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    すぺ2

    すぺ2という牛天垢です。Twitter上でタグとかで書かせていただいたのをまとめようかなーと思って作ってみました
    ゆるーくよろしくお願いいたします

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    すぺ2

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    Amonさん(@hell_rider_a13)の素敵絵に小説付けさせていただきました。
    とても自由にオリキャラを出してしまい、かつ、喧嘩する牛天がテーマなので苦手な方はご注意ください。
    アーミー若利と悩みましたが、アーミー若利はもっと話が長くなってしまいそうで💦自重しました!

    【覚醒の時】

    「は?」
    思わず俺は声を低くしていた。
    「ウシワカ、今、なんつった?」
    ほぼゼロ距離まで近付いてその瞳を覗き込む。どんな場面でも動揺を見せないそのオリーブグリーンの瞳が僅かに揺れているのにも気付かないくらい頭の中が煮え立っている。にもかかわらず、俺の表情は冷え冷えと無表情になっていくのが自分自身でも他人事のようにわかった。場の空気まで凍ったのも普段だったら気遣う所だが、今はそれどころじゃない。
    「もういっかい、いってみろよ? いま、なんつった?」
    幼少期に自分が妖怪と言われたのを思い出させる底冷えする声が自分の声帯から発せられているのを一枚隔てた膜の向こうで見ていた。

    * * *

    白鳥沢学園は全寮制ではない。希望者のみ寮生活なのだが、実家が遠い者、特に強豪であるバレー部などの運動部に入っている生徒の多くが寮生活を希望していた。
    ただ、世の中、例外というものはいくらでもある。いくらバレー部部員でも事情がある者はもちろん、寮に入らない。入れない者も居る。
    竹下祐樹は後者だった。中学の大会でもそれなりの成績を収めていたらしい彼は、一般入試で白鳥沢に入り、バレー部に所属した。中学からグングンと伸びていた身長を買われて、1年の外部生組の中でも、まぁ、それなりの地位を確立していた。何より、人懐っこい性格と真面目さで周囲にすぐに馴染み、先輩にも目をかけられていたし、コーチからもそれなりに期待されていた。

    天童覚が彼と初めて話したのは、春休み中の特別練習でであった。入学を直前に控えた新入生の中で、春から通学することになる白鳥沢の練習に希望者のみが集まっていた。
    と言っても、既に推薦で白鳥沢への入学が決まっていた天童はほぼ有無を言わさずに呼ばれた。むしろ、希望者のみであったことは後からコーチに聞かされていた。その頃の天童は今とは違い、かなりスレていたので、多分、希望者などと言ったら参加しないだろうことを鷲匠は見越していたらしい。
    竹下は、1次入試で早々に白鳥沢への入学を決めていた。勿論、バレー部に入ることも決めていた。強豪である白鳥沢に入ることで1軍になれない可能性も無くはないことを本人は理解していたが、それよりも、彼はバレーが好きだった。数名の推薦組と数多の一般入試組に紛れ、竹下もその練習に参加していた。
    彼らはそこで初めて出会い、話すことになった。
    「お前、その髪、スゲェ色。地毛?」
    明らかに周りに馴染めずにぼんやりとしてた天童に屈託なく話しかけた竹下を、天童はそのギョロッとした目で胡乱気に見る。小中とつまはじき者にされることには慣れていたので、他人からの第一印象なんて考えたことが無かったその頃の天童に、そんなに気安く話しかけてくる同年代は大方、頭のネジが数本飛んでいる。そんな風に思っていたその頃の天童は、わざとにんやりと気味の悪い笑みを見せてやっていた。
    「毛の色とバレー、関係ある?」
    ケケケ、とあざけるように笑った天童を、竹下は動じる様子無くキョトンと見返す。猫背の天童よりもずっと背丈のある竹下はその小さな瞳をパチクリと瞬いていた。
    「確かに。それよりさ、ペア錬するらしいからやろうよ。あ。俺、竹下祐樹」
    動じる様子無く会話を続ける竹下に、天童はスッカリ拍子抜けさせられてしまう。その日に会った他の同年代の者達は、ことごとく天童の人を遠ざけるような対応に、明らかに天童を遠巻きにしていたのだ。にもかかわらず、この少年にはそんな天童の態度は関係が無いらしかった。
    「俺、別に強くネーし、ジコチューだヨ? 他の奴とペア錬したら?」
    拍子抜けはなはだしく、折角演じていた『変なやつ』も剥がれ落ちてしまう。素のままの調子で天童がそう返すと、竹下は今度は豪快に笑っていた。鋭い八重歯が健康的な少年だった。
    「いや、それこそ関係ねぇジャン。あ。でもあれか。強いやつとペア錬した方が練習楽しいかな?」
    あっけらかんとそんな風に返してくる竹下に、今度は天童が吹き出してしまう。ケタケタ笑っていたら、眼鏡をかけた生真面目そうなコーチから集合の声がかけられた。
    「俺、天童覚。覚醒の覚でサトリ、だヨ」
    「なにそれ、かっけーな。俺もそーゆーの考えよー」
    コーチのもとに二人で駆けていきながら、天童と竹下はそう笑い合った。つまり、天童が白鳥沢で最初に出来た友人が、竹下だったのである。

    竹下も天童も、強豪白鳥沢でそれなりの地位を得られる程にはそれなりに強さを見せていた。特に、高さを愛する鷲匠監督の眼にはグングンと身長を伸ばし、技術も伸ばす彼らは良く映ったのだろう。
    しかし、竹下にはハンディキャップがあった。
    「祐樹くん、寮じゃネーんだ?」
    毎日夜遅くまである部活の後、いそいそと帰り支度をして家に帰って行く竹下を見て、天童はただでさえ大きな瞳を更に大きく見開いていた。それをする度に竹下は「カメレオンみてぇ」と笑う。
    「うち、すぐそこだからさ。じゃぁな」
    「オツカレ―」
    ヒラヒラと手を振る天童を振り向きもせず、竹下は走って行く。いつもコッソリ体育館裏に停めている自転車に乗って家に帰るらしいことを次の日、天童は人伝に聞いた。
    「祐樹の奴、偉いよな?」
    内部生組の中で一番最初に天童に話しかけてきた瀬見がポツリと呟いた言葉に天童が小さく頷く。ただでさえ高い学費に加え、寮費もそれなりにするので小言を散々両親に言われた天童からすると、竹下はもしかしたら何かしら金銭的な理由で寮に入らない決定をしたのかもしれないと薄っすらと考えていた。天童も親に通学に出来ないかと言われたが、通学定期の値段や通学にかかる時間を考えたら、早朝から夜遅くまで練習のあるバレー部では金銭的にも物理的にも難しいだろうということで決着が付いていた。
    「アイツ、強ぇから残って欲しいな」
    瀬見の静かな言葉に天童は黙ったまま静かに頷き、カバンを肩にかけ寮に向かう。まだ体力が残っているらしい数名はまだ自主トレとして体育館内に残る様だった。その中には、先輩が数名、東北のウシワカと名高い牛島若利はじめ、1年の寮生活組が数名居た。

    バレー部の1年のほとんどが寮生活だ。通学組の1年のほとんどが2年に上がってもスタメンは難しいと言われている者ばかりだ。2年、3年の先輩を見ても竹下の様な通学者はハッキリ言ってゼロだ。
    中学から有名人な牛島若利が1年の中で飛び抜けた技術とパワーのあるOPである事は火を見るより明らかだ。何といっても、1年の夏というこの時期、もう既に牛島は公式戦でも時々起用されることがあった。他の弱小校ならまだしも、強豪であり、選手層の厚い白鳥沢で先輩たちを差し置いて起用されるその様はまさに、次期エースの風格だろう。
    その牛島に次ぐ同学年での実力者と言えば、大平獅音だろう。彼は練習中も日常でもとても静かだ。しかし、そのレシーブの正確さ、スパイクの威力。一瞬の判断力。それらは年内にもしかしたらスタメンに食い込めるのではないかという兆しを見せていた。
    その大平と競えるレベルに居るだろうと言われていたのが竹下だ。ぐんぐん伸びた身長から放たれる強烈なスパイク。広い視野。瀬見との相性も良いのか、練習試合をすると大抵、竹下は1年の中では得点数上位に食い込んでいた。
    「1年のうちは結構、うちの部活も通学で踏ん張るヤツいんだ。……祐樹、スタメンか寮生活どっちか選べって言われたらどうするかな……?」
    静かに瀬見と天童の話を聞いていただけだった大平が、ぽそりと独り言のように呟く。夏でも練習後の帰宅時間は外は真っ暗だ。これから益々日は短くなり、練習は厳しくなるだろう。インハイ後の春高までの期間なんてあっという間だ。スタメン起用で3年が多い今年度は、来年度に向けて1年である天童達世代を特に鍛えている印象があった。
    「祐樹くんはダイジョーブ」
    天童は、いつの間にか言い聞かせるようにそう呟いていた。
    「それよりさー、獅音、今日の夕飯、量多過ぎたら俺の分も食べてくンね?」
    「少しだけだぞ?」
    「ヤッタ!」


    そんな会話をしていたのが、確か、1年の夏だ。

    * * *

    竹下が、自分からバレー部を辞めると言ったのは、確か、1年の終盤に近い時だった。

    最も親しいと思っていた天童に最後に伝えられたその事実にカッと頭に血が昇ったのかもしれない。明らかに泣き腫らした目の癖に笑う竹下の八重歯を見て胸が締め付けられ、酸素の足りない天童の脳ミソは正常な判断が出来なかったのかもしれない。
    「正しい判断だと思う」
    そう無感動に言い放った、牛島若利に、つい、天童は掴みかかっていた。
    「は?」
    天童の声が低くなる。やめろよ、と間に入ろうとした竹下を突き離した腕が痛むのにも関わらず、天童は鼻先がぶつかりそうな至近距離で牛島を見る。
    この1年。確かに、牛島と天童は同じ部活の部員として共に練習してきていた。しかし、中学からの持ち上がりであり、明確なスター性を持ち合わせている牛島と天童の接点はほぼ皆無だった。
    何より、牛島は練習の虫だ。同学年と親しく語り合う時間よりも己の練習の時間に重きを置いていた。天童が牛島の声を体育館外で聴いたのなんか、もしかしたらその時が初めてだったかもしれない。
    「ウシワカ、今、なんつった?」
    天童が、ほぼゼロ距離まで近付いて牛島の瞳を覗き込む。常に感情を露にしていないと思われたそのオリーブグリーンの瞳が、僅かに揺れている。しかし、その頃の天童はあまりにも牛島との接点がそれまでになかった。だから、わずかにしか変化しない牛島の表情を、その頃の天童は全く気付きもしなかった。

    放課後の開放的な空気が凍りつく。突然、校舎の下駄箱付近で繰り広げられる高身長男子たちのゴタゴタだなんて誰が関わりたいだろうか?
    その頃はだいぶ中学での傷も癒え、丸くなっていた天童だ。常ならば、周りを気遣って場所を帰る所だったが、そうはならない。冷え冷えとした声のまま、牛島に更に詰め寄る。
    「もういっかい、いってみろよ? いま、なんつった?」
    騒ぎを聞きつけた大平と添川がバタバタとやって来る。引き剥がされた天童は、まだ、牛島を絶対零度の瞳で睨みつけていた。

    「覚、お前はまだまだ強く成れるよ。こんなとこでくだんねー喧嘩してないで、もっと、お前のバレーを楽しめよ」
    噛みしめる様に笑った竹下を見て、天童は思った。
    到底かなわないと思っていた、そして、競い合おうとも思っていなかった牛島に、いつか目にもの見せてやる。そう、奮起したのである。
    「ざけんな、ウシワカ。目にモノ見せてやんヨ」

    一番の友人のだった者が去った同じ場所で、忌み嫌っていた牛島と天童が解り合うまでは、まだ、もう少し。
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    Replies from the creator

    すぺ2

    DOODLE若利くんお誕生日に思いついたネタなんですが、なんか、薄暗い…?いや。めっちゃハートフルハッピーエンドのつもりで書きました。
    新書メーカー背景付きで投稿しましたが、なんか読みにくかったので
    Dear… 牛島家にはいつからかサンタが夏にやって来る。
     ある日の夕方、牛島若利がバレークラブから帰ってくると、玄関に両手で抱える程度のダンボール箱が置かれていた。差出人の名はなく、『若利へ』という右上がりのメモが貼られている。
     玄関まで出迎えに来てくれた母を見上げると、母は若利に小さく頷く。
    「季節外れですが、サンタさんが来ました。若利にだそうです。手を洗ったら開けてみなさい」
     何の疑問を感じないのか、若利はただ素直にこくりと頷く。そぉっとそのダンボール箱を持ち上げると、大きさの割には軽く感じられた。
     中身がなにかさえも分からないので、若利はそれを慎重に持ち運び、洗面台の足元にそっと置く。それからいつものように固形石鹸を丁寧に泡立て、爪の中まで丁寧に洗った。いつでも乾いた清潔な物がかけられているタオル掛けのタオルで丁寧に指先までしっかりと水分を拭き取ってから、もう一度若利はダンボールを抱えて居間に向かう。
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    すぺ2

    TRAININGかさねさん(@kasanedane22)の素敵絵にss付けさせていただきました!元絵が本当に!!可愛いのにえっちいのでぜひ見てください!!!
    絵も小説も描ける&書けるかさねさんに私ごときが書くの本当に恥ずかしいですが!!!恥を忍んで書きました!
    【きみは、ぼくのおきにいり】

    天童覚は変わっている。

    「ブロックは読みと勘だヨ~」
    今では珍しいゲスブロックを得意とするMB、ひょろりと伸びた手足、異様に青白い肌、それに対比する様に真っ赤な逆立てられた髪。普段は猫背な彼も、ひとたびコートに入り、ブロックに跳べば、その背はにょきりと伸び、ゴム製で出来たおもちゃのようにしなやかな手指が相手からの攻撃を叩き落としてしまう。
    初めて牛島若利がその独特なブロックを見た時。今まで見た数々のブロッカーと異なるその「叩き落とす」技術に釘付けになった。牛島の父が繰り返し話していた言葉を思い出す。
    「強いチームに行けば、強いやつ、面白いやつに会える」
    白鳥沢バレー部はどこからどう見ても強いチームだった。だからこそ、この、一味も二味も変わったゲスブロッカーに出会えた。
    ——お父さん。やっぱり、このチームは、強い——。
    自分が一番の変わり者とされていて、そのチームで最も強いと思われているとは気づきもしない牛島は、天童をはじめ、数々と集まるメンバーを見てそう感じていた。

    「若利く~ぅん!」
    間延びしたイントネーションで天童がそう呼ぶ時、牛島はただ、静かに 1326

    すぺ2

    TRAINING亜歳さん(@asai_oekaki)のかわいい牛天ワシの絵に付けさせていただきました!元絵がすごくかわいいので!!!ぜひ見に行ってください!!【にひきのわしのうしてん】

    「ワカトシくん、ワカトシくん」
    テンドウワシが ぴょこぴょこと あかいかざりばねを ゆらしながらワカトシワシのまわりを ちょこちょこあるきます。
    「はしのむこうに、おいしいきのみがいっぱいあるんだって! いこうよ!」
    「はしのむこう?」
    ワカトシワシがみどりのかざりばねをゆらして ちいさくくぶをかしげます。
    「あのトロルのいるはしのむこうか?」
    「そーそー!」
    テンドウワシが そのまっしろなつばさをひろげます。よくみれば、そのつばさは ひかりにすけてうすむらさきいろに みえます。
    「このまえまでとなりのもりにすんでた ことりのおやこがたべられちゃったってきいたけど たぶん、おれらはだいじょうぶ」
    ふふん、ととくいげにテンドウワシはその するどいくちばしをみせびらかします。ワカトシワシは なにかをかんがえていました。
    となりのもりの ことりのおやこは テンドウワシとウシワカワシがこのもりに すみはじめたとき、となりのもりの きれいなみずばを おしえてくれたしんせつな おやこでした。
    「わかった。ほんとうにトロルがあのおやこをたべたなら おれたちはいくべきだろ 705

    すぺ2

    MOURNING栗原さん(@kuri_usiten)に大変仲良くしていただきまして!ありがたいです!!
    そんな中で、素敵絵をいただいて、それに小説付けさせていただくというものをやらせていただけたので&公開許可をいただきましたので、自慢という名の公開をさせていただきます!!いいだろ!!!
    おとぎ話パロです。
    栗原さんの素敵な絵付きのものは支部にあります(https://www.pixiv.net/artworks)
    【はだかのおうじさま】

    その国はとても美しい国でありました。人々は幸福そうに微笑み、動物たちも穏やかに過ごせる緑に溢れ、美しい空と清涼な川と湖がその領地にありました。

    そこにやってきたのが1人の赤毛の男です。正確に言うなれば、彼は男と言うにはやや幼い顔立ちをしていました。年としては10代後半といったところでしょうか? ギョロリとした白目の多い大きな目は彼を幼くも奇妙にも見せております。ただ、その長身をひしゃげるように曲げて歩く様は老人のようでした。
    彼は、ヒョロリと長い手足をブラつかせながら質素な身なりで現れました。背中には大きな木箱を背負っております。ずっしりと重そうなそれのせいで少年は背中を丸めて歩いているのかもしれませんでした。

    「王子様の17歳のお祝いに参りまシた」
    その国の真ん中の少し小高い丘、その上に質素なお城がありました。赤毛の少年はそのお城の門の前で門番の少年にそう告げておりました。太眉の門番はその特徴的な眉をㇵの字にして赤毛の少年をマジマジと眺めます。
    「えっと、祝賀会はまだ先で……」
    「分かっていマス。ですので、その、祝賀会に見合う服を仕立てるために参りまシた 9238