Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    甘味。/konpeito

    800文字チャレンジだったりssを投げる場所

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 115

    甘味。/konpeito

    ☆quiet follow

    見せ場は自分で作るものです/ふたりとも教官しています。捏造未来
    本日の800文字チャレンジ/クロリン

    「クロウ、食べるときぐらい書類はしまうよういつも言っているだろう」
     ミルクの入ったグラスが視界に入る。書類から顔をあげ、咀嚼していたパンを思わず飲み込んだ。眉間に皺を寄せた恋人、リィン・シュバルツァーが不機嫌そうにこちらを見ていた。
     彼の機嫌を損ねるのは得策ではない。
     慌てて書類をテーブルのうえに放り、クロウ・アームブラストはリィンお手製の朝食に集中した。エプロンを外して向かいに腰掛けた彼も朝食に手をつけはじめ、これ以上の雷はなさそうだとそっと胸を撫で下ろす。
    「それ、今度の特別演習に関する書類か」
     焼きたての食パンにジャムを塗りたくったリィンがジャムナイフでクロウの読んでいた紙を指してみせる。それに頷き、サラダを頬張った。大きめに千切られたレタスをどうにか口のなかへ納める。元来そうなのか、意外と大雑把な一面をときおりクロウに披露してくれた。
    「ああ。一応、俺も教官だしなあ。書類くらい目を通しておかないと」
     数日後に予定されている第二分校での特別演習には、当然リィンとともに分校で教官を勤めているクロウも参加する。
     今度の演習では帝都内で数班に分かれ、それぞれ依頼をこなしていく予定だ。内容としては、自分たちが学生だった頃と同じだろう。
    「その、特別演習二日目の夜なんだが」
     サラダに突き立てたフォークへ次々とレタスをさしていくリィンが珍しく言い淀んだ。行儀悪いぞとつっこみ、グラスのなかのミルクを飲み干す。
    「なんだ。気になるだろ。ハッキリ言えって」
    「実は、アルフィン皇太女殿下主催の晩餐会に俺たちふたりで呼ばれているんだ」
    「なんだよビビらせんな。晩餐会つーことはドレスコードの心配か? それなら前にふたりで新調しただろ。揃いで」
    「いや。そうじゃなくて、俺が心配なのは、テーブルマナーのほう」
     食べている手を止め、はたと目を瞬く。
     市長の孫だが平民出身で、少年期は荒くれ者に囲まれて育っており、テロリスト集団のリーダーも務めた。当然、貴族連中と渡り合うこともあったが、なかなかその過去から推察できなかったのだろう。
     マナー、教養に関しては祖父が一等厳しかったので問題ない。でも、どうせなら驚かせてみたくなった。
    「あー、念のため心配だから教えてくれるか? リィン先生」
     わざとらしくウィンクしてみせる。ぎこちないながらも頷いてくれたリィンが当日驚く様を想像してほくそ笑んだ。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ❤☺😊💕☺☺🙏💞☺
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    さらさ

    MOURNINGフォロワーさんのネタをサルベージした一品。二パターンのうちの一個。曰くフォロワーさん的にはこっちがお望みだったようなのでこちらを先にアップ。
    でも本当に様になるねこの男は。

    尚そんなに活躍していない偽名は、私の趣味です(特にローデリヒ)
    踊ってください、愛し君「あれが例のターゲットか」
    「そうみたいだな。さぁて、どうしてやろうか」

     帝国のとある貴族邸にて。一時期帝国とクロスベルを行き来していた偽ブランド商がこの屋敷にて開かれる夜会に紛れてどうやら密談を行うらしい。そこでクロウとリィンには穏便な形での取り押さえるという依頼が舞い込んできたのである。相談した結果、ターゲットが女性である事とクロウ曰く二人そろって見目もいい事から凝った変装は必要ないだろうという事になった。ただリィンの場合は顔と名前を知られすぎているので、一工夫必要だとクロウの手によって好き勝手され。ラウラやユーシス、時間が出来たからと顔を出したミュゼの審査を受けてようやく目的地に辿り着いたのだが。如何せん、そこまでの振り回されたこともあって少々疲弊していた。潜入捜査に男二人は流石に目立たないだろうかとは思ったものの、その手のプロから珍しい事ではないとのアドバイスをもらったので女装させられるよりはましかと腹を括った。
    1996

    さらさ

    DONEリクエストより「クロリンで指輪交換」でした。指輪を交換した勢いで誓ってもらいました。場所が場所だけどね!

    リクエストありがとうございました!
    誓いの環をその指に「買って、しまった……」

     十二月もまだ初旬、たまたま帝都に出たという理由だけで散策して見つけたシンプルな指環。ああ、あいつに似合いそうだと思ってうっかり買ってしまった物だったがこれを渡せる程の関係でもないという事は彼――リィンも分かり切っていた。一応、お付き合いしている関係ではある。だが余りにも空白の時間が長すぎた事、戦後の事後処理に追われて時間が取れない事が相まってしまい未だ実感が湧かないのが現実であった。だからこれは余りにも早すぎるというもので。そっとコートのポケットへと仕舞ったのだった。

    「やべぇ、買っちまった……」

     同時期、別の男もまた同じ事をしていた。たまたま見つけた最低限の装飾しか施されていない指輪。ああ、あいつの指にはめてしまいたいだなんて思っているうちに買ってしまった代物である。お付き合いを始めてそろそろ三か月、今度こそ手を離さないと誓ったものの状況がそれを許さなかった。彼らは別々の場所で必要とされ、帝国内を東奔西走するような日々である。言ってしまえば魔が差したようなものだと、彼――クロウは思う。なんせ相手は天性の朴念仁で人タラシ、所有痕の一つや二つ残しておかねば相手が近寄ってくる始末だ。その状況に頭を抱えていたのは事実だが、かといってここまでするつもりはまだ毛頭なかった。
    1833

    さらさ

    SPUR ME12月12日に出す予定の展示品を尻叩きとサンプルを兼ねて一章丸々アップ。こんな感じのクロリンの話が五感分連続していく感じです。シリアスが続きますがハピエン(にしてみせる!)

    ちなみにタイトルは全て「五感に関する部位のことわざ」を当てはめています。変わるかも。
    医者と味噌は古いほどよい リィンは《黒の工房》から救出されて以来、違和感に気付いた。《巨イナル黄昏》より前に感じ取れていた味が、分からなくなっていたのだ。一か月近く食事をしていなかったこともあり気付かなかったが、しばらく食べているうちにようやくその違和感に辿り着いた。原因は分からないが、相克に向かうこの状況で他の心配事を出来ればリィンは作りたくなかった。だから、黙っている事にした。――目に見えて減っている食事量を前に、既に全員が気が付いているだなんて思わないまま。

    「そういうワケでクロウ、よろしく」
    「いや待て、どうしてそうなる」

    セリーヌとデュバリィに足止めさせて始まる新旧Ⅶ組大会議。答えは出ているも同然だったが、それでも認識の擦り合わせが必要だと集まったのだが。驚く程分かりやすいリィンの事だ、擦り合わせる間でもなかったが。それが分かれば押し付ける先は一つしかない。フィーの直球な言葉にクロウは予想もしていなかった為狼狽えた。リィンは無自覚ではあるが彼に甘える。そしてクロウは彼が甘えてくる自覚はあれど甘えさせているという自覚はなかった。何も自分に持ってくることはないだろうに、それがクロウの言い分だがそれに呆れている様子もまた感じ取っている事もあって困っている。
    3129