セックスしないと出られない部屋のナオ武④ 誰かに監視されている。
橘直人はこの状況を努めて冷静に考えた。
昨夜、就寝した途端に部屋の気温が下がった。タケミチは暖かな布団に包まっていたから、気づいていなかったかもしれない。床に寝ていたナオトは気温の低下をはっきりと感じた。正直言って寒くて眠るどころではなかったが、なんとか根性で耐えた。
これは罠なのだろう。寒さに耐えかねてタケミチが寝ている布団に入り込み、なし崩し的にセックスに持ち込むように誘導されている。残念ながらその手には乗らない。自分は理性を失うわけにはいかない。タケミチはセックスを嫌がっているのだから。
どうしたものか、と朝食をぱくぱく食べるタケミチの顔を眺めながらナオトは逡巡する。
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