龍眼 数日掛かりの夜狩からようやく不知処の山門まで登ってきたところによく知る背中をみつけて、へとへとの背をしゃきりと伸ばして景儀と並んで拱手する。
「沢蕪君、ご無事のお戻り何よりです」
ゆったり振り返った人は微笑んで、ひとつ頷いた。確か政務で十日ほど留守にするという話であったはずだが、どうやら戻りが同じになったらしい。
「ああ、ちょうどよかった」
「……?」
「二人とも、あとで私のところに来なさい」
諸々落ち着いてからでよいから、と付け加えた藍曦臣は門番にひとこと労いの声をかけて先に門を潜った。
「寒室に来いってことだよな、俺たち何かしたっけ?」
引き攣った表情の景儀に袖を引かれたが、思い当たるものはなかった。直接の師と仰ぐ含光君ならともかく、宗主直々の呼び出しとなると相当のことだ。
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