蹴散らせ青空 夏の朝日が差す舞台の袖から、よく通る大きな声がジュンを呼ぶ。振り返るとキラリと光るレンズ越しに、青空の瞳がひたとこちらを見据えていた。胸に抱えたバインダー越しにちょいちょいと手招きされるのを見て、ジュンは重い腰を上げて駆け寄っていく。風に靡くリハーサル用のTシャツは、汗ですっかり変色してしまっていた。
「ったく……。オレは犬じゃないんですけどね〜?」
袖の影で待ち構えていた茨は、汗だくのジュンと対照的に涼し気な髪をさらりと耳に掛けて、手元の資料に目を落とす。
「Bメロの立ち位置変更します。」
「はいよ。……土壇場で変更なんて珍しいすっね」
「前のユニットが構成を少し変えてきたようでして……。被るんですよ」
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