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    g_arowana

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    g_arowana

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    雑バディこと、生きるのに器用で不器用な天然デニムとホーさんの話

    #雑バディ
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    「ってか、ジーニストさん、死ぬっほどモテるでしょうに」
    「全く同じことをお前も言われてそうだがな」

     人好きのする話好き、という評とは裏腹に、実の所ホークスは、プライベートに踏み込む話が好きではない。単に、話せないことが多いのだ。外向けのシナリオは自白剤を打たれても垂れ流せるほど刷り込んであるにせよ、面倒なものは面倒に違いない。
     だから、そんな話になったのは珍しかった。
    「黙ってるのはファン向けのサービスって思われてそうですよね、あなたの場合」
    「残念ながらご期待に添えず、だ。独り身だよ」
    「目の色変えて喜ぶ人のが多いんでは」
     ホークスは、紙コップをふぅふぅと冷ます。放り込まれたティーバッグはジーニストの私物だ。超常解放戦線との全面戦争に始まる事件もようやく後始末、対策本部にもこの程度の余裕はできた。
    「ま、アイドルやタレントより、ヒーローのが結婚発表したがりませんが。っていうか、歓迎されない?」
    「誰だって、助けられるときに、自分の優先順位が隣人より低いのでは、なんて心配をしたくはないだろうさ。規範を示す偶像は誰のものでもあるべきではない、という考え方は、万人に押し付けるには問題があるにせよ、デニムのステッチくらいには筋が通っている」
     へー、と適当な相槌を打って、ホークスは紙コップに口をつけた。備え付けのポットの湯で淹れただけなのに妙に香り高い。これを持ち込む趣味人が、煮つめた泥のようなコーヒーを黙って呑んでいたあの時期は、なんというか本当にギリギリだったのだな、としみじみする次第だ。
     もっとも、この礼節が服を着たヒーローなら、泥そのものを出されたところで、他人が供してくれたものにケチをつけたりはしなかったかもしれないが。
     
     そんな彼の生真面目ぶりをボンヤリ思い、「生真面目」からはたと思い当たってしまったことがあって、ホークスは引きつった。
     ちらりと隣に目をやる。ジーニストは実に美しい所作で、紅茶から立ち上る香りを味わっている。ただの紙コップが名のある磁器に見えてくるから怖い。
    「……あの。まさかとは思いますが、『偶像は誰のものでもないのが筋だ』を大真面目に実践していらっしゃる、とか言わんですよね?」
    「いけないか?」

     ホークスは無言で頭を抱えた。ジーニストはというと、香りを十分に楽しんだらしい紅茶に口をつけて、満足そうに頷いている。
     それはそうだろう。話に頭を抱えられたくらいでめげる男に、デニムトークは無理である。
     寝不足以外の原因の頭痛を覚えながら、ホークスは、なんかこの付き合い長くなる気がする、と内心うめいた。
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    Replies from the creator

    g_arowana

    PROGRESSとこほです(胸を張る)。
    いつか書こうと思ってるR指定のやつの冒頭パートなのでこれはとこほで間違いないです。同居未来。

    現時点ではひっっどい仮タイトルがついてるんで、書き上がるころにはまともなのに出てきてほしい。
     水桶につっこんでおいた夜食の皿と、朝食に使った皿。二人分がにぎやかに食洗に洗われている。余計なものの退いた明るいオープンキッチンで、常闇は二杯目のコーヒーをカップに注いだ。
     朝食中に一杯、食後に一杯、二人あわせて計四杯。豆の量はそろそろ手に馴染みつつあるが、彼ら師弟が揃って食後にのんびりできる機会は多くないため、ルーティーンとはまだ呼びづらい。
     
     常闇が二つのカップを手に向かうのは、ホークスの休むソファだ。アームレストは無垢板で、ちょっとしたテーブル代わりにも使える。その定位置に、常闇はソーサーをかちゃりと置いた。
     カップソーサーを「無駄じゃない?」の一言で片付けそうなホークスだが、意外なことにこのカップは彼が選んだものだ。肉厚でぽってりとしており、つるりとした釉薬の下から素朴な土の質感を覗かせる。その風合いを「古良き名喫茶って感じで、君っぽい」とホークスは喜び、カップは今日まで二人に愛用され続けている。探し始めてからお気に入りに決断するまでの所要時間がものの十分程度だった、という点については、実に彼らしいエピソードと言えるだろう。
    1949

    g_arowana

    DONE鳥師弟。……いや告白してる気がしなくもないのでとこほなのか。どうなんだ。いつものよぅ分からんやつです。
    ヒ暇世というには忙しい未来の休暇話。
     春空に、無数のシャボン玉が舞っている。

     だだっ広い芝生の上では、小学校に上がるくらいの年頃の子供が何人も、空に虹色を飛ばしている。シャボン玉なんて、と最初はバカにしていたのだが、あたりいっぱいに飛ばしているうちになんだか面白くなってしまったらしい。今は大きく頬を膨らませて意気盛んだ。
    「君は遊ばないの?」
     ホークスは、彼らからちょっと離れた芝生に座る子供の隣で屈みこむ。
     今日の彼の姿は、羽をパーカー下に畳んでキャップを被った休日スタイル。身分を保証するものは掲げていない。もっとも、例え羽が見えていても、近年裏方に回りがちな彼をこの年頃の子供がヒーローと認識するかは怪しいところだ。
     鳥型の少年だった。タイプとしては嘴長めの鴉寄り。ホークスの身内とは色味以外はあまり似ていない。そんな少年は、ホークスの馴れ馴れしくもなければ畏まるでもない、あまりに自然な態度に、答えを返して当然だと思わされたようだった。そう仕向けているのはホークスだが、育成環境由来のこの特技には当人も「適性・人さらいって感じだよなぁ」と思っている。
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    g_arowana

    DONE来世になってもカップリングにならないNo2と3の雑バディ。
    まだジニさんがホーさんを「君」呼びしてたころの話。

    呑み会に繋げる予定で書き始めたのですが、「特に繋げる必要がないな」と途中で気がついたので今日はここまで(多分いつか書きます)
     ホークスのデビューは鮮烈だった。
     ベストジーニストより上の代には、二十歳もそこそこにナンバー2を不動にしたエンデヴァー、そして勿論、生ける伝説のオールマイトがいる。だから「齢十八にしてトップ10入り」という成績の「前人未踏」面のインパクトは案外大きくなかったのだが、それでも異例のスピードには違いなかった。
     端的に、「頼もしいヒーローが出てくれたな」と思ったものだ。ジーニストは社会貢献に積極的なヒーローで、有難いことに支持率にも恵まれている。妥協のない品行方正ぶりは彼の人気の一因だ。「ヒーローが言わずして、一体誰が正論を言えるというのか」と胸を張る彼だったが、その姿勢が、導くべき若者にこそ煙たがられてしまうのには、些か反省の念も抱いていた。その点、ホークスの歯に衣を着せない物言いは、ジーニストでは届かない層にも響くと見えたのだ。
     アイコンとして相応しいかについては、実は全く心配していなかった。単に数字を見ての判断だ。特筆すべきは事件解決数以上に、解決スピードと被害の抑制。
     犠牲を出さないことにあれだけ特化したヒーローは、全国を探しても希有だろう。

     とはいえ、まさかそれから二 2024

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    g_arowana

    DOODLEこの間の、嘴が楽しくてしょーがない師がいる時空の話。
    この世界線の彼らのプロポーズ(????)の経緯はこんなでした。

    とこやみくんとかみなりくんの話は珍しい気がする。
     友人が既婚者だつた。
     上鳴は、飲んでいたカシオレに静かに噎せた。
     
     常闇と上鳴は、旧A組の中では特に仲が良かった方ではない。好む話題もベースのテンションも、とかく色々ズレている。
     だが仲の良かった「方」ではないといっても、それは、全員が全員親友だといって過言でないA組基準の話である。二人は一般的には十分以上に仲が良く、こうして上鳴が、飲みの席でも隅を好む常闇の隣に「よう!」と話しに来たりする。加えて言うなら、彼にとって常闇は、個人的に印象深い人間だった。
     彼らにとって超常解放戦線との戦いは今なお忘れがたい傷痕だ。その強個性から学生の身空で「戦争」の最前線に引っ張り出されたとき、上鳴は正直半泣きだった。仲間想いの彼は最後には背後の級友のために奮起したのだが、そういう上鳴だからこそ、ホークスのピンチを叫んで上官の制止を振り切ってしまった常闇に顎を外したものだ。常闇自身の語彙を借りるなら、正しく漆黒の流星のような吶喊だった。
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    g_arowana

    PROGRESSとこほです(胸を張る)。
    いつか書こうと思ってるR指定のやつの冒頭パートなのでこれはとこほで間違いないです。同居未来。

    現時点ではひっっどい仮タイトルがついてるんで、書き上がるころにはまともなのに出てきてほしい。
     水桶につっこんでおいた夜食の皿と、朝食に使った皿。二人分がにぎやかに食洗に洗われている。余計なものの退いた明るいオープンキッチンで、常闇は二杯目のコーヒーをカップに注いだ。
     朝食中に一杯、食後に一杯、二人あわせて計四杯。豆の量はそろそろ手に馴染みつつあるが、彼ら師弟が揃って食後にのんびりできる機会は多くないため、ルーティーンとはまだ呼びづらい。
     
     常闇が二つのカップを手に向かうのは、ホークスの休むソファだ。アームレストは無垢板で、ちょっとしたテーブル代わりにも使える。その定位置に、常闇はソーサーをかちゃりと置いた。
     カップソーサーを「無駄じゃない?」の一言で片付けそうなホークスだが、意外なことにこのカップは彼が選んだものだ。肉厚でぽってりとしており、つるりとした釉薬の下から素朴な土の質感を覗かせる。その風合いを「古良き名喫茶って感じで、君っぽい」とホークスは喜び、カップは今日まで二人に愛用され続けている。探し始めてからお気に入りに決断するまでの所要時間がものの十分程度だった、という点については、実に彼らしいエピソードと言えるだろう。
    1949