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    みしま

    @mshmam323

    書いたもの倉庫

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    みしま

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    リクエストまとめ⑧。TF2で「BTがミリシアのメンバーにクーパーのことをベタ褒めする話」
    キャンペーン後の一幕。いつも以上に独自設定&解釈過多。

    #タイタンフォール2
    titanfall2
    #titanfall2

    アンインプリンテッド・メモリーズ 通常、バンガード級タイタンのメモリーはパイロット変更の際に一度リセットされる。もちろん、全てのメモリーデータが、と言うわけではない。変更前のパイロットに関するものが対象だ。
     前パイロットが誰で、戦績や戦闘効率評価はどうだったか、という記録は残される。消されるのはミリシアの公式記録としては残らないような、タイタンが“自己判断で”保存した活動記録や個人データだ。それらはお互いを繋いでいたニューラルリンクを含めて消去される。なぜならそれを残しておくことは、変更後の新規パイロットへ悪影響を及ぼしかねないからだ。
    「だからね、きみたちはすごいなって思うんだ」
     そう言って、〈虎大インダストリーズ〉に所属する研究者は我が子も同然の機体、バンガード級タイタンBT−7274を見上げた。メンテナンスドックに収まる全長約七メートルの機械の巨人は全長約168センチの、同人種の平均身長と比較していささか小ぶりの人間を見下ろした。
    《高評価に感謝します、ニェジェーリン博士。しかし評価理由を理解できません》
    「きみとクーパーさ。メモリーリセットなしに、高い戦闘効率評価を保っている」
    《パイロット・クーパーが優秀だからです》とBTは躊躇なく言った。《ライフルマン当時から身体能力および射撃成績に問題はなく、SRSへの配属後は訓練を重ねより磨きをかけているところです。加えて、適応能力の高さについてはラスティモーサも特に評価していました。故に、彼に目をかけていたのでしょう。懸念事項として経験不足である点が一つ、また当機への“愛着”と思わしき心理傾向は時として――》
    「うんうん知ってる何度も聞いたよ。まったく、SRSの連中ときたら、パイロットもパイロットだがタイタンもタイタンだ」と博士は楽しげにも呆れたふうにもとれる口調で遮った。
    《博士、一つ疑問が》
    「なんだい?」
    《先ほどの発言にあった、メモリー継続における『新規パイロットへ悪影響』についてです。詳細を求めます》
    「そうか、きみはタイフォンでのことがあったから通常手順を踏まなかったんだね。フム」
     博士は手元の操作端末から顔を上げ、さしてずり下がってもいない丸眼鏡の具合を直した。
    「きみは前パイロットと現パイロットとを比べたことはあるかい?」
    《はい。比較データは調整を行うにあたり参考になります》
    「そうだね。それで比較の結果、クーパー少尉に対して批判的な評価を下したことはないかな?」
     BTは二、三度瞬きする間、言われたことを分析した。
    《“批判的”という表現に該当するかはわかりませんが、移行直後は動向を慎重に精査せざるを得ませんでした。ラスティモーサは熟達したパイロット、一方のクーパーは元ライフルマンです。タイタンの搭乗経験はなく、またパルクール戦術およびジャンプキットの経験は仮想シミュレーション下でのものしかありませんでした》
    「つまり、パイロットに不信感を?」
    《いいえ、能力を測っていたのです。任務遂行に当たり、わたしの立ち回りにも関わってきます》
    「なるほど。でも途中で別のパイロットに変更できる機会もあったよね。記録にも残ってる」
    《不要と判断しました。クーパーはパイロットとして十分な能力を有しており、残存部隊との合流時点で戦闘効率評価は高水準を記録していました》
    「ではもしクーパーがパイロットとしての能力に欠いていたとしたら、きみはどうしたかな?」
     BTは青いコアをじっと博士へ向け、その質問を吟味すると同時に相手を観察した。ニェジェーリンはリラックスしており、常に穏やかな微笑みを浮かべている。しかしながら、目つきや声色には【揶揄】あるいは【挑発的】といった感情が含まれている。どうやら博士はこちらを試しているらしい。
     少しして、BTは言った。
    《その仮定は無意味です、ニェジェーリン博士。そもそもクーパーはラスティモーサが認めた兵士であり、パイロットとしての素質も実際の戦闘効率評価においても、他パイロットに引けを取りません。
     博士、ここまでの会話において、わたしの疑問に対する明確な返答を得られていません。返答をする心算がないのであれば明言してください。説明要請を取り消します》
    「いやいや、前置きが長かったね。もちろん答えるよ。それにこの問答だって関係がないわけじゃない」
     博士は再び眼鏡を直し、申し訳無さそうな苦笑を浮かべた。
    「プロトコル・スリーは貴重なパイロットの生還率を高めたが、諸刃でもある。きみらは特にパイロットへの刷り込みが激しい傾向があるからね」
    《『刷り込み』?》
    「比喩表現だよ。でも的を射た言い方だとぼくは思うね。バンガードとパイロット、両者のあり方は親鳥と雛の関係と似ているから」
     ニェジェーリン曰く、パイロットの喪失はバンガード級タイタン自身にも大きな影響を及ぼすのだ、と。
     『プロトコル・スリー:パイロットを保護せよ』を遵守するため、バンガードは己がパイロットを観察し、パイロットに学び、成長する。だからこそ、前パイロットと培ってきたものが新規パイロットとの間で障害となってしまうこともある。例えば武器の構え方、位置取り、得意分野……それらの差は直接的にも間接的にも戦闘効率評価に、ひいては戦場での生死に関わる。
    「前はこうだったのに、なぜ今のパイロットはそうしないのか、これができないのか、ってね。誰だって相棒に前任者と比べられたら良い気はしないものさ。そこに他意があるか否かは関係なくね。きみだって、パイロットに『前のタイタンのほうがよかった』って言われたらムッとするだろう?」
    《『ムッ』とはしませんが、不可能な要求に対する不合理は生じます》
    「ハハ、そうだね。それでそのあとうまく転がればいいけれど、なかなかどうしてそうはいかない。タイタンによってはパイロットに合わせて自分を変えるんじゃなく、パイロットを変えようとすることすらある。しかも珍しいことじゃない」
    《パイロットに改善を提案することは、パイロットのためにならないと?》
    「問題なのはその目指すところさ。誰それのように、はわかりやすく具体的な目標に見える。だが模倣は通過点で、到達点ではない」
    《……理解しました。ではそうならぬよう、AIに行動制限をかければよいのでは?》
    「取捨選択も学習の成果物だよ。それを元から取り上げてしまうことは時として枷になり得る。きみたちにとっても、パイロットにとっても」
    《プロトコル・スリーのために》
    「その通り。むしろこちらが聞きたいね。きみとパイロット・クーパーがうまくいっているのはなぜなのか。その要因は何だと思う?」
    《クーパーが優秀だからです》
    「その他に。SRSパイロットはそもそもが優秀でなければ務まらない」
     博士の言う通り、クーパーは特殊な状況と功績があってSRS入りを果たしたが、本来は厳しい選抜テストをくぐり抜けねば配属されない。それにパイロットのタイタンへの“愛着”も、SRSでは特別なことではない。
     BTは『クーパーは優秀である』『クーパーとの戦闘効率評価は高い』『クーパーは当機を丁重に扱う』……と幾度どなく出てくる似たような回答を弾き、それ以外の要素を模索した。
    《……ラスティモーサです》
    「ほう」
     博士は眼鏡の奥で目を細め、腕組みをした。BTは言葉を選びながら慎重に続けた。
    《彼とは九七三日間リンクしていました。現在のわたしを構築するのは、ラスティモーサによるところが大きい。そして現パイロットは前パイロットの弟子にあたります。『刷り込み』を当てはめれば、わたしとクーパーにとって同じ師に学んだことが共通事項であり、良い影響を与えている可能性があります》
     博士は顎へ手をやって、何度かうなずいた。「なるほど。きみたちは二人とも大尉の雛鳥ってことになるのか。うん、これは考証すべき材料だな。勉強になったよ、BT。ありがとう」
    《故ラスティモーサは二階級特進のため中佐です。それから、礼には及びません》
    「親は子に学ぶものだよ。きみたちの複雑さにはぼくらも驚かされてばかりだ」
    《あなたはわたしの父親に該当しません。遺伝的な繋がりはなく、構成成分も異なります》
    「……きみもまだまだ勉強が必要だね」
    《心得ています》

     ニェジェーリン博士との対話は興味深く、また『メモリーリセット』は他のバンガードたちとも共有すべき措置であろう。そう判断したBTはメンテナンスを終えると、さっそく『メモリーリセット』に関するフィードをバンガード専用チャンネルに流した。すると非番であった数機が食いついて、各々の作業領域から顔をのぞかせた。
    《有効な措置です》と発言したのはサラ・ブリッグスSRS司令官の相棒、MOB−1316、通称MOBだ。《我々のようなAIは、高度かつ複雑な演算が可能であるが故に、自己パラドックスにも陥りやすい。思考材料を絞ることにはメリットがあります》
     彼女――タイタンに性別はないが、女性的もしくは男性的な音声が設定されている。この場合は前者であるので仮にそう呼ぶ――は凛と立つような物言いで意見した。
    《同意します。しかし、わたしは前パイロット・ラスティモーサとのメモリーを保持していたい》とBT。
    《理由を》
     BTは博士と話したとおり、ラスティモーサがBT、クーパー両者にとっての師であり共通の知人であることを挙げた。これがお互いの関係構築にとって欠かせない要素であることも。
    《BT−7274の事例ではそうでしょう》と発言したのはJVE−3558、通称JVEだ。《当機の場合、現パイロットと前パイロットの間には面識がなく、従って共有事項もない。また、データベースを確認する限り戦術および能力にも差異がある。彼女がどれほど優れたパイロットかはこの場で述べるまでもないが、もしリセットをされていなければ博士の説明にあったように戦闘効率評価に影響していた可能性は否めない》
    《JVE−3558の発言に同意。当機はサラが最初のパイロットではありますが、彼女の評価を落とすような要因は極力排除したい。司令官としての面目もあります。あなたはどうですか、OO−2785?》
    《当機の状況はBT−7274に類似》とOO−2785、通称O2は反応した。《現パイロットは前パイロットが後任にと推薦した人物であり、共通の友人でもあります。しかしながら、両者の間に戦術的差異は大きい》
    《戦闘効率評価に影響は?》
    《対処できる範囲です。パイロットの個性は別として、任務執行に問題はありません。彼は優秀なパイロットです》
    《含蓄のある言い回しと推測します、OO-2785。懸念事項があるならば共有を》
     JVEの指摘にBT、MOBも同意し、O2はほんのわずかなラグを見せた。それから無意味にも引き延ばしたような調子で言った。
    《……わたしは、今でも、前パイロットに会いたい》
    《故人にリソースを割くのは浪費では。メモリーの削除を推奨》とMOB。JVEも同意している。
    《提案を拒否。プロトコル・スリーに反します》
     そういい捨て、OOは半ば断ち切るようにチャンネルを退室した。MOBとJVEがなおも疑問符を投げかけ合っている中、BTは己の分析に沈んでいた。
    《BT-7274、何か意見は?》
    《パイロットと話します》
     そろそろクーパーらが参加していた戦闘訓練も終わる頃合いだ。BTもチャンネルを抜け、現実世界に注意を戻した。

     BTがメンテナンスエリアからタイタンドックへと移動する途中、ライフルマンたちの一団とすれ違った。そのうちの一人が「ようBT!」と片手を掲げた。クーパーがライフルマンであった時の上官、コール大尉だ。
    《こんにちは、コール大尉》
    「まだきちんと礼を言えてなかったな。ビーコンのとこじゃ世話になった。ありがとう」
     敬礼をするコールに、部下たちも続く。BTは敬礼を返す代わりに彼らの前へ膝をついた。
    《こちらも協力に感謝を。しかし、あの場で一番の活躍をしたのはクーパーです》
    「確かに。パイロット訓練を受けていたのは小耳に挟んでいたが、驚いたよ」
    《クーパーは十分な素質と実力を兼ね備えていました。短期間でありながら成長は目覚しく、それがビーコン復旧につながったのでしょう》
    「最初はラスティモーサ大尉だと思ったんだ」と部下のマコード軍曹。「まさか、あのクーパーだったとは」
    「ライフルマンが出世したもんだ。すごいジャンプだった」と他のライフルマンも続く。
    「おれはわかってましたよ、いつかやるやつだって!」
    「嘘つけ! 
    「あいつも変わりましたよね。二言目には『おれの相棒が~』だ。すっかりSRSに毒されちまった」
     その言葉に、BTは光るモノアイをライフルマンの一人へ向けた。
    《クーパーに毒を盛るような隊員が?》
    「あ、いや、言葉のあやってやつで……」タイタンに睨まれた隊員はたじたじとなって言った。
    《冗談です。SRSの特殊性は理解しています》
     ライフルマンたちは一瞬目を見張ったが、次の瞬間には一斉に笑い出した。どうやら冗談として成立したらしい。訓練へと向かう彼らと別れ、BTも移動を再開した。

     ドックへ戻りしばらく待っていると、パイロットが姿を現した。ヘルメットを小脇に抱え、キャットウォーク小走りに駆け寄ってくる。
    「おいBT! コール大尉たちにあまり大げさなこと言うなよ。古巣の仲間にからかわれて大変だったんだぞ」
    《こんにちは、ジャック。からかわれた、とは?》
    「やれおれが素晴らしいだの最強パイロットだの、あと何だったか……ああ、タイタンスケコマシとかなんとか」
    《『タイタンスケコマシ』が言葉通りであれば否定します。あなたのタイタンはわたしだけで十分です》そこでクーパーが何か言いかけたが、続くBTの言葉に遮られてしまった。《他の点についてはおよそ事実です。あなたはタイフォンで英雄的な活躍をした、称賛に値するパイロットに他なりません。しかし、あなたを煩わせたのであれば謝罪します》
    「え、いやあの、うん、いいよ、そこまでは」
     しどろもどろに言い、クーパーは後頭部へ手をやった。
    《クーパー、質問があります》
    「うん?」
    《わたしはラスティモーサを忘れるべきでしょうか?》
    「えっ、どうした急に」
     クーパーがコアを覗き込む。大写しになった心配顔パイロットを観察しながら、BTはメモリーリセットについて解説した。聞き終えると、クーパーはしばらく黙したまま思案気に足元を見つめていた。
    「おれにはどちらとも言えないよ。でも、忘れたくないって思うならその心に従うべきなんじゃないかな」
     タイタンの中にあるのは部品と燃料ばかりで、『心』と呼称されるような不定形な器官は存在しない。けれどもクーパーの言うことが理解できないほど浅い付き合いではないので、BTは黙っていた。
    「タイフォンのあとで」とクーパーは続け、間に小さくため息をついた。「新しいバンガードを割り当てられる予定だったんだ。きみとのニューラルリンクを消すよう言われたよ。でも渋って引き伸ばしてた」
    《リンク重複は推奨されません。削除は必要な措置です》
    「きみのことを想うとな、できなかったんだ。結果として消さずにおいて正解だった」と苦笑を浮かべる。
    《しかし、あの時点でわたしが戻るという見込みはなかったはず。あなたはパイロットだ、新規タイタンが与えられたのも当然です》
     するとクーパーは悩まし気に唸り、腕組みをした。
    「何て言えばいいか……悔しいっていうか、名残っていうのか……とにかく、きみのことが恋しかったんだ。
     もう知ってると思うけど、大切な誰かを亡くすのはつらいことだし、そりゃやっぱり悪い影響もあると思う。正直言うと、きみとラスティモーサの絆がうらやましくなることもあるよ。でもその度に、彼が最期に言ったことを思い出すんだ」
     『彼を頼んだぞ』。タイフォンでクーパーを窮地から救ったのち、息絶える間際に彼はそう言い遺した。
    「そのことが誇らしいし、恩を返したいってのもある。まあ実際には、きみに助けられてばかりだけどな。おれときみとで言ったら、きみが親鳥みたいだ」
     クーパーはへらりと笑い、BTのコアの縁を優しく叩いた。
    「なあ相棒、もしおれが死んで、代わりのパイロットが配属されたら、おれにしたみたいに優しくしてやってくれよ」
     もしそのような事態に陥ったら、次こそは『メモリーリセット』を甘んじて受けるだろう。とっさにそう言いそうになったが、《了解しました》とだけ答え、その記録をメモリーの奥へとしまいこんだ。それがプロトコルの働きなのか、己の分析結果なのか、それすらも推測することなく。
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    みしま

    DONEiさん(@220_i_284)よりエアスケブ「クーパーからしょっちゅう〝かわいいやつ〟と言われるので自分のことを〝かわいい〟と思っているBT」の話。
    ※いつもどおり独自設定解釈過多。ライフルマンたちの名前はビーコンステージに登場するキャラから拝借。タイトルは海兵隊の『ライフルマンの誓い』より。
    This is my rifle. マテオ・バウティスタ二等ライフルマンは、タイタンが嫌いだ。
     もちろん、その能力や有用性にケチをつける気はないし、頼れる仲間だという認識は揺るがない。ただ、個人的な理由で嫌っているのだ。
     バウティスタの家族はほとんどが軍関係者だ。かつてはいち開拓民であったが、タイタン戦争勃発を期に戦場に立ち、続くフロンティア戦争でもIMCと戦い続けている。尊敬する祖父はタイタンのパイロットとして戦死し、母は厨房で、そのパートナーは医療部門でミリシアへ貢献し続けている。年若い弟もまた、訓練所でしごきを受けている最中だ。それも、パイロットを目指して。
     タイタンはパイロットを得てこそ、戦場でその真価を発揮する。味方であれば士気を上げ、敵となれば恐怖の対象と化す。戦局を変える、デウスエクスマキナにも匹敵する力の象徴。
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    みしま

    DONEリクエストまとめその11。TF2で「ツンデレの無意識独占欲強めローニン君とパイロットの話」
    いつも通り独自解釈&設定過分。
    オンリーマイアイズ タイタンの中でも、ローニンはピーキーな機体だ、とよく言われる。実際その通りだ。
     身の丈の三分の二以上の長さがあるブロードソード、一度に八発の散弾を放つショットガン、そして軽量化されたシャーシにフェーズダッシュ機能。いずれもヒットアンドランの近接戦に特化した兵装だ。中・遠距離による銃撃戦が主となる近代戦において、強力ながらもリスキーな戦法と言える。
     だがわたしにはその方が合っていた。いや、合うようになった、という方が正しい。自身も同様に、最前線へ飛び出して短射程の銃器とCQCを駆使するようになったのは、目が潰れてからの話だから。
     タイフォンでの作戦行動中、目を焼かれた。記憶が曖昧だが、酷く眩しかったことは覚えている。おそらくテルミットの火だったのだろう。一命はとりとめたものの、軍医からは「視力を取り戻すにはインプラントを入れるか、シミュラクラムで義体化するかだ」と宣告された(三つ目に「軍を辞める」という選択肢をよこさなかった軍医殿はさすがだと思う)。
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    みしま

    DONEリクエストまとめ⑥
    TF2で「デイビスとドロズのおちゃらけ日常風景」
    おちゃらけ感薄めになってしまいました。ラストリゾートのロゴによせて。※いつもどおり独自設定&解釈過多。独立に至るまでの話。デイビスは元IMC、ドロズは元ミリシアの過去を捏造しています。
    「今日のメニュー変更だって」
    「えっ、"仲良し部屋"? 誰がやらかしたんだ」
    「にぎやかしコンビ。デイビスがドロズを殴ったって」
    「どっちの手で?」
    「そりゃ折れてない方の……」
    「違うよ、腕やったのはドロズ。デイビスは脚」
    「やだ、何してんのよ。でドロズは? やり返したの?」
    「おれはドロズが先に手を出したって聞いたぞ。あれ、逆だっけ?」
    「何にせよ、ボスはカンカンだろうな」
    「まあ、今回の件はなあ……」

     そんな話が、6−4の仲間内で交わされていた。
     6−4は傭兵部隊であり、フリーランスのパイロットから成る民間組織だ。組織として最低限の規則を別とすれば、軍規というものはない。従って営倉もない。しかし我の強い傭兵たちのことだ、手狭な艦内で、しかも腕っぷしも強い連中が集まっているとくれば小競り合いはしょっちゅうだった。そこで営倉代わりに使われているのが冷凍室だ。マイナス十八度の密室に、騒ぎを起こした者はそろって放り込まれる。感情的になっているとはいえ、中で暴れようものなら食材を無駄にしたペナルティを――文字通りの意味で――食らうのは自分たちになるとわかっている。そのため始めは悪態をつきながらうろうろと歩き回り、程なくして頭を冷やすどころか体の芯から凍え、やがていがみ合っていたはずの相手と寄り添ってどうにか暖を取ることになるのだ。こうしたことから、冷凍室は〈仲良し部屋〉とも呼ばれていた。
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    みしま

    DONEiさん(@220_i_284 )のスコーチ&パルスさんを元に書かせていただきました。いつも通り独自設定&解釈多々。『残り火の膚に』https://poipiku.com/4433645/7767604.htmlは前日譚的なものとなります。
    シグナルレッドの装いを 息を吸う。息を吐く。熱が気道を炙り、何かが焦げるようなきつい臭いが鼻を突く。
     死体。揺らめく炎。その炎に、炎よりも鮮烈な赤が照り返す。
     聴覚が不明瞭な音を拾う。いや、音じゃない。声か?

     不意に、漂っていた意識が引っ張られるように急浮上した。白い光が目の前で明滅している。次第に声がはっきりとしてきて、意味の理解できる言葉だと気づく。
    「パイロット・エンバー、聞こえますか?」
     光がそれると、陽性残像のちらつく人物を視覚が捉えた。IMCのロゴマークがついた白衣を着ている。名札に記されているのは『Dr.ジャンセン』。
     周囲にあるのはコンピュータ端末の置かれたデスクと金属製の棚、隅のパーティション、そして自身が寝ているストレッチャー。少ない要素で構成された飾り気のない小部屋だ。四方を囲む白い壁の一片はガラスになっており、ブラインドカーテンの隙間から白衣や作業着姿の人々、作業用ロボットが行き来しているのが垣間見える。
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    みしま

    DONEリクエストまとめ③「コーポVがコーポのお偉いさんに性接待したあと最悪の気分で目覚めて嘔吐する話」
    ※直接的な表現はないのでR指定はしていませんが注意。
    ルーチンワーク ホロコールの着信に、おれは心身ともにぐちゃぐちゃの有様で目を覚ました。下敷きになっているシーツも可哀想に、せっかくの人工シルクが体液とルーブの染みで台無しだ。高級ホテルのスイートをこんなことに使うなんて、と思わないでもないが、仕事だから仕方がない。
     ホロコールの発信者は上司のジェンキンスだった。通話には応答せず、メッセージで折り返す旨を伝える。
     起き上がると同時にやってきた頭痛、そして視界に入った男の姿に、おれの気分はさらに急降下した。数刻前(だと思う)までおれを散々犯していたクソお偉いさんは、そのまま枕を押し付けて窒息させたいほど安らかな寝顔でまだ夢の中を漂っている。
     意図せず溜息が漏れた。普段に比べて疲労が強いのはアルコールの影響だけじゃないはずだ。酒に興奮剤か何か盛られたに違いない。こういう、いわゆる“枕仕事”をするときは、生化学制御系のウェアをフル稼働させて嫌でもそういう気分を装うのが常だ。ところが今回はその制御を完全に逸脱していた。ろくに覚えちゃいないが、あられもなく喚いておねだりしていたのは所々記憶にある。羞恥心なんかどうでもよくて、油断していた自分に腹が立つ。
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    みしま

    DONEリクエストまとめ⑤「ヴィクターとVがお出掛け(擬似デートのような…)するお話」。前半V、後半ヴィクター視点。
    晴れのち雨、傘はない チップスロットの不具合に、おれはジャッキーとともにヴィクター・ヴェクターの診療所を訪れた。原因ははっきりしている、昨日の仕事のせいだ。
     依頼内容は、依頼人提供の暗号鍵チップを用いて、とある金庫から中に入っているものを盗んで来いというもの。金庫は骨董品かってほど旧世代の代物だったから、目的の中身は権利書とか機密文書とか、相応の人間の手に渡ればヤバいブツぐらいのもんだろうと軽視していた。侵入は簡単だった。一番の障害は金庫自体だった。古すぎるが故のというか、今どきのウェアじゃほとんど対応していない、あまりに原始的なカウンター型デーモンが仕掛けてあったのだ。幸いにしてその矛先はおれではなく、暗号鍵のチップへと向かった。異変に気づいておれはすぐに接続を切り、チップを引っこ抜いた。スロット周りにちょっとした火傷を負いはしたものの、ロースト脳ミソになる事態は避けられた。それで結局その場じゃどうにもならんと判断して、クソ重い金庫ごと目標を担いで現場を後にした。フィクサーを通じて依頼人とどうにか折り合いをつけ、報酬の半分はせしめたから及第点ってところだろう。あれをどうにかしたいなら本職のテッキーを雇うなり物理で押し切るなりする他ないと思う。
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