アキネイターみたいになる譲テツ。なんやかんやで再び譲介くんと同居することになったけど、三十路過ぎの男に女っ気が無いのもどうなんだと自分のこと棚上げで…ていうか自分は独りでも平気なクチだけど一般的にはそうじゃないんじゃないか?と心配するTETSU先生が、さりげなく聞き出そうとする。
「あー、ここはお前の家なんだから、気になる女がいたら遠慮なく連れ込めよ。その間は気を遣って消えてやるからよ」
「いませんよ、そんな人」
明らかに不機嫌な顔になる譲介くん。
「今はいなくても分からんぞ?お前、けっこうモテるって朝倉のセガレから聞いたぞ」
「イジられてるだけじゃないですかね?」
「そういやお前から惚れた腫れたの話は聞いたことねえな。ひょっとして、そういう感情が無いとかか?」
アロマとかアセクのことはちょっと理解しているTETSU先生。
「そういう感情が無い、とも…言い切れないですけど…。一応、好きな人はいます」
歯切れ悪くも核心に迫るような話になってきたので、「おっ」と乗り出すTETSU先生。
「なんだ、いるんじゃねえか。紹介しろよ」
「しませんよ」
「俺だって空気くらい読むぜ、お前のこと持ち上げてやるからよ」
「その人とどうこうなりたいって欲は無いから別にいいです」
「好きなんだろ?」
「僕は今の状況で満足しているんです。僕の気持ちを相手に知らせたら、それが全部壊れてしまうんです。だから僕はそばで見ているだけでいいんです。その方がお互いにとってベターなので」
「…もしかして、既婚者か?」
「違います」
「…男、か」
「…そうです」
はあ〜っと、大きなため息をつくTETSU先生。昔に比べたらかなり社会は寛容になってきたけれど、それでも抵抗があるのは分かる。
「相手はお前のことどう思ってるんだ?」
「家族のように想ってくれてはいると思いますけど、恋愛感情は無いですね」
「一也か?」
「あり得ませんね」
「神代一人か?」
「とんでもないです」
「朝倉省吾?」
「僕の知り合い全部に当たるつもりですか?」
「俺の知らないヤツか?」
「僕よりもあなたの方が知ってると思います」
「なんだそりゃ?」
ちょっと考え込むTETSU先生…そう言えばコイツが楽しそうに聞いてた話があったな…と、膝を叩く。
「KAZUYAか!」
「もう亡くなってるじゃないですか。顔も知らないし」
ふふっと笑う譲介くん。
「クイズはこれでおしまいです。もう気にしないでください。僕は今のままで十分幸せなので」
「そういうワケにもいかねえだろ…。相手はお前の気持ちを知らないままなんだろ。それでいいのかよ」
「いいんです。その人は重い病にかかってて、恐らく僕より先に死ぬので」
「はあ!?」
死にかけなのか?それなら、一刻も早く行動すべきだろ!
「いやほっとけねえだろ!なんで行動しねえんだよ!」
「大丈夫です、その人のことは僕が看取るって約束してありますから」
「大丈夫じゃねえだろ!?」
えっ、看取るって俺以外にも約束してるヤツがいるのかよ!?と大混乱するTETSU先生。
終わり。