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DOODLEエルシン3.5話間奏●
『あの事件』から幾らかの日が経った。
季節はすっかり秋めいて、閃の制服も夏季制服の白いシャツから学ランになった。
しばらく支部で大人達に見守られて休息をとっていた少年は、今はもう元の住居で暮らし、学校にも通っている。一週間の休みについても心臓の病を理由にしたから、心配されたものの怪しまれることはなかった。
「……閃くん、大丈夫?」
支部での業務中、職員が声をかける。真面目な子だから、自分を押し殺してはいまいか気がかりなのだ。
「あ―― はい、大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
振り返る閃は笑顔を向ける。言葉に偽りはなく、表情や声音にはいつも通りのハキハキとした溌剌さがあった。
愛されて大切に育てられた少年は、自己の基盤がしっかりとできあがっていて――だからこそ、つらいことがあっても、キチンと休めばまた立ち上がれる強さがある。決して出羽ゆめみのことを忘れた訳ではないけれど、それでも立ち上がらねばならないことを、閃はしっかと理解していた。
861『あの事件』から幾らかの日が経った。
季節はすっかり秋めいて、閃の制服も夏季制服の白いシャツから学ランになった。
しばらく支部で大人達に見守られて休息をとっていた少年は、今はもう元の住居で暮らし、学校にも通っている。一週間の休みについても心臓の病を理由にしたから、心配されたものの怪しまれることはなかった。
「……閃くん、大丈夫?」
支部での業務中、職員が声をかける。真面目な子だから、自分を押し殺してはいまいか気がかりなのだ。
「あ―― はい、大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
振り返る閃は笑顔を向ける。言葉に偽りはなく、表情や声音にはいつも通りのハキハキとした溌剌さがあった。
愛されて大切に育てられた少年は、自己の基盤がしっかりとできあがっていて――だからこそ、つらいことがあっても、キチンと休めばまた立ち上がれる強さがある。決して出羽ゆめみのことを忘れた訳ではないけれど、それでも立ち上がらねばならないことを、閃はしっかと理解していた。
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DOODLE閃の夏休みよもやま小ネタとか~閃の夏休み~海行ったあと、支部に帰ってきて、クソデカハンバーガーもりもり食って(トウジさんから何か言われなかったら一人で全部食う)、支部長にごちそうさまおいしかったですメッセージ送って、支部長と仲直りしたくて探したけど接触できなくて、しょうがないから支部内でお風呂して、一人で寝るの嫌だからトウジさんルームにモソ……と来て、一緒に寝ていいですかっておうかがいして、増設ベッドの方で寝たんだと思います。
普通にガッツリ、リラックスして寝てます。一回トウジさん達と一緒のコテージで寝泊まりしてるのと(バカンス回)、合宿の雑魚寝とかで他人のいる空間で寝るのは慣れてるのと、今回でトウジさんへの信頼度がすごい上がったので、この人がいる場所で寝ても大丈夫だって安心してるとこある
1484普通にガッツリ、リラックスして寝てます。一回トウジさん達と一緒のコテージで寝泊まりしてるのと(バカンス回)、合宿の雑魚寝とかで他人のいる空間で寝るのは慣れてるのと、今回でトウジさんへの信頼度がすごい上がったので、この人がいる場所で寝ても大丈夫だって安心してるとこある
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DOODLEお礼テキストごはんモリモリ作る黄連支部長と、ごはんモリモリ食べる閃
需要と供給の一致 ●
営業が終わったダイナーの厨房から、ガチャ、カチャ、と調理の音が聞こえてくる。黄連を探す為に研ぎ澄ませた閃の耳に、その音はいつもよりも荒っぽく聞こえた。
「……黄連支部長?」
そっと顔を覗かせると、小さな後ろ姿が見える。足場に乗って、何やらブツクサ言っているが、言葉はフライパンを揺する音に掻き消される。
視線をずらせば、台の上にビュッフェもかくやと品々が並んでいた。今から宴会などの予定はなかったハズ。ましてや新メニュー開発にも見えなくて。
「ああ」、と閃は察した。この上司、時たま――激しく疲労した時やストレスを感じた時に、こうして大量の食事を作るのである。本人が自棄食いをする為ではない。ただただ、作りまくるのである。
2331営業が終わったダイナーの厨房から、ガチャ、カチャ、と調理の音が聞こえてくる。黄連を探す為に研ぎ澄ませた閃の耳に、その音はいつもよりも荒っぽく聞こえた。
「……黄連支部長?」
そっと顔を覗かせると、小さな後ろ姿が見える。足場に乗って、何やらブツクサ言っているが、言葉はフライパンを揺する音に掻き消される。
視線をずらせば、台の上にビュッフェもかくやと品々が並んでいた。今から宴会などの予定はなかったハズ。ましてや新メニュー開発にも見えなくて。
「ああ」、と閃は察した。この上司、時たま――激しく疲労した時やストレスを感じた時に、こうして大量の食事を作るのである。本人が自棄食いをする為ではない。ただただ、作りまくるのである。
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DOODLEサマリゾ後日談&3話前日談花火を見に行こう!
夏の終わりの祭囃 ●
八月の終わり、今年もこがねが丘第一自然公園で夏祭りがされるという。
「花火も打ち上げられるんですよ。よかったら、皆で行きませんか?」
UGNこがねが丘支部。閃が仲間達の業務の一区切りを見て、そう提案する。
「……友達と行かなくていいのか?」
少年の言葉が、明らかに自分達を遊びに誘っているものだから――支部長の黄連は片眉を上げた。
「それが、仲の良い子はみんな合宿とか練習試合とかで……」
かくいう僕も去年まではそんな感じだったんですけど、と閃。競技一筋すぎて、夏祭りはなんと小学生以来だという。
「久々の夏祭り……皆さんで行けたらいいなぁって……花火も……こないだ、見に行けたらなって話もしてましたし……」
5276八月の終わり、今年もこがねが丘第一自然公園で夏祭りがされるという。
「花火も打ち上げられるんですよ。よかったら、皆で行きませんか?」
UGNこがねが丘支部。閃が仲間達の業務の一区切りを見て、そう提案する。
「……友達と行かなくていいのか?」
少年の言葉が、明らかに自分達を遊びに誘っているものだから――支部長の黄連は片眉を上げた。
「それが、仲の良い子はみんな合宿とか練習試合とかで……」
かくいう僕も去年まではそんな感じだったんですけど、と閃。競技一筋すぎて、夏祭りはなんと小学生以来だという。
「久々の夏祭り……皆さんで行けたらいいなぁって……花火も……こないだ、見に行けたらなって話もしてましたし……」
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DOODLEコモンコキュートス前日譚、閃の話祝福されし光の子 ●
スマホがメッセージの受信を告げる。
ポケットから取り出した端末には、母親からのメッセージが記されていた。
「ひーちゃん、もうすぐ誕生日だね♪
プレゼント何がいい?」
もうすぐ17歳で――体格なんかは大人と変わらないどころかそこらの大人よりも隆々としているのに、母親はいつも我が子のことを「ひーちゃん」と呼ぶ。閃だから、ひーちゃん。それは閃本人にとっては少しこそばゆいのだが――もう小さな子供ではないんだから――まあいいかと受け入れている。母親にとって、閃はどれだけ大きくなっても歳をとっても、大事な大事なかわいい「ひーちゃん」なのだろう。
学校からの帰り道。こがねが丘支部へ向かう道中。人混み、黄金の脚を隠して、普通の人間に紛れて歩きながら、端末を見下ろす閃の目は優しい。指先が言葉を紡ぐ。
1905スマホがメッセージの受信を告げる。
ポケットから取り出した端末には、母親からのメッセージが記されていた。
「ひーちゃん、もうすぐ誕生日だね♪
プレゼント何がいい?」
もうすぐ17歳で――体格なんかは大人と変わらないどころかそこらの大人よりも隆々としているのに、母親はいつも我が子のことを「ひーちゃん」と呼ぶ。閃だから、ひーちゃん。それは閃本人にとっては少しこそばゆいのだが――もう小さな子供ではないんだから――まあいいかと受け入れている。母親にとって、閃はどれだけ大きくなっても歳をとっても、大事な大事なかわいい「ひーちゃん」なのだろう。
学校からの帰り道。こがねが丘支部へ向かう道中。人混み、黄金の脚を隠して、普通の人間に紛れて歩きながら、端末を見下ろす閃の目は優しい。指先が言葉を紡ぐ。
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DOODLEお題のやつ1、一緒にごはん
2、雨宿り
3、ちょっと苦戦した戦闘後
4、UGN任務でえらいひとと会う
でした
こがねが丘の或る日常●2番、雨宿り
こがねが丘には金山の跡地があり、町外れには旧坑道が幾つか残っている。中央部の繁華エリアとは打って変わって――蝉のさんざめく山の中、山間の道路に『いつもの車』を停めて、トウジと閃は旧坑道を覗き込んでいた。
――旧坑道にオバケが出る、らしい。
これだけならオカルトなのだが、UGNの見解としてはジャームの可能性もあり……調査の為に派遣されたのがトウジと閃だった。
「……へえ。これがオバケ、ねえ」
トウジの靴先がつついたのは、旧坑道の入口ほどなくに『いい感じに』設置された、朽ちたマネキンで。真っ白の無貌は……なるほど、真夜中の遠巻きに見ればギョッとするかもしれない。
「ジャーム……でも、ありませんね」
5475こがねが丘には金山の跡地があり、町外れには旧坑道が幾つか残っている。中央部の繁華エリアとは打って変わって――蝉のさんざめく山の中、山間の道路に『いつもの車』を停めて、トウジと閃は旧坑道を覗き込んでいた。
――旧坑道にオバケが出る、らしい。
これだけならオカルトなのだが、UGNの見解としてはジャームの可能性もあり……調査の為に派遣されたのがトウジと閃だった。
「……へえ。これがオバケ、ねえ」
トウジの靴先がつついたのは、旧坑道の入口ほどなくに『いい感じに』設置された、朽ちたマネキンで。真っ白の無貌は……なるほど、真夜中の遠巻きに見ればギョッとするかもしれない。
「ジャーム……でも、ありませんね」
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DOODLEツイッターのネタ 笑う閃恐怖のEXレネゲイドDVD! ●
オーヴァードには効かないのだが、一般人には視聴させ続ける催眠をかけてしまうDVDがこがねが丘支部に回ってきた。
一種の呪いのビデオ……ならぬ呪いのDVDであるその正体はEXレネゲイドだ。なおDVDの内容はお笑いDVDで――どうも無害化する為には、視聴しながら笑ってやらないといけないらしい。作り笑いや演技はダメ、しかし催眠状態の一般人は笑わなくなるのでオーヴァードが視聴するしかなく、という面倒臭い代物で……。
「視聴してレネゲイドが活性化する、オーヴァードの精神に異常をきたす、などは確認されていないとのことです。視聴するだけで大丈夫なようですね」
届いたDVDのパッケージ(二枚組)の裏表を見つつ、閃がUGNからのメッセージを一同に伝えた。
1526オーヴァードには効かないのだが、一般人には視聴させ続ける催眠をかけてしまうDVDがこがねが丘支部に回ってきた。
一種の呪いのビデオ……ならぬ呪いのDVDであるその正体はEXレネゲイドだ。なおDVDの内容はお笑いDVDで――どうも無害化する為には、視聴しながら笑ってやらないといけないらしい。作り笑いや演技はダメ、しかし催眠状態の一般人は笑わなくなるのでオーヴァードが視聴するしかなく、という面倒臭い代物で……。
「視聴してレネゲイドが活性化する、オーヴァードの精神に異常をきたす、などは確認されていないとのことです。視聴するだけで大丈夫なようですね」
届いたDVDのパッケージ(二枚組)の裏表を見つつ、閃がUGNからのメッセージを一同に伝えた。
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DOODLEミッドナイトアクシデント後、閃のリフレックスと蝙蝠の耳の取得エピソード愚か者の歩みなれども、この脚で ●
「閃くん……やりすぎないようにって言ったよね」
「あの……でも……事前に、多少しっかりめの負傷をするかもとはお伝えを……」
「骨のヒビは多少じゃないよね……?」
「はい……」
こがねが丘支部、医務室。
医療担当の職員が用いる治癒の霧に包まれつつ……ベッドの上の閃は気まずげに目を逸らした。
トウジとの回避訓練が終わった閃は――支部内の風呂場で寝落ち(もとい気絶し)かけていたところを発見された。全身に凍傷と裂傷と打撲、呼吸器官も冷気にやられ、極めつけに肋骨にヒビまでこさえていた。なお風呂場で発見されたのは、低体温症でフラフラになっていたからである。
ともあれ、今はこうして無事に治療され――痕にもならず、傷は全て拭われた。
1748「閃くん……やりすぎないようにって言ったよね」
「あの……でも……事前に、多少しっかりめの負傷をするかもとはお伝えを……」
「骨のヒビは多少じゃないよね……?」
「はい……」
こがねが丘支部、医務室。
医療担当の職員が用いる治癒の霧に包まれつつ……ベッドの上の閃は気まずげに目を逸らした。
トウジとの回避訓練が終わった閃は――支部内の風呂場で寝落ち(もとい気絶し)かけていたところを発見された。全身に凍傷と裂傷と打撲、呼吸器官も冷気にやられ、極めつけに肋骨にヒビまでこさえていた。なお風呂場で発見されたのは、低体温症でフラフラになっていたからである。
ともあれ、今はこうして無事に治療され――痕にもならず、傷は全て拭われた。
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DOODLEコンビニ前日譚、防御カチカチチームミッドナイトサイドストーリー ●
アイス売りのトラックが、こがねが丘の夜を駆けていく。
とはいえアイスを売りに行くのではない。乗っているのはUGNエージェント。ジャーム討伐の使命を帯びた、平和と秩序が為の刺客だ。
「トウジさん」
助手席。ラジオから流れる流行りのJ-POP――レトロでエモくてメロウなシティポップ――を背景に、康平が呟く。
「トウジさんってなんというか……戦うのにすごく慣れてらっしゃるように見えます。レネゲイド同士の戦闘をたくさん経験してらっしゃるんでしょうか?」
「ん~? 戦闘経験ねぇ、少なくはないくらいだよ」
運転席のトウジが答え、サングラスの奥の目を細めて笑う。「倒した数を数えて悦に浸る趣味はないから、数までは聞くなよ?」と。
3744アイス売りのトラックが、こがねが丘の夜を駆けていく。
とはいえアイスを売りに行くのではない。乗っているのはUGNエージェント。ジャーム討伐の使命を帯びた、平和と秩序が為の刺客だ。
「トウジさん」
助手席。ラジオから流れる流行りのJ-POP――レトロでエモくてメロウなシティポップ――を背景に、康平が呟く。
「トウジさんってなんというか……戦うのにすごく慣れてらっしゃるように見えます。レネゲイド同士の戦闘をたくさん経験してらっしゃるんでしょうか?」
「ん~? 戦闘経験ねぇ、少なくはないくらいだよ」
運転席のトウジが答え、サングラスの奥の目を細めて笑う。「倒した数を数えて悦に浸る趣味はないから、数までは聞くなよ?」と。
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DOODLE本編1話後の閃の日常この儚い日常の中で ●
「キックボクシング辞めたってマジなの?」
「なんで? 心臓病 大丈夫なの?」
「学校辞めたりしない?」
……みたいなことを、閃はもっともっと聞かれると思っていた。
しかし――聞かれた数はゼロでこそなかったけれど、思ったより、皆、いつも通り接してくれた。それが閃にとっての最適解だと、不思議と知っているかのように。
――私立こがねが丘高校、昼休み、柔道場。
「オラァああ〜〜〜〜〜〜ッッ」
「うぅおおおおおおあああああ」
閃はレスリング部の友達とドッタンバッタン取っ組み合って遊んでいた。いかにオーヴァードといえども、取っ組み合い専門競技の強者と取っ組み合うと劣勢に追いやられる。閃は柔道もちょっとかじっているが、流石に、レスリングの地区チャンピオンは強いこと強いこと。
1436「キックボクシング辞めたってマジなの?」
「なんで? 心臓病 大丈夫なの?」
「学校辞めたりしない?」
……みたいなことを、閃はもっともっと聞かれると思っていた。
しかし――聞かれた数はゼロでこそなかったけれど、思ったより、皆、いつも通り接してくれた。それが閃にとっての最適解だと、不思議と知っているかのように。
――私立こがねが丘高校、昼休み、柔道場。
「オラァああ〜〜〜〜〜〜ッッ」
「うぅおおおおおおあああああ」
閃はレスリング部の友達とドッタンバッタン取っ組み合って遊んでいた。いかにオーヴァードといえども、取っ組み合い専門競技の強者と取っ組み合うと劣勢に追いやられる。閃は柔道もちょっとかじっているが、流石に、レスリングの地区チャンピオンは強いこと強いこと。
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DOODLE前にTLで話してた、お掃除に来てくれるルンバちゃん、エエヤン……のテキストですお片付け、整理整頓 ●
康平の掃除の手際とクオリティを見て、閃が「僕もそろそろ家の掃除しなくちゃな……」と呟いたので。
「お掃除、しますよ!」
彼の笑顔のお手伝いになれるのなら。掃除が本分のレネゲイドビーイングは、待ってましたと言わんばかりに胸を叩いた。
――こがねが丘駅から徒歩数分圏内、小さいが比較的新しいアパートに、閃は一人で住んでいる。
今まで部活で忙しかった閃にとって、自宅はほとんど寝るだけの場所として扱われていた。簡易なワンルーム。ベッドと机、小さな本棚には教科書類と格闘技関連の雑誌、なぜか友達が置いていった数ヶ月前の週刊少年ジャンプ。他には吊るされた制服や、室内干しのままの衣類。あとは一人暮らし用の家電あれこれ。
2531康平の掃除の手際とクオリティを見て、閃が「僕もそろそろ家の掃除しなくちゃな……」と呟いたので。
「お掃除、しますよ!」
彼の笑顔のお手伝いになれるのなら。掃除が本分のレネゲイドビーイングは、待ってましたと言わんばかりに胸を叩いた。
――こがねが丘駅から徒歩数分圏内、小さいが比較的新しいアパートに、閃は一人で住んでいる。
今まで部活で忙しかった閃にとって、自宅はほとんど寝るだけの場所として扱われていた。簡易なワンルーム。ベッドと机、小さな本棚には教科書類と格闘技関連の雑誌、なぜか友達が置いていった数ヶ月前の週刊少年ジャンプ。他には吊るされた制服や、室内干しのままの衣類。あとは一人暮らし用の家電あれこれ。
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DOODLE閃の部活引退の話名も無い凡才の話 ●
風早閃がキックボクシングを引退した。
アマチュア界隈、そして彼のプロ入りに期待を高めていたプロ界隈も、突然の引退に動揺したものの――心臓の難しい病気が原因と知ると、惜しみながらも誰も責めることはせず、彼の回復と人生を心から祈った。かの天才は、多くの人間から愛されていた。注目されていた。間違いなく、スターだった。
しかし――世界の片隅に、苛立ちと共に壁を殴った少年が居た。
閃より一つ年上の彼は、閃と同じ階級で、閃が高校生になるまでは彼こそが天才だと持て囃されていた。
しかし。彼の天下は閃によってアッサリと終わりを告げる。
――初めて相対したあの日、少年は、本物の天才を見た。そして自分が天才ではないことを、脳を揺らされたどろどろの視界で天井を見上げながら、思い知った。
2505風早閃がキックボクシングを引退した。
アマチュア界隈、そして彼のプロ入りに期待を高めていたプロ界隈も、突然の引退に動揺したものの――心臓の難しい病気が原因と知ると、惜しみながらも誰も責めることはせず、彼の回復と人生を心から祈った。かの天才は、多くの人間から愛されていた。注目されていた。間違いなく、スターだった。
しかし――世界の片隅に、苛立ちと共に壁を殴った少年が居た。
閃より一つ年上の彼は、閃と同じ階級で、閃が高校生になるまでは彼こそが天才だと持て囃されていた。
しかし。彼の天下は閃によってアッサリと終わりを告げる。
――初めて相対したあの日、少年は、本物の天才を見た。そして自分が天才ではないことを、脳を揺らされたどろどろの視界で天井を見上げながら、思い知った。
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DOODLE支部間交流戦の話そんなこんな、素敵な一日 ●
「閃、最終確認だ。わしが言ったことを復唱してみろ」
「連絡先は交換しないように。手加減はしなくていい。2試合連続は許可しない」
「よろしい」
ディメンションゲートの前、黄連と、こがねが丘高校のジャージ姿の閃が向かい合っている。
「菊葉支部長、ありがとうございます。僕の為にわざわざこんな」
礼を言う閃の言葉は既に喜色に満ちていた。今から遊びに行く子供のようだ。
「……まあ、うちしかUGNを知らん貴様には知見を広げるのにちょうど良いだろう。こちらとしても新設支部だからな、よその支部に顔見せと挨拶程度はしておきたい」
人脈は金脈に勝る。黄連の言葉に閃は「はい!」と頷いた。この支部長の秘書として相応しく努めねば、と決意を新たにする。
4748「閃、最終確認だ。わしが言ったことを復唱してみろ」
「連絡先は交換しないように。手加減はしなくていい。2試合連続は許可しない」
「よろしい」
ディメンションゲートの前、黄連と、こがねが丘高校のジャージ姿の閃が向かい合っている。
「菊葉支部長、ありがとうございます。僕の為にわざわざこんな」
礼を言う閃の言葉は既に喜色に満ちていた。今から遊びに行く子供のようだ。
「……まあ、うちしかUGNを知らん貴様には知見を広げるのにちょうど良いだろう。こちらとしても新設支部だからな、よその支部に顔見せと挨拶程度はしておきたい」
人脈は金脈に勝る。黄連の言葉に閃は「はい!」と頷いた。この支部長の秘書として相応しく努めねば、と決意を新たにする。
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DOODLE閃の闘争衝動の話またこんどその2を書くかも
子供でも猛獣は猛獣だしていうかほぼ体格は大人だし ●
「菊葉支部長、」
閃はあまり声に感情をにじませるタイプではないが、それでもある程度の日々を共に過ごせば、呼んでくる時のニュアンスで概ね何用かは察しがつくようになってきた。
で、この、期待と少し甘えるような、ワクワクとそわそわを含んだ、子供がおねだりをするような色がある時は――「碓氷先輩と手合わせがしたいです」、だ。
「ダメだからな」
黄連は即答する。3回ぐらいこの小賢しいノイマンに言い包められてしまったが、もうやられん。毅然としたノー。閃はロジックバトルこそしかけてくるものの(まことに小賢しいガキである)、強くノーを言えば素直に引き下がる。多少、シュンとするが。
「……はい……」
上げた顔をスッとパソコンに戻し、閃は秘書としての業務に戻る。
2847「菊葉支部長、」
閃はあまり声に感情をにじませるタイプではないが、それでもある程度の日々を共に過ごせば、呼んでくる時のニュアンスで概ね何用かは察しがつくようになってきた。
で、この、期待と少し甘えるような、ワクワクとそわそわを含んだ、子供がおねだりをするような色がある時は――「碓氷先輩と手合わせがしたいです」、だ。
「ダメだからな」
黄連は即答する。3回ぐらいこの小賢しいノイマンに言い包められてしまったが、もうやられん。毅然としたノー。閃はロジックバトルこそしかけてくるものの(まことに小賢しいガキである)、強くノーを言えば素直に引き下がる。多少、シュンとするが。
「……はい……」
上げた顔をスッとパソコンに戻し、閃は秘書としての業務に戻る。
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DOODLEクライマックス後〜エンディングの幕間優しい金色に包まれて ●
夜の遅い時間だが、ゴールデンダイナーの厨房には明かりがついていた。
黄連用にカスタマイズされた厨房は小ぢんまりとして、ともすれば小人か妖精のキッチンのようなメルヘンが漂っていた。
が、そのメルヘンとは程遠いしかめ面で、黄連はデカいフライパンで大量のチキンライスを炒めていた――
「グッ……くそっ……米が……米が多いっ……!」
混ぜるだけでも筋力が要る。手首が腱鞘炎になりそうだ。火の元の熱気も相まってハァハァしながら、料理人は奮闘する。
なぜこんなバカみてぇな量のチキンライスを作っているのかというと――「好きなものは?」「米2合オムライスです!」という閃とのやりとりがありつつの。
「で、重里はどうする」「なんでもいいですよ!」からの、閃が「じゃあ同じものにしませんか」と提案したからだ。
2413夜の遅い時間だが、ゴールデンダイナーの厨房には明かりがついていた。
黄連用にカスタマイズされた厨房は小ぢんまりとして、ともすれば小人か妖精のキッチンのようなメルヘンが漂っていた。
が、そのメルヘンとは程遠いしかめ面で、黄連はデカいフライパンで大量のチキンライスを炒めていた――
「グッ……くそっ……米が……米が多いっ……!」
混ぜるだけでも筋力が要る。手首が腱鞘炎になりそうだ。火の元の熱気も相まってハァハァしながら、料理人は奮闘する。
なぜこんなバカみてぇな量のチキンライスを作っているのかというと――「好きなものは?」「米2合オムライスです!」という閃とのやりとりがありつつの。
「で、重里はどうする」「なんでもいいですよ!」からの、閃が「じゃあ同じものにしませんか」と提案したからだ。
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DOODLE閃の感情ログ閃の関係性感情のログ●閃【2024/09/30更新】
▼口調
一人称:「僕」、興奮した時や激昂した時は「俺」
二人称:苗字+さん(or役職名)、慣れてきたら名前+さん(or役職名)、同年代以下は名前呼び捨て。
口調:年上には丁寧な敬語(〜っス使わない)、同年代以下には「〜だ、だな、だろう、だよな、〜か?」。礼儀正しい、躾の行き届いた育ちの良い男の子の喋り方+愚直なスポーツマン
▼共通:
自分は新参の一番年下、下っ端、雑兵だという認識。
-------------------------------
皆に対して敬語で喋る。自分は新参だという認識だが、支部長の秘書官としての自覚もある=自分の振る舞いが支部長の品位に関わるので、そこは留意している(へりくだらない。あるていど毅然として振る舞う)
1885▼口調
一人称:「僕」、興奮した時や激昂した時は「俺」
二人称:苗字+さん(or役職名)、慣れてきたら名前+さん(or役職名)、同年代以下は名前呼び捨て。
口調:年上には丁寧な敬語(〜っス使わない)、同年代以下には「〜だ、だな、だろう、だよな、〜か?」。礼儀正しい、躾の行き届いた育ちの良い男の子の喋り方+愚直なスポーツマン
▼共通:
自分は新参の一番年下、下っ端、雑兵だという認識。
-------------------------------
皆に対して敬語で喋る。自分は新参だという認識だが、支部長の秘書官としての自覚もある=自分の振る舞いが支部長の品位に関わるので、そこは留意している(へりくだらない。あるていど毅然として振る舞う)
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DOODLEシーン4直前の妄想劇場幕間とポリスメン ●
ゴールデンダイナー……もといUGNこがねが丘支部から、四人のエージェントが出発する。
四人はほどなく二人と二人に別れ、銘々の目的地へ――。
●
夜の街を歩く。目的地のビルは遠くからでもよく見える。近道の路地は暗くとも、燦然とした目的地を見失うことはなかった。
トウジと閃はずっと無言であった。閃は真っ直ぐ前を向いた眼差しの奥に緊張と不安を押し殺しており、おしゃべりに興じる気にはとてもじゃないがなれなかった。トウジはというと、もしここにいるのがトウジではなく黄連だったなら、閃の緊張を解さんと幾つか言葉を投げかけていたろうが……結果はさもありなん。
しかしながら、傍から見れば「ヤクザ者の隣を、どこか緊張した顔で学生服の未成年が歩いている、しかも夜の路地を」という心穏やかではない風景で。
2034ゴールデンダイナー……もといUGNこがねが丘支部から、四人のエージェントが出発する。
四人はほどなく二人と二人に別れ、銘々の目的地へ――。
●
夜の街を歩く。目的地のビルは遠くからでもよく見える。近道の路地は暗くとも、燦然とした目的地を見失うことはなかった。
トウジと閃はずっと無言であった。閃は真っ直ぐ前を向いた眼差しの奥に緊張と不安を押し殺しており、おしゃべりに興じる気にはとてもじゃないがなれなかった。トウジはというと、もしここにいるのがトウジではなく黄連だったなら、閃の緊張を解さんと幾つか言葉を投げかけていたろうが……結果はさもありなん。
しかしながら、傍から見れば「ヤクザ者の隣を、どこか緊張した顔で学生服の未成年が歩いている、しかも夜の路地を」という心穏やかではない風景で。
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DOODLEミドル戦闘前のあれこれ再会まであと3分 ●
「君が見た通りのコレが真実だ」
「君にもあるんだよこういう”力”が」
「貴様もうすうす感じていたのではないか? 自分の身体能力の異常さに」
「突然変異、ウイルス感染。適応できなければ欲望に呑まれて人間の形をしたバケモノになる」
あの部屋を出てからの記憶は曖昧だ。部員や監督とやりとりをして、解散して……ようやっと少し我に返った頃、僕は夕暮れの街を独り歩いていた。
そうだ、スマホ。音量がどうたら……と、菊葉さんが言っていた。ポケットから取り出す、音量を下げようとして……母さんからメッセージが入っていた。
『試合お疲れ様! どうだった? 怪我してない?』
ふっと、その文字列を見た瞬間、どっと、形容できない感情が溢れ出て、立ち止まって、俯いていた。
1917「君が見た通りのコレが真実だ」
「君にもあるんだよこういう”力”が」
「貴様もうすうす感じていたのではないか? 自分の身体能力の異常さに」
「突然変異、ウイルス感染。適応できなければ欲望に呑まれて人間の形をしたバケモノになる」
あの部屋を出てからの記憶は曖昧だ。部員や監督とやりとりをして、解散して……ようやっと少し我に返った頃、僕は夕暮れの街を独り歩いていた。
そうだ、スマホ。音量がどうたら……と、菊葉さんが言っていた。ポケットから取り出す、音量を下げようとして……母さんからメッセージが入っていた。
『試合お疲れ様! どうだった? 怪我してない?』
ふっと、その文字列を見た瞬間、どっと、形容できない感情が溢れ出て、立ち止まって、俯いていた。
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DOODLEダブクロリレキャン前日譚あそび因果の糸口 ●
今日の部活も終わり。「お疲れ様でした」と言葉を交わし、シャワーを浴びて着替えをして……支度を終えたところで別の部の友達が顔を出した。「よー」「お疲れ」なんて会話をしながら、同じ帰路に就く。空はもう夕焼けだった。
こがねが丘、なんて名前に沿うように、この町の夕焼けは綺麗だ。夕焼けにビルとか車とか街路樹とか――空や雲までも――町の全てが、こがね色にキラキラしている。まるで町が伝説の黄金都市になったかのようだ。多分、この町の名前を付けた人は、この風景から着想を得たに違いない。
「――でさ、次の大会の階級どうすっかなって――」
イチョウ並木の歩道――秋には道路がイチョウのこがね色に染まる――を行く。隣では柔道部の友達が、自分の階級についてあれこれ悩んでいる。
1248今日の部活も終わり。「お疲れ様でした」と言葉を交わし、シャワーを浴びて着替えをして……支度を終えたところで別の部の友達が顔を出した。「よー」「お疲れ」なんて会話をしながら、同じ帰路に就く。空はもう夕焼けだった。
こがねが丘、なんて名前に沿うように、この町の夕焼けは綺麗だ。夕焼けにビルとか車とか街路樹とか――空や雲までも――町の全てが、こがね色にキラキラしている。まるで町が伝説の黄金都市になったかのようだ。多分、この町の名前を付けた人は、この風景から着想を得たに違いない。
「――でさ、次の大会の階級どうすっかなって――」
イチョウ並木の歩道――秋には道路がイチョウのこがね色に染まる――を行く。隣では柔道部の友達が、自分の階級についてあれこれ悩んでいる。
Xpekeponpon
DOODLE閃のテキスト セッション前日譚まだ少年は何も知らない ●
こがねが丘高校。
スポーツに力を入れているそこは、他の学校ではあまり見かけない部活がチラホラある。キックボクシングとかレスリングとか相撲とか。
フルコンタクト系格闘技の男子同士でつるむようになったのはいつからだったか。昼休み、柔道場の畳の上でダラダラ寝そべったりマットで取っ組み合って遊んだりするのが、閃のいつもの日常だった。
そうして今は、レスリング部の友人が寝転がってスマホのパズル系ソシャゲをポチポチしているのを、閃は横に寝そべって覗いている。近くでは柔道部と相撲部がそれぞれジャンプを読んだり昼寝したり好きなことをしていた。
「あのさぁ」
スタミナ切れでアプリを閉じたレスリング部が、スマホをしまいながら座り直す。
1491こがねが丘高校。
スポーツに力を入れているそこは、他の学校ではあまり見かけない部活がチラホラある。キックボクシングとかレスリングとか相撲とか。
フルコンタクト系格闘技の男子同士でつるむようになったのはいつからだったか。昼休み、柔道場の畳の上でダラダラ寝そべったりマットで取っ組み合って遊んだりするのが、閃のいつもの日常だった。
そうして今は、レスリング部の友人が寝転がってスマホのパズル系ソシャゲをポチポチしているのを、閃は横に寝そべって覗いている。近くでは柔道部と相撲部がそれぞれジャンプを読んだり昼寝したり好きなことをしていた。
「あのさぁ」
スタミナ切れでアプリを閉じたレスリング部が、スマホをしまいながら座り直す。