愚か者の歩みなれども、この脚で ●
「閃くん……やりすぎないようにって言ったよね」
「あの……でも……事前に、多少しっかりめの負傷をするかもとはお伝えを……」
「骨のヒビは多少じゃないよね……?」
「はい……」
こがねが丘支部、医務室。
医療担当の職員が用いる治癒の霧に包まれつつ……ベッドの上の閃は気まずげに目を逸らした。
トウジとの回避訓練が終わった閃は――支部内の風呂場で寝落ち(もとい気絶し)かけていたところを発見された。全身に凍傷と裂傷と打撲、呼吸器官も冷気にやられ、極めつけに肋骨にヒビまでこさえていた。なお風呂場で発見されたのは、低体温症でフラフラになっていたからである。
ともあれ、今はこうして無事に治療され――痕にもならず、傷は全て拭われた。
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