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    ・中夜

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    ・中夜

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    ジュン茨ワンライ【作戦会議】

    コズプロの学生アイドル限定夏フェスという謎時空のジュン+茨

    #ジュン茨
    junThorn

    蹴散らせ青空 夏の朝日が差す舞台の袖から、よく通る大きな声がジュンを呼ぶ。振り返るとキラリと光るレンズ越しに、青空の瞳がひたとこちらを見据えていた。胸に抱えたバインダー越しにちょいちょいと手招きされるのを見て、ジュンは重い腰を上げて駆け寄っていく。風に靡くリハーサル用のTシャツは、汗ですっかり変色してしまっていた。
    「ったく……。オレは犬じゃないんですけどね〜?」
     袖の影で待ち構えていた茨は、汗だくのジュンと対照的に涼し気な髪をさらりと耳に掛けて、手元の資料に目を落とす。
    「Bメロの立ち位置変更します。」
    「はいよ。……土壇場で変更なんて珍しいすっね」
    「前のユニットが構成を少し変えてきたようでして……。被るんですよ」
    「なるほどねぇ」
     茨が赤色のボールペンで上書きしていく様子を覗き込むと、前髪を滴る汗が紙に落ちた。咄嗟に謝ると、茨の肩に引っ掛かっていたタオルをバサリと被せられる。
    「……珍しいといえば、こういう同士討ちみたいなのも珍しいっすね。茨はコズプロ全員手下つーか、コズプロの勝利が自分の勝利みたいなタイプだと思ってましたけど、今回あんたオレと自分のプロデュースしかしてないんでしょ? オレはてっきり、この夏フェスまるまる仕切って『ふはははっ!玲明も秀越もすべて俺の手の内だ!』みたいなこと言い出すもんだとばっかり……」
     受け取ったタオルを頭にギュッと結んで顔をあげると、器用に片眉をあげた茨と目が合う。
    「おや。自分は今日Edenの七種茨のつもりでしたが、副所長の七種に面会をご希望で?」
    「はははっ、まさか。どっちかっていうなら、オレはただの七種茨に会いたいですねぇ〜……、ぃたッ!」
     無防備な脇腹にボールペンが突き刺さった。思わず睨みつけると、茨はプイッと顔を背けてしまう。
    「今回はあくまで玲明と秀越の合同ライブ―――謂わば学校行事の一貫です。成果が成績に関与する以上、一応生徒として評価される側の肩書も持つ自分が不用意に他アイドルへ御膳立てするのは如何なものか、ということらしいです。……本当なら自分が一式、土台からそこらの木っ端アイドル共の指先までプロデュースして、コズプロ初のドリームライブフェス!とでも題して大金稼いでいる予定だったのに。無能のクソじじぃどもが!」
    「素が出てますよぉ〜。……まあ、でもなんとなく理解しました。難しいことはわかんねぇけど、とりあえずここにいる連中全員、オレとあんたで蹴散らせばいいんすよね?」
    「……その通りです。ユニット対抗という名目ではありますが、現在在校している学生しか参加資格がありません。つまり、閣下と殿下抜きの我々ふたりが、今日この場ではEdenです。我々のミスも成功も、今後のEdenの評価になります。上ふたりがいないとなんかショボ〜い、などと言われないよう、しっかりお願いしますよ?ジュン」
    「はっ。当たり前でしょ〜?負けませんよ、誰にも」
    「結構!それでは、裏で少し動きながら確認しましょうか」
     そう言って袖裏の階段をカシャンカシャン下りる茨を見下ろして、ジュンは目を丸くする。
    「あれ、ほんとに珍しい……。茨気づいてねぇんすか?」
    「はぁ?」
     振り仰いだ茨は、陽射しの眩しさに目を細めた。ゆっくりと歩いて近づいたジュンが、段上で静かに微笑んでいる。ふたりを吹き抜ける風は、ほのかに潮の香りがした。
    「誰にもって言ったでしょ。オレは、あんたにも負けるつもりねぇっすから」
     ダンッと力強く踏み切ったジュンは、階段を跳び下りてそのまま脇目も振らずに駆けていく。茨がハッと気づいた頃にはもう、手の平ほどのサイズになってしまっていた。そんな茨を盗み見て笑ったジュンが、口元に手を当てて叫ぶ。
    「暑さでヤラれてないでくださいよぉ〜?そんなんじゃ、今日のステージはオレがひとりじめにしちまいますからねぇ!」
    「あっははは!……上等です。油断しまくってるその寝首、真正面から搔っ捌いてやりますよ!」
     走り出した茨のシャツが、風を孕んでバサリと膨らむ。はためく2つの影を、大きな入道雲が見つめていた。
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    ・中夜

    DONEHAPPY JUNIBA DAY!

    茨さんほとんど出てこない同棲ジば。
    掃除洗濯をしたのは昨日なのにシーツを替えたのは今朝、が本作のポイントです。
    日々は続くから(やっぱり帰って来なかったな……)
     ヘッドボードの明かりを消した後も手放せないでいるスマホを開いて、閉じて、もう何十回も目にしたデジタル時計の時刻にため息をついた。うつ伏せに押し潰している枕へ顔を埋め、意味もなくウンヌン唸ってみる。けれど、どれだけ待ってみたってオレの右手が微かなバイブを告げることはないし、煌々と現れたロック画面の通知に眩しく目を眇めることもない。残り数分で日付を跨ごうかというこの時間に誰からも連絡が来ないなんて、当たり前の話ではあるんだろうけど。その一般的には非常識とも言える連絡を、オレはかれこれ2時間もソワソワと期待してしまっているのだった。
    「……茨」
     待ち侘びている方が馬鹿げてるのはわかっている。そもそも今日は帰れないって、だから昨日の内にお祝いしておきましょうって。端からそういう話だったのだ。帰れない今日の代わりに、茨はオレの好きなメニューを沢山夕飯に出してくれたし、オレだって茨が朝から料理に集中できるように洗濯から何からその他すべての雑事をせっせと片付けた。夕方普段より早めのご馳走に、2人で作った苺タルトも平らげて、余った料理も1粒も無くなったお皿も仲良く片付けた後ソファーに並んで触れ合って……昨日まで、ううん、ついさっき。風呂から上がってベッドに入るまで、本当になんの不満もなかったはずなのに。
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