1:記憶喪失朝起きると、リビングと繋がっている私の部屋からは、早起きの母親がキッチンでいつものベーコンと目玉焼きを乗せた厚切りのパンを用意してくれているのが見えて、
そこに私は寝ぼけた目をしながらボサボサになった髪を手で宥めて欠伸をしながら『おはぁよぉ』と言う。
それに対してお母さんも笑顔で『おはよう』と返してくれる
いつも通りの朝、そう、いつも通りの
ただ、今日は何かが違った。
目に光が入ってくる、眩しさに耐えながら目を開けると、私の前にはやつれた顔をした右目が隠れた女性が私を覗き込んでいる、
『だ、誰!?』
『ようやく起きましたか、詳しい説明は後で、とにかく着替えてください。出勤時間が遅れて怒られるのは貴方だけじゃないんです、、』
そう淡々と述べた彼女は近くにあった大きめの銃と鎌を腰に備え付ける
『な、なんで銃が、、?』
『はぁ、、?移転してきたっていうから問題のある方だとは承知しておりましたが、、仕事内容も分からないとか言いませんよね?』
『分からない、、、、、です』
私がそう言うと彼女はわざとらしく大きなため息を吐いた。ため息を吐きたいのはこっちだというのに
目の前のこの子に気を取られすぎたからか、自分の置かれている状況をそれほど不思議に思っていない自分にも驚いた。
まるで、ここにずっと前からいたような感覚
ただ、目に入るものは知らない物ばかり、
部屋の隅に並べられているお化粧グッズ、(長年使われていないのであろうか、埃がまるで作りたての綿飴のように積もっている)
先端に黒いベタベタしたものがついている棒(ベタベタしたところについていた顔に見える何かと目があった気がして直ぐに目を逸らした)
目元に何度も縫い直した後のあるクマのぬいぐるみ
そして、おぞましい量の人体科学の図鑑や研究論
私が部屋を物色している間に彼女は支度を済ませたようだった。
『着替えたなら早く行きますよ』
『ちょ、、ちょっと待って』
他にしなくてはいけないことがパッと思いつかず私はついて行くことしか出来なかった。
部屋の扉を抜けると、そこは機械音が鳴り響く薄暗い世界だった。
第四屍支部(死山#2)につづく