D「今日のメニュー変更だって」
「えっ、"仲良し部屋"? 誰がやらかしたんだ」
「にぎやかしコンビ。デイビスがドロズを殴ったって」
「どっちの手で?」
「そりゃ折れてない方の……」
「違うよ、腕やったのはドロズ。デイビスは脚」
「やだ、何してんのよ。でドロズは? やり返したの?」
「おれはドロズが先に手を出したって聞いたぞ。あれ、逆だっけ?」
「何にせよ、ボスはカンカンだろうな」
「まあ、今回の件はなあ……」
そんな話が、6−4の仲間内で交わされていた。
6−4は傭兵部隊であり、フリーランスのパイロットから成る民間組織だ。組織として最低限の規則を別とすれば、軍規というものはない。従って営倉もない。しかし我の強い傭兵たちのことだ、手狭な艦内で、しかも腕っぷしも強い連中が集まっているとくれば小競り合いはしょっちゅうだった。そこで営倉代わりに使われているのが冷凍室だ。マイナス十八度の密室に、騒ぎを起こした者はそろって放り込まれる。感情的になっているとはいえ、中で暴れようものなら食材を無駄にしたペナルティを――文字通りの意味で――食らうのは自分たちになるとわかっている。そのため始めは悪態をつきながらうろうろと歩き回り、程なくして頭を冷やすどころか体の芯から凍え、やがていがみ合っていたはずの相手と寄り添ってどうにか暖を取ることになるのだ。こうしたことから、冷凍室は〈仲良し部屋〉とも呼ばれていた。
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