新任教師明智先生と前歴持ちの雨宮くんの話⑨法廷内の空気は重くて苦しい。
それは罪を犯した人間を裁く場所である以上、当然の話ではある。しかし一年前に被告側として座ったあの日より、今日の方が一層空気が重く感じた。それは隣に座る明智と冴さんからも感じるし、検察側からもその空気は痛いほど感じる。一年前と変わらないはずの裁判。弁護士が明智に変わったくらいしか変化はないと思っていたが、どうもあの日から随分と人間の顔ぶれが変わっている。
これより雨宮蓮の裁判を開廷します。検察側、弁護側共に準備は出来ていますね?
まず最初の掛け声とともに左右を見渡すこの場の長、裁判長と呼ばれる俺達の審議を見届ける役割の男が違う人物に変わっていた。厳格そうな顔つきは、見た目通り全ての『真実』を見届け、公平な判決を下す覚悟を持っているのだろうか。
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