桜本日の霊とか相談所はここの所、客が少ない。常連客も春ということで花見やレジャーで予定が埋まっているようだった。
そんな客が居ないソファーには霊幻の弟子である茂夫が勉学に勤しんでいた。
なかなかの茶菓子の減り具合から勉強は膠着しているようにも見える。
「師匠」
「なんだ、モブ」
「明日ありと思う心の仇桜って言葉なんですけど」
「……、うん」
弟子の口から出てきた言葉に思わず霊幻は一拍程度思考を停止させた。
「どうしました?」
「いや、モブがしっかりと勉強しているんだなと感心しただけだ」
「そうですか」
一見失礼にかと思われる霊幻の発言だが、茂夫は特に気にも留めずに話を続けた。
「それでですね、これってようするに善は急げと同じ意味だと思うんですよ」
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