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    a_y100i7

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    蘭が鶴蝶をどう思って来たか的なサムシングの話。続きます。今終わらせ方を悩んでる。

    #蘭カク
    dutchKaku

    蘭カクケツ叩き※キャラブックの設定有り。
    ※出会いとか一部妄想の範囲。
    ※ずっと蘭が考えてる。




     ──それは、蘭が唯一王と認めた人が連れてきた下僕であった。

     灰谷兄弟といえば六本木のカリスマとして一目置かれている存在である。兄の蘭、弟の竜胆と極悪の世代に名を連ねている。S62世代などとも呼ばれている。そんな灰谷兄弟が天竺というチームに所属することとなって界隈はやや騒然となった。
     黒川イザナは褐色の肌と、菫色の瞳と、白菫の毛色という日本人離れしたその風貌からは想像もつかないほどの腕っぷしの強さ。速さも備えていて、そして「王」であった。本当のカリスマってこういうやつのことを言うんだろうな、と蘭は思う。

    「黒川イザナが新しく作るチームに入らないか?」
     その男は、ある日蘭と竜胆の前に現れた。突然二人に喧嘩を吹っかけて、六本木のカリスマと呼ばれた二人を追い込んでいく。すると突然攻撃をやめて男はそういった。黒川イザナの名前は知っている。そして、イザナから下僕と呼ばれていた男についても、なんとなく話に聞いている。こいつが、とと思いながら男、鶴蝶の姿を上から下まで眺める。鶴蝶は蘭からみれば弟の竜胆よりも幼く、少年の色を残している。当たり前だった。だって二年そこら前まで小学生だろ? ウケる。

    「別にいーーよ、イザナが頭なら文句ないし」
     竜胆も別にいいだろ。と蘭が告げれば、まあ……という竜胆の返事。そうか、という鶴蝶に『でも』と蘭は告げた。

    「お前の着てるその赤いやつが特服? それ、俺らだけイロチならいーーよ」
     鶴蝶はわかった。と即答した。後日、赤銅色の天竺の特攻服の中に黒い特攻服の二人がやってくる。おい、なんだそれは。というイザナに対して、鶴蝶とのやり取りを告げると、あぁそういった。と馬鹿正直に答えた鶴蝶はキレたイザナにボコられていた。めちゃくちゃオモローーと蘭の中で鶴蝶は「馬鹿正直」「面白い奴」というカテゴリに分類されていた。

    「あいつマジ頭おかしい!」
     ある日、弟の竜胆がボロボロになって帰ってきた。灰谷と知って喧嘩をふっかけてくる奴がいないわけでもないし、仮にそうだったとしてもここまでボロボロになって帰ってくるのは珍しいと思いながらどうしたのかと訊ねたら、鶴蝶がトレーニングにいくから付き合わないかと言うのでジムにでも行くのかとノコノコ着いていったらいきなりヤの付く人らの事務所に行って喧嘩してたという。頭がぶっ飛びすぎてる。普段の姿から、勝手に常識人のような感覚があったが、考えてみれば黒川イザナの下僕なのだ。

    「っはは、あいつもちゃんとぶっ飛んでんじゃん」
     やっぱ面白ー-と蘭は笑った。


     関東事変があって、イザナも鶴蝶も死ぬとは思わなかったのだ。お前、不死身のイザナじゃないのかよ。と蘭は、その様子をただ見つめることしか出来なかった。イザナは真一郎という兄を失って、妹を間接的ではあるが死に追いやり、そして全ての元凶だと万次郎へ向けて抗争を起こした。稀咲や半間の存在は蘭にとっては余り関わりたくない連中であったが、イザナが引き入れたのならば異議を唱える必要はなかった。その結果がこれか、と己も決して無傷とは言えない状態で蘭は二人を見つめる。


    「オマエらに憧れてきたからな」
     せめて、と蘭は二人の目を閉じる。ぶっ飛んでいるけれど、二人の夢は何一つ変わっていない。イザナは、抗争を起こすほどに佐野という血の繋がりについて執着していた。しかしイザナの傍で一番イザナを理解していた鶴蝶は、血のつながりがなくても、きっと紛れもなくイザナの「家族」だったのだろうと蘭は思う。蘭には竜胆がいた。血のつながり以外の繋がりなんてものは、よく知らなかった。利害と恐怖と言いながらも、天竺の、イザナ達と過ごしてきた時間はそれだけではなかったように思う。

    「──じゃあね。大将、鶴蝶」
     遠ざかっていく景色を見つめながら、蘭は誰にも聞こえないほどの声でそう告げた。その時、警察無線から信じられない言葉が聞こえてきた。

    『死亡したのは十八歳の青年、一緒に倒れている十四歳の少年は重症です。救急車がこちらへ──』
     ハッとその言葉に蘭は顔を上げた。思わず隣にいる竜胆の方に顔を向けると、同じく竜胆も蘭の顔を見つめていた。鶴蝶は生きてる。イザナは、ちゃんと家族を守れたんだと。
    「よかった」
     自然と、そんな言葉が出てきた。

    (続くよ)
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    fukuske5050

    MOURNING本誌済み
    真とワカとマ
    ※マは本誌の病状です さすったりしてます こういうことをしてよいのか悪いのか、調べていません
     顔色が悪いのは真一郎の方だ。僅かに自由になる時間さえも、病室でひとり横たわり、管に繋がれたまま意識のない弟の傍らから離れない。ただ生き永らえているだけのそれから離れない。医療も奇跡もまやかしも、真の最愛にできることはそれだけしかないからだ。
     万次郎のため。そのために真一郎の生活は費やされ自分のための時間は皆無に等しい。食べることも、眠ることも惜しいのだ。怖いのだ。少しでも目を離した隙に呼吸を漏らした隙に、必死に抱えた腕の中からサラサラと流れ落ち、万次郎が失われていく。
     蝕まれているのは真一郎の方だ。若狭にはそう思えてならなかった。

     職務の休憩時間に万次郎を見舞う真一郎に合わせて万次郎の病室を訪れる。それは万次郎のためではない。真一郎のためだ。若狭にできるのはその程度でしかない。訪れた若狭の呼び掛けに答えた真の声は枯れて夜明けのカラスのようだった。ギャアと鳴いてみせるのは威嚇なのか懇願なのかはわからない。せめて水を、そう思って席を外し、帰ってきた病室で見たものは。
    1853