今宵、攻守交代今宵、攻守交代
志村としては、甥仁とは上手く過ごしてきたつもりである。試行錯誤の手探り状態で引き取ったにしては、仁は真っ直ぐ健やかに育った。時折青海で過ごした頃の軽率な顔が垣間見えはしたものの、それも仁を仁たらしめる個性であろうと、強制的に糺したりはしなかった。仁は志村が知らないと思っているだろうが、夜半にこっそり城を抜け出して青海時代からの素性分からぬ牢人達と青年らしい〈眉を顰めざるを得ない遊び〉に興じていることも知っている。だが他所様に迷惑を掛けぬことと家格を貶めることをしないのであればと、許容してきた。それは決して甘やかしではなかった。…筈だ。
「伯父上…」
「仁」
共に摂った夕餉の後、夜着に着替えた仁がまた部屋に戻ってきた時、成程今日は褥を共にしたいのだろうなと志村は察した。既に寝具は敷かせている。志村はすっと立ち上がり、部屋の奥へと仁を誘った。
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