備が、直す財などどこにもなかったはずなのに今日も国を回し続けているだとか。例えば、優れたまほうつかいの体は、同時に最良の素材でもあるのだとか。
     後ろ暗い人々は、不吉と忌んで口にしない。心優しい人たちは、後ろめたくて口にしない。
    「あの! 『主のところ』って、いいんですか」
    「いい、とは?」
    「護衛の人ですよね こんな怪しいの連れてっちゃって……」
    「ああ、口調は崩してくれて構わない。このナリで分かりづらいだろうが、歳の頃は変わらないと思う」
    「あ、ありがとう……じゃなく!」
    「心配は無用だ。そちらが主に害なせる災厄だというなら、俺は出会った時点で詰んでいる。順序が逆だな」
    「……へ?」
     慮外の答えに目を白黒させるデクに、迷い無く木々の間を進む青年はひょいと肩をすくめた。
    「護衛とは噂の一人歩きにも程がある。実態はまぁ……下男がいいところだろう」
    「いやいや、そりゃ自虐が過ぎない?」

     ふいに聞こえた、遠くとも近くともつかない第三者の声に、デクの体は自動的に稼働した。理由はなかった。デクの感覚は危機の一切を訴えていない。
     それでも、なにか来る、と。その規模を驚異として、彼は反射的に、先導する青年の前に出ようと軸足に力を込めた。
     ざぁ、と木々が立ち退く。折れるでも倒れるでもなく「退いて」いく。後から聞いた話によると、この人のこういう無精のせいで、ここには迷いの森なんて不名誉なあだ名がついたのだとか。
     即席のメインストリートの先にはローブ姿の人影。枯草色の髪の下、顔の左半分を垂れ布が覆っている。風変わりな出で立ちだが、デクの目を奪ったのはその顔の左側ではなく、露わな瞳の生気だった。
    「ここの道は当てにならないんだ。帰りは、『上』のルートを教えてもらうといいよ。……ああデクくんならその方が速いから、ツクヨミ」

       ◇

     森奥の館に案内されながら、デクは、名乗る前から自分の名を知っていた相手をマジマジと見つめ続けた。失礼とは思ったのだが、ちょっと視線を剥がすのが難しかった。
     顔の左側には火傷が見え隠れする。垂れ布には何の仕掛けもないようで、おそらく、そちらの視力は失われている。ゆったりとしたローブの下に、二つ名の由来の翼は見受けられない。あるいはもっと欠けた部位もあるのかもしれない。だが、足取りからそれを伺うことは難しかった。
     後ろ暗い人たちも、後ろめたい人たちも、彼が不自由な体を寝台に横たえ世を恨んでいるか、あるいは世を憂えていると思っている。こんな「やっほー」みたいなノリで客を出迎えてくれる様なんて、誰一人とて想像していまい。
     思い返せばたしかに、デクに彼を紹介してくれた人たちの語る人物像は、世間のそれとは大分かけ離れていたのだけれど。
    「街は最近どう? 山が崩れて随分川が濁ったけど、大丈夫だった?」
     椅子をすすめながら和やかに投げられた世間話に、デクは緊張気味に大きく頷く。
    「あ、はい。幸いなにも」
    「へぇ、浄化槽で頑張ってるの、たぶん俺の脾臓。その効率で回せてるなら技師は腕がいいね」
     都市伝説にご本人からお墨付きをもらえてしまった瞬間だった。

     なんて答えるところだろう、と、デクは持ち前の人の良さで途方にくれる。いつもお世話になっています。うん、絶対違う。
    「……ホークス」
     後ろに控えた従者のため息混じりの呼びかけに、ごめんごめんと軽々しく謝って、彼はテーブルについた手を組み直した。
    「じゃぁ『君の周り以外は』平和なもんだ、と。そりゃ結構。で、お泊り希望だっけ?」
    「はい、様子見で七日ほど」
    「七日で、何が起きるのかな」
     端的な問いに、デクはすぅ、と息を大きく吸った。
    「僕のことが邪魔なひとたちが、絶好の機会に痺れを切らすと思います」

     デクの前に座る相手は、愉快そうに笑みを深くした。
    「実直だね」
    「勝手なお願いなのは分かっています。場所を貸して頂いて、あとは見なかったことにさえして頂ければ……」
    「いいよ。ツクヨミ、空いてる部屋を適当に見繕ったげて」
     あっさりと投げられた許諾に虚を突かれている間に、当然反対すると思われた従者の青年にこれまたあっさり頷かれてしまって、我に返ったデクは大いに慌てた。
    「ですから、森の外れも外れに置いていただけたら十分です! そこも、なるべく壊さないようにしますから……」
    「あー、自分がタイヘンなときに、勝手に散歩する植物のことまで気にしなくていいよ。野宿もなしね。お客さん叩き出すわけにいかないでしょ」
     デクの言い分を一方的に断ち切って、彼は早々と腰をあげてしまう。決断も行動も何もかもが速すぎる、という風評だけは、実際と一致していたようだ。
     必要な話はこれで全部、と言わんばかりの姿が、去り際、左側でデクを振り返る。
    「あのひとは、元気かな」
    「……はい」

     表舞台に居た頃は、この国で起きたことなら知らぬことなどないと言われた人だ。デクが誰に遣わされたのかなんて、言うまでもなかったのだろう。
     言葉を切って、デクは続けたものかと少し迷う。炎の影をまとった恩師は、それを伝えることを望んでいない、いや、伝える資格がないと思っていたようだけれど。
    「あなたのことを、気にしていました」

       ◇

     館で住人の素性が窺われるのは、使用人なしでも切り盛りできる、随所の仕掛けだけだった。造り自体は質素というか簡素というか、合理主義の持ち主の気質そのままだ。噂されているような、国の暗部を収めた保管庫も、国を呪う呪物も見当たらず、ただ、天井の高さが、翼ある人間を想定していたことを伝えてくる。
     もっとも、その感傷は、初日に黒鞭を「高い所のものをとるのに便利」扱いされたことで消し飛んだ。

     下男を自称する青年は、実際、家の雑務一切を引き受けているようで、デクの手伝いを有難いと受け入れてくれた。
     彼は菜園を手入れし、膳の支度をし、行商人から購うものをリストして、そして時折姿を消す。館の主に尋ねると、「今日は買い物」だの「この家も結構広いからねー」だの、適当な答えが返される。
     デクの今日の仕事は獣避けの罠の見回りだ。
     仕事はもちろん大事だが、彼には罠とは別の探しものがある。木々の間に、空に、あるはずのものを探している。

       ◇

    「なんか言いたそうだね」
     客人の来訪から六日目、揺れる灯りに照らされて眠るように瞳を伏せていたホークスは、頬に刺さり続ける視線にようやく片目を開いた。
    「彼に、何を焚きつける気なのか、と」
    「なんにも?」
     真意を問う視線に、ほんとだってば、と彼はひらひらと手を振った。
    「『置いてほしい』としか言われてない。彼をここに寄越した人もそういう存念でしょ。……なに、あんな善人に物騒なネタ預けるような人非人に見えた? 俺」
    「あなたの倫理に不安を抱いたことは一度もない。良識を気軽に置いてくると思っているだけだ」
     えらい言われようだ、というホークスのぼやきを、ド……ンと遠くから響く地鳴りが遮った。誰かが、戦っている。
     住人はここに揃っているのだから、招かれざる闖入者を迎えたのは残る一人ということになる。伸びをしながら立上がり、ホークスは窓枠に手を置いた。
    「しっかし、……感知能力は大雑把に見えたんだけどな。なんで彼、先に現場にいるんだろうね」
    「自分で間に合わないなら、『見つけてくれるもの』の方を探しあてたのでは。……大体、隠す気もなかっただろう、あなたは」
    「見つけやすくしてあげた覚えもないんだけどなー」

     咎を聞かれるのを怖れてホークスの背を毟った人々は、その手で奪ったからこそ一層、赤い羽根の幻に怯えている。
     勝手な話だ、とツクヨミは表情を隠して俯き、彼の主は「じゃ、幻ってことにしておこう」と、千切られた歪な羽を舞わせて、人の悪い笑みを見せた。
     ツクヨミの見たところ、此度の善良な客人は聡明だった。先触れのない訪問に迎えが遣わされた絡繰を、「不思議なこともある」で放置したりしないくらいには。

     窓辺から退いた主に代わって、彼は窓枠に飛び乗った。
    「いいんだな?」
    「別に俺、誰にも肩入れしないよーなんて言った覚えはないんだよね。周りがどう思ってるかは知らないけどさ」
    「……くれぐれもここを動かずに」
    「そろそろ『いってきます』の代わりだよねぇ、それも」
     緊張感のない了承に、「どちらかといえば、まじないだろう」と返して、彼は夜空に飛び出した。

       ◇

     かつての争乱の最中、主を――そのときは未だ師と呼んでいたのだが――探し回っていたとき、彼の胸にあったのは、「冗談だろう」という罵声だった。
    「あってはならない」、「あってほしくない」、ではなく、「なんでそんなことになるのか分からない」。自分がこんな風に息せき切って走っているのもどう考えてたって無駄足であるべきなのだが、無駄足で終わってくれるなんて彼自身が一番信じられない。
     ちょっと剣呑なことになりそうだ、と、彼を国外に出したのは当の師匠だった。その融通が彼には可能だったということだし、だったら、危険を理解していた当人が留まり続ける意味が分からない。大体、その気になった彼の翼に、追いつける弓矢なんて存在しない。
     だが、己が己に赦したことしか『できない』、という点において、師がどれほど度し難いかなんてことは、彼にも嫌というほど分かっていたのだ。

     迷宮じみた、石造りの建物の最奥だった。光源は点々と灯る蝋燭だけだった。部屋は薄暗く、闇をよく見通す彼の目に映った意識のない師は、腹を割かれて、翼や肌の一部や、色んなものが欠けていた。
     ちゃぽんとケースに浮かんだ黄金の瞳と目があったとき、自分の口を突いたものが悲鳴だったのか激昂だったのかは、彼自身にもよく分からない。

     辺りが喧しくて我に返った。騒音の元はみな、黒影に押さえつけられ壁にめり込んでいた。一人残らず体のどこかがひしゃげていて、もう数秒放っておけば、多分平らになっていただろう。
     だっていうのに、そのとき、どう見ても死に体の師匠がパチリと目を開けて、

    「君が戻ってこられるとこまで収束したなら、ここでの仕事は仕舞いだね。脱出ルートは?」

     苦鳴でも、助けへの礼でも、指示に背いた叱責でも、はたまた惨状への慨嘆でもなく、そんなあんまりにもあんまりな第一声を口走ったせいで、彼は人殺しになり損ね、ついでに、その後の人生まで決まってしまった。
     平たく、放っておく、という選択肢が臨終したのだ。

       ◇

    「本当に、お世話になってしまって」
     訪れたときと同じ旅装で、デクは見送りに出てくれた館の主に深々と頭を下げる。
    「やー君が力持ちで助かったのはこっちだし、あとは自分ちの小火を消しただけだよ。……日が落ちてからツクヨミが守る場所に攻めてくるってのは、幾ら何でも舐めすぎだ」
    「あなたが戦闘にまで介入するとは考えなかったんだと思います。向こうも」
     デクは一度自分の爪先に視線を落とし、それから意を決して口を開いた。
    「あの、……情勢も落ち着いてきました。あなたが戻ってきてくれるなら、協力を惜しまない人がたくさん、本当にたくさんいます。微力ですが、僕もがんばります。だから……」

     デクの言葉は、とっくに予期されていたようだった。きっと、デクが彼に挨拶した日、恩師の息災を尋ねられたそのときから。
     飄々と嘯く声から真意を量ることは、相変わらず難しかった。
    「俺はともかく、……うちのは連れてってやってほしいかな。本人、聞いたら怒るけどね」
     デクは曰く言い難い表情で、ホークスの隣を見遣る。「聞いたら怒る」らしい彼は、一切反応を返していなかった。沈黙が怖い。
    「なんでそれ聞こえるところで言うんですか……」
    「聞こえないとこで言う方が酷くない?」

     デクの恩師と、懇意にしている人たちは、ホークスのことを気にかけ、そして同じくらいかあるいはそれ以上に、ツクヨミのことを心配していた。というか、同情していた。
     ホークスという人物に対する信頼と、「それはそれとしてあんなもんにとっ捕まって気の毒に」という評が一体どうして両立するのか、デクとしては心底不思議だったのだが、蓋を開ければ確かにこれは、この上なく信頼に値する人と、大変な苦労人の取り合わせに相違なかった。
     有難い話だけどね、とホークスはあっさりとデクの申し出を退ける。
    「でも、今がそんなに不自由ってわけでもないんだ。……結局俺は自分のしたいことしかしないから。どこで生きてたって、こんなもんだよ」

       ◇

     上のルート、すなわち樹上のトラップを抜けていくルートをデクに提示してツクヨミが降りてくると、主はまだ外に佇んでいた。
    「ご苦労様。……少し、騒がしくなるかもね」
    「『誰の敵でも味方でもない』という名分を、投げ捨てたのはご自分だ。当然そうなる」
    「あーやだやだ、楽したいんだけどなぁ、俺」
     わざとらしい溜息をつく主に、従者の言葉はにべもない。
    「猫の足音だの、魚の吐息だの、欲しがってみるのはご自由と思う」
    「……ありゃ、今日は随分突っかかるね」
    「『聞いたら怒る』話を聞かされたもので」

     それでも、「欲しがる『ふりをする』のは自由だろう」という皮肉が言えないあたり、ツクヨミはどうしようもなく人が好かった。実際のところ、楽がしたい、というのがホークスの切実な本音なのも間違いないのだ。叶えられる性分をしていないだけで。
     ふん、と鼻を鳴らして彼は主に手を差し伸べる。羽による探査がいくらルーチンと言っても、一週間も厳戒態勢で運用し続けることは想定されていない。当然、元々ボロボロの体にガタがくる。
    「……ご心配頂かずとも、結局俺は自分のしたいことしかしない。どこで生きていたって、こんなものだろう」

     そう、と、ホークスはどこかで聞いた話に苦笑いする。差し伸べられた手を大人しくとった彼は、その場でふらついて従者の寿命を今日も縮めた。
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    g_arowana

    PROGRESSとこほです(胸を張る)。
    いつか書こうと思ってるR指定のやつの冒頭パートなのでこれはとこほで間違いないです。同居未来。

    現時点ではひっっどい仮タイトルがついてるんで、書き上がるころにはまともなのに出てきてほしい。
     水桶につっこんでおいた夜食の皿と、朝食に使った皿。二人分がにぎやかに食洗に洗われている。余計なものの退いた明るいオープンキッチンで、常闇は二杯目のコーヒーをカップに注いだ。
     朝食中に一杯、食後に一杯、二人あわせて計四杯。豆の量はそろそろ手に馴染みつつあるが、彼ら師弟が揃って食後にのんびりできる機会は多くないため、ルーティーンとはまだ呼びづらい。
     
     常闇が二つのカップを手に向かうのは、ホークスの休むソファだ。アームレストは無垢板で、ちょっとしたテーブル代わりにも使える。その定位置に、常闇はソーサーをかちゃりと置いた。
     カップソーサーを「無駄じゃない?」の一言で片付けそうなホークスだが、意外なことにこのカップは彼が選んだものだ。肉厚でぽってりとしており、つるりとした釉薬の下から素朴な土の質感を覗かせる。その風合いを「古良き名喫茶って感じで、君っぽい」とホークスは喜び、カップは今日まで二人に愛用され続けている。探し始めてからお気に入りに決断するまでの所要時間がものの十分程度だった、という点については、実に彼らしいエピソードと言えるだろう。
    1949

    g_arowana

    DONE鳥師弟。……いや告白してる気がしなくもないのでとこほなのか。どうなんだ。いつものよぅ分からんやつです。
    ヒ暇世というには忙しい未来の休暇話。
     春空に、無数のシャボン玉が舞っている。

     だだっ広い芝生の上では、小学校に上がるくらいの年頃の子供が何人も、空に虹色を飛ばしている。シャボン玉なんて、と最初はバカにしていたのだが、あたりいっぱいに飛ばしているうちになんだか面白くなってしまったらしい。今は大きく頬を膨らませて意気盛んだ。
    「君は遊ばないの?」
     ホークスは、彼らからちょっと離れた芝生に座る子供の隣で屈みこむ。
     今日の彼の姿は、羽をパーカー下に畳んでキャップを被った休日スタイル。身分を保証するものは掲げていない。もっとも、例え羽が見えていても、近年裏方に回りがちな彼をこの年頃の子供がヒーローと認識するかは怪しいところだ。
     鳥型の少年だった。タイプとしては嘴長めの鴉寄り。ホークスの身内とは色味以外はあまり似ていない。そんな少年は、ホークスの馴れ馴れしくもなければ畏まるでもない、あまりに自然な態度に、答えを返して当然だと思わされたようだった。そう仕向けているのはホークスだが、育成環境由来のこの特技には当人も「適性・人さらいって感じだよなぁ」と思っている。
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