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    ささみ

    @un_pfunco

    出戻り組、アークザラッド1.2が主に大好き。
    アーク推しです。BL(アーク右)

    Xでの過去作品を並べています。
    今回は一部エルアーの作品があります。(マンガとss未満)

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    ささみ

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    エルアー!どれだけ書くんだ。
    アークが嫌われたい努力をするだけ。

    #エルアー
    lar

    全ては水の泡だった君に嫌われたい

    「アークの事、好きかも」

    エルクにそんな風に告白された俺は衝撃を受けた。
    君はリーザといい雰囲気だろ?と問うとリーザも応援してくれてると。

    なんて事だ。
    何となくだが彼女の言い分もわかる。
    ククルもきっと俺が誰かを好きだと言えば応援するからだ。そして最後には私のところに帰ってきてくれるものと自信満々に言うだろう。

    「ダメか?」

    成る程、いわゆる告白という事で返事を待たれているのだな…。
    よし、受け入れようとも。

    そして盛大にお前に嫌われてやろうと俺はの心に決めたのだ。


    でも待てよ…受け入れる前に試したい事がある。
    確か昔にこんな話を聞いた。
    質問で返す男は嫌われるとか何とか。
    よし、これだ。

    「ダメ、と言ったら?」

    エルクは、えっと驚いた顔をした。
    よしよし、予想外の答えか?どうする?
    俺は面倒くさい男だろ?

    「…」

    黙ってしまった。
    あとは確か…

    「ほら、その程度なんだろ?諦めておけ」

    これでいいか?とチラリと見ると、次はわなわなと震えていた。
    これは、あれだ。『お前なんかやっぱり嫌いだ』とくるぞ。面と向かって嫌いだと言われるとほんの少しだけ悲しい気持ちになるがそんなものは一瞬だ。

    「俺は諦めねぇ!!」
    「え」

    えーーーー!!!
    久しぶりに心の中で叫んだ。どうしてだ?嫌な男だったはずなのに。
    いや、俺も諦めないぞ…お前に嫌われる努力をしよう!!


    では、作戦その2だ。
    失敗してしまった作戦を引きずっても仕方がない。
    まずは別動隊を編成して、エルクを筆頭に現場を任せた。小さな施設だろうが、金策だろうが、とりあえずエルクを外に出した。
    嫌な勇者だろ?君一人に押し付けて俺はシルバーノアで報告を待つ。ブラックな働き方だろ?

    報告にくるエルクの顔はきっと嫌な顔をしているだろう。
    次こそこんなにこき使いやがって!と嫌われるだろう。
    そしてそれをしばらく続け、ようやくシルバーノアに帰還してきたエルクを迎える。

    さて、エルクはどんな顔をしてるかな…?と久しぶりに会うと何故か目をキラキラとさせていた。
    どうした…?何が嬉しいんだ…?

    「久しぶりのアークの顔だ、へへへ、俺頑張ってきたぜ」

    そ、そうか…。
    確かに頑張りは、褒めなきゃいけない。
    ふと思った。
    エルクは身長が低い事を気にしていたな、と。
    だから頭をめい一杯撫でてやる。ツンツンの頭をくしゃりと潰す。
    しかしそれを止めるような言葉は言わず、少し照れっと顔を赤らめていた。

    次の作戦…!!
    離れていたのがダメなら次は、どんな時も隣に置いておこう。同じパーティーで連れ回してやろう。
    宿屋も同じ部屋にした。これで俺の顔を毎日見て嫌になるだろ?

    飯時にも、エルクに嫌がらせのように野菜を食えと言ってみる。少し前まではとても嫌がってたもんな。
    と、思ったのだが。

    「身体を気遣ってくれてんのか?ありがとうな!」

    …待ってくれ、エルク。君は肉派だろ?
    野菜はあんまりだと言っていなかったか…と思っていると、好き嫌いは良くねーよな、と自分の前に置かれた食事を綺麗に片付けていた。

    好き嫌いは良くない。
    そうだな…良くないよな、俺の方が少しだけダメージを受けたかもしれない。

    それでも諦めずに嫌われる努力だ。

    戦闘の時咄嗟の判断だが、エルクが随分と危ない動きをした。現場の判断だからそんな事もあるのは分かっているが、面倒くさい男になるんだと叱りつける。

    「ごめん…でも、次は別の方法を取れるように頑張ってみるな」

    何て前向きな考えだ。自分の失敗を省みて次に活かす。
    ハンターとして優秀だったエルク。
    そうそう、成長して偉いなぁ…って違う!!

    俺を嫌いになってくれ。


    はぁ…と一人机に突っ伏して俺はため息を吐いた。
    上手くいかないものだ…と。
    あれだけ憎まれ恨まれていたのに、いざとなると嫌われないものなのかと、二度目のため息を吐いた。

    「おうおう、大将。でっかいため息吐きやがって。何悩んでんだ」

    あぁトッシュか…と顔をあげる。
    そういえばトッシュはエルクと仲が良くない…というと語弊があるがよく喧嘩をしているなぁ。

    「エルクのやつ、お前に随分懐いてるじゃねーか。」

    あー…そう見えるのか。
    そうか、そうか。
    可愛いだろ…って違う。そうじゃないだろ、俺。
    嫌われなきゃいけないんだ、俺…とふと溢していた。

    「は?何でそんな事をする必要があるんだよ。好意なら受け入れてやれよ」

    …トッシュのくせに。
    いや…きっと正しいよな。
    でもダメなんだ…好きにならないで欲しい。
    俺を嫌いなままでいてくれないかな…。
    その日はそのまま机に突っ伏して寝てしまった。


    次の嫌われる作戦は何も思いつかなかった。


    ある日、ブリッジに出て冷たい風を全身に浴びていた。
    誰にも会いたくなかった。

    最近何故かエルクといると胸が苦しくなる。
    嫌われたいのに嫌われないからなのか。自分でもよく分からなかった。
    久しぶりにトウヴィルにも帰る。
    ククルに一度相談してみよう。
    これからどうするか…俺を嫌いになってくれるような知恵を貰おう。

    しかしククルに告げられた言葉は衝撃的なモノだった。

    「無理」

    その二つの言葉で片付けられてしまった。
    どうして?と肩を落とした。
    一緒にいたポコに慰められた。
    そしてポコもこんな事を言う。

    「アーク、どうしてそんなにエルクに嫌われたいの?彼は君の事を好きなのに」

    俺は。

    「好かれていい訳ないだろ…」

    エルクの大切な恋心を俺に向けるなんて間違ってる。

    「アークもエルクの事大好きだもんね」

    ククルの一言に俺の心は止めを刺された。

    そう、俺はエルクの事が好きなんだ。
    彼と行動するようになって見る顔がとても愛おしい。
    辛い過去を乗り越え、幼い頃一緒に育った友人を亡くし、深く傷ついたはずなのに、今を必死に生きる彼が。
    眩しくて、青くて、リーザやシュウといる時の彼の顔は年相応で、コロコロと変わる表情に心を奪われている。

    「好きだよ…」
    「あら、妬ける」

    ククルが笑いながらそんな事を言うものだから、とても困ってしまった。

    「ねぇ、アーク…エルクの気持ちに応えてあげなよ」

    ポコがさらにダメ押しで押してくる。
    それでも俺の気持ちは変わらない。

    「ダメだ、俺はエルクに嫌われるんだ」

    そう俺がエルクを好きでいてはいけない。
    好きだという事実を再認識した上で俺は、エルクに嫌われようと覚悟を決めた。


    「エルク、デートしてやろう」

    エルクに告げると嬉しそうに準備してくる!!と走って行った。待ち合わせは何時だぞ、と付け加えると、大きな声でわかった!!と返事がきた。

    さて、あとはシュウに怒られに行こうか。
    貴方の大切な子を弄んですまないと、そして殴られよう。

    「そんな訳で俺を殴ってくれ」
    「そんな訳で殴れるか」

    そこに座りなさいと、正座をさせられてしまった。
    やはり今からエルクを楽しませた後に、やっぱりお前と居るのは辛いから別れよう、俺は嫌いだと言う作戦は甘かったかと肩を落とす。
    そしてシュウに問う、どうすれば彼に嫌われる?と。

    「エルクの気持ちを無碍にしてくれるな」
    「そう、無碍にする酷い男だろ?」
    「アーク…」
    「そしてあの子の心に傷を付けようとしてるんだ、酷いだろ?だから貴方も俺を嫌って呪ってくれ」
    「そういう風に言うのはやめろ」

    いやいや、シュウなら分かってくれると思ったのに。
    俺があの子を好きでいていい訳がないんだ。
    俺を嫌って、あんな奴いなければいいのにと思ってくれないと困るんだ。
    シュウの顔を見ると哀しそうな顔していた。
    エルクを悲しませる男をそんな風に見ないでくれ、それなら一層俺を殴ってくれ。

    時間を知らせる鐘が遠くで鳴っている。
    エルクとのデートの時間が迫っていた。


    待ち合わせの時間の前に少し喉が渇いて水を飲みに行こうとすると、そこにリーザがいた。
    ああ、可愛い子だ。
    パンディットも一緒に側にいる。彼女の運命もまた過酷だ。エルクのおかげで彼女はここにいる。
    そして彼女のおかげでエルクも今を生きている。

    うんうん…いいパートナーじゃないか。
    結婚だとかそんな話をする訳じゃないが、きっと彼女とエルクはこの先も一緒にいるんだろう。
    きっとそうだと俺は思っている。

    リーザがこちらに気づく前に去ろうとしたが、パンディットが鳴いてしまった。
    ああ、早く去れば良かったのに俺のバカ野郎。

    「アークさん」
    「やぁ」
    「酷いです」

    おや、リーザからそんな言葉が出るとは…俺がしようとしてる事を知ってるんだな。
    ならば、それでいい。彼女に叱られてしまおう。

    「アークさんどうしてそんなやり方をするんですか?エルクに嫌われて…、貴方はそれでいいんですか?」

    頭の中がクエスチョンマークで一杯になった。
    違うよ、リーザそこはエルクの心配をするべきだよと慌てて説明する。

    「違いますよ…本当に傷ついてるのは…貴方ですよね」

    年下のリーザにまでそんな風に言われて…ああ…もしかして…エルクも知ってるんだな…と愕然とした。

    「エルクは貴方を諦めませんよ」

    だからエルクに嫌われようなんて事をしないで下さい、と続けられた。

    「私も、シュウさんも…絶対貴方を嫌いにならないし、きっと怒りもしません」

    デートなんて言って誘ったが、俺がドタキャンをしたくなってしまった。
    そんな事出来るはずもなく、結局待ち合わせの時間前に俺は項垂れながらエルクを待った。

    エルクが知ってるなら、最低だと罵ってくれるか今日のことは無かった事にとキャンセルして欲しかった。
    でも彼は俺の目の前に現れてしまった。

    「デート前の顔じゃねーぞ」

    あぁ…エルクだ。
    腰に手を当てて、もうと口を尖らせている。
    で、何処に行く?と聞いてくるのだ。
    都会っ子のエルクにはつまらないだろうが、村を歩こうと言うとオッケーとあっさり承諾された。

    そして、手を握られた。
    少しだけ俺の体温より高いエルクの体温が手から伝わってくる。その行為に俺は自分の行動の最低さに血の気がさっと引くような気がした。

    村は広くはない。
    街のようにオシャレなカフェもない。恋人の憩いの場のようなものもない。
    ただの俺の出身地だ。

    岸壁に停泊したシルバーノアの前まで歩いた。

    もうすぐ全てが終わるのだ。
    ククルと約束した。この戦いが終わったら静かに二人で暮らそうと。それが俺の旅の終わり。

    岸壁から眺める景色は、見慣れているのにエルクが隣にいるせいか特別な景色になる。

    「俺アークの事大好きだよ」

    やめろ…エルク。それ以上はやめてくれ。

    「アーク」

    ずっとここまで手を離さず歩いてきた。
    その手にぎゅっとエルクが力を込める。

    「あのさ」
    「俺は、エルクの事が大嫌いだよ」

    言葉なんか続けさせるか。お前をこっ酷く振ってやると俺は決めていたんだ。
    お前のその無謀さが、怒ると暴走する幼さが、その素直でまっすぐに気持ちをぶつける無垢さが。
    俺は、嫌いなんだ。
    だからこの戦いが終わったら。

    「俺はアークの事をずっと思ってる」

    ククルと結婚して過ごしても、リーザと一緒になったとしてもと。

    ああ…俺は頑張ったのに。
    どうして嫌ってくれなかったんだ。
    嫌いで無関心になってくれなきゃ…また俺は君の心に傷をつくるだけの男になるじゃないか。

    「アーク」

    俺より背の低いエルクが背伸びをした。
    そして俺の頬にキスをしてくれた。

    涙は出なかったけど、俺はとても悲しくて泣いてしまいそうだ。

    別に死ぬつもりは、ククルも俺も無い。
    でも何処かでそんな事があるかもと覚悟だけはしている。
    ククルとはきっと切っても切れない運命共同体だから彼女の好意を俺も受け入れたし、俺の好意を彼女も受け入れてくれた。

    しかし…残されたモノはどうだろうか。
    その気持ちは痛いほど身に染みている。
    父がいなくなった時、あんなに憧れた背中が消えた時の身を裂かれそうな想いを誰が好きな人に味合わせたいか。
    残された母の小さな背中を見ていた。そして目の前で父が再び去って行った。
    好きだという気持ちを抱えたまま生きるのはとても苦しい。そして思えば想うこそ忘れられない傷になる。

    傷痕は痛い。
    時が経てばその傷も薄れていくんだろうが…それは一体どれだけの年月をかければ薄れるのかなんて、全知全能の神も、精霊も分からない。

    だから…もしもエルクの目の前から居なくなったら、あいつが居なくって清々したと言って欲しかった。

    「無理に決まってんだろ」

    エルクの目から溢れんばかりの涙が流れる。

    「あれだけ一緒に旅をして…どんな感情も忘れられるわけねーじゃねーか」

    例え嫌いな感情であれ、お前の事を考えて過ごした日々も、全部全部忘れられないんだよと。

    「お前の努力は全部水の泡だな」

    エルクは、泣きながらどうだよっと笑って俺を見た。
    やっぱり知ってたんだな…多分知らずに頑張ってたのは、俺一人だったんだと、改めて俺は無力だと知ったのだ。
    でもじゃあ…と改めてエルクに聞いてみた。

    「こんなバカな俺の事を嫌いになった?」
    「もっと好きになった」

    そんなエルクがやはり可愛いくて、負けを認めて彼の額にキスをすると顔が真っ赤になってしまった。
    夕焼けの色も合間って染まる頬が可愛いくてまたキスをした。涙の跡をぺろっと舐める。

    「バカ、やめろ」
    「あ、嫌いになった?」
    「なるか!絶対なんねー!!」

    そっか、残念だなぁ。
    負けは認めたけど、俺は最後の時まで君に嫌われる事を諦めないよ。
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