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    g_arowana

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    g_arowana

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    来世になってもカップリングにならないNo2と3の雑バディ。
    まだジニさんがホーさんを「君」呼びしてたころの話。

    呑み会に繋げる予定で書き始めたのですが、「特に繋げる必要がないな」と途中で気がついたので今日はここまで(多分いつか書きます)

    #雑バディ
    buddy

     ホークスのデビューは鮮烈だった。
     ベストジーニストより上の代には、二十歳もそこそこにナンバー2を不動にしたエンデヴァー、そして勿論、生ける伝説のオールマイトがいる。だから「齢十八にしてトップ10入り」という成績の「前人未踏」面のインパクトは案外大きくなかったのだが、それでも異例のスピードには違いなかった。
     端的に、「頼もしいヒーローが出てくれたな」と思ったものだ。ジーニストは社会貢献に積極的なヒーローで、有難いことに支持率にも恵まれている。妥協のない品行方正ぶりは彼の人気の一因だ。「ヒーローが言わずして、一体誰が正論を言えるというのか」と胸を張る彼だったが、その姿勢が、導くべき若者にこそ煙たがられてしまうのには、些か反省の念も抱いていた。その点、ホークスの歯に衣を着せない物言いは、ジーニストでは届かない層にも響くと見えたのだ。
     アイコンとして相応しいかについては、実は全く心配していなかった。単に数字を見ての判断だ。特筆すべきは事件解決数以上に、解決スピードと被害の抑制。
     犠牲を出さないことにあれだけ特化したヒーローは、全国を探しても希有だろう。

     とはいえ、まさかそれから二年を待たずして、三位の座を明け渡す羽目になるとは思わなかったが。

       ◇

     夕暮れだった。橙の光に、なにもかもの影が長かった。
     一帯を封鎖しての大捕物、現行犯を引き渡した警察に後始末を頼んだ後、ジーニストは一人、橋の上に立っていた。揃えた前髪を海風に遊ばせ、車も人も絶えた光景を特等席で目に焼き付ける。
     人工と無人のコントラスト。夜と昼の境の光。来期のコレクションのイメージに、偏光ガラスの破片のようなピースがはまる。
     背後に気配を感じたのは、そのときだった。

     音はなかった。
     振り返った先の欄干の親柱、ジーニストの腰ほどに位置する意匠の上、最初の最初からそこにいたかのようにして、巨きな鳥がとまっていた。
     背に倍する翼の色は赤。枯草色の髪が逢魔が時に染まっている。ポケットに手を突っ込んだまま、逆光を負う顔は影に沈んで、金の瞳を鳥のそれに見せていた。
    「……やぁ、見物かな」
    「用事があっさり済んだんで」
     ホークスが親指で指したのは背後の海、その先の対岸だ。この機動力を実現できるヒーローは、世界中からかき集めても一握りだろう。
     止まり木から降りる気もないらしい男は、ジーニストの頭上で肩をすくめて見せた。
    「毎度、手を出す隙がないですねー。あなたの案件は」
    「『速すぎる男』の言うことかい?」
    「どんな速度で羽根飛ばしても、『最初からそこにあるもの』には敵いませんよ。それより『速く』ってんなら……」
     ホークスの口の中で語尾が噛み潰される。潰したからには潰した意図があったのだろうが、特に気にせずジーニストは言葉を引き継いだ。
    「『端から事件を起こさせない』」

     柔らかな潮騒が沈黙に満ちる。
    「君の本領だろう?」
     ややあって、三白眼が思い切り眇められた。そこでようやく、ジーニストは「なんだ、この男は不機嫌だったのか」と納得する。斜に構えた態度と愛嬌を器用に使い分けるヤツが、今日に限って等身大の猛禽じみた雰囲気を隠さないと思ったら。
     バサリと翼が持ち上がる。先ほどの無音の着地しかり、この男のやっていることは厳密には飛翔ではないので、こんな動作も本来不要だ。単に当人の気分と、あとは、「もう俺行くんで」という雑な挨拶を兼ねている。
    「ああそうだ」
     ポールトップを蹴って飛び立つ男を声に追わせた。
    「三位昇格、おめでとう」
     空で律儀に振り向いた男の顔は、残照の暗がりでも分かるくらい、苦虫を噛みつぶしたようだった。
    「…………俺は、あと二期はかける予定でしたよ」

       ◇

     さて、割とどうでもいいことであるが、ベストジーニストのSNSは意外と燃える。正論しか言わない男が何故、というと、正論しか言わないからこそよく燃える。
     空気を読まないド正論はジーニストの名物で、彼はそれも込みでオールマイトに次ぐ支持率を維持してきた。だから、別にそれが降格の原因だとは思っていない。ちょっとばかり延焼がど派手で、時期が集計の追い込みを射貫いたわけだが、ヒーローとして言うべきことを言った結果に何がついてこようとそんなことは彼の頓着の対象に入らない。
     
     あと二期、デビューからたった二年半。それだけの期間でナンバー3を真正面から蹴り落とせる予定だったという宣言と、その蹴り落としたい相手の足を引っ張ったものへの憤慨に、ジーニストは、周りに人がいないのをいいことに笑いを漏らす。
     存外に真っ直ぐ、いや。
    「実にヒーローらしいヒーロー、だな?」

     翼の遙かに消えた海に言い置いて、ジーニストは踵を返した。
     仕事は山積みだ。先のアイディアをランウェイで披露するには、世の中をもう少し平和にしないと始まらない。
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    g_arowana

    PROGRESSとこほです(胸を張る)。
    いつか書こうと思ってるR指定のやつの冒頭パートなのでこれはとこほで間違いないです。同居未来。

    現時点ではひっっどい仮タイトルがついてるんで、書き上がるころにはまともなのに出てきてほしい。
     水桶につっこんでおいた夜食の皿と、朝食に使った皿。二人分がにぎやかに食洗に洗われている。余計なものの退いた明るいオープンキッチンで、常闇は二杯目のコーヒーをカップに注いだ。
     朝食中に一杯、食後に一杯、二人あわせて計四杯。豆の量はそろそろ手に馴染みつつあるが、彼ら師弟が揃って食後にのんびりできる機会は多くないため、ルーティーンとはまだ呼びづらい。
     
     常闇が二つのカップを手に向かうのは、ホークスの休むソファだ。アームレストは無垢板で、ちょっとしたテーブル代わりにも使える。その定位置に、常闇はソーサーをかちゃりと置いた。
     カップソーサーを「無駄じゃない?」の一言で片付けそうなホークスだが、意外なことにこのカップは彼が選んだものだ。肉厚でぽってりとしており、つるりとした釉薬の下から素朴な土の質感を覗かせる。その風合いを「古良き名喫茶って感じで、君っぽい」とホークスは喜び、カップは今日まで二人に愛用され続けている。探し始めてからお気に入りに決断するまでの所要時間がものの十分程度だった、という点については、実に彼らしいエピソードと言えるだろう。
    1949

    g_arowana

    DONE鳥師弟。……いや告白してる気がしなくもないのでとこほなのか。どうなんだ。いつものよぅ分からんやつです。
    ヒ暇世というには忙しい未来の休暇話。
     春空に、無数のシャボン玉が舞っている。

     だだっ広い芝生の上では、小学校に上がるくらいの年頃の子供が何人も、空に虹色を飛ばしている。シャボン玉なんて、と最初はバカにしていたのだが、あたりいっぱいに飛ばしているうちになんだか面白くなってしまったらしい。今は大きく頬を膨らませて意気盛んだ。
    「君は遊ばないの?」
     ホークスは、彼らからちょっと離れた芝生に座る子供の隣で屈みこむ。
     今日の彼の姿は、羽をパーカー下に畳んでキャップを被った休日スタイル。身分を保証するものは掲げていない。もっとも、例え羽が見えていても、近年裏方に回りがちな彼をこの年頃の子供がヒーローと認識するかは怪しいところだ。
     鳥型の少年だった。タイプとしては嘴長めの鴉寄り。ホークスの身内とは色味以外はあまり似ていない。そんな少年は、ホークスの馴れ馴れしくもなければ畏まるでもない、あまりに自然な態度に、答えを返して当然だと思わされたようだった。そう仕向けているのはホークスだが、育成環境由来のこの特技には当人も「適性・人さらいって感じだよなぁ」と思っている。
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    g_arowana

    DONE来世になってもカップリングにならないNo2と3の雑バディ。
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    呑み会に繋げる予定で書き始めたのですが、「特に繋げる必要がないな」と途中で気がついたので今日はここまで(多分いつか書きます)
     ホークスのデビューは鮮烈だった。
     ベストジーニストより上の代には、二十歳もそこそこにナンバー2を不動にしたエンデヴァー、そして勿論、生ける伝説のオールマイトがいる。だから「齢十八にしてトップ10入り」という成績の「前人未踏」面のインパクトは案外大きくなかったのだが、それでも異例のスピードには違いなかった。
     端的に、「頼もしいヒーローが出てくれたな」と思ったものだ。ジーニストは社会貢献に積極的なヒーローで、有難いことに支持率にも恵まれている。妥協のない品行方正ぶりは彼の人気の一因だ。「ヒーローが言わずして、一体誰が正論を言えるというのか」と胸を張る彼だったが、その姿勢が、導くべき若者にこそ煙たがられてしまうのには、些か反省の念も抱いていた。その点、ホークスの歯に衣を着せない物言いは、ジーニストでは届かない層にも響くと見えたのだ。
     アイコンとして相応しいかについては、実は全く心配していなかった。単に数字を見ての判断だ。特筆すべきは事件解決数以上に、解決スピードと被害の抑制。
     犠牲を出さないことにあれだけ特化したヒーローは、全国を探しても希有だろう。

     とはいえ、まさかそれから二 2024

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