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    serisawa

    ふるやさんとしほちゃんがSUKIです

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    serisawa

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    9月ワンライお題「残暑」より。
    キッチンシリーズの二人の番外イメージで書いてますが、
    単発同棲ふるしほでも問題ないと思います。

    #降志
    would-be
    #04notflワンドロワンライ

    降志ワンライ;「残暑」 ジリジリ。ギリギリギリ。ギギギギギギ、と。
     風情ある――というには、かなり耳障りな鳴き声が、ひっきりなしに響き渡るリビングで、志保はひとりだらんと腕を投げ出し、大の字で寝そべっていた。
     九月初旬。未だ残暑の厳しいこの季節。日中ともなればエアコンにはまだまだフル稼働で仕事をしてもらわねばならないのに、いきなりブツンという音と供に一切の反応を見せなくなって、五時間あまり。窓は当然のように全開にしているが、気密性の高いマンションの一室は、殆ど蒸し風呂状態だ。
     人間にすら毒となるであろうこの環境は小型犬であるハロには猛毒になる。
     予約がいっぱいなので訪問は明日になる、という修理業者からの平謝りの連絡が入ったと同時に、阿笠の元へ彼を預けてきて、志保自身は一時帰宅した。

     網戸全開の窓の外では、蝉の大合唱が響いている。
     いわゆる『セミファイナル』の開催地に選ばれてしまったベランダの様子は、正直見たくない。
     サンサンと降り注ぐ太陽は低くなりつつある夕刻。
     本日の最高気温は、35度を超えたという。じきに暗くなってくる時分だが、それでもスマホで確認した本日の最低気温は27度。
     じっとりと額に浮かんだ汗を拭うことすら鬱陶しくて、志保は大人しく瞼を閉じた。

     ジリジリと身を焦がすような――否、文字通り己の身を焦がしているのであろう、夏の風物詩。最後の命の灯火を精一杯に奏でる合唱がやがて遠くなってきたころ、「こら」とよく知った声がかけられた。
     ぬっと志保の頭を見下ろす影は、丁度西日となった窓を背にした男。
     金色の髪に夕空の朱が溶けて、綺麗だな、となんとなく思った。

    「君も阿笠さんのところに泊めてもらうように言っただろう。熱中症になったらどうする」

     家主――降谷には、エアコンがご臨終になったとトークアプリで連絡を入れてあった。
     帰宅した降谷は、庁舎に詰めていたのだろう。スーパークールビズ推奨通りの、ノーネクタイのシャツ姿。
     愛車で帰宅した彼が外気に触れた時間は駐車場からエントランスまでのごくわずかな距離だ。涼しい顔をしていることがどこか憎らしかった。
     でも――

    「だって、今日は早くに帰れるって、言ってたじゃない」

     残暑の折。
     エアコンの壊れたリビングで寝そべったまま。
     どこか朦朧とする頭で考え無しに、志保は呟いた。



     朝食の席、まだご健在だった快適な空調のリビングで、彼と交わした会話を思い出す。

    『今日は久々に早めに帰れると思う。夕飯どうする?』
    「なら、一緒に作りましょ。久々にあなたのオムライスが食べたいわ」

     何気ないひととき。
     当たり前のような日常。
     それこそが、奇跡のような一日であることを、二人は二人とも、よく知っている。



    「……君、たまにとんでもない口説き文句を言うよな」

     志保の無意識の受け答えにハァ、と息をついた降谷が、熱中症でもあるまいに頬を赤く染めた。
     が、すぐに志保のだらんと伸びた腕を引き上げて身を起こさせると、彼自身もフローリングに腰を下ろして志保と視線を合わせてこつりと額を突き合わせる。
     時折行われるどこか子どもっぽいコミュニケーションだが、志保は嫌いではなかった。

    「で、予定通りオムライスを食べる気力は?」
    「……流石にこの熱気の籠った部屋で火を使う気は起きないわ」
    「同感。リクエストはまた今度にしてどこかに食べに行こう。それで、僕たちも外泊にしようか」
     修理は明日。一晩はこのままの蒸し風呂なのだ。むしろ夜は防犯上窓を開けておくのも危険だから尚更熱中症の危険性が高まる。異論はない。

    「博士の家?」
    「いや、」

     一晩二人きりでいられるところ、と。

     彼の言葉にそれこそ、熱中症のように頬を染め――彼女はコクリと、頷いた。

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    serisawa

    DOODLE2023.12.17にダズンローズフェス内で開催された降志オンリー、
    「零時の闇に星や降る」の参加レポートです。
    というか、参加までの道のりです。
    まあまあ内輪向けなので、ご興味がある方のみどうぞ~。
    2023.12.17れいやみに参加して■発足〜参加確定までの話

     全ては昨年12月、僭越ながら主催させていただいた降志WEBオンリーイベントの翌日、突発アフタースペースを開いたことから始まった。
    「新刊カード50枚集め、募ってみませんか?」と、スペースをご一緒していた某amrさんが提案してくれたのである。
     赤ブー主催で新刊カード50枚集めるとカプオンリーを開いてもらえることは知っていたが、50枚なんて夢のまた夢…と思っていた(でも「もしも」のために新刊カードはきっちり保管していた。えらいぞわたし)

     次の投票っていつなの?今ここにいる人は何枚カード持ってるの?と、スペースそっちのけで調べ始め、なんと翌月1月のインテが投票日だということが判明。しかもそのスペース参加者の内2名はインテ参加組!やれるだけやってみよう!と正式に募集を募り…するとどうでしょう。みるみるうちに挙手の手が上がる。他ジャンルの友人に声をかけてくれた方もいらっしゃいました。ありがたや…。
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    lin_co10ri

    DOODLE12/10降志webオンリーイベント「Not First Love,2ND」展示作品です。ほぼポエム。
    来年の映画のタイトル穴あきヒントが出た時に、一番に思い浮かんだのがこのタイトルでした。
    これは降志…!と思っていて、今回のティザー、特報に情緒揺さぶられているうちに、つい書いてしまったものです。
    いずれひとつの話にしたい、とは思っています。
    そうなると、きっと黒塗りにされる部分ですね、これ。
    黒塗りのラブレター拝啓


    君があんな風に泣くなんて、知らなかった。

    いや、僕は君のことなんて、何も知らないんだ。
    どんな風に笑うのかも。何を思っているのかも。どうやって生きてきたのかさえ。
    ずっと僕の心の中に君という存在が、何かしらの形で居たということは。紛れもない事実だと言い切りたいが、これまで君のために何もできなかったことを思えば、近づくことさえできない。

    何故そんな風に泣いているのか、胸が引きちぎられるほど苦しくて、気になって目に焼き付いて離れないけれど。
    泣いている姿に、生きているという鼓動と躍動を感じて、崩れ落ちそうなほど安堵している自分もいる。
    君がそんなに素顔を晒せているのが。誰がいるからなのか、誰の前なのか、誰のためなのか。そんなことさえ気になってしまうけれど。
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