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    甘味。/konpeito

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    本日の800文字チャレンジ
    好きだと伝えたい/Ⅳ最終決戦前夜クロリン

    「ただ、聞いてくれるだけでいいんだ」
     好きだと告げたはずのリィン・シュバルツァーは控えめな笑みを浮かべていた。世界大戦前夜、ミシュラムでのことだった。
    「返事が欲しいとか、先を望んでいるとか、そういうのではないんだ。どうしても、今夜伝えないと後悔しそうだなと思ったら、ついな」
     クロウ・アームブラストは、リィンの眷属としてこの世に繋ぎ止められているだけにすぎない。彼の想いに答える権利なんてなかった。
     取り繕った笑顔から目を逸らした。強ばる頬に伸びそうな手を制した。それでも行き場のない想いが彼の名前になってこぼれる。
    「リィン……」
     一度きつく目をつむったリィンは話題を変えるでもなく話を続けた。
    「好き、なんだ。好きで好きで、なんでこんなに好きになってしまったのか、いつから好きになっていたのかもう分からないくらいなんだ」
     酒の入ったコップへあふれるほどの好きを注いだリィンは、最後に微笑んで最終決戦へ挑んだ。
    「で、あんだけ人に熱烈な告白しておいて今さら逃げるなんてどういう了見だ。おい」
     散々追いかけっこを繰り返したリィンを木の下へ追い詰めたクロウは、彼の両腕を木に縫いつけていた。
     大戦後、エレボニア帝国へ戻ってきたリィン一行はゆるやかに日常を取り戻していた。クロウも思わぬ生還を果たし、これから生きていく道を模索している。その過程でやり残したことをひとつひとつ片付けているところだった。
     リィンからの告白と向き合うのも、クロウのなかではやり残したことだったのだが、当のリィンが全く聞き耳を持たなかった。
    「返事が欲しいわけじゃない。あの日もそう言っただろ」
     変なところで意地っ張りなリィンが可愛らしく見えるのは惚れた欲目だろう。
    「分かった。じゃあ告白の返事はしない」
     安堵の表情を浮かべる彼の耳元に顔を近づけた。
    「好きで、好きで、どうしてこんなに好きになっちまったのか、いつからこんなに好きなのか分かんねえくらい好きだ」
     驚き顔を挙げた彼の唇を、力任せに奪った。
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    さらさ

    MOURNING「何かあって不機嫌そうなクロリンが戦闘では息ピッタリな話」の続き。やっとくっつきます。
    付き合ってないのに痴話喧嘩は犬も食わない リィンとクロウの不仲騒動から数時間。第五階層の最奥まで回って《円庭》に戻ってきた面々は二人を除いて疲れ切った表情をしていた。余りにも不毛な痴話喧嘩、それでいて付き合っていないというのだから手に負えない。瞬く間にそれは広がり、新旧Ⅶ組は総出で溜息をつき、他の面々も事情を察したように苦笑いをしていた。一部生温かい目で見る者もいたようだが。

    「全く、本当にいいのかい?リィン君だって同じ気持ちを持っているのだろう?」
    「……あいつには悪いが、応えられるほど真っ直ぐじゃねぇんだ」

    テーブルを囲って、かつて試験班だった面々がクロウに詰め寄る。アンゼリカの言葉に彼は首を振った後、真剣に迫ってきたリィンの事を思い出す。構えば構う程、愛情と執着心そして独占欲が生まれ、その度にクロウは己を律してきた。果たしてそれは必要か、と。必要であるならばいくらでも利用できる。だと言うのに彼の場合はどうだ、根も真っ直ぐでたくさんの人から慕われている。そんな彼を利用するだなんて出来ないし、したくもなかった、これはフェイクでも何でもない本音であった。未だに《C》だったころの話も出してネタにするのは正直言ってやめて欲しいのだが。
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    さらさ

    MOURNINGフォロワーさんのネタをサルベージした一品。二パターンのうちの一個。曰くフォロワーさん的にはこっちがお望みだったようなのでこちらを先にアップ。
    でも本当に様になるねこの男は。

    尚そんなに活躍していない偽名は、私の趣味です(特にローデリヒ)
    踊ってください、愛し君「あれが例のターゲットか」
    「そうみたいだな。さぁて、どうしてやろうか」

     帝国のとある貴族邸にて。一時期帝国とクロスベルを行き来していた偽ブランド商がこの屋敷にて開かれる夜会に紛れてどうやら密談を行うらしい。そこでクロウとリィンには穏便な形での取り押さえるという依頼が舞い込んできたのである。相談した結果、ターゲットが女性である事とクロウ曰く二人そろって見目もいい事から凝った変装は必要ないだろうという事になった。ただリィンの場合は顔と名前を知られすぎているので、一工夫必要だとクロウの手によって好き勝手され。ラウラやユーシス、時間が出来たからと顔を出したミュゼの審査を受けてようやく目的地に辿り着いたのだが。如何せん、そこまでの振り回されたこともあって少々疲弊していた。潜入捜査に男二人は流石に目立たないだろうかとは思ったものの、その手のプロから珍しい事ではないとのアドバイスをもらったので女装させられるよりはましかと腹を括った。
    1996

    さらさ

    SPUR ME12月12日に出す予定の展示品を尻叩きとサンプルを兼ねて一章丸々アップ。こんな感じのクロリンの話が五感分連続していく感じです。シリアスが続きますがハピエン(にしてみせる!)

    ちなみにタイトルは全て「五感に関する部位のことわざ」を当てはめています。変わるかも。
    医者と味噌は古いほどよい リィンは《黒の工房》から救出されて以来、違和感に気付いた。《巨イナル黄昏》より前に感じ取れていた味が、分からなくなっていたのだ。一か月近く食事をしていなかったこともあり気付かなかったが、しばらく食べているうちにようやくその違和感に辿り着いた。原因は分からないが、相克に向かうこの状況で他の心配事を出来ればリィンは作りたくなかった。だから、黙っている事にした。――目に見えて減っている食事量を前に、既に全員が気が付いているだなんて思わないまま。

    「そういうワケでクロウ、よろしく」
    「いや待て、どうしてそうなる」

    セリーヌとデュバリィに足止めさせて始まる新旧Ⅶ組大会議。答えは出ているも同然だったが、それでも認識の擦り合わせが必要だと集まったのだが。驚く程分かりやすいリィンの事だ、擦り合わせる間でもなかったが。それが分かれば押し付ける先は一つしかない。フィーの直球な言葉にクロウは予想もしていなかった為狼狽えた。リィンは無自覚ではあるが彼に甘える。そしてクロウは彼が甘えてくる自覚はあれど甘えさせているという自覚はなかった。何も自分に持ってくることはないだろうに、それがクロウの言い分だがそれに呆れている様子もまた感じ取っている事もあって困っている。
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