Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    965_jima

    四半世紀腐のオタクやってる。今はサトキョ。
    twitter>@965_jima

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 8

    965_jima

    ☆quiet follow

    亜/獣譚パロなんですが「作者さんが過去にポストされていた数枚のくだりがメチャクチャヘキで聡狂で見たい」という衝動だけで書いております

    名前くらい自分で書ける「俺にはちゃあんと持ち主がおんねんで、て主張するための名前やって考えたらかわいいもんやろ」
    「かわいいわけあるか」
     僕のからだに跨った狂児のてのひらが腹の上にひたりと乗る瞬間、その筋張った腕に確かに記された自身の名前をいつも目の当たりにする。眼鏡をはずしてしまえば見えずに済むであろう距離だけれど、それはしたくない。眼鏡をはずしたってこの男のことを僕はきっと間違えようがないけれど、「僕にすべてを許しているのが他の誰でもない成田狂児である」ことをいつだって深く鮮明に刻み付けておきたかった。そうはなってほしくないし狂児さんもそのつもりはさらさらないとは言うけれど、もし仮に最悪の事態が訪れたときだって、「あのボヤボヤの視界で交わした時間が僕らの最後やったんか」なんて思いたくはないのだ。
    「そもそも僕、狂児さんの持ち主になった覚えありませんから。」
    「名前書いてたら持ち主やで」
    「勝手にそっちでやったもんに勝手に意味見出して所有権押し付けるのやめてください。同意もなんもないわ」
    「え~しゃあないなあ、そんなら飼い主でもええヨン。バター犬よりえぐいことしてるけど」
     何が面白いのかくつくつと笑うその顔が、妙にむかつく。僕の名前を記した腕を引いてバランスを崩してやれば、うわ、と小さな声がこぼれた。僕の身体を挟んでいた膝がずるりと開いていくのと同時に、より深く呑み込まれていく感触。近づいた頭から、整髪料の匂いがする。乱れた髪を直してやるように頭を撫でつけ、ついでに後ろ頭に手を添えてもっと近くに。ちょお待って、とすこし慌てたような熱っぽい声がしたけれど、繋がれる場所全部で繋がることが途方もなく気持ちいいことだなんて、もともとは狂児さんが僕に教えたんだからちゃんと責任を取ってほしい。
    「……は、聡実くん、ずいぶんおイタ、するようになったなあ……」
    「うっさい」
     口を塞いでまた腕を引けば、喉の奥でくぐもった声が響く。この古くて小さな部屋は声を響かせられるような環境ではないからと始めたことだったように思うけれど、動きに連動するように喉が鳴るのは悪い気分ではなかった。多分どこか、声を出したって何したって平気な環境へと場所を移してこうして触れ合ったとしても、僕は多分今みたいに狂児さんの口を塞ぐだろう。
     掴んだまま揺らす腕が、キスの合間も視界の隅にちらつく。「聡実」の二文字がたしかにそこにある。こんなもんは勝手に記されたもので僕の意志は何一つかかわっていなくて、これから僕が狂児さんの傍にいようがいまいがそこにあり続けるものだ。そんなものに、何の意味があるんだろう。それならば。
     思いついたことを実行するべくゆっくりと動きを止めて、焦れたように揺れる腰を両手で抑える。
    「狂児」
    「……な、に……聡実くん」
    「僕がおらんと消えてしまうもんやるわ、なんべんでも繰り返したるから、それずっと刻んどいてください」
    「ッ……――」
     目をまっすぐ見ながら一気に言い切ると、すこしくたびれた首筋に噛みつくように吸い上げた。息を詰めたような響きが、狭い部屋に溶ける。色濃く跡が残るように、つよく、つよく。それは僕と狂児さんが一緒に生き続ける限り、こうして愛を交わし続ける限り、何度も繰り返し刻まれて残り続ける。
     唇を離す。滲むように残った紅を、舌先でなぞった。
    「これが、僕がつけた僕の名前や」
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    965_jima

    PAST習作、聡実編。
    無題「好き」とは一体なんなのでしょうか。
     自分自身でも分からない感情の答えを求めて手当たり次第に聞きまわっても正確な答えは見つからず、でも「ただ好きで、それを伝えたいという感情の発露」という、最初に辿り着いた回答にはどうしたって首を縦に振ることができずにいます。
     これまで僕の周りでひそやかに飛び交い、または堂々と交わされてきた「好き」はもっと生き物としての本能というか即物的なものがほとんどで、だから僕は僕の中にあるこの気持ちを「好き」としてカテゴライズすることができずにいるのです。高校時代に遡れば修学旅行の夜、恋人に会いに行った同室のクラスメートや、今も講義の最中に手を取り合って抜け出していく同級生。そして夜半にはまだ早い時間、宿泊までの時間つぶしをしているであろうバイト先によく来る、ボックス席でべったりと隣り合って座るカップル客。どの例を取っても「好き」が生むその衝動は、最終的には公共の場で出来ないことをしたい、そんな即物的なものです。もっとはっきり言えば、それはきっと性的行為につながる「好き」です。けれど僕の中にある感情は、きっとそこには繋がっていません。
    1886

    965_jima

    MOURNING1944、互いの気持ちを察しながら未だ付き合えてないふたりの、たぶんそのうち聡狂になる話です。例の泣き顔のモナリザを捏ねたかった話。
    ※聡実くんの友達♀の名前を便宜上「マナ」にしています
    ※非ネイティブ関西弁
    首洗って待っとけ意気地なしダヴィンチ どうしてファミレスの壁に名画のレプリカがあるのか、といういまさらな疑問を、最近になって周囲にいるいろいろな人にぶつけている。流石に偉い人に聞けたことはないけれど、尋ねた何人かのバイト仲間たちは誰一人その明確な理由を知らなかった。曰く、イタリアっぽいから。曰く、高級感を醸し出すため。なるほどどれも有り得そうやなと思いながら、けれど「親に連れてこられる年齢の頃から芸術に触れるため」と言った先輩には「でもこの間ちっちゃい男の子のお母さんがその子の口塞いでましたよ、そんなことお外で大声で言うもんじゃありませんって」ってやんわり教えておいた。体感、一週間にひとりはその手の子供がやってきて、親から怒られたり口ふさがれたり一緒に笑ったりしている。そやねん、子供って芸術とかどうでもいいし見えたもんを見えた通り素直に言うし、しょうもない下ネタで笑うよな、と思ったけれど、自分にはそういったことで笑っていた記憶はない。
    3960

    965_jima

    MOURNING1944、たぶん一番読んでいただいている話だと思います。
    この続きを今回書くつもりでした…(懺悔)(絶対後日形にします)
    かわいくてかわいくていとしくていとしい 十代の恋人、という存在についてだけなら、実はそんなに罪悪感はない。そもそも親父からして――マサノリのおふくろさんはそれなりの年齢やけれど――カツ子姐さんを見初めたのは彼女が十代の頃と聞いているし、周りの同世代の奴らも干支一回り下あたりからそれこそ自分の娘でもおかしくないような年齢の女を、それぞれ妻にするなり、囲うなり、している。特定の相手がいなかったのは組の中でも実は自分くらいのもので、まあ俺はそもそもあらゆる点でどっか普通とズレてるとこあるし、ヒモ時代も別に愛情とか持ってやってたわけと違うし、誰かを恋しいとか触れたいとか思うようなタマちゃうんやろな、なんて思いながらの二十年。
     いやもうそんなんとんでもない大間違い、青天のヘキレキ、ただ生後十日にして狂い始めた歯車と同じように、運命の相手も大きくズレた年齢に設定されてしもてただけなんと違うやろか、ということに気づくには少し時間がかかった。可愛がりたい、側にいたい、きっと会わせてもらえない甥っ子姪っ子の代わりに愛情をかける真似ごとがしてみたいだけやし、とまっとうな理由を捻り出して自分をだまくらかして、声をかけて呼び寄せて口実を作っては何度も何度も顔を合わせた。狭くて冷たくてしょうもない殺風景な部屋で数年を過ごしてもなお、心の一番深い場所に染み込んで消えない最後のソプラノ。あの微かに淡い色をたたえるまっすぐな瞳が俺のために涙をこぼす、その愛しい表情も。
    3460

    recommended works

    ジオさんち

    MAIKINGにほさにワンライ。女審神者。

    『食欲の秋。食べすぎたからとダイエットをしようとするさにちゃんと、太っていないからと新たな秋の味覚を準備する号さんの攻防が今日も始まる。』
    #お題ガチャ #同棲カプのゆるい話
    (栗ご飯@にほさに) 夏が終わった。
     南国の海の写真が載ったカレンダーを、慎重に破れば月が変わる。新しい写真はイチョウ並木が綺麗な写真だった。未だ暑さが伴うものの、暦の上では既に秋。スーパーでも果実の種類が増えて来ている。今まで店頭に鎮座していた西瓜は成りを潜め、梨、桃、葡萄に無花果が立ち並ぶようになった。茸の種類も増えた。旬を迎えようとしている茸たちは、徐々に売り場を占拠し始めている。
     秋。一年で最も実りのある季節。
     あぁ、今年も来てしまったと言わざるを得ない。大きく溜め息を溢した後ろで、恋人が笑っている。

     同棲をし始め、互いに料理をするようになり、私よりもちょっぴり――いや、かなり料理が得意な恋人が、いつの間にか冷蔵庫の管理をするようになるまでには時間がかからなかった。それはいい。それはいいのだ。誰だって美味しいものを食べたい。料理の腕前に自信がある訳でもなかったから、彼が台所の主になるのは賛成だ。それはいい。それはいいのだ。
    1114