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    甘味。/konpeito

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    甘味。/konpeito

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    本日の800文字チャレンジ
    両片思いクロリン/Ⅰ夏頃/雨の日の失敗

    「雨、降ってきちゃったな」
    「ったく寮まであと少しってところでついてないよな」
     ようやく木の下に身を落ち着けたリィンはポケットからハンカチを取り出し、雨で濡れた顔や首筋を拭った。半袖から出た腕も拭っていると、クロウがバンダナを外して顔を拭っているところだった。ハンカチを差し出すも断られ、もう一度額を拭う。
     トリスタの公園は人気もなく寂しい。晴れているときには憩いの場になるそこも、今は急な通り雨のせいで誰もいなかった。
    「本降りになってきちまったし、ここで雨宿りしていこうぜ」
    「あ、ああ。そうだな」
     身を乗り出して雨の様子を伺う彼は、億劫そうに濡れた前髪をかき揚げている。バンダナのない、秀でた額がリィンの眼前に晒され、初めて見るその風貌に慌てて目を逸らした。
     なぜか、見てはいけないものを見てしまった心待ちになる。
    「こらこら、あんまりそっち行くと濡れるぞ」
     ぐ、と肩を掴まれて引き寄せられる。冷えた肩を掴んだ手のひらの熱さに眩暈を覚えた。頬に滴る雫を追って顔をあげると、思いのほかクロウが近い。
    「クロウ、先輩……」
     彼を呼んだ声が震える。先輩、なんて久しく使っていなかった呼び方まで転がり出てしまった。吐息さえかかってしまいそうな距離に身動きもとれない。
     不意に前髪を流れ落ちる雨粒が目に入り、目を瞑る。
     口付けられたのに気がついたのは、クロウの唇が離れ、己のそれが寒さを感じたときだった。ふたたび近づいてくる気配に目蓋を閉じる。掴まれたままの肩がわずかに跳ねた。
    「――悪い。間違えた」
     二度目の口付けは降ってこなかった。
     口元を覆い、俯く彼の表情はよく見えない。
     間違えた、なにを。間違えた、誰と。噛みしめた唇をひらく。痺れるような痛みが走った。
    「そう、だよな。間違えたのか。だったらお互い、今のは忘れよう」
    「リィン、そうじゃない」
     捕まれた腕を振り払う。もう彼の顔も見られなかった。
    「俺! 先に戻ってるから」
    「リィン!」
     堪らず雨が降りしきるなか、飛び出すのだった。
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