Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    びいどろ

    リスインの際にはDMかリプで18↑高卒済の方のみ声掛けてくだされば入れてます

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💘 🎈 🌟 ⌛
    POIPOI 62

    びいどろ

    ☆quiet follow

    とあるフォロワさんが好きだったフェス🎈×白百合(ショタ)🌟の話

    全年齢ですが世界観は私の脳内なので意味不明かもしれません。

    君とずっと森奥でひっそりと暮らすフェス代と願いが叶うと聞いてやってきた白百合ショタ
    この後えちな話になるかもしれないしならないかもしれない

    ーーーーーーーーーーー

    「ねぇ君。大丈夫?」
    「…誰ですか……?」

    もう真っ白い月が顔を出し、微かな光が空を照らす頃、紫の髪の青年はうずくまっている少年に声をかけた。昼から何時間も人の家の周りをぐるぐると回って、終いには疲れてしまったのか茂みに隠れて座り込んだ少年。その様子をこっそり観察していたのだが、紫髪の青年……類はここには滅多に来ない来訪者に気になって家から出た。

    「僕はこの家に住んでる者だけど、何か用事でもあったのかな」
    「この家の主…!!まさかあなたはあの噂の」
    「…どんな噂をされているか知らないけれど、まずは質問に答えてくれない?」

    類の重たそうな前髪が風に揺れて、シトリンの瞳がランプの明かりで一層輝いた。少年は立ち上がると、屈んでくれている男と目をしっかりと合わせ、口を開く。

    「噂ではあなたはなんでも願いを叶えてくれると聞いています。だからオレはあなたの噂を信じて願い事をしに来ました」
    「…そう。とりあえず夜の森は危ない。早くお入り」

    重そうな扉を開けて少年を家の中へと招く。警戒して類の様子を見ながらも司はそっと室内に足を踏み入れた。齢10歳といったところだろうか。まだ小さな背丈の少年は白い花のような洋服に身を包んでいて、首元の白百合が足を踏み出すたびにゆらゆらと揺れる。短い廊下を渡って扉を開けるとリビングについた。

    「君は甘いのは好きかな」
    「は、はい!」
    「ふふ、緊張しなくても大丈夫だよ。そこの椅子に座って」

    類はそう言ってどこかへ行ってしまった。言われた通りに腰をかけて、そわそわと落ち着かない気持ちが表れるように足をぷらぷらさせて類を待つ。しばらく経って姿を表した類の手の中には二つのマグカップが握られていた。

    「待たせてごめんね。はいどうぞ」
    「……ココア?」
    「うん。外は寒かっただろう?鼻を赤くして手先を震えさせている君に何もしないなんてことは出来ないからね」

    類はそう言って微笑むと自分の分の甘ったるいココアを口に入れる。少年も同じようにゆっくりと口元に近づけてほぉっと息を漏らした。
    類は頬杖を着いて司を見やると本題に入ろうと言う。

    「で、願い事は?」
    「……あの噂は本当なのですか?」
    「聞くだけ聞かせてよ、君のお願い事。あ、まず名前を聞かなければいけないね。僕は類。君は?」

    目を丸くして類を見つめる少年はおずおずと口を開いて喋り始める。天馬司、と名乗った少年の願いは最愛の妹の病気を治す治してほしいとのことだった。

    「昔から病気がちで、最近様態が急変して生死が危うい状況になったりするんです。今は落ち着いてるけど……だからお願いします。もし、貴方が本当に願いを叶えられるのなら、咲希が苦しまないように病気を治して欲しい」
    「…妹さんが、ねぇ……その対価は?」
    「対価…?咲希が元気になるならオレはなんでもするつもりです。お金も物も、何年もかかるかもしれないけれどそれでも絶対に払います!お願いします!妹を…咲希を助けて欲しい…」

    拳を握って戦慄きながら必死に懇願する司。もう噂に頼るしかないとここへ来た時点で覚悟は決まっていた。妹を幸せにしてあげるのが兄の役目なのだから。命でもなんでも差し出してやろうと腹をくくっていた。
    そんな健気な姿に類は面白そうな気配を感じて少年の言葉に二つ返事で返した。

    「ふふ、いいよ。叶えてあげる」
    「……いま、何と」
    「君の妹の病気を治してあげると言ったのさ」

    それを聞いて司はがたっと椅子から立ち上がる。しかしバランスを崩して床に崩れ落ちてしまっていたた…と零す。体を起こして、再び聞き返されたのでもう一度答えてあげるとその顔はパッと明るいものへと変わる。

    「その代わりに…毎日ここに来て欲しいんだ」
    「…それだけでいいのですか…?」
    「ここは案外人が来ないから退屈なんだ。その退屈しのぎになって欲しいな」
    「それならオレにもできる……けど、」

    司は俯いて悩み始める。その理由は自分の家とは遠いこの森に毎日通うのは厳しすぎるからだ。今日もなんとかこっそり家から抜け出して長い道のりを歩いてきたのだから。不安そうに眉を下げた司を見て類はもう一つサービスしてあげようと棚から何かを取り出した。

    「大丈夫。君の家の近くからワープできるようにしてあげるから。明日の朝、君の家にある鏡にこれを貼って僕の名前を呼んで。そうすればお迎えに行ってあげるし道を作ってあげよう」

    手渡されたのは青年の顔の左部分の額下部から頬までかけて刻まれている刺繍と同じ模様のシールだった。信じがたかったが司は一掴みの希望を信じることにしてそっとそのシールを曲げてしまわないように受け取る。

    「ありがとうございます!!」
    「明日の朝、君の妹は元気に走り回れるようになってるさ」
    「本当か!?い、いや本当ですか!!」
    「僕は嘘なんてつかないよ。じゃあ今日はもう遅いから泊まっていくかい?」

    司はぶんぶんと横に首を振る。格安の対価で願いを叶えてもらうと言うのにそこまでお世話になるにはいけない、と気持ちを込めて拒否をしたのに類は危ないからね、と半ば強引に司が帰るのを引き止める。彼の回る口に勝つことなんてできずに結局一晩お世話になることになってしまった。

    晩御飯もお風呂も、寝床も全て用意してくれて、質素であるものの不満なんて感じさせないもてなしにすっかり気を抜かれて、濡れた髪を乾かされている間にうとうとと船を漕いでしまう。

    「司くん、終わったよ。…司くん?」

    すやすやと幼くかわいい寝顔を晒した少年。まだ熱の残る髪がふわりと揺れた。そっとその髪を撫でるとむにゃ、と声を出して力の抜けた体がずるりと下がっていく。

    「こんなに可愛らしい子が来てくれるなんて…僕も徳を積んできたかいがあるねぇ」

    起こさないように体に腕を差し入れて抱き上げると自室のベッドにそっと寝かせてあげる。布団を用意してあげたかったが埃をかぶっているためあまり良くはないだろうと考えた結果だった。柔らかいマットに体を沈ませて寝返りを打つ司の前髪をさらりとかき上げて額にちゅ、と軽くキスを落とす。

    「おやすみ。司くん…いい夢を」

    類はその後、部屋に鍵をかけて自室を後にする。司が寝ている間に済ませなければいけないのだ。彼の願いを叶えるためにそっと外へ出る。

    「あぁ、今日は星が綺麗だ」


    ーーーーーー

    「…く…つ…くん……つかさくん」
    「ん…ぅ」

    司は名前を呼ばれてゆっくりと意識を浮上させる。重い瞼を開けた先に映ったのは鮮やかな藤色の髪。雲の上に乗っているかのようにふわふわとした心地に包まれて気持ちがいい。

    「おはよう。司くん。よく眠れたかい?」
    「…んん…」

    もぞもぞと布団に潜り始める司を見てはぁとため息をこぼした。

    「君の妹さん。見に行かなくていいの?」
    「ぅ…っ!?」

    先ほどまでの眠気はどこへやら。思い切りガバッと起き上がると類の顔を見て昨日のことを思い出す。

    「る、類さん」
    「君の服はそこにあるから着替えたら玄関までおいで」

    そういうと類は部屋から出て言ってしまい、近くにはハンガーにかけられた司の服がかかっていた。性急に袖を通し、類から借りた服を綺麗に畳み、その手に持って部屋を出る。

    「類さん。この服…」
    「あぁ、あとでするからそこらへんに投げといてくれて構わなかったのに…」
    「そういうわけにはいかないですから…」

    類はその手から服を受け取ると風呂場のカゴに形を崩さないように置いて、司の手を取って玄関まで歩く。

    「司くん。この森を通る時、目を閉じて君の家を頭に強く浮かべてね。そうじゃないと迷子になってしまうから」
    「わ、わかりました…」

    森を抜けるだけだというのにそんなこと必要なのかと思うも、言われた通り自分の家までの道のりを思い浮かべる。それと同時に思い出したのは妹の苦痛で歪む顔だった。

    「類、さん」
    「ついたよ」
    「…え」

    たった一瞬。まばたきをすれば目の前に広がっていたはずの緑は一切なくなっていた。司はあっという間に着いてしまった自分の家の玄関のドアを開く。するとバタバタと誰かが走ってくる音が聞こえ、体に衝撃が走った。

    「お兄ちゃん!!!」
    「…さ、き…!?」
    「お兄ちゃん心配したんだよ!!どこ行ってたの!!」

    まさか、本当に叶えてくれたというのだろうか。にこにこと笑う妹を抱きしめ返して、後ろを振り向くとまるで幻想だったかのように彼の影は無くなっていた。

    「おかえりお兄ちゃん!」
    「あぁ、ただいま。咲希」


    ーーーーーー

    「この鏡でいいのか……?」
    両親にこっぴどく叱られた後、自室に戻り、大きな姿見にかかっていた布を外す。

    司はあのシールを姿見の下の方に貼る。しかし見た目には何も変化は訪れなかった。騙されたのだろうかと鏡に手をやると跳ね返す力は司には与えられず、触れた部分は水のような波紋が生み出された。

    「へ」

    そのままずぶずぶと鏡に吸い込まれていく小さな体はバランスを失って、鏡の中へ、とぷんっと入り込んでしまった。

    「……あ、司くん。もう来たの?」
    「……は…?え、っと」
    「鏡。通ってきたでしょ?」

    目を開けるとまた景色が違っていて、目の前には椅子に座り本を読んでいる類がいた。

    「もう少し妹さんとの時間を過ごすかと思っていたのだけれど……」
    「わ、忘れないうちに貼っておこうと思って……」
    「そう。ちょうどよかった」

    どうぞと類は机にあったクッキーを差し出した。チョコチップクッキーを口に咥えると、司も同じように口にして控えめな甘さに舌鼓をうつ。

    「そういえば司くん。これから毎日会うことになるんだし敬語はいらないよ」
    「ですが…」
    「僕は君ともっと仲良くなりたいな?君は違うのかい?」

    司はぶんぶんと首を横に振る。その様を見て類はよかったと言葉をこぼし、司の頭に手を置いた。

    「類。これでいいのか…?」
    「うん。その方が君らしくて僕は好きだな」
    「むぅ…類がそういうなら」

    目の前の椅子に腰掛けると、司はクッキーに一枚、また一枚と手を伸ばす。気に入ってくれたのか次々に口に入れていく姿にニコニコと笑った。

    「美味しいかい?」
    「ん、美味しい!!いっぱい食べちゃってごめん…」
    「いいよ。美味しかったのなら僕も嬉しいから」

    人の家のお菓子だというのにぱくぱくと何枚も食べてしまったことを思い出し、謝罪の言葉をぽそりとこぼすとそれくらいいいよと許してくれた。むしろ美味しそうに食べてくれてありがとうと返されてしまった。

    「今日はありがとう。俺はもらってばっかりだがいいのか…?」
    「大丈夫。また明日きてくれるなら」

    もちろんだ!そう言うと司は鏡の前に連れられて、その半身を沈み込ませると、とぷんとまた水の中に沈んでいく感覚に身を任せた。

    その日から、司は毎日類の家に通うようになった。特にすることはなく、一緒におやつの時間を楽しんだり、司の宿題を手伝ったりしているだけ。これは願い事の対価になるのかとふと思った時に聞くも類は退屈することが減ったからいいと言った。変わった人だ。

    「類!聞いてくれ!今日学校で…」

    毎日ミドルスクールに通う司は平日は学校が終わってからのみ類の家へ来る。その日あったことを聞いて聞いてと類に報告してくれて、類も相槌を打ちながら彼の話に耳を傾けていた。最初に会った時に身につけていた百合の服は制服らしく、毎日汚れのない真っ白な服を身にまとっていた。
    明るくて誰にでも優しい彼の周りにはそれはもう素敵な友人たちが集まるらしい。毎日聞く名前は覚えてしまうほどに友人との時間を楽しむ司に少しだけモヤモヤしたものの砂糖の入れていない紅茶でその気持ちごと飲み干したりもした。

    休日は朝から晩まで司と共に過ごせる貴重な時間。学校では習わないこの森に生えている草や花のこと。夜になったら輝き出す星たちのこと。類の持ちうる知識を司は欲しがって休日だと言うのに類を外に連れ出してはあれはなんだ!と質問攻めにしていた。

    そんな日々が少しずつすぎていく。ただ会っておしゃべりするだけの存在。本当はいつものように命を対価にとってもよかった。今まではこんな退屈しのぎを望んでこなかったのだけど、類は今までの所業を後悔した。彼がくるまでの時間の胸の高鳴り、彼と過ごす時間の楽しさ、彼が手を振って帰った後の明日を望む心。
    そのどれも初めての感覚でむず痒い。でもその痒さは嫌なものではなくむしろもっと募っていたとしても心地いいものだった。

    「また、明日」

    何度その言葉を彼に告げただろうか。繰り返していると季節なんて簡単に過ぎ去ってしまった。

    ーーーー

    「司くん。今日は少しだけやってみたいことがあるんだけどいいかな」
    「ん?いいぞ…オレにできることならなんでもするぞ」
    「うん。少しだけだから。こっちおいで」

    手招きして、ベッドに腰かけた類は司を見つめる。司もその手の導くままに足を進めて類の足の間に座る。後ろから抱きしめられる形になると類は司の頬を撫でた。

    「司くんは少し身長が伸びたかな?」
    「少しじゃないぞ!たくさん伸びてるからな」

    一年たって、9歳の司は少しずつその背丈を伸ばしていた。出会った当初よりも大きくなった体にキュッと優しく腕に力を込める。

    「る、類?」

    いつもとちがう雰囲気を醸し出した類に不安に思った司は恐る恐る声をかける。しかし類はそんな司を気にもせずその小さな体の細い首筋に顔を埋めた。類のサラサラな髪の毛がかかって少しだけこそばゆい感覚に包まれる。
    しかしこの仕草に司は既視感を覚えていた。聞くべきか、聞かざるべきか。口を結んでいたものの、その結びは解けていた。

    「…類。寂しいのか?」
    「…え?」
    「いや、オレの妹も寂しい時くっつく癖があってだな…それと同じ感じがしたから…」

    妹は今まで自分にくっつけなかった分、何かあれば抱きついてくるようになった。温かな体温を感じるたびに妹が生きている証がある気がして、司はハグが好きだった。しかし、親や近所の子供達ならまだしも、年上である類から抱きしめられることはなかったので司は表情には出さないものの驚きで心音が増している。

    黙ったまま動かなくなってしまった類。体はしっかりと抱きしめられているので抜け出すことなんてできなくて、類の気の済むまでぎゅう…と無言で抱きしめられる時間が続く。

    「なぁ、類。」

    だんだんとポカポカして眠気が司を襲う。でも類のしたいことを聞いていないから寝てはだめ。そう自分に言い聞かせてなんとか持ち堪える。少し体勢を変えようと腕の中でもぞりと動くと正面を向いていた体は少し横向きになり、肩に乗っていた類の頭が動く。

    「司くん。ごめん、もう少しこのまま…」
    「類、やりたいことってこれか…?」
    「まぁ…そうだね」

    類のやりたいことがハグなのなら少し寂しかったのだろう。この家どころか森にすら人は寄り付かない。類に会える唯一の人間は司だけなのだから。少しだけ揺れる体に合わせて揺られているとあくびを出して本格的に眠くなる。目の前にある類の頭に手を伸ばし、ストレートの髪の上にその小さな手を置いてくしゃりと撫でる。

    「司くん、もっと」

    ぐりぐりと押し付けてくる頭を撫でているとやはり一つ下の妹のことを思い出して笑ってしまった。いつもかっこよくて頼りになる青年が年下の自分にこういうふうに甘える姿はギャップがあって。
    求められる心地よさに腕が重くなっていく。次第に司はすぅすぅと寝息を立て始める。

    「…ずっと、寂しかったのかもしれない」

    類はその腕の中の宝物を離さないように、壊れないように抱きしめる。司の一言が胸に突っかかる。寂しい、という感情はわからない。意識を持ち始めた時から1人で、願いを叶えるためだけに生きてきたただの道具。人間はくるもののこんなに長くいたのは初めてだった。もしこの子が来なくなってしまったら…そう考えてみる。

    用意しても減らない菓子、空っぽのクローゼット、そして呼ばれない自分の名前

    それを思い浮かべるだけで胸がズキズキと痛んでしまう。これはなんていう感情なのか、寂しい、のだろうか

    「教えて…司くん」

    眠る司の頬に優しい口づけを送るとそのまま後ろにぽすんと倒れて2人狭いベッドに横になる。
    少し遅い時間だけれど昼寝を決め込もうかと類もその瞼を閉じる。願わくば、夢の中でも彼といれますように。

    ーーーー

    「類、類!起きろ類!」

    耳元で何度も叫ばれて類は目を覚ます。目を開けてみれば金色が広がった。

    「…おはよう司くん」

    へにゃへにゃな声でそういうともう夜だと返される。昼寝をしすぎたようであたりはすっかり暗くなってしまっていた。

    「…ダラダラと一日を過ごしてしまったな」
    「たまにはいいんじゃないかい?最近司くん頑張ってくれていたし」
    「…来年は、類と入れる時間が少なくなるかもしれないのだ。一日一日を大事にしていきたいんだが……」

    類はその言葉を聞いて硬直する。なぜかと聞いてみれば司は当たり前だろうと言わんばかりの顔で返答した。

    「10歳になったらもっと勉強しなければならないだろう?それに剣技の授業も入ってくるらしくて。少しばかり学校にいく時間も伸びてしまうからな」

    司はミドルスクールに通っており、朝から昼の3時くらいまでは一生懸命勉学に励んでいる。その後早足で帰ると鏡を使って類の元へ来るのだ。その時間も惜しいというのに1年後にはもっと司と入れる時間が減ることの気付かされた類はため息をついた。

    「勉強なら僕が教えてあげるから…学校なんて…」
    「だめだ。せっかく両親が行かせてくれているのだからオレもその期待に応えなければ」

    家族が大好きな彼はいい成績を収めるべく毎日勉学に励み、類に泣きつくことだってしばしばあった。

    「僕のお願いは聞いてくれないのかい…?」
    「それを出すのは卑怯というものだぞ、類。オレはそれを出されてしまえば従うほかないから」
    「冗談さ。でも毎日きてくれるのは変わりないんだね?」
    「あぁ。少し遅くはなるが絶対にここにくると誓おう」

    彼は毎日約束……契約を守って来てくれるけれど、日に日にその時間は短くなってしまっていた。

    「オレも、算数とかよりは類から薬草だったり料理だったり習う方が好きなんだが……」
    「それは嬉しいね。まぁ君が行きたくないと思ったらここを逃げ場にするといいよ。僕はいつでも待ってるからね」

    そう言うものの、司の楽しそうな話を聞くのが好きなので強制的に止めることはない。いつでも来れるように準備するだけ。
    そういうと司はありがとう、とこぼした。

    彼の言う通り、だんだん帰りが遅くなっていた。いつもは空が青い時にはくると言うのに最近は空が真っ赤に染まらないと類の元に現れない。忙しいと言っても寂しい気持ちは変わらないのだ。

    友達ができて楽しくて類の元にいくのが少なくなってしまう司くん

    「司くん…遅かったね」
    「少し用があってな」
    「よかった…今日は来ないかと思ってしまったよ」

    そんな不安そうな瞳を揺らした類は司を抱き上げて、どこに連れて行かれるかわからないまま類の首に手を回す。

    「類…遅くなったのには訳があって」
    「分かってる。怒ってなんかいないけど僕少し寂しくなったからハグしてもいい……?」

    「いいぞ!これで詫びになるかは知らないが……」


    いつものように後ろからのハグ、なのだが今日は少しだけ違う。類の手は落ち着かない様子で司の体を触り始めた。

    「類……」
    「気にしないで。司くんはいつも通り寝てていいからね」
    「……そ、そうか……」

    そのままサブ机の上に置かれたマグカップに口をつけていつものココアをこくりと飲む、甘ったるい味にも舌は慣れていて、甘さを飲み干していく。

    外は寒くて、手はかじかんでいた。その手を類は手袋越しににぎにぎといじって気まぐれにきゅっと握る。指先を温めるように包まれて類の温度を奪ってく。

    「類。オレ、冷たいから…」
    「僕がこうしていたいだけだよ」
    「でも……」

    背をもたれさせると類の心臓がとく、とくと動いているのが分かる。その音が好きだった。

    「ん…」
    「……司くん」

    類は意識のない司の服の中に手を入れる。その薄い胴体を撫で回す。厚い手袋の感触が這うのは初めてで司の体は撫でられる度に少しだけぴくりと反応する。その反応に気を良くした類は内腿にも手を這わせた。

    「どうすればずっと僕の元にいてくれる……?」

    このぬくもりを、永遠を生きる僕のものにしたい。


    隣にいるなら司くんじゃないと嫌だ。どうしたら…
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ☺☺☺👍💴💴💴💴💴💴💕😭👏😭🌠ℹ👏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works