見送る文次郎が委員会にかかりきりな上、長次が足を捻挫したので、このところ私は一人で鍛練に出かけている。
左足を引きずって、長次は部屋と廊下を仕切る障子のところまで見送りに来てくれる。
「じゃ、行ってくるな」
長次が頷くのを見届けてから私は歩き出す。
廊下の曲がり角まで来たところで、何の気なしに振り返った。長次はまだ私の方をじっと見ていた。
(わっ!?)
驚いた。
跳ねる心臓を無視してぶんぶん手を振ると、軽く手を上げてから長次は部屋に引っ込んだ。
再び歩き出しながらも、早まった鼓動はなかなか収まらない。
私が気づいていなかっただけで、長次は今日までずっとああして、私の背中が曲がり角の向こうに消えるところを見ていたのだろうか。なんだか、「置いていかないでくれ」という声が聞こえるような顔だった。
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