お前を愛してもいいか?長次は昔からテストが得意ではなかった。
本を読んで知識を蓄えることは好きだ。だが問われたことに当てはまる知識をひねり出して、さらにそれが唯一の正解でなかったらバツをつけられる、というのがどうも腑に落ちない。幼い頃は答案用紙に向かうだけで、自分自身の価値を評定されているように感じて不安だった。だから座学のテストよりも、鍛練で体を動かす方がずっと好ましかった。
さて今、目の前には同室の男がいて、長次にとてつもない難問を吹っ掛けている。けれども不安は感じなかった。自分よりも相手の方がよっぽど不安そうな顔をしているし、どんな答えを差し出そうとも、この男が長次にバツをつけることはないと知っているからだ。