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    エプロンと猗窩煉󠄁
    ■現代パロディ

    #猗窩煉

     琥珀のように透き通った黄金色の瞳が、そのまま零れ落ちるかと思った。
    「杏寿郎。」
     めいっぱい見開かれた両目が、瞬きを忘れてしまったかのように睫毛だけを細かく震わせている。こんなに動揺をしている彼を見るのは随分と久し振りで、このまま涙の一粒でも落ちてきそうだと何処か冷静にその表情を見詰めた。

     袖無しのインナーに羽織っていたパーカーを手早く脱ぐと、肌を晒したままの俺の肩に掛けてそのまま体を支えるように抱き寄せられる。寒さに震えた体にするように腕を撫で擦る猗窩座の手でパーカーの裏地が素肌を擦って擽ったい。
    「誰にやられたんだ。」
    「誰にって…。」
    「誰が、こんな、」
    「そんな顔するなよ。」
    「こんな顔にもなる!」
     焦ると言葉付きが強くなるのは、猗窩座の癖だった。
     想像していたどの反応とも違っていて、正直困惑する。もっと慌てるかと思ったし、もっと浮かれたものかとも思っていた。彼はどんな反応をするのだろう?という好奇心が生んだ結果なので、想像と相違があったとて、目の前のこの表情が結果なのだけれど。

    「誰の入れ知恵だと聞いているんだ!」
     パイル生地の裏地が素肌の上を滑る。
     俺と猗窩座は二人揃ってファッションというものに疎かった。着るものに柄がついていようが無かろうが、生地が粗悪だろうが、逆に普段着にするには上等すぎても、全く気にならない。とはいえ、俺だけは肌に直接触れる衣服の肌触りは、出来るだけ滑らかなものが好みだ。インナーの首元にタグがあるのも気になる性分で、可能ならば選ばないようにしていた。

    「誰の入れ知恵でもない、自分で考えてしたんだよ。」
     背中でクロスさせた紐の縫い目が荒く、むず痒い心地になる。
     腰を隠す前衣の裏側に洗濯表示が描かれたタグが付いていて、下着しか付けていない太腿を撫でるのがこれもまた擽ったい。二人で兼用しているエプロンの裾を叩いて整えると、はじめに見せた表情とはまた違った顔で固まる猗窩座を見つめ返す。

    「お気に召さないようだな。」
    「気に入らないとは言ってない!」
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