約束は宇宙ジョークにしないで。「ふが〜!!大変ポコ!!!」
朝から叫びながら近寄ってくるポコにふがと呼ばれた妖精は呆れたように話しかける
「ぽこ、ここで騒ぎすぎるなって前も怒られたふがよ?この前も私まで怒られて…うわっ!!」
「ごめんぽこ!」
テキトーに流れで謝りつつ勢いよくふがの手を引いてポコが窓に駆け寄る。外は薄暗く空には一面の灰色の雲が敷き詰められていた。ザーザーと降り注ぐ雨の音が鳴り止まない。
「雨ポコ〜!!!!!」
「みればわかるふが!!!!」
「でもっでも〜!!!」
今にも泣きそうなポコをふがが宥める。今日は二人で出かける約束をしていたのだ。「海」に。
ぽこりーぬ星にも地球と同じようにうみがある。城のある内地で働いていた二人は海を見たことがなかったのである。それをセレナーデ姫に伝えたところ『いってきなよ〜お仕事お休みにしてあげるからね。たのしんでおいで』と言われたので二人は姫のお言葉に甘えて向かう予定だったのである。
ポコは楽しみにしていた。とんでもないほどに。それはもう今日の夜ご飯は木星から輸入された異星人の肉と聞かれた時よりもワクワクが止まらないくらいである。…これは宇宙ジョークである。
ふがもふがであれやこれや店を調べルートやスポットを調べ、それはそれは楽しみにしていた。それはもうブラックホールの中に入って帰ってこれる確約の宇宙船に乗れると聞いた時くらいにワクワクした。…もちろんこれも宇宙ジョークである。
仕方ないことではあるが二人は大層落ち込んだ。それはもう…やめておこう。
落ち込むポコにふがは部屋の奥からDVDを持ってきた。
「海の動画しかないけど、これかべにプロジェクターで写して気分だけでもやるふが?」
その瞬間ポコの目が輝いた。単純である
「わーーー!!!!やるぽこ!!!」
こんなんでいいのかとふがは困惑したが、流石に言わなかった。
言い出してからは早かった。冷蔵庫から取り出した卵を卵白と黄身にわけて生クリームと黄身と小麦粉をまぜる。卵白をメレンゲにして砂糖で味付けをして、黄身の方とサクサクと混ぜる。
型に落とし込んであらかじめ予熱していたオーブンに入れて二人で目を合わせて笑った。
焼き上がったそれに爪楊枝で刺して生焼けじゃないことを確かめ、生クリームをかけてフルーツをトッピング。
あとは温めたミルクにココアを混ぜて、二人でリビングへ移動してプロジェクターをつけた。
「わぁ…!」
そこに広がるのはどこまでもコバルトブルーの景色、空と海の境目がわからなくなるようなその映像に二人はケーキに乗った生クリームが溶けるまで見入っていた。
海を二人で見るとずっと一緒にいれる。それはこの星のジンクスだった。動画を見ながらポコはつぶやいた。
「いつか本物をいっしょにみたいぽこね」
「だね、ずっといっしょにいれるようにおねがいしなきゃふがね。」
「海、約束破っちゃったポコね。先に見てごめん。海は綺麗ぽこよ。」
不思議そうな顔でこちらをみるふがしのてをつないでポコは遠くの果てを眺めた。後ろから錠前達が騒ぐ声が聞こえるが、今はその声も気にならないくらい、海に溶け込んだ心地だった。