終わりなき雪の日に 雪の降らない冬は、久しぶりだった。幼い頃のことはあまり定かではないので、ほとんど初めてと言ってもいい。北の国では冬だけではなく一年中雪が積もっていたし、きっとこの国でも冬が来れば雪が降るのだと思っていた。
明け方、こっそりと窓から部屋を抜け出して地面に降りると、しゃり、と細かな氷が割れる音がした。霜柱だ。厚い雪に覆われた北の国ではあまり見ないそれの上を、軽快な音を立てながら歩くのは好きだった。
中央の国では、一年を通して葉を落とさない木があった。冷たい風の中でも健気につぼみを広げる花があった。どんなときでも街には活気が溢れていて、子どもたちはコートを脱ぎ捨てて駆け回っている。
この国が、愛しい。生まれた国。希望を失わず、懸命に生きる人々の暮らす国。美しい風景、明るい人々。穏やかな風、古い遺跡、暗い森、乾いた砂漠、朝露にきらめく草原。
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