ダイ好きTVのネタ話(ポプダイポプ)正午を少し過ぎた頃、ポップは二人で住む家を出て、森の方へ声をかけた。
「おーい!メシだぞー‼」
待つこと少々。
いつもならすぐに、文字通り飛んでくる相棒が、戻ってこない。
「あれ?……っかしーな……」
何故かどこにいてもポップの声を聴きつける彼の相棒──ダイが、すぐに戻ってこない理由。
その考え得る可能性としては、他のこと──例えば修行などに集中していて声が届いていないか、或いは眠りについていて意識がないか。
──よりによって、こんな日に。
「……しゃあねえなあ……迎えに行くか」
そう呟き、彼が居るであろう森へと足を進めていった。
木漏れ日の中、ガサガサと森の奥へと踏み込むうち、ポップは違和感を感じた。
ダイの気配は、森に入って割とすぐに見つかった。
だが彼の気配はするのに、なかなか姿を現さない。
逃げられている……という訳ではない。
その証拠に、ダイの気配はある一定の距離を保ち、ポップからつかず離れず、といった位置に常にある。
試しにポップは、森の拓けた場所で立ち止まってみた。
ポップの予想通り、ダイの気配もピタリと立ち止まるが、一向に姿が見えない。
──なんだ?かくれんぼでもしてんのか、あいつ。
突如始まった子供らしい遊びに、しょうがねえヤツと思いつつも、ポップは少々付き合ってやることにした。
ダイの気配を背にして、わざとらしく声を上げる。
「あーあ、あいつどこ行っちまったんだろうなあー」
直後、がさりと背後の茂みが動く気配。
そして──
ふわりと、少し体温の高い手が、ポップの視界を遮った。
「どーこだっ?」
ようやく聴こえた、どこか楽しそうな弾んだ声に、思わず笑みが溢れる。
「それを言うなら……だーれだ、だろうが」
そっと目元を塞ぐ手を外して声の主を見れば、えへへと笑う探し人が居た。
「へへっ。……だけどおまえが探してるのおれだろ?だったら、どこだ、で合ってるじゃないか」
「ばーか。目を塞ぎながらどーこだ、って……真後ろにいるのまるわかりじゃねえか」
「あ……そっか」
「……ったく」
クシャクシャと、以前よりかは幾分高い位置にあるクセっ毛を撫でてやれば、くすぐったそうに首を竦める。
「ほら、メシ出来たから帰るぞ。昼はおめえの好物の……」
「チャーハン‼」
ポップの言葉に被せるように、ダイが目を輝かせてそのメニューを叫ぶ。
「……そういうこった。あったかいうちに食おうぜ」
──冷めると味、落ちるからな。
歩き出しながら、そうぼそりとポップが付け足す。
ポップに並んで歩き出したダイだったが、何かを考え込んだあと、不意にポップの顔を下から覗き込んで言った。
「でもおれ、ポップの作るご飯なら、冷めても美味しいよ?なんでも」
「……」
驚きで思わず歩みを止めたポップが口を開く前に、ダイはやったやったー、などと言いながら、サッとポップの先へと進んでいく。
その耳がほんのりと赤く染まっていることを、ポップが見逃すはずもなく。
──チャーハン……冷めちまっても……いいよな?
昼飯よりも先に味わいたいものが出来たと言ったら、ダイは驚くだろうか。
だが、先に驚かせるようなことをしたのはダイの方なのだから、これは仕返しだ。
緩む口元を悟られないように、ポップはダイの背中を追う。
好物が待ちきれない二人は、共に家への帰り道を急ぐのだった。
お粗末さまでした!