進捗 これは自分の目的のための手段だ。頬に手を添えられて、にっこりと微笑む。
腐ってもアイドルだ。どこの筋肉を使って、どう動かせば魅力的に見えるのか。自分のことくらいきちんと把握していた。
そのまま相手の男がこちらに近づいてきて、口づける。ちゅっ、ちゅっと何度か触れたあと、わずかに口を開けると舌が侵入してきた。
(弓弦……)
男というのは相手のことが好きじゃなくても女のことを抱けるらしい。これは身をもって知ったことだ。弓弦は茨が望んだときにこうして会ってくれる。でも、それは弓弦が茨のことを異性として好きなわけじゃない。
手を伸ばして背中にまわす。雑念を振り払うために、目の前の男と密着するためだ。それを、こちらからの甘えと取ったのかなんなのか。相手の腕もこちらにまわされて、優しく撫でられた。
「ん……ふぁ、」
合わせられた唇の隙間から声が漏れる。だめだ、こんなものでは。もっともっと溺れさせてもらわなくては困る。何も考えられないくらいどろどろに溶かして欲しい。