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    g_arowana

    @g_arowana

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    g_arowana

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    最後に一本だけ書く予定だった炎ホがお蔵入りになりそうなので、一部だけサルベージ。
    炎ホいうても炎さん最後の1Pまで出てこないんですよ(ひたすらにホークス解体編が続くいつもの芸風)

     俯瞰の光景。
     暴力も、檻のような家も、そこから見れば手のひらに乗りそうだった。あんなちっぽけなものから逃げられないのか、と呆然とすると同時に、あんなにちっぽけだから、壊れていても誰も気にしないんだろう、と納得もした。
     ホークスという人間を象った、原風景だ。

    「ホークス、……ホークス?」
     風遊ぶ鉄塔の上、横合いからかけられた声に反応が遅れた。
     並列処理に特化したホークスの頭脳が、己に向けられた言葉を聞き落とすことは珍しい。それをよく知る常闇は、師匠の上の空に憤慨することなく気遣わしげな顔をする。
    「何か、お悩みか」
    「うん」
     両者はしばし見つめ合う。ホークスの顔に浮かぶのは胡散臭い笑顔で、対する常闇の方といえば「心労」と題して額に収めたくなるような面持ちだ。
    「……どうか、あまり思い詰められることのなきよう」
    「ありがとね」

     一望に収まる全てが、同時に手が届かないほど遠い。ホークスの領分である広大な空は、そんな少しさみしい世界だ。そこに、彼の弟子の精神はよく馴染んだ。
     来られるというなら「ここ」に来てみろ。この視座に立てるというならやってみろ。そんな笑いが込み上げて、彼を空へと招いてしまったあの日の自分は、今にして思えば食らいつく彼に大分浮かれていたのだな、とホークスは時折考える。
    「で、なんか気になった?」
    「街の西側の流れに、少し違和感が」
     へぇ、とホークスは常闇の見つめる方向に目を凝らす。
    「……イベントとかは聞いてないね。君の午後の担当エリア、変えとく?」
    「いいのか」
    「ローテいじっとくから行っといで。そういう勘を磨いてほしくて連れ回してる」
    「御意」

     古風で大仰な物言いが妙に様になるのは昔からだが、最近は「貫禄の方が振る舞いに追いつく」という逆転劇でもって、益々言動の違和感を駆逐しつつある。落ち着いた態度が心強いと市民の反応も上々だ。
     清廉な「真なるヒーロー」を求めるヒステリーと、我らもまた彼らを支えなくてなんとするという反省の混沌の結果、世相は当時学生だったヒーローを無闇に持て囃すところに落ち着いた。
     世間が騒がしい間も静かに、だが断固としてホークスの傍を離れなかった常闇の姿は、医療ベースを守って多くの命を救ったことが特集番組で放映されて以来、益々美談扱いされている。もっとも、常闇が喜んだのは、師であるホークスの風評が棚ボタで改善されたことだけで、己への評価には冷めたものだった。雄英に入学した頃なら喜んでいたやもしれないが、と渋い顔をする彼のメディア不信の原因は、言うまでもなく、下手を踏んだ師匠の受けたバッシングにある。これ、俺がどうにかしないとだよなぁ、とホークスは密かに頭を抱えている。

    (中略)

     やたらと理屈っぽい考え方をする子供だったので、成人した今も、あの家で自分の考えていたことは比較的理解しやすい。
     と、いっても、当時の自分の方から不満が上がる可能性は大いにある。当時の予定ではこんなふうにふてぶてしく育つ予定はなかったはずだ。自分で言うのもなんだが、年の割に礼儀正しい子どもだったのだ。父親に「俺の息子のくせに気取りやがって」と殴られるくらいには。
     つまり誰に褒められるでもない礼節だったのだが、結局のところ、あれは意地だったのだろう。あまりに「ちゃんとしてない」両親から生まれたことを理由に、自分にできないことを勝手に決めつけてくる世界に対する、幼い意地だ。
     お前は盗人になるために生まれてきたのだという母の言葉に納得できなかった。
     何者かになりたかった。
     何になるのかは、自分で決めたかった。

    (中略)

     酷ぇヤツだな、と、先輩は疲れた顔に苦笑いを浮かべた。
     誰もがお前みたいにはできねぇよ。
     それは少し違う。ホークスにだって「できて」はいない。そんなもの、できた試しがない。
     ただ、目指すことを止められない。どうやったって、止められないだけだ。
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    g_arowana

    PROGRESSとこほです(胸を張る)。
    いつか書こうと思ってるR指定のやつの冒頭パートなのでこれはとこほで間違いないです。同居未来。

    現時点ではひっっどい仮タイトルがついてるんで、書き上がるころにはまともなのに出てきてほしい。
     水桶につっこんでおいた夜食の皿と、朝食に使った皿。二人分がにぎやかに食洗に洗われている。余計なものの退いた明るいオープンキッチンで、常闇は二杯目のコーヒーをカップに注いだ。
     朝食中に一杯、食後に一杯、二人あわせて計四杯。豆の量はそろそろ手に馴染みつつあるが、彼ら師弟が揃って食後にのんびりできる機会は多くないため、ルーティーンとはまだ呼びづらい。
     
     常闇が二つのカップを手に向かうのは、ホークスの休むソファだ。アームレストは無垢板で、ちょっとしたテーブル代わりにも使える。その定位置に、常闇はソーサーをかちゃりと置いた。
     カップソーサーを「無駄じゃない?」の一言で片付けそうなホークスだが、意外なことにこのカップは彼が選んだものだ。肉厚でぽってりとしており、つるりとした釉薬の下から素朴な土の質感を覗かせる。その風合いを「古良き名喫茶って感じで、君っぽい」とホークスは喜び、カップは今日まで二人に愛用され続けている。探し始めてからお気に入りに決断するまでの所要時間がものの十分程度だった、という点については、実に彼らしいエピソードと言えるだろう。
    1949

    g_arowana

    DONE鳥師弟。……いや告白してる気がしなくもないのでとこほなのか。どうなんだ。いつものよぅ分からんやつです。
    ヒ暇世というには忙しい未来の休暇話。
     春空に、無数のシャボン玉が舞っている。

     だだっ広い芝生の上では、小学校に上がるくらいの年頃の子供が何人も、空に虹色を飛ばしている。シャボン玉なんて、と最初はバカにしていたのだが、あたりいっぱいに飛ばしているうちになんだか面白くなってしまったらしい。今は大きく頬を膨らませて意気盛んだ。
    「君は遊ばないの?」
     ホークスは、彼らからちょっと離れた芝生に座る子供の隣で屈みこむ。
     今日の彼の姿は、羽をパーカー下に畳んでキャップを被った休日スタイル。身分を保証するものは掲げていない。もっとも、例え羽が見えていても、近年裏方に回りがちな彼をこの年頃の子供がヒーローと認識するかは怪しいところだ。
     鳥型の少年だった。タイプとしては嘴長めの鴉寄り。ホークスの身内とは色味以外はあまり似ていない。そんな少年は、ホークスの馴れ馴れしくもなければ畏まるでもない、あまりに自然な態度に、答えを返して当然だと思わされたようだった。そう仕向けているのはホークスだが、育成環境由来のこの特技には当人も「適性・人さらいって感じだよなぁ」と思っている。
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