アルベドが、雪山に篭ったまま下山してこない。そんな話を聞いたのは、数日前のことだった。
それはいつもの事じゃないのか。そう思いはしたが、普段とは違っているのだと、彼の弟子たちは口々に言う。
なんでもアルベドは、弟子二人に目もくれず、相槌すら打たずに実験に熱中しており、食事すら摂っているか怪しい……とのことで。なるほど、それはちょっと大変だ……と思うと同時。俺にはひとつ、ある「心当たり」があった。
その予想を確かめるべく、俺は単身、雪山にあるアルベドの拠点へと訪れていた。
「アルベド。久しぶり」
こちらに背を向けて、合成台の前に立っている人影に声をかける。ぴくりと彼の頭がわずかに動いて反応する。次に、白いコートが翻り、彼がこちらへと振り向いた。
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