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    みしま

    @mshmam323

    書いたもの倉庫

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    POIPOI 27

    みしま

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    iさん(@220_i_284 )のスコーチ&パルスさんを元に書かせていただきました。『シグナルレッドの装いを』https://poipiku.com/4433645/7767619.htmlの前日譚的なものとなります。

    #タイタンフォール2
    titanfall2
    #titanfall2

    残り火の膚に 自分は、いつも判断をたがえてきた。
     側胸部の傷を押さえる手の下から、湧き水のように血が流れ続けている。指の間をすり抜けてゆく熱を感じながら、彼は思った。あの時もそうだ。慢心せず、部下の忠告を聞き入れて撤退していたなら。そうすれば部隊の壊滅を未然に防ぎ、作戦も失敗に終わることはなかったかもしれない、と。
     今回も、きっとどこかで別の選択肢があったのだろう。チームメイトも死なず、自分も死なずにいられた選択肢が。
     しかしながら、この結末に対して心は穏やかだった。殿軍部隊としての役割をこなし、主力部隊の撤退を完了させることができたからだ。もっとも、任務完遂のためには、施設の自爆装置を作動させなければならない。しかし、こうなってはもう無理だろう。ミリシア軍もまた、大打撃を被った。この施設を占領できるほどの戦力も、それに釣り合う価値があるのかも疑問だ。
     それに殿軍部隊の誰が残ろうと、そして残らなかろうと、気にするものはいない。バンファイア部隊のパイロットは、任務中に過失を犯した者、軍規違反者、単に性格に難のある者、そうした爪弾きばかりだ。彼自身を含め、使い捨ての部隊に過ぎない。
     相棒は、と彼は頭を重々しくもたげた。霞む視界に揺らぐ炎、瓦礫と無数の死体、タイタンたちの残骸。それらを踏み越えて、巨大な影が近づいてくる。コアのライトブルーが幾重にも歪んで見えた。
    《パイロット、立ってください。任務はまだ達成されていません》
     悪態をついたつもりだが、声になったかどうかすらわからなかった。喉が泡立つ音を立てる。眠くもないのに、意識が後頭部から抜け出ていきそうだ。
    《エンバー》
     TACネームを呼ばれ、エンバーはいつの間にか目を閉じていたことに気がついた。やっとの思いでまぶたを持ち上げ、視界に相棒の姿を捉える。
     真っ赤な塗装のスコーチ。燃え盛る炎に照らされた巨人は、爛々と光る複眼でこちらを見下ろしている。地獄に獄吏がいるとしたら、こんな姿かもしれない。
     罪悪感も、責任感も、あるいはパイロットとしてのなけなしのプライドも、全てなげうって相棒と向き合っていたら。他のパイロットたちのように、愛機との絆を深める努力をしていたら。
     そうしていたら、自分はここまで戦えなかっただろう。皆にさげすまれようと、仲間内にすら嗤われようと、身を粉にして殿など勤めようと思わなかっただろう。自分可愛さ故に、己の弱さに負けていただろう。
     これで贖罪になるとは思っていない。例え死した部下たちが許そうと、たった一人、永遠に許しを与えない者がいる限り。
     タイタンの巨大な手が伸び、パイロットを持ち上げた。体中の傷口から体液があふれ出し、機械の指を伝って地面へ滴る。エンバーは咳込み、喉にたまった血を吐き出した。残る力を振り絞って、肺に空気を取り込む。
    「ニトロ」
    《はい、パイロット》
     相棒の名はエンバーが決めた。事務的につけたもので、けして情や縁を込めたものではなかった。けれど、いつしか相棒を指す言葉になっていた。
    《パイロット、意識を保ってください。私はプロトコル・2に則り、あなたに任務を完遂させなければなりません》
     〝嘘も突き通せばいつか真実になる〟、ありふれた常套句だ。だがエンバーは信じていなかった。自分に嘘をつき続けてきたが、ついぞ真にはならなかった。それでも、嘘を必要としていた。パイロットであるということ以外、残されたものはなかったから。後悔があるとすれば、相棒をこんな底意地に付き合わせたことだろうか。彼は気にしないだろうが。
    《エンバー?》
     自分は判断を違えてきた。今更もう一つ間違いを増やしたところで、どうということもないだろう。それに、これが最後だ。
    「ニトロ、すまない」
     どこからか飛んできた火の粉が、手のひらに落ちる。エンバーは握りしめた。
     もう熱さは感じない。
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    みしま

    DONEiさん(@220_i_284)よりエアスケブ「クーパーからしょっちゅう〝かわいいやつ〟と言われるので自分のことを〝かわいい〟と思っているBT」の話。
    ※いつもどおり独自設定解釈過多。ライフルマンたちの名前はビーコンステージに登場するキャラから拝借。タイトルは海兵隊の『ライフルマンの誓い』より。
    This is my rifle. マテオ・バウティスタ二等ライフルマンは、タイタンが嫌いだ。
     もちろん、その能力や有用性にケチをつける気はないし、頼れる仲間だという認識は揺るがない。ただ、個人的な理由で嫌っているのだ。
     バウティスタの家族はほとんどが軍関係者だ。かつてはいち開拓民であったが、タイタン戦争勃発を期に戦場に立ち、続くフロンティア戦争でもIMCと戦い続けている。尊敬する祖父はタイタンのパイロットとして戦死し、母は厨房で、そのパートナーは医療部門でミリシアへ貢献し続けている。年若い弟もまた、訓練所でしごきを受けている最中だ。それも、パイロットを目指して。
     タイタンはパイロットを得てこそ、戦場でその真価を発揮する。味方であれば士気を上げ、敵となれば恐怖の対象と化す。戦局を変える、デウスエクスマキナにも匹敵する力の象徴。
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    みしま

    DONEリクエストまとめ⑥
    TF2で「デイビスとドロズのおちゃらけ日常風景」
    おちゃらけ感薄めになってしまいました。ラストリゾートのロゴによせて。※いつもどおり独自設定&解釈過多。独立に至るまでの話。デイビスは元IMC、ドロズは元ミリシアの過去を捏造しています。
    「今日のメニュー変更だって」
    「えっ、"仲良し部屋"? 誰がやらかしたんだ」
    「にぎやかしコンビ。デイビスがドロズを殴ったって」
    「どっちの手で?」
    「そりゃ折れてない方の……」
    「違うよ、腕やったのはドロズ。デイビスは脚」
    「やだ、何してんのよ。でドロズは? やり返したの?」
    「おれはドロズが先に手を出したって聞いたぞ。あれ、逆だっけ?」
    「何にせよ、ボスはカンカンだろうな」
    「まあ、今回の件はなあ……」

     そんな話が、6−4の仲間内で交わされていた。
     6−4は傭兵部隊であり、フリーランスのパイロットから成る民間組織だ。組織として最低限の規則を別とすれば、軍規というものはない。従って営倉もない。しかし我の強い傭兵たちのことだ、手狭な艦内で、しかも腕っぷしも強い連中が集まっているとくれば小競り合いはしょっちゅうだった。そこで営倉代わりに使われているのが冷凍室だ。マイナス十八度の密室に、騒ぎを起こした者はそろって放り込まれる。感情的になっているとはいえ、中で暴れようものなら食材を無駄にしたペナルティを――文字通りの意味で――食らうのは自分たちになるとわかっている。そのため始めは悪態をつきながらうろうろと歩き回り、程なくして頭を冷やすどころか体の芯から凍え、やがていがみ合っていたはずの相手と寄り添ってどうにか暖を取ることになるのだ。こうしたことから、冷凍室は〈仲良し部屋〉とも呼ばれていた。
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    みしま

    DONEリクエストまとめその11。TF2で「ツンデレの無意識独占欲強めローニン君とパイロットの話」
    いつも通り独自解釈&設定過分。
    オンリーマイアイズ タイタンの中でも、ローニンはピーキーな機体だ、とよく言われる。実際その通りだ。
     身の丈の三分の二以上の長さがあるブロードソード、一度に八発の散弾を放つショットガン、そして軽量化されたシャーシにフェーズダッシュ機能。いずれもヒットアンドランの近接戦に特化した兵装だ。中・遠距離による銃撃戦が主となる近代戦において、強力ながらもリスキーな戦法と言える。
     だがわたしにはその方が合っていた。いや、合うようになった、という方が正しい。自身も同様に、最前線へ飛び出して短射程の銃器とCQCを駆使するようになったのは、目が潰れてからの話だから。
     タイフォンでの作戦行動中、目を焼かれた。記憶が曖昧だが、酷く眩しかったことは覚えている。おそらくテルミットの火だったのだろう。一命はとりとめたものの、軍医からは「視力を取り戻すにはインプラントを入れるか、シミュラクラムで義体化するかだ」と宣告された(三つ目に「軍を辞める」という選択肢をよこさなかった軍医殿はさすがだと思う)。
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    みしま

    DONEiさん(@220_i_284 )のスコーチ&パルスさんを元に書かせていただきました。いつも通り独自設定&解釈多々。『残り火の膚に』https://poipiku.com/4433645/7767604.htmlは前日譚的なものとなります。
    シグナルレッドの装いを 息を吸う。息を吐く。熱が気道を炙り、何かが焦げるようなきつい臭いが鼻を突く。
     死体。揺らめく炎。その炎に、炎よりも鮮烈な赤が照り返す。
     聴覚が不明瞭な音を拾う。いや、音じゃない。声か?

     不意に、漂っていた意識が引っ張られるように急浮上した。白い光が目の前で明滅している。次第に声がはっきりとしてきて、意味の理解できる言葉だと気づく。
    「パイロット・エンバー、聞こえますか?」
     光がそれると、陽性残像のちらつく人物を視覚が捉えた。IMCのロゴマークがついた白衣を着ている。名札に記されているのは『Dr.ジャンセン』。
     周囲にあるのはコンピュータ端末の置かれたデスクと金属製の棚、隅のパーティション、そして自身が寝ているストレッチャー。少ない要素で構成された飾り気のない小部屋だ。四方を囲む白い壁の一片はガラスになっており、ブラインドカーテンの隙間から白衣や作業着姿の人々、作業用ロボットが行き来しているのが垣間見える。
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    みしま

    DONEリクエストまとめ③「コーポVがコーポのお偉いさんに性接待したあと最悪の気分で目覚めて嘔吐する話」
    ※直接的な表現はないのでR指定はしていませんが注意。
    ルーチンワーク ホロコールの着信に、おれは心身ともにぐちゃぐちゃの有様で目を覚ました。下敷きになっているシーツも可哀想に、せっかくの人工シルクが体液とルーブの染みで台無しだ。高級ホテルのスイートをこんなことに使うなんて、と思わないでもないが、仕事だから仕方がない。
     ホロコールの発信者は上司のジェンキンスだった。通話には応答せず、メッセージで折り返す旨を伝える。
     起き上がると同時にやってきた頭痛、そして視界に入った男の姿に、おれの気分はさらに急降下した。数刻前(だと思う)までおれを散々犯していたクソお偉いさんは、そのまま枕を押し付けて窒息させたいほど安らかな寝顔でまだ夢の中を漂っている。
     意図せず溜息が漏れた。普段に比べて疲労が強いのはアルコールの影響だけじゃないはずだ。酒に興奮剤か何か盛られたに違いない。こういう、いわゆる“枕仕事”をするときは、生化学制御系のウェアをフル稼働させて嫌でもそういう気分を装うのが常だ。ところが今回はその制御を完全に逸脱していた。ろくに覚えちゃいないが、あられもなく喚いておねだりしていたのは所々記憶にある。羞恥心なんかどうでもよくて、油断していた自分に腹が立つ。
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    みしま

    DONEリクエストまとめ⑥
    TF2で「デイビスとドロズのおちゃらけ日常風景」
    おちゃらけ感薄めになってしまいました。ラストリゾートのロゴによせて。※いつもどおり独自設定&解釈過多。独立に至るまでの話。デイビスは元IMC、ドロズは元ミリシアの過去を捏造しています。
    「今日のメニュー変更だって」
    「えっ、"仲良し部屋"? 誰がやらかしたんだ」
    「にぎやかしコンビ。デイビスがドロズを殴ったって」
    「どっちの手で?」
    「そりゃ折れてない方の……」
    「違うよ、腕やったのはドロズ。デイビスは脚」
    「やだ、何してんのよ。でドロズは? やり返したの?」
    「おれはドロズが先に手を出したって聞いたぞ。あれ、逆だっけ?」
    「何にせよ、ボスはカンカンだろうな」
    「まあ、今回の件はなあ……」

     そんな話が、6−4の仲間内で交わされていた。
     6−4は傭兵部隊であり、フリーランスのパイロットから成る民間組織だ。組織として最低限の規則を別とすれば、軍規というものはない。従って営倉もない。しかし我の強い傭兵たちのことだ、手狭な艦内で、しかも腕っぷしも強い連中が集まっているとくれば小競り合いはしょっちゅうだった。そこで営倉代わりに使われているのが冷凍室だ。マイナス十八度の密室に、騒ぎを起こした者はそろって放り込まれる。感情的になっているとはいえ、中で暴れようものなら食材を無駄にしたペナルティを――文字通りの意味で――食らうのは自分たちになるとわかっている。そのため始めは悪態をつきながらうろうろと歩き回り、程なくして頭を冷やすどころか体の芯から凍え、やがていがみ合っていたはずの相手と寄り添ってどうにか暖を取ることになるのだ。こうしたことから、冷凍室は〈仲良し部屋〉とも呼ばれていた。
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