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    クロードによる答え合わせの回です。

    書いてる人間はこの2年間クロロレのR18本しか出していないのでTwitterアカウントは閲覧注意かもしれません。タイトルはそのうち決めます。

    #クロヒル
    blackHill

    9.interval(side:C) カリードの父と母が出会ったのはまだ父が王位を継ぐ前のことで思い切って国を捨てた母もまさか自分の夫が王になるとは考えもしなかったようだ。しかし大国の王ともなれば情勢を安定させるために妻をたくさん娶らねばならない。そこからカリードの苦難は始まっている。王宮で若き日の父の不始末について八つ当たりをされながら育ち異母兄弟たちからいよいよ追い詰められ進退極まった時に顔を見たことすらない母方の祖父からフォドラへ呼び出された。カリードは王宮という閉ざされた世界からリーガン家を経由しクロードという名で学校という閉ざされた世界へ移り住むことになった。

     綺麗事で秘密を覆い隠すセイロス教会のお膝元での暮らして何になるのかと祖父相手に粋がってみたもののガルグ=マクでの生活はクロードの想像を超えていた。閉ざされた未開の国と思っていたがとんでもない。紋章や英雄の遺産への興味は尽きなかったが何よりもクロードの心を動かしたのは士官学校という場に集う人々の来歴だった。

     兵士ですらない孤児のツィリルが前線であるフォドラの首飾りからガルグ=マクまで流れ着いていることを知りクロードは己の無知さを恥じた。異国出身であろうと気にしないということを周りに示すため敢えてツィリルに身の回りの世話をさせているレアや孤児であり紋章を持たぬ身でありながら騎士団の団長を務めるアロイスそれに戦場をよく知る傭兵上がりの担任ベレトはクロードの蒙を啓いた。組織の長としてどう振る舞うべきか彼らから学べた気がする。

     学友たちも負けていない。典型的なフォドラの貴族だと思って正直なところ見下していたローレンツは印象より遥かに懐が広いしイグナーツはフォドラの外でも通用するような素晴らしい絵を描く。ラファエルは許すことの強さを教えてくれた。レオニーと共に過ごさなかったら慎ましく生きることと誇り高く生きることが両立出来ることを知らなかっただろう。残り時間を見据えて必死に生きるリシテアの強さ、大きな秘密に押しつぶされそうになりながらも戦場を駆け回るマリアンヌの勇敢さには感銘を受けた。そしてパルミラの王宮にまでその名が伝わるホルストの妹ヒルダがいたことに、彼女が小柄で陽気であることに驚いた。

     そんな人々に囲まれて子供でいられる最後の一年を満喫していたクロードだが穏やかな日々は終わりを迎えつつある。

    「心当たりは全くないがエーデルガルトは会う前から俺が嫌いだったんだろうな」

     クロードの言葉を聞いてディミトリがため息をついた。

    「……確かに宣戦布告の内容は個人的な好き嫌いで始めたのかと思うくらい支離滅裂だったが……」

     きちんと整理整頓されたディミトリの部屋で二人は今どうやって学生たちを全員無事に帰宅させるか相談をしていた。皆ペトラのように帝国の人質になるわけにはいかないからだ。青獅子の者たちは帝国軍の追跡を避けるためオグマ山脈を縦走し全員でまずイングリットの故郷であるガラテアを目指す。ところが金鹿の者たちは全員でというわけにいかない。クロードやマリアンヌのような北部出身の学生の他にアミッド大河沿いに自宅のある学生が沢山いる。だがクロードは何としても北上しデアドラに戻らねばならない。

    「俺たちは冷静になって全員帰宅させてやろう」
    「そうだな。こちらは全員一緒に動けるがクロードの方は二手に分かれるから大変だな。船は出してもらえそうなのか?」

     だからクロードはヒルダとはここでお別れだ。クロードはダブネルまでディミトリたちと行動を共にするが東部出身の彼女はリシテアたちと共にガルグ=マクからアミッド大河を目指す。

    「船は出してくれるだろうが対岸が帝国領だからなあ……」
    「東に向かう者たちが心配なのは分かるが出来ることをやろう。彼らの無事は信じるしかない」

     お気に入りの妃ティアナが産んだたった一人の王子が潜入中ということでクロードの父がフォドラ方面への軍事行動に制限をかけている。だからきっとゴネリル家には船と騎士団を出す余裕があるはずだ。

     修道院の敷地内にいる者たちに敵襲を知らせる鐘が鳴り響いたその時、クロードは自室で寝台から敷布を剥がし切れ目を入れていた。山の中に何箇所か逃走用物資の集積場所を作って用意したが例え布きれ一枚であろうと余計に持ち込んでおきたい。少し手を加えておけばすぐに割いて包帯にできるし風避けに使いたいときはそのままかぶれば良い。冬山の中ではたった一枚の布が命を救う場合もある。

    「クロードくん!先生が呼んでる!大広間だよ!」
    「他の皆は?」
    「寮に残ってるのはクロードくんだけだから迎えに来たの!」

     ヒルダは僅かに見えている床の隙間を飛び石を伝うように器用に伝ってクロードの元へやってきた。白く小さな手が褐色の手首を力強く引っ張り寝台から立ち上がらせる。そのまま手を離さずクロードのを引っ張りながらすたすたと大股の急ぎ足で廊下を歩いていくので先ほど切れ目を入れていた布は畳む暇もなく左手で鷲掴みにしたままだ。

    「待ってくれ!肩が!」
    「え、でも急がなきゃ!」

     よほど焦っていたのかヒルダは自分がクロードの手首を掴みっぱなしであることに気付いていなかったらしい。クロードとしても二人きりであったし手を離してほしくないような気もしたが肩が壊れては本末転倒だ。

    「本当に力が強いな……腕がもげるかと思った……」

     彼女の身に宿る紋章のせいだとわかっていてもこの小さな身体のどこから力が湧いてくるのかと不思議な気持ちになってしまう。

    「ひどーい!」
    「流石に大広間までの道は手を引かれなくても分かる。あと十秒だけ時間をくれ」

     クロードは軽く肩を回し鷲掴みにしていた敷布を両手で広げた。先ほど入れた切れ目のところを持ち前後に引っ張って半分に割いていく。これで一枚の布は二枚になった。片方は素早く畳んで上着の隠しにしまいもう片方を不思議そうな顔をしてクロードを見つめているヒルダの桃色の頭に面紗のように被せてやる。彼女は頭から腰の辺りまで覆われるだろうと思っていたがヒルダが小柄なせいか布が顔に被さり口元まで隠れてしまう。

     その姿がクロードにはパルミラで見合いに臨む貴族の女性を思い起こさせた。貴族の女性は見合いをする際に面紗で顔を隠す。当然前が見えないので兄弟やいとこが付き添い二人きりになることはないし正式に婚約するまで見合い相手といえども素顔を見ることは許されない。

    「ささやかだけど餞別だよ。切れ目が入れてあるから包帯にもしやすいしこの大きさなら風よけにも使えるだろ」

     ヒルダが頭巾のようになっている部分をそっと引っ張って顔を出した。ここはフォドラなのでヒルダの行為には何の意味もない。

    「ありがとうクロードくん。怪我をしないで帰る自信がないからとっても嬉しい」

     微笑んではいるが髪と揃いの桃色の瞳には闘志が宿っていた。クロードは以前、日頃出さない本気を出せ、とヒルダを焚きつけている。だがクロードはヒルダが本気を出して戦う姿を見ることはできない。ヒルダが東方面へ逃げる学生たちのまとめ役になってくれたようにクロードも北のダフネルを目指す学生たちのまとめ役になっているからだ。
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    DONE翠風の章の時の話なので……。

    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17484168
    この話の番外編です。なおこの話(pixivの方)はトータル八万文字弱のうち半分がロレマリなのでご注意下さい。
    クロヒルweek_day3テーマ「翠風」 学生時代が終われば男も女も大人扱いをされる。クロードにしても三つ編みを切って装いを改めたしヒルダだって装いが改まるのは当たり前だ。五年ぶりに会った女子の同級生たちは皆それぞれに美しくなっている。エドマンド辺境伯にするために彼の手元に引き取られたマリアンヌは例外だが皆胸元が大きく開いた服を着るようになった。フォドラの親たちは娘が大人としての責任を果たせるようになったと判断すれば胸元が大きく開いた服を着ることを許すし結婚すればまた服の胸元は閉じられる。夫の意向なのだろうか。

    「いくらなんでも露骨すぎないか?」
    「まあ分かりやすくてよろしいんじゃないですかね」

     パルミラ兵が国境を通過出来るように準備している家宰のナルデールが打ち合わせにやってきたのでクロードは母国との文化の違いについて聞いてもらおうとしたのだが彼はクロードが書いたホルスト卿への手紙の中身を確認しているので全ては生返事だ。生返事であることに視線で反論していると耳飾りがついていない方の耳を引っ張られた。
    2701

    hk_krhr

    DONEシルイン(+クロヒル)位の小説になりますので、こちらはウィークタグの方は避けます。自分の書いた現パロ設定でシルイン(特に風紀委員してるグリットちゃん)を見たくなったが故に同時生成した産物です。
    グレン氏の話を拾おうと思ったのですがキャパ上拾い損ねてしまい、申し訳ない限りです。
    シルイン好きさんのお肌に合うかわかりませんが、どなたかにでも少しでも楽しんでいただければ幸いです。
    【現パロ】ぐりっとちゃん、恋心自覚の巻。【シルイン】【注意書き】
    1 書いている人の主生息地がクロヒルです。ですが、こちらはシルインがメインです。ただ、そちらも影響してクロヒル要素もそこそこ含んでいます。
    2 クロヒルweekに際してあげた小説の現パロ設定と合わせて書いたシルイン小説になります。(この設定でシルインを唐突に書きたくなったため。)こちらだけでも読める筈ですが、少し設定がわかりにくいかもしれません。
    3 でも謎のこだわりを発揮してしまい長いです。ご注意ください。
    4 その他 青獅子NLをメインに小説書くのはこちらが初なので気になることなどあるかと思います。どうしても気になる際はそっとご指摘いただけますと幸いです。
    5 主な登場人物 シルヴァン イングリット(後半の方が出番多いです。)
    10447

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    MAIKING「説明できない」
    青ロレ赤クロの話です。
    6.初戦・下

     クロードから自分たちを襲った盗賊の討伐が今節の課題だと告げられた皆は初陣だと言って沸き立っていた。金鹿の学級は騎士を目指す平民が目立つ学級で入学以前に領主の嫡子として盗賊討伐を体験している者はクロードとローレンツしかいないらしい。クロードはローレンツの印象よりはるかに慎重で毎日先行したセイロス騎士団がどの方面へ展開していったのか細かく記録をつけ皆に知らせていた。セイロス騎士団に追い込んでもらえるとはいえどこで戦うのかが気になっていたらしい。

     出撃当日、支度を整え大広間で待つ皆のところへベレトがやってきた時にはローレンツたちはどこで戦うのか既に分かっていた。

    「騎士団が敵を追い詰めたそうだね。場所はザナド……赤き谷と呼ばれている」

     そう言えばクロードはザナドが候補に上がって以来やたら彼の地についた異名の由来を気にしていた。赤土の土地なのか赤い花でも咲き乱れているのか。土地の異名や古名にはかつてそこで何があったのかが表されていることが多い。土地の環境によっては毒消しが必要になる場合もある。だが先行した騎士団によると特殊な条件は何もない、とのことだった。初陣の者た 2081

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    7.背叛・上
     皆の初陣が終わるとクロードの記憶通りに事態が進みロナート卿の叛乱の知らせがガルグ=マクにもたらされた。養子であるアッシュへセイロス教会からは何も沙汰が下されていない。軟禁もされずアッシュの方が身の潔白を証明するため修道院の敷地内に閉じこもっている。鎮圧に英雄の遺産である雷霆まで持ち出す割に対応が一貫していない。前節と同じく金鹿の学級がセイロス騎士団の補佐を任された。クロードの記憶通りならばエーデルガルト達が鎮圧にあたっていた筈だが展開が違う。彼女はあの時、帝国に対して蜂起したロナート卿を内心では応援していたのだろうか。

     アッシュは誰とも話したくない気分の時にドゥドゥが育てた花をよく眺めている。何故クロードがそのことを知っているかと言うと温室の一角は学生に解放されていて薬草を育てているからだ。薬草は毒草でもある。他の区画に影響が出ないようクロードなりに気を使っていたがそれでもベレトはクロードが使用している一角をじっと見ていた。

    「マヌエラ先生に何か言われたのか?致死性のものは育ててないぜ」
    「その小さな白い花には毒があるのか?」

     ベレトが指さした白い花はクロード 2097

    111strokes111

    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    15.鷲獅子戦・上
     フレンが金鹿の学級に入った。クロードにとっては謎を探る機会が増えたことになる。彼女は教室の片隅に座ってにこにこと授業を聞いてはいるが盗賊と戦闘した際の身のこなしから察するに只者ではない。兄であるセテスから槍の手解きを受けたと話しているがそういう次元は超えていた。

    「鷲獅子戦にはフレンも出撃してもらう」

     やたら大きな紙を持ったベレトが箱を乗せた教壇でそう告げると教室は歓声に包まれた。これで別働隊にも回復役をつけられることになる。治療の手間を気にせず攻撃に回せるのは本当にありがたい。今まで金鹿の学級には回復役がマリアンヌしかいなかった。負担が減ったマリアンヌの様子をクロードが横目で伺うと後れ毛を必死で編み目に押し込んでいる。安心した拍子に髪の毛を思いっきり掻き上げて編み込みを崩してしまったらしい。彼女もまたクロードと同じく秘密を抱える者だ。二重の意味で仲間が増えたことになる。五年前のクロードは周りの学生に興味は持たず大きな謎だけに目を向けていたからマリアンヌのことも流していた。どこに世界の謎を解く手がかりがあるか分かりはしないのに勿体ない。
    2086

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    16.鷲獅子戦・下
     ローレンツがグロンダーズに立つのは二度目だ。一度目はローレンツの認識からすると五年前でベレト率いる青獅子の学級が勝利している。敗因は堪え切れずに飛び出してしまったローレンツだ。更に危険な実戦で囮をやらされた時に堪えられたのだから今日、堪えられないはずはない。

     赤狼の節と言えば秋の始まりだが日頃山の中の修道院にいるので平原に下りてくると暖かく感じた。開けた土地は豊かさを保証する。グロンダーズ平原は穀倉地帯でアドラステア帝国の食糧庫だ。畑に影響が出ない領域で模擬戦は行われる。模擬戦と言っても怪我人続出の激しいもので回復担当の学生はどの学級であれ大変な思いをするだろう。

     ベレトが持ってきた地図を見て思うところがあったのかクロードは慌ててレオニーとラファエルを伴って教室から駆け出し書庫で禁帯出のもの以外グロンダーズに関する本を全て借り上げてきた。皆に本を渡し地形描写がある物とない物に仕分けさせた。この時、即座に役に立たない本だけを返却させている。情報を独占し他の学級に無駄足を踏ませた。クロードのこういう所がローレンツは会ったこともないべレスから疎まれたのかもしれない。
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    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    17.惨劇・上
     南方教会を完全に無力化されてしまったことや西方教会対策やダスカーの幕引きでの手腕には疑わしいところがあったがルミール村においてまず疫学的な検査から実施されたことからもわかる通りセイロス騎士団は手練れの者たちの集まりだ。ベレトの父ジェラルドまで駆り出されている異変においてクロードやローレンツのような部外者が介入しても迷惑がられるだけだろう。

     クロードにしてもローレンツにしても記憶通りに進んでほしくない出来事は数多ある。ロナート卿の叛乱もコナン塔事件も起きない方がよかったしこの後の大乱も起きて欲しくない。だがこのルミール村の惨劇は起きてほしくなかった案件の筆頭にあげられる。他の案件の当事者には陰謀によって誘導されていたとはいえ意志があった。嵌められていたかもしれないが思惑や打算があった。だがルミール村の者たちは違う。一方的に理性や正気を奪われ実験の対象とされた。そこには稚拙な思惑や打算すら存在しない。事件を起こした側は村人など放っておけばまた増えると考えたらしいが二人にとって直接見聞していないにも関わらず最も後味が悪い事件と言える。
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