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    あまみ

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    あまみ

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    しきざき

    お館様に小悪魔配信して欲しかった
    原型はないです

    #シキザキ

    しきざき不老不死ってなんか損かも。
    久しぶりに対面した真っ白い天井を見上げながら、斬はひとり息を漏らす。
    変わらない視覚情報、洗剤とは違う薬品のにおい、時計の針の音ひとつ響かない静寂、どれもこれもすべてが苦手だ。
    治りが早くならないかな、と、あまり意味のない望みをかけて目を瞑る。部屋が白すぎてまぶたが痛い。

    シンプルに、自分のミスだった。
    すぐに終わるはずだった討滅作戦、人間を模した形の陽動にまんまと騙されて、直後に現れた本体に左脚を食いちぎられた。お館様の術式発動の時間は稼げていたし、彼にはかすり傷ひとつ負わせなかったので別にいいと言えばいいのだけれど。
     
    「……呪力の感知、まだまだだなあ」

    ここへ運び込まれる直前の、仲間たちの心配そうな表情が頭から離れない。「斬ならすぐに元気になって追いついてくるよ」、と叢裂さんを撫でるお館様だってどことなく落ち込んでいそうにみえた。たぶん、絶対、そう、ですよね?
    まあ、そのまま作戦に戻るチームに対して、純粋な戦力減になってしまったことは確かだ。反省するところはしっかり反省して、同じ轍を踏まないようにしなければ。

    ちぎられた脚は?敵に飲み込まれた?……あー、そっすか、そうなると時間がかかりますが、自分ちだと思ってくつろいでってください。あ、違う、ゆっくりしていってね。

    テンションに反して口数の多い医者いわく、肉体を修復させるより切断されたものを接着する方がはるかに回復が早いのだという。いっそ一度お館様あたりに体を焼き尽くしてもらった方が復活が早いのでは……とよぎった考えは、自分のことのように落ち込む叢裂さんと、どことなく涙目になっている紫亜さんを見てかき消した。
    結果、GARDEN内の医療施設に数日お泊まりとなってしまったわけで。
    たとえ体中の血が抜けきってしまっても、“命に別状はない“とされるのがオレたち不老不死という存在だ。
    「じゃっ、なんかあったら呼んでくださいっす!」、水と痛み止めの薬とわずかな応急処置をほどこされただけで放置されて、かれこれ何時間経っただろう。
    痛いし、動けないし、けど元気だし、暇だし、でも片脚がないから動けないし!
    そろそろ生えろよと左腕を伸ばす。空を掴む感覚が手に取れるほど虚しい。
    ベッド脇に放り出したスマートフォンが存在を主張したのはそんな時だ。気を落とすな、と叱りつけるみたいにバタバタ震える液晶ディスプレイは、たったひとり名前を表示するだけでいとも簡単にオレを励ましてしまう。

    「おっ、お館様!?」

    反射で通話ボタンを押してから、しまった、と、波間でもがくように佇まいを直す。
    パッと映し出されたのは、ひょこひょこと動く白い苗だ。
    「お館様、多分それ距離近すぎます」聞き慣れた仲間の声がしたと思ったら、「おお、おお、」、ぴょこっと、楽しそうな男の顔が現れる。
    お館様、お館様だ。少しも疲れた様子を見せず、出かけていったときと同じ白さの衣を凛と着こなして、まるで旅行先から電話をかけてきたような気安さで、画面の向こうでひらひらと手を振っている。千紫全員無事であることは明白だ。オレが気を揉まないように、わざわざ連絡を入れたのだろう。

    「絶好調みたいですね、お館様」

    ご無事で何より、を噛み締める。こういうセリフは本当に無事帰還してから直接伝えるのだと、なんとなく斬は信じていた。

    『楓たちに新しい呪いを教わってな。せっかくだから、お主にサプライズしてやろうと思ってな』
    「なるほど、オレは練習台ですか」

    ふふ、とお館様がほくそ笑む。対面しているとはいえ、通信機器の画面越しだ。それほどたいそうな術がかけられるとは思えない。
    じっと身を乗り出して注視するその向こう側で、お館様の唇がひょっとこのようにねじ曲がる。
    老眼のおじいちゃんみたいに薄目になったかと思えば、『んー、ちゅっ!』、ひょっとこに指先を当てて、むにゅっとキスを投げてくる。
    その、滑稽な姿といったら。

    「……ぶっ、ふふ、ふふふふ、ははっ、」

    笑いをこらえるどころではない。
    堰を切ったように止まらない声は病院だというのにどんどん大きくなって、自分の爆笑にまたふつふつと笑みがこみ上げる。腹を押さえて、シーツを叩いて、なんとか呼吸を整えようとしてまたツボにハマる。ここが個室で本当によかった。

    「ま、まじないっていうか、ただの変顔じゃ無いですかそれ、」

    騙されてますよお館様、ヒッヒッと跳ねる息を飲み込みながら目尻をなぞる。む、そうか?と再び薄目でぱちぱちやられて、それがウインクのなりそこないだと初めて気付いた。
    すい、と液晶に顔を寄せて、内緒話のように彼がつぶやく。

    『うん、そうだな。斬の顔が見たかっただけなんだ、私は』
    『さみしいよ、斬が隣にいないのは』
     
    誰にも秘密だというように、ふにゃっとわずかに頬をゆるめてみせる。
    ああ、たまらないなあ。
    いつのまにか潜めていた呼吸を、斬はそこでようやく吐き出した。イヤじゃない浮遊感が、ドクドクドクドク体をめぐる。
    そんな顔をされたら、そんな声を聞いたら、そんな気持ちを渡されたら、思わずにいられないじゃないですか。

    不老不死って、なんか良いかも。
    脚がちぎれたって、全身の血が抜けたって、燃え盛る炎に焼き尽くされたって、あなたの帰りを待つことができるんだから。

    叢裂も斬くんとお話しできる?
    パッと視界が大きくブレて、画面の向こうがにぎやかさを増してゆく。
    真っ白な部屋の真ん中で、オレはひとりヘラヘラと笑っている。


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