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    #鶴月

    craneMoon

    棚ca

    DONE鶴見も酒の味は嫌いじゃないかもしれない
    鶴月SS 穏やかな夏の一日だった。鶴見の家の留守を任されていた月島は一人、持ち込んだ書類仕事を終わらせ、目を通しておきたかった文献を読んでからはゴロゴロとして過ごした。留守番という名目ではあるが、休んでいろと鶴見には言われてある。その言葉に甘えて、久々にのんびりとしてみたのであった。夕刻、腹が減って土間を覗くと、女中はすでに帰っていたが小魚と根菜を甘辛く煮付けたものと、二合徳利が置いてあった。月島は土間に立ったまま煮付けと白米を平らげ、漬物と徳利を持って縁側に出た。
     既に日は落ちかけて、涼しい風が草木を揺らしていた。塀の上をトテトテと歩いてきた猫が月島の姿を認めてヒラリと降り立ってきた。ピンと立った尻尾を揺らしながら月島の元へと歩いてくると太ももに前足をちょんと置いて覗き込んでくる。耳の後ろを軽く掻いてやると満足げに目を細めて、薄皮饅頭のような小さい頭をグリグリと月島の掌に押し付けた。そうして、何気ない素振りで室内へと入っていこうとしたので、月島は手早く障子を閉めた。すると今度は漬物の小皿に鼻先を向けるので、持ち上げて反対側へと移動させる。おやおや、人間のクセになかなか頭が回るようだと言わんばかりに、猫は首を傾げてからゆったりと伸びをした。そして、マ、いいだろうと月島の傍らでとぐろを巻いて休み始めた。
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