Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    dhastarflower

    @dhastarflower
    打破
    1031万圣街(万聖街)🐺🦇中心、
    🚕にて🦊🦨、🦨🦊など
    🔞やラクガキ他ジャンルごちゃごちゃ。
    Twitterに投下しているのを置いてみました。
    pixivにあげたりもしますが、ひとまず!

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 138

    dhastarflower

    ☆quiet follow

    巌ふち小説できたところまでです。
    仙ちゃんの墓標の前で泣きじゃくるふちくんあたりのお話。

    #巌ふち

     命にはいつか終わりが来る。
    早いか遅いかの違いだけ。身体はただの肉の塊で内臓はただの物体でしかなくて死んだあとは土に埋められて微生物によって分解されて終わりだ。
     僕がいつも見てきて触れてきたもののはずだった。こんなにも自分は命に向き合っているという自信さえあったのに。人体を知り尽くして人の役に立てていると自分のやるべき使命を全うしていると今の今迄本気で信じていたのに思い上がりも良いところだ。死んだあとの内臓や骨などの重みはいくらでも知っているのに滑稽すぎて笑えない。解剖器具を振りかざして肢体を弄って人よりもわかっていたつもりになっただけ。ちゃんと命という重みを感じていなかった。
     「…っ…仙ちゃ、…仙ちゃん…」
     質素でも丁寧に盛られた土の下に眠る仙ちゃんに呼び掛けたところで返ってこない。わかってはいても名を呼ぶのも涙もとめられない。こんなにもわんわんと幼子のように泣き喚いたことなんて、自分が子供だった頃の記憶を探ってもない。
     何度でもこれは嘘で、夢であれと。仙ちゃんにしてはらしくなく冗談だと騙したことを申し訳無く眉を下げて土からぼこっとでてくれやしないかと自分らしくない考えをしては、何度でも目の前の現実は変わらなくて無情に打ち消される。
     
    「罪人(こっち)は始めから一人になるまで殺し合ってんだ。誰が何人死のうが知った事か」
     佐切達が集まっているところと距離が離れているものの、身体もでかけりゃ声もでかく僕がいる仙ちゃんが眠る場所まで聞こえてきた。剣龍の言葉が妙に気になって目の前の仙ちゃんから意識をそちらに移す。
    「処刑人(おまえら)だけ仲良く全員帰れるとでも思ってたかよ」
     怒りを含んだような呆れたような声色で士遠さんに投げ掛けられた言葉。
     僕達山田浅ェ門に向けられているのだろうなと皮肉を理解すれば彼にしては真っ当だなと思うしかなくて涙がぽたり重力に負けて地にまた落ちた。
     「…大真面目にそのつもりだったよ…」
     士遠(シオ)さんが絞り出したような声を落とす。常に冷静で温厚な士遠さんでもつらくてたまらないときは隠せられないんだなと遠く離れて顔が見えなくても声色だけで痛いほどわかる。それほど士遠さんにとって典くんは大事な弟子であると僕でも感じていた。
     典くんの他に期の字の最期を聞いた。佐切からはお源も衛さんのことも。ここにいない山田浅ェ門のことを一部始終。僕が知らないところで一緒に勉強したり稽古したりご飯を食べたりした人達がいなくなった。もう二度と会えないのだと思えば、ずきりと胸が痛む。
     自分の大事な人だけはいつも笑顔でいてそれぞれに思う悩みがあったとしても平凡で変わらないいつもの毎日があると。お務めをこなしてたまの休みの日には佐切や仙ちゃんと一緒に団子を食べに出掛けたりいつまでも変わらずになんて思っていたのはなんでだったのだろうか。
     たとえそれが誰も帰ってきた者がいないという島にこれまたあるのかわからない仙薬をもって罪人とともに帰ってこれるかどうかなんてわからない。
     それでも山田浅ェ門の皆は全員生きてまた会えるだろうと何故思えたのだろうか。
     罪人達はたったひとりしか生き残れないというのに、山田浅ェ門達は頭が平和で危機感もなく良いご身分だなと罪人に言われ何も言い返せない。
     …そうだ、御免状を貰えるのは仙薬を持ち帰った罪人ただひとり。そのたったひとりが彼になることだってどこにも確証はない。
     第一、彼は公儀御免状を貰うことも無罪になることもそもそもの目的ではない。画眉丸と共闘関係を結んだときに話していた夢物語で彼の野望。それはこの先偉業さえ成せれば己の命はなくとも別にいいと言っているようなものだ。だからこそというか、自分の左手を躊躇なく切り落とした際の判断力にも繋がるのだろうか。剣の腕を更に磨きたい想いやこれから先の生きるうえで不便になるしかない隻腕に自分からなろうとは思わないが、天秤にかけるものが違うのなら納得だ。少し接しただけでもわかる、彼らしい考えだ。
    「……わかっていたはずなのに何を今更…」
     仙ちゃんの墓標にまた視線をゆったりと戻す。
    「…仙ちゃん覚えてる?このお役目が終えたら佐切と一緒に団子屋へ行こうって約束したよね。季節の変わり目に新しい味の団子が出るんだと先取り情報教えてくれてさ」
     僕のような荒んでいる者でも心の澱みの塊を溶かしてくれるような優しく柔らかな笑顔とゆったりと落ち着く声がかえってくるはずもない。
    「一緒に食べたかったなぁ…」
     もう叶わない、二度と。佐切と仙ちゃんと僕でいくお団子屋さんの時間が楽しくて大事だったのに。記憶を思い返すと何度か腑分けが楽しいから土壇場で行くのを断ったことだってある。腑分けなんてあとから続きをやればいい、もっと大切にしたら良かった。
     後悔も涙もどうしようもない戯言もあとからあとからぼろぼろとでてくる。
    「…っ、ひぁ…あっ」
     こんなにも大事な人の死がツライなんて思わなかった。
     優しい笑顔の仙ちゃんが困ったように笑う。自分は悪くないのについつい謝罪の言葉を口にしてしまうような争いごとを好まない優しすぎる彼にもう会えないんだという現実を思い知れば、また目から水が溢れてとまらない。
    「…っ、約束なんて、するんじゃなかった…」
     喉の奥詰まるように苦しくて心臓をぎゅうっと捻られているように痛くて仕方がない。
     一般の人よりは人の死というものに近いと思っていたしわかりきってるのもと思っていた。そんなの思い違いもいいところだった。
     知らなかったんだ、僕は。
    「…もう誰かが死ぬ姿は見たくない……」
     このご時世に、またこんな状況下で何を言ってるんだろうと自分でも頭では理解しているのに心で思う気持ちとの矛盾がとめられない。
     溢れ出る涙をどうにか止まれと目が腫れても皮膚が擦れても構いやしない、半ば強引に強く擦っていたら。
     「……、っ?」
     閉じた瞼の裏にいきなり出てきた『それ』が思いもがけない人物で脳内処理が追いつかなく、ぴたりと震えていた肩が止まり涙も引っ込んだ。
     映し出されたのが先程まで想っていた仙ちゃんでも他の亡くなった山田浅ェ門達でも、仲間の佐切たちでもなかった。
     あたたかい風が柔らかく僕の周りを包み込むように吹いて荒く擦った目元に触ったかと思えば、風の流れるその方向へ髪が揺らぐ。導かれるようにそちらを振り向いた。皆が集まっている中に一人だけ上半身飛び抜けいる大柄の人物が遠くからでも顔がよく見える。
     
    心臓がまた、痛んだ。それは先程とはまた別のようにぎゅうぎゅうと苦しくて思わず胸元を抑えた、目線は『それ』に追い掛けて離れない。
     
     もう『誰か』が死ぬのは見たくないと思った。
     
    「…なん、で」
     無意識に瞼の裏に見たのが、よりにもよって『貴方』なんだろうか。
     
     
     ※※※

     
    「おい、ナントカェ門」
    「…山田浅ェ門です。このくだり何回目ですか…」
    「なんでもいいわ、ほれ、ひとまずここ離れてあの俺が見つけた洞窟に行くぞ。はやくこいや」
    「…すいません」
    僕が素直に謝ったせいか、ん?と首を傾げる剣龍。
    「…仙ちゃんの…形見持っていきたくて」
     突き刺されていた仙ちゃんの刀の下。彼の愛用していた眼鏡をぎゅっと握り締めた。戦いの凄さを物語るかのようにところどころ曲がっては硝子部分にはヒビがある。
    誤魔化せていないだろうけれど鼻を啜る。
    「…意外ですか」
     なにを、とは言わず剣龍に言葉だけ投げかける。
     首斬りを生業とする山田浅ェ門で、腑分けを好んでして人の役に立っていると先日まで息巻いていたのに仲間の死でこんなにも感傷的になって腑抜けになるなんて馬鹿にされても仕方ない。
     デカくて無骨な手が頭の上に置かれる。
    心地よいともいえるようなあたたかさでわしわしと髪を撫でられた。
    「大事な友達(ダチ)だったんだろ。笑わねぇよ」
    「泣けるうちに泣いとけ。オッサンになるとなかなか泣けねぇからな」
     逆に意外な言葉が返ってきた。くだらないと、男ならこんなことで泣くなとか言いそうなもんなのに。
     また先程はああも生半可なこといってんじゃねぇよと死罪人と執行人の考え方の違いに苛立っていた同じ口でそうも人間くさいことを言う。どっちが本音なんだろうかと思えばどちらも彼なんだろう。裏表もない実直なそういう男だ。
     

    (ここまでですーー!!あと続き書きます…!)
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏👏👏👏👏😭😭😭🙏🙏🙏🙏🍌🍌☺👏👏👏👏😢😢😢🙏🙏🙏👏🍵
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works