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    甘味。/konpeito

    800文字チャレンジだったりssを投げる場所

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    見せ場は自分で作るものです/ふたりとも教官しています。捏造未来
    本日の800文字チャレンジ/クロリン

    「クロウ、食べるときぐらい書類はしまうよういつも言っているだろう」
     ミルクの入ったグラスが視界に入る。書類から顔をあげ、咀嚼していたパンを思わず飲み込んだ。眉間に皺を寄せた恋人、リィン・シュバルツァーが不機嫌そうにこちらを見ていた。
     彼の機嫌を損ねるのは得策ではない。
     慌てて書類をテーブルのうえに放り、クロウ・アームブラストはリィンお手製の朝食に集中した。エプロンを外して向かいに腰掛けた彼も朝食に手をつけはじめ、これ以上の雷はなさそうだとそっと胸を撫で下ろす。
    「それ、今度の特別演習に関する書類か」
     焼きたての食パンにジャムを塗りたくったリィンがジャムナイフでクロウの読んでいた紙を指してみせる。それに頷き、サラダを頬張った。大きめに千切られたレタスをどうにか口のなかへ納める。元来そうなのか、意外と大雑把な一面をときおりクロウに披露してくれた。
    「ああ。一応、俺も教官だしなあ。書類くらい目を通しておかないと」
     数日後に予定されている第二分校での特別演習には、当然リィンとともに分校で教官を勤めているクロウも参加する。
     今度の演習では帝都内で数班に分かれ、それぞれ依頼をこなしていく予定だ。内容としては、自分たちが学生だった頃と同じだろう。
    「その、特別演習二日目の夜なんだが」
     サラダに突き立てたフォークへ次々とレタスをさしていくリィンが珍しく言い淀んだ。行儀悪いぞとつっこみ、グラスのなかのミルクを飲み干す。
    「なんだ。気になるだろ。ハッキリ言えって」
    「実は、アルフィン皇太女殿下主催の晩餐会に俺たちふたりで呼ばれているんだ」
    「なんだよビビらせんな。晩餐会つーことはドレスコードの心配か? それなら前にふたりで新調しただろ。揃いで」
    「いや。そうじゃなくて、俺が心配なのは、テーブルマナーのほう」
     食べている手を止め、はたと目を瞬く。
     市長の孫だが平民出身で、少年期は荒くれ者に囲まれて育っており、テロリスト集団のリーダーも務めた。当然、貴族連中と渡り合うこともあったが、なかなかその過去から推察できなかったのだろう。
     マナー、教養に関しては祖父が一等厳しかったので問題ない。でも、どうせなら驚かせてみたくなった。
    「あー、念のため心配だから教えてくれるか? リィン先生」
     わざとらしくウィンクしてみせる。ぎこちないながらも頷いてくれたリィンが当日驚く様を想像してほくそ笑んだ。
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    さらさ

    MOURNING「何かあって不機嫌そうなクロリンが戦闘では息ピッタリな話」の続き。やっとくっつきます。
    付き合ってないのに痴話喧嘩は犬も食わない リィンとクロウの不仲騒動から数時間。第五階層の最奥まで回って《円庭》に戻ってきた面々は二人を除いて疲れ切った表情をしていた。余りにも不毛な痴話喧嘩、それでいて付き合っていないというのだから手に負えない。瞬く間にそれは広がり、新旧Ⅶ組は総出で溜息をつき、他の面々も事情を察したように苦笑いをしていた。一部生温かい目で見る者もいたようだが。

    「全く、本当にいいのかい?リィン君だって同じ気持ちを持っているのだろう?」
    「……あいつには悪いが、応えられるほど真っ直ぐじゃねぇんだ」

    テーブルを囲って、かつて試験班だった面々がクロウに詰め寄る。アンゼリカの言葉に彼は首を振った後、真剣に迫ってきたリィンの事を思い出す。構えば構う程、愛情と執着心そして独占欲が生まれ、その度にクロウは己を律してきた。果たしてそれは必要か、と。必要であるならばいくらでも利用できる。だと言うのに彼の場合はどうだ、根も真っ直ぐでたくさんの人から慕われている。そんな彼を利用するだなんて出来ないし、したくもなかった、これはフェイクでも何でもない本音であった。未だに《C》だったころの話も出してネタにするのは正直言ってやめて欲しいのだが。
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    さらさ

    SPUR ME12月12日に出す予定の展示品を尻叩きとサンプルを兼ねて一章丸々アップ。こんな感じのクロリンの話が五感分連続していく感じです。シリアスが続きますがハピエン(にしてみせる!)

    ちなみにタイトルは全て「五感に関する部位のことわざ」を当てはめています。変わるかも。
    医者と味噌は古いほどよい リィンは《黒の工房》から救出されて以来、違和感に気付いた。《巨イナル黄昏》より前に感じ取れていた味が、分からなくなっていたのだ。一か月近く食事をしていなかったこともあり気付かなかったが、しばらく食べているうちにようやくその違和感に辿り着いた。原因は分からないが、相克に向かうこの状況で他の心配事を出来ればリィンは作りたくなかった。だから、黙っている事にした。――目に見えて減っている食事量を前に、既に全員が気が付いているだなんて思わないまま。

    「そういうワケでクロウ、よろしく」
    「いや待て、どうしてそうなる」

    セリーヌとデュバリィに足止めさせて始まる新旧Ⅶ組大会議。答えは出ているも同然だったが、それでも認識の擦り合わせが必要だと集まったのだが。驚く程分かりやすいリィンの事だ、擦り合わせる間でもなかったが。それが分かれば押し付ける先は一つしかない。フィーの直球な言葉にクロウは予想もしていなかった為狼狽えた。リィンは無自覚ではあるが彼に甘える。そしてクロウは彼が甘えてくる自覚はあれど甘えさせているという自覚はなかった。何も自分に持ってくることはないだろうに、それがクロウの言い分だがそれに呆れている様子もまた感じ取っている事もあって困っている。
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    さらさ

    DONEクロリンwebオンリーのエア小話より「内容指定無しの更紗が書いたクロリン」です。
    12月に不安定になっちゃうリィンが今年はしっかりしなきゃと思いながらクロウにメールすることから始まるシリアスクロリン。



    ランディが出てくるのは私の趣味です(書き分け難しかったけど楽しかった)
    慣れぬくらいならその腕に ――冬、か。リィンは仕事が一段落した寮のベッドで、バタリと倒れながらそう思う。《黄昏》が終結してから三度目になるその季節に、そろそろ拭えていい筈の不安がまだ心の奥底で突き刺さっていた。

    「流石に通信は女々しいかな」

    流石に三度目ともなれば慣れなくてはならないと、彼は思う。今は異国を巡りながら情報収集やら遊撃士協会の協力者やらで忙しい悪友を、年末には必ず帰ってくる優しい人を心配させない為に。開いたり、閉じたりしてどうも定まらない思考をなんとか纏めようとする。

    「今年は帰ってこなくても大丈夫だって、言おうかな……」

    移動距離だってそんなに短くないのだ、忙しい時間を自分に割かせるには余りにも勿体無さすぎる。そもそも、帰ってくるという表現さえ正しいのかは分からないが。導力メールで今年は帰ってこなくても大丈夫だという旨だけ書いて送信して、そのまま目を閉じる。通信を告げる着信音がやけに遠く感じながら、リィンはそのまま眠りについた。
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