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    百合菜

    遙かやアンジェで字書きをしています。
    ときどきスタマイ。
    キャラクター紹介ひとりめのキャラにはまりがち。

    こちらでは、完成した話のほか、書きかけの話、連載途中の話、供養の話、進捗なども掲載しております。
    少しでもお楽しみいただけると幸いです。

    ※カップリング・話ごとにタグをつけていますので、よろしければご利用ください

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    百合菜

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    遙か2・頼忠×花梨←勝真。勝真視点の話です。

    「最近、花梨かわいくなったよな」。そう話すイサト。
    しかし、勝真には変わったようには見えない。
    そんなとき、花梨・頼忠とともに神護寺に行くことになる。そこで勝真が気づいてしまったのは……

    ※2021年6月23日Twitterに掲載

    ##頼花
    ##遙か2
    #頼花
    onesDependents
    #遙か2
    faraway2
    #遙かなる時空の中で2
    harukanaruTokiNoNakade2

    「花梨、最近かわいくなったよな」

    そうイサトが話したのは京の町に雪が降りだした頃。と言っても、今年は気が交わらなかった関係でいつもより遅いんだけど。

    「そうか? 俺にはそうは見えねーけど」

    イサトですらと言っては失礼かもしれないけど、女の様子にいちいち気づくようには見えないあいつがそう言うんだから、そうなのかもしれない。
    そう思いながら脳内に花梨の姿を思い浮かべる。
    京にいる女としては珍しく男のように髪を短くし、怨霊退治のため町やときには野山も駆け巡る。
    その姿はかわいいというより健気で、それでいてときには無茶をしやがるから心配になってしまう。
    でも、イサトが言うように、あいつそんなにかわいくなったか? 俺には前と変わっていない気がするんだが。
    つい考え込んでいると、まるで風が吹き込むような声が聞こえてきた。

    「何やら興味深い話をしているね」

    ふと見るとそこには翡翠の姿があった。

    「ああ、翡翠、お前ならわかるだろ。最近、花梨のやつ、何かかわいくなったと思わね~か」

    目を輝かせて話すイサトの言葉に対し、翡翠は目を細めている。おそらくこの場にはいないあいつの姿を思い出しているのだろう。

    「そう、だね。まるで蕾が花に変わっていく様子を見ているようだよ」
    「だろ!」

    意気投合するふたりに対し、俺は相変わらずわかんねーとしか思えない。
    そんなに変わったのか、あいつ。
    この前も今も龍神の神子として頑張っていることには変わらないのに、何が違うんだ? 何がイサトたちに変わったと思わせたんだ?

    ☆ ☆ ☆

    その日は花梨とそして頼忠と一緒に神護寺に行くことにした。紫姫が言うにはここにも怨霊が出ているらしい。
    京の端も端。雪が積もる道をひたすら馬に乗って登っていく。
    だけど、京の端に巣食う怨霊を退治しないことには京の町全体も浄化されない。そのためにわざわざ行くことにした。

    花梨は頼忠と同じ馬に乗っている。
    …あいつ、馬に乗るのも上手になったよな。
    出会ったばかりの頃はおっかなびっくりで俺の馬に乗せてやったのによ。
    そう思いながら前をいく花梨たちの様子を見ている。
    頼忠は寡黙だから自分から話すことはほとんどないが、花梨がいろいろ話しかけているんだろ。頷いたりしている様子が見える。
    そして、神護寺の近くまで来たものの、ここは道から寺まで行くのにいったん渓谷を下り、そして登らないといけない。
    足手まといになるから先に行っててと花梨に言われ、俺は雪を踏みかためながら谷を下っていく。

    「神子殿、お手をどうぞ」
    「ありがとう、頼忠さん」

    後ろからはおそるおそる谷を下りる花梨と、そんな様子を気遣う頼忠がいた。

    あ……

    ふと俺は何かに気がついた。
    頼忠が花梨に手を貸すのも、そんな頼忠を花梨が信頼するのも、別に今に始まったことではない。
    ただ、頼忠の声が前よりも優しくなっていて、そして花梨も頼忠が手を差しのべることをまるで当たり前のように受け止めている。そう、ふたりの間にあったはずの距離が前よりも縮んでいた。確実に。
    手を取られた花梨が照れている様子、そのはにかむ様子がかわいかった。

    …ん? かわいい?

    そのとき、俺は自分の中にあるひとつの感情に気づいた。
    そう、確かに昨日まではあいつのことを龍神の神子や仲間としてしか見ていなかった。だけど、今、気づいてしまった。俺はあいつのことを守りたい存在だということに。本当は頼忠の代わりに俺がその手を取りたかったということに。

    「ここからはあぶのうございます。お気をつけて」

    先ほどより遠いところから声が聞こえてくる。振り向けば、今にも滑ってしまいそうなあいつを頼忠が必死に転ばないように支えてやっている。

    「あ……」

    そのときの花梨と頼忠の表情。一生といっては大げさだけど、俺は忘れられないと思う。
    頼忠が今までに見せたことない柔らかい表情を見せ、花梨が甘えた表情をしていた。
    それは単に龍神の神子と八葉としての間柄ではなく、それを越えた関係だということくらい俺でもわかった。
    何だよ、あいつら。いつの間に……

    「俺、先に行ってるからな」

    よりによって自分の気持ちに気づいた日に、あいつらの関係が変わったことにも気づくとはな。皮肉なもんだぜ。
    どっちみち花梨のトロさにしびれを切らした俺は半分走りながら谷を下る。そして少し息を整えてから今度は坂を登ることにした。
    ふと後ろを見るとふたりは相変わらずゆっくりと慎重に歩いていた。ふたつの影がひとつになったのをチラリと確認してから俺はふたりに背を向ける。雪が日の光を反射しているのが眩しかった。
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    百合菜

    DOODLE地蔵の姿での任務を終えたほたるを待っていたのは、あきれ果てて自分を見つめる光秀の姿であった。
    しかし、それには意外な理由があり!?

    お糸さんや蘭丸も登場しつつ、ほたるちゃんが安土の危険から守るために奮闘するお話です。

    ※イベント直前に体調を崩したため、加筆修正の時間が取れず一部説明が欠ける箇所がございます。
    申し訳ございませんが脳内補完をお願いします🙏
    1.

    「まったく君って言う人は……」

    任務に出ていた私を待っていたのはあきれ果てた瞳で私を見つめる光秀さまの姿。
    私が手にしているのは抱えきれないほどの花に、饅頭や団子などの甘味に酒、さらにはよだれかけや頭巾の数々。

    「地蔵の姿になって山道で立つように、と命じたのは確かに私だけど、だからってここまでお供え物を持って帰るとは思わないじゃない」

    光秀さまのおっしゃることは一理ある。
    私が命じられたのは京から安土へとつながる山道を通るものの中で不審な人物がいないか見張ること。
    最近、安土では奇行に走る男女が増えてきている。
    見たものの話によれば何かを求めているようだが、言語が明瞭ではないため求めているものが何であるかわからず、また原因も特定できないとのことだった。
    6326

    百合菜

    MAIKING遙か4・風千
    「雲居の空」第3章

    風早ED後の話。
    豊葦原で平和に暮らす千尋と風早。
    姉の一ノ姫の婚姻が近づいており、自分も似たような幸せを求めるが、二ノ姫である以上、それは難しくて……

    アシュヴィンとの顔合わせも終わり、ふたりは中つ国へ帰ることに。
    道中、ふたりは寄り道をして蛍の光を鑑賞する。
    すると、風早が衝撃的な言葉を口にする……。
    「雲居の空」第3章~蛍3.

    「蛍…… 綺麗だね」

    常世の国から帰るころには夏の夜とはいえ、すっかり暗くなっていた。帰り道はずっと言葉を交わさないでいたが、宮殿が近づいたころ、あえて千尋は風早とふたりっきりになることにした。さすがにここまで来れば安全だろう、そう思って。

    短い命を輝かせるかのように光を放つ蛍が自分たちの周りを飛び交っている。明かりが灯ったり消えたりするのを見ながら、千尋はアシュヴィンとの会話を風早に話した。

    「そんなことを言ったのですか、アシュヴィンは」

    半分は穏やかな瞳で受け止めているが、半分は苦笑しているようだ。
    苦笑いの理由がわからず、千尋は風早の顔を見つめる。

    「『昔』、あなたが嫁いだとき、全然相手にしてもらえず、あなたはアシュヴィンに文句を言ったのですけどね」
    1381

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    百合菜

    PAST遙か2・頼花
    「たとえこの手が穢れていても(前編)」
    プロローグ

    「それ、花梨からの文か?」
    「ええ、河内で元気にしているようですわ、兄上」

    千歳の住む屋敷に勝真が訪れたのは秋も深まったある日のこと。
    貴族の女性らしく、めったに表情を崩さない千歳であるが、その日はほんのわずかではあるが口角が上がっているのが見てとれた。
    そして、手にしていたのは文であることから、差出人が花梨であると気づいたようである。

    「あいつら、いろいろあったけど、元気にやっているみたいだな」
    「そうですね」

    千歳の言葉を聞きながら勝真は簾のかかった室内から空を仰ぐ。
    空の色をはっきりと認識することはできないが、おそらく彼女の笑顔を思い出させる澄みきった青空が河内まで広がっているであろう。

    「もう二度と会うことは叶わないでしょうけど…… でも、会いたいわ、花梨」

    聞こえるか聞こえないか。そんな千歳の呟き。
    返事を待っているわけではないだろうが、勝真もつい答えてしまう。

    「そうだな、俺ももう一度会いたいぜ。あいつらに」

    そして、思い出す。
    花梨たちと京を守るために奮闘した日々と、そしてそのあとの花梨と頼忠を取り囲むちょっとした事件のことを。

    ーーーーーー 8597

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    そして、手にしていたのは文であることから、差出人が花梨であると気づいたようである。

    「あいつら、いろいろあったけど、元気にやっているみたいだな」
    「そうですね」

    千歳の言葉を聞きながら勝真は簾のかかった室内から空を仰ぐ。
    空の色をはっきりと認識することはできないが、おそらく彼女の笑顔を思い出させる澄みきった青空が河内まで広がっているであろう。

    「もう二度と会うことは叶わないでしょうけど…… でも、会いたいわ、花梨」

    聞こえるか聞こえないか。そんな千歳の呟き。
    返事を待っているわけではないだろうが、勝真もつい答えてしまう。

    「そうだな、俺ももう一度会いたいぜ。あいつらに」

    そして、思い出す。
    花梨たちと京を守るために奮闘した日々と、そしてそのあとの花梨と頼忠を取り囲むちょっとした事件のことを。

    ーーーーーー 8597

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    PAST遙か2・頼花
    「たとえこの手が穢れていても(後編)
    6.この手は血で穢れている~前編

    「頼忠さん、市に行きたいので、お供をお願いできますか」

    一通りの愛を交わしたあと、花梨が頼忠にそうお願いしたのは、先ほどのこと。
    頼忠はあっという間に身支度を整え、そして花梨に従い屋敷を出る。
    これだけ見ているとどちらがこの家に住むものなのかわからない

    「今日は、どちらにうかがいましょうか」

    和気あいあいというには、ちょっとかしこまっているのかもしれない。
    だけど、出会ったときよりは確実に縮まっているふたり。
    少し遠くから見れば、従者とともに出歩いている姿だが、近くで見れば逢瀬にしか見えない。そんな独特の空気を持つふたり。
    しかし、そんな仲睦まじいふたりの様子を氷のように研ぎ澄ました瞳で見つめるものがいた。微笑ましい、そんな空気を一蹴するかのような冷たい眼差しで。


    「花梨殿、私から離れないでいただけますか?」

    頼忠が花梨にそう話しかけてきたのは、必要なものはほぼ揃い、そろそろ帰ろうとしたときだった。

    「はい。でも、どうしたのですか? 急に」

    頼忠はそのことには答えない。
    もしかすると、自分が口を開くことで邪魔になるかもしれないので、花 6803

    百合菜

    PAST遙か2・頼花
    「たとえこの手が穢れていても(後編)
    6.この手は血で穢れている~前編

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    頼忠はあっという間に身支度を整え、そして花梨に従い屋敷を出る。
    これだけ見ているとどちらがこの家に住むものなのかわからない

    「今日は、どちらにうかがいましょうか」

    和気あいあいというには、ちょっとかしこまっているのかもしれない。
    だけど、出会ったときよりは確実に縮まっているふたり。
    少し遠くから見れば、従者とともに出歩いている姿だが、近くで見れば逢瀬にしか見えない。そんな独特の空気を持つふたり。
    しかし、そんな仲睦まじいふたりの様子を氷のように研ぎ澄ました瞳で見つめるものがいた。微笑ましい、そんな空気を一蹴するかのような冷たい眼差しで。


    「花梨殿、私から離れないでいただけますか?」

    頼忠が花梨にそう話しかけてきたのは、必要なものはほぼ揃い、そろそろ帰ろうとしたときだった。

    「はい。でも、どうしたのですか? 急に」

    頼忠はそのことには答えない。
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